欧州おうしゅう代表だいひょう～挑戦ちょうせん者しゃたちの素顔すがお～

2015年ねん2月がつ11日にち

文ぶん＝田中たなか亮あきら多た

　3月がつ10日とおかと11日にち、侍さむらいジャパンが欧州おうしゅう代表だいひょうを東京とうきょうドームで迎むかえ撃うつことが決きまった。
世界せかい野球やきゅう・ソフトボール連盟れんめい(WBSC)のリカルド・フラッカーリ会長かいちょう以下いか、球界きゅうかい関係かんけい者しゃが歴史れきし的てきと口くちを揃そろえるこのシリーズ。しかし、ヨーロッパ大陸たいりくから遥々はるばるやってくる28人にんの猛者もさたちをよく知しる者ものは、日本にっぽん国内こくないでは極きわめて少数しょうすう派はなのではないだろうか。欧州おうしゅう代表だいひょうとはいかなるチームなのか。欧州おうしゅう代表だいひょうの選手せんしゅたちの素顔すがおと、彼かれらが胸むねに抱いだく思おもいに迫せまった。

　｢野球やきゅうというスポーツ自体じたいにとって素晴すばらしい機会きかいだ。今いま、野球やきゅう界かいがグローバリゼーションの時代じだいを迎むかえているということを思おもい出だしてほしい。こうしたイベントは、我々われわれのスポーツにとって物凄ものすごく大おおきなものを与あたえてくれるだろう。今いまや、野球やきゅうをプレーしているのはアメリカとアジアと中南米ちゅうなんべいだけではない。ヨーロッパも、オーストラリアも、アフリカも、皆みなこの世界せかいでベストなスポーツをプレーしているんだよ｣
　一昨年いっさくねん、野球やきゅうブンデスリーガを制せいしたドイツの強豪きょうごう、レーゲンスブルグ・レギオネーレの指揮しき官かんに今年ことしから就任しゅうにんしたロドリゲス監督かんとくは、今回こんかいの｢日び欧おう野球やきゅう｣の開催かいさい意義いぎについて問とわれそう答こたえた。

　おそらく大半たいはんの野球やきゅうファンにとって、ヨーロッパ球界きゅうかいが日本にっぽんやアメリカとは全まったくの別世界べっせかいであるのと同おなじように、ヨーロッパの野球やきゅう人じんにとってもまた日本にっぽんやアメリカの野球やきゅう界かいは遠とおい存在そんざいであると言いっていい。ただし、その意味合いみあいは多おおくの日本人にっぽんじんが抱だいているであろう｢カーテンの向むこう側がわ｣というイメージとは少すこし趣おもむきが異ことなる。

　ヨーロッパ大陸たいりくにおける野球やきゅうの姿すがたは、日本にっぽんやアメリカにおけるものとは全まったくの別物べつものだ。そこには年間ねんかん100を超こえる試合しあい数すうをこなす国内こくないリーグもなければ、国内こくない屈指くっしのメジャースポーツであることを前提ぜんていとしたメディア報道ほうどうやファンベースもない。そもそも野球やきゅうのみで生計せいけいを立たてられる選手せんしゅ自体じたい｢大陸たいりく全体ぜんたいで10％もいないだろう(ロドリゲス監督かんとく談だん)｣。これが半はん世紀せいき以上いじょうにわたって続つづくヨーロッパ野球やきゅうのスタンダードである。

　だからこそ欧州おうしゅう諸国しょこくでプレーする選手せんしゅたちは、自みずからが置おかれている環境かんきょうと対極たいきょくにある日本にっぽん球界きゅうかいへの憧あこがれを隠かくそうとはしない。イタリアのIBL(イタリアンベースボールリーグ)におけるゴールドグラブ賞しょうや盗塁とうるい王おうの常連じょうれんで、2013年ねんにはWBCにもイタリア代表だいひょうとして出場しゅつじょうしたファン・カルロス・インファンテもその1人ひとりだ。昨季さくきのリーグ王者おうじゃであるUGFフォルティチュード・ボローニャ1953所属しょぞくで、かつてはG.G.佐藤さとう(元もと埼玉さいたま西武せいぶ、千葉ちばロッテ)とも同僚どうりょうだった33歳さいの遊撃手ゆうげきしゅは、このオフに入はいって日本にっぽん球界きゅうかいへの移籍いせきを本格ほんかく的てきに目指めざしている。

　｢もっとレベルが高たかく、多おおくの試合しあいがこなせる国くにでプレーしたい｣とインファンテは言いう。｢俺おれは今いままで色々いろいろな国くにで野球やきゅうをやってきた。ベネズエラ、アメリカ、カナダ、ニカラグア、イタリア…。今いまはマイナーのAAA級きゅうでだってプレーできる自信じしんがあるよ。今度こんどは、自分じぶんが世界せかい最高さいこうの野球やきゅう大国たいこくのひとつである日本にっぽんでも成功せいこうできると証明しょうめいしたいんだ｣

　NPBという世界せかいでもトップレベルのプロ野球やきゅうリーグの存在そんざいは、インファンテやロドリゲスの目めから見みれば功罪こうざい分わかれる部分ぶぶんがあるだろう。日本にっぽんが野球やきゅう大国たいこくとしての確固かっこたる地位ちいを築きずく原動力げんどうりょくとなる一方いっぽうで、ペナントレースの隆盛りゅうせいでプロ野球やきゅうが国内こくないで成熟せいじゅくしたスポーツコンテンツとなった為ために、サッカーのような代表だいひょう戦せんという形かたちが日本にっぽん国内こくないでなかなか定着ていちゃくしなかった。そのことは、ヨーロッパのトップ選手せんしゅたちが、日本にっぽんのトップ選手せんしゅに挑戦ちょうせんする機会きかいがなかなか実現じつげんしない要因よういんとなった。常設じょうせつ化かされた「侍さむらいジャパン」によって、その状況じょうきょうは大おおきく変かわりつつある。その壁かべがようやく崩くずれることとなった今回こんかいの2試合しあいが、彼かれらにとって単たんなる親善しんぜん試合しあいなどではないことは言いうまでもないだろう。これは文字通もじどおり、ヨーロッパ球界きゅうかい全体ぜんたいの未来みらいを賭とした戦たたかいだとも言いえる試合しあいなのだ。

　一方いっぽうでヨーロッパ球界きゅうかいにも、野球やきゅう発展はってんのための｢光こう｣の側面そくめんがあることにも触ふれておく必要ひつようがある。ロドリゲス率ひきいるレギオネーレの本拠地ほんきょち｢アーミンウルフ・ベースボールアリーナ｣は、最大さいだい1万まん人にんを収容しゅうようする内うち外野がいや総そう天然てんねん芝しばの美うつくしいボールパークだ。アメリカのマイナーリーグと比くらべても何なんら見劣みおとりしないスタジアムを持もつ彼かれらのような球団きゅうだんは、大陸たいりくのあちこちにごく当あたり前まえに存在そんざいする。

　また日本にっぽんではG.G.佐藤さとうのイタリア行いきが話題わだいを呼よんだが、MLBやマイナーで経験けいけんを積つんだアメリカやドミニカ、ベネズエラといった国々くにぐに出身しゅっしんの選手せんしゅが助すけっ人ととして採用さいようされるのは、今いまやヨーロッパでも当あたり前まえになっている(インファンテもロドリゲスも、元もとはベネズエラの生うまれである)。つい昨日きのうまでAAA級きゅうやAA級きゅうでプレーしていたような選手せんしゅたちによって競技きょうぎレベルが大おおきく向上こうじょうし、そこで腕うでを磨みがいた若わかいヨーロッパ人じん選手せんしゅがMLBから評価ひょうかされて渡米とべいすることも珍めずらしくはない。今いまやパ・リーグ屈指くっしのリリーバーとなったアレックス・マエストリ(オリックス)のように、実際じっさいにトップレベルで結果けっかを出だす者ものも現あらわれ始はじめた。｢我々われわれのチームはこの試合しあいでベストを尽つくして、君きみたち日本人にっぽんじんが思おもっているよりもずっと難むずかしい試合しあいにするつもりだ｣というロドリゲスの言葉ことばにも、ただの戯言ざれごとでは片かたづけられない重おもみがあるのだ。

　ならばカーテンが開あけ放はなたれた今いま、侍さむらいジャパンが果はたすべき務つとめはただ1つ。この名なもなき挑戦ちょうせん者しゃたちを、本気ほんきを以もって迎むかえ撃うつことだ。この2日間にちかんを、日にち欧おう双方そうほうの選手せんしゅがどのような思おもいを持もって戦たたかうか。それは今後こんご何なん十じゅう年ねんというヨーロッパ球界きゅうかいや世界せかいの野球やきゅう界かいの長ながい未来みらいはもちろん、27個こ目めのアウトを取とった後のちというごく近ちかい未来みらいをも左右さゆうすることになるだろう。欧州おうしゅう代表だいひょうの選手せんしゅたちにはき上ずきあげた名声めいせいこそなくとも、侍さむらいジャパンが一瞬いっしゅんでも気きを抜ぬけば、ヨーロッパ野球やきゅうの底力そこぢからで一いち太刀だち浴あびせるという姿勢しせいで試合しあいに臨のぞんでくるのだから。

ひかりTV 4K Global Baseball Match 2015
侍さむらいジャパン対たい欧州おうしゅう代表だいひょう

大会たいかい概要がいよう

チケット販売はんばい

出場しゅつじょう予定よてい選手せんしゅ

試合しあい日程にってい

3/10（火ひ）18:00 東京とうきょうドーム　侍さむらいジャパン 4 - 3 欧州おうしゅう代表だいひょう
3/11（水みず）18:00 東京とうきょうドーム　欧州おうしゅう代表だいひょう 6 - 2 侍さむらいジャパン

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