成長せいちょうするインド乗用車じょうようしゃ市場いちば、2023年度ねんどは過去かこ最多さいた
多目的たもくてき車しゃとEV政策せいさくがカギ

人口じんこう世界一せかいいち、GDP世界せかい5位いと経済けいざい成長せいちょうを続つづけるインド。国内こくないの自動車じどうしゃ市場いちばも拡大かくだい傾向けいこうにあり、2023年度ねんど（2023年ねん4月がつ～2024年ねん3月がつ）の自動車じどうしゃ販売はんばい台数だいすう（二に輪りん、三輪さんりんを含ふくむ）は前年度ぜんねんど比ひ12.5％増加ぞうかした。中なかでも乗用車じょうようしゃ販売はんばいは多目的たもくてき自動車じどうしゃ（UV）が好調こうちょうで、421万まん8,746台だいと過去かこ最高さいこうを記録きろくした。今後こんごの市場いちばシェア争奪そうだつは、UVの市場いちば戦略せんりゃくがカギとなるだろう。日系にっけい自動車じどうしゃメーカーのマルチ・スズキ、トヨタ・キルロスカは増産ぞうさん計画けいかくを発表はっぴょうしており、さらなるシェア拡大かくだいが期待きたいされる。国民こくみんの所得しょとく向上こうじょうや政府せいふによる電気でんき自動車じどうしゃ（EV）支援しえん策さくなどによって、自動車じどうしゃ市場いちばの成長せいちょうが今後こんごも続つづくことは間違まちがいない。

ポストコロナで順調じゅんちょうに成長せいちょうする自動車じどうしゃ業界ぎょうかい

インド自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かい（SIAM）によると、2023年ねんの自動車じどうしゃ国内こくない販売はんばい台数だいすう（二に輪りん、三輪さんりんを含ふくむ）は2,385万まん3,463台だいで、前年度ぜんねんど比ひ12.5％増加ぞうかした。部門ぶもん別べつにみると、乗用車じょうようしゃが421万まん8,746台だいで同どう8.4％増ぞう、商用しょうよう車しゃが96万まん7,878台だいで同どう0.6％増ぞう、二輪車にりんしゃが1,797万まん4,365台だいで同どう13.3％増ぞう、三輪車さんりんしゃが69万まん1,749台だいで同どう41.5％増ぞうとなった（表ひょう1参照さんしょう）。

注ちゅう1： BMW、メルセデス、ジャガー、ボルボ・オート、ダイムラー、JBMオート＆スキャニアのデータは含ふくまれない。
注ちゅう2： 電動でんどうリキシャは主おもに乗客じょうきゃく輸送ゆそう、電動でんどうカートは主おもに貨物かもつ輸送ゆそうに使つかわれる。
出所しゅっしょ：インド自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かい（SIAM）

年度ねんど別べつの国内こくない販売はんばい台数だいすうの推移すいいをみると、新型しんがたコロナウイルス禍かなどによる影響えいきょうで、2021年度ねんどには1,761万まん7,606台だいまで落おち込こんだものの、2022年度ねんどから回復かいふく傾向けいこうにある。販売はんばい台数だいすうの大だい部分ぶぶんは変かわらずに二に輪りん車しゃで、2023年度ねんどは全体ぜんたいの75.4％を占しめた。2023年度ねんどの販売はんばい台数だいすうは、各かく部門ぶもんが2019年度ねんどの販売はんばい台数だいすうを超こえ、新型しんがたコロナ禍か前まえの水準すいじゅんまで回復かいふくを見みせた（図ず1参照さんしょう）。特とくに乗用車じょうようしゃは過去かこ最高さいこうの420万まん台だい超ちょうで、背景はいけいには多目的たもくてき自動車じどうしゃ（UV）の好調こうちょう（前年度ぜんねんど比ひ25.8％増ぞう）があると思おもわれる。

出所しゅっしょ：インド自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かい（SIAM）を基もとにジェトロ作成さくせい

乗用車じょうようしゃのシェアトップはスズキ

乗用車じょうようしゃの主要しゅようメーカー別べつ販売はんばい台数だいすうは、上位じょうい3社しゃが安定あんてい感かんを見みせた。市場いちばシェアはマルチ・スズキがトップで41.7％、韓国かんこくの現代げんだい自動車じどうしゃが14.6％、地場じばのタタ・モーターズが13.8％と続つづく（図ず2参照さんしょう）。3社しゃとも前年度ぜんねんどから1桁けたの増加ぞうかで順位じゅんいを守まもったかたちだ。地場じばのマヒンドラ＆マヒンドラは前年度ぜんねんど比ひ28.0％増ぞう、トヨタ・キルロスカは同どう41.8％増加ぞうかで販売はんばい台数だいすうを伸のばし、2022年度ねんどに続つづいて好調こうちょうを維持いじした（表ひょう2参照さんしょう）。

一方いっぽう、2022年度ねんどは2桁けた成長せいちょうと好調こうちょうだった韓国かんこくの起亜きあは前年度ぜんねんど比ひ8.8％減げん、ホンダは同どう5.3％減げん、日産にっさんは同どう10.3％減げんと落おち込こんだ。日系にっけい5社しゃ（マルチ・スズキ、トヨタ・キルロスカ、ホンダ、日産にっさん、いすゞ）の合計ごうけいは212万まん2,802台だいで、市場いちばシェアは50.3％。前年度ぜんねんどの49.0％から1.3ポイント上昇じょうしょうした。

出所しゅっしょ：インド自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かい（SIAM）を基もとにジェトロ作成さくせい

出所しゅっしょ：インド自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かい（SIAM）

乗用車じょうようしゃの成長せいちょうトレンドは変かわらずUV

乗用車じょうようしゃをさらにセグメント別べつにみると、一般いっぱん乗用車じょうようしゃは154万まん8,943台だいで前年度ぜんねんど比ひ11.4％減げん、UVは252万まん691台だいで同どう25.8％増ぞう、バンは14万まん9,112台だいで同どう7.3％増ぞうだった。小型車こがたしゃをはじめとした一般いっぱん乗用車じょうようしゃが前年度ぜんねんどの2桁けた増ぞうから2桁けた減げんに転てんじた一方いっぽう、UVが4年ねん連続れんぞくの2桁けた増ぞうと好調こうちょうだった。車種しゃしゅ別べつデータにもそのトレンドが表あらわれている。

一般いっぱん乗用車じょうようしゃの車種しゃしゅ別べつランキングを見みると、首位しゅいはマルチ・スズキのコンパクトモデル（「スイフト、ワゴンR」など計けい82万まん8,015台だい）で、2位い以下いかに大差たいさをつけたものの、前年度ぜんねんど比ひ4.1％減げんだった。他方たほう、同社どうしゃのコンパクトモデルは車種しゃしゅ別べつ1位いを長年ながねん維持いじしており、根強ねづよい人気にんきがうかがえる。この人気にんきがマルチ・スズキの一般いっぱん乗用車じょうようしゃシェア第だい1位い（63.3％）に大おおきく貢献こうけんしていると考かんがえられる。

乗用車じょうようしゃの車種しゃしゅ別べつ2位い～7位いは各社かくしゃのUVが占しめ、いずれも前年度ぜんねんどから販売はんばい台数だいすうを2桁けた以上いじょう増ふやした。2位いはタタ・モーターズのコンパクトUV（「ネクソン」など計けい34万まん1,773台だい）で前年度ぜんねんど比ひ11.7％増ぞうだった。3位いはマルチ・スズキのコンパクトUV（「ブレッツァ」など計けい32万まん1,641台だい）で前年度ぜんねんどの2.2倍ばい、4位いは同社どうしゃUV（「グランド・ヴィターラ」など計けい27万まん926台だい）で同どう47.2％増ぞうと、同社どうしゃUVの好調こうちょうぶりがうかがえる。5位い、6位いはマヒンドラ＆マヒンドラ、7位いは現代げんだい自動車じどうしゃのUVモデルがランクインした。また、トヨタ・キルロスカのミニバン（「イノーバ・クリスタ、イノーバ・ハイクロス」計けい9万まん8,180台だい）は、台数だいすうは10万まん台だいには届とどかなかったが、同どう76.7％増ぞうと好調こうちょうだった。こうした車種しゃしゅの人気にんきにより、UV市場いちばシェアは、マルチ・スズキが25.5％、マヒンドラ＆マヒンドラが18.2％を占しめた（図ず3参照さんしょう）。

出所しゅっしょ：インド自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かい（SIAM）を基もとにジェトロ作成さくせい

二輪車にりんしゃは順調じゅんちょうに成長せいちょう、上位じょうい4社しゃは安定あんてい

2023年度ねんどの二輪車にりんしゃの国内こくない販売はんばい台数だいすう（前年度ぜんねんど比ひ13.3％増ぞうの1,797万まん4,365台だい）は、新型しんがたコロナ前まえ2019年度ねんどの1,741万まん6,432台だいを超こえた。過去かこ最高さいこうだった2018年度ねんどの2,117万まん9,847台だいには遠とおいものの、直近ちょっきん10年ねんで3番目ばんめの数値すうちとなった。セグメント別べつにみても、スクーターが583万まん9,325台だいで前年度ぜんねんど比ひ12.5％増ぞう、オートバイが1,165万まん3,237台だいで同どう13.9%増ぞう、モペッドが48万まん1,803台だいで同どう9.1%増ぞうと、いずれも順調じゅんちょうな回復かいふくを見みせている（表ひょう1参照さんしょう）。

主要しゅようメーカー別べつシェアは、首位しゅいがヒーローでシェア30.2％、2位いはホンダで25.2％、3位いはTVSモーターで17.6％、4位いはバジャジ・オートで12.4％だった。上位じょうい4社しゃは2022年度ねんどと同おなじ順位じゅんいを守まもった一方いっぽう、スズキがロイヤルエンフィールドを抜ぬいて5位いに浮上ふじょうし、販売はんばい台数だいすうは92万まん1,009台だい（前年度ぜんねんど比ひ26.0％増ぞう）だった（表ひょう3参照さんしょう）。日系にっけい4社しゃ（ホンダ、スズキ、ヤマハ、カワサキ）の合計ごうけいは615万まん649台だい、市場いちばシェアは34.2％で、2022年度ねんどの33.6％とほぼ同おなじ水準すいじゅんになっている。

有望ゆうぼうなインド市場いちば、多目的たもくてき車しゃとEVがカギに

インドの自動車じどうしゃ業界ぎょうかいは新型しんがたコロナ禍かの落おち込こみから回復かいふくし、成長せいちょう傾向けいこうにある。背景はいけいには、近年きんねんの高たかい経済けいざい成長せいちょうに伴ともなって中ちゅう間あいだ層そうの所得しょとくが向上こうじょう、需要じゅようが拡大かくだいしていることが挙あげられる。また、インド政府せいふの製造せいぞう業ぎょう振興しんこう政策せいさく「生産せいさん連動れんどう型がたインセンティブ（PLI）スキーム」もこの成長せいちょうを後押あとおししている。同どうスキームは自動車じどうしゃと自動車じどうしゃ部品ぶひん分野ぶんやも補助ほじょ金きん支給しきゅう対象たいしょうに含ふくんでおり、2026年度ねんどまで継続けいぞくする予定よていだ。今後こんごも自動車じどうしゃ業界ぎょうかいが成長せいちょうすることは間違まちがいない。

有望ゆうぼうなインド市場いちばで、各かくメーカーは2つの観点かんてんについてかじ取とりを迫せまられている。1つはUV市場いちば戦略せんりゃくだ。現在げんざいは人気にんきの高たかいUV車種しゃしゅを出だしたメーカーが乗用車じょうようしゃ全体ぜんたいのシェアを伸のばす傾向けいこうにある。消費しょうひ者しゃ心理しんりに「刺ささる」UVの開発かいはつが求もとめられている。

もう1つは電気でんき自動車じどうしゃ（EV）の開発かいはつだ。インド政府せいふは2030年ねんまでにEVの販売はんばいを乗用車じょうようしゃの3割わり、二輪車にりんしゃの8割わりにまで引ひき上あげる目標もくひょうを掲かかげる。6月4日にちに開票かいひょうされる総そう選挙せんきょの結果けっかを控ひかえた現在げんざいは、二輪車にりんしゃ、三輪車さんりんしゃを対象たいしょうにした電動でんどうモビリティ促進そくしんスキーム（Electronic Mobility Promotion Scheme 2024）を展開てんかい中ちゅうだ（2024年ねん3月がつ21日にち付づけビジネス短信たんしん参照さんしょう）。同どうスキームの適用てきようは2024年ねん7月がつ末まつまでの予定よていだが、8月がつ以降いこうも新しん政権せいけんによる同様どうようの振興しんこう策さくが予想よそうされており、政府せいふのEV奨励しょうれい策さくは続つづくとみられる。こうした動うごきに伴ともない、外資がいし系けいメーカーのEV工場こうじょう投資とうしが相次あいついでおり（2023年ねん5月がつ23日にち付づけ、2024年ねん3月がつ1日にち付づけビジネス短信たんしん参照さんしょう）、各社かくしゃはシェア拡大かくだいに向むけて、UVの市場いちば戦略せんりゃくとEV振興しんこう策さくの活用かつようが求もとめられている。

自動車じどうしゃ業界ぎょうかいの伸のびが期待きたいされる中なか、トヨタ・キルロスカは2023年ねんに新しん工場こうじょう建設けんせつを発表はっぴょう（2023年ねん11月28日にち付づけビジネス短信たんしん参照さんしょう）したほか、マルチ・スズキは2023年度ねんどの総そう販売はんばい台数だいすう（輸出ゆしゅつを含ふくむ）が過去かこ最高さいこうの200万まん台だい超ちょうを記録きろくし、2030年ねんまでに年間ねんかん400万まん台だいまで増産ぞうさんする目標もくひょうを掲かかげる（2024年ねん4月がつ8日にち付づけビジネス短信たんしん参照さんしょう）。両りょうグループは開発かいはつ・生産せいさん分野ぶんやで協業きょうぎょうするほか、2022年ねん3月がつに自動車じどうしゃ部品ぶひん分野ぶんやでPLIを承認しょうにんされている。また、ホンダは二に輪りんEVの開発かいはつ促進そくしんに向むけて、新あらたに研究けんきゅう開発かいはつ拠点きょてんの設立せつりつを発表はっぴょうした。今後こんご、インド国内こくないでの日系にっけいメーカーのさらなるシェア拡大かくだいが期待きたいされる。