ディスカッションペーパー 19-05
性的せいてきマイノリティの自殺じさつ・うつによる社会しゃかい的てき損失そんしつの試算しさんと非ひ当事とうじ者しゃとの収入しゅうにゅう格差かくさに関かんするサーベイ

概要がいよう

研究けんきゅうの目的もくてき

職場しょくばでのいじめ、ハラスメントを中心ちゅうしんとした社会しゃかい的てき困難こんなんの実態じったい把握はあくの一環いっかんとして、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントに加くわえ、特定とくていの差別さべつ事由じゆうに関連かんれんするハラスメント、具体ぐたい的てきにはSOGIハラスメント（性的せいてき指向しこう・性せい自認じにんに関かかわるハラスメント）の被害ひがいを受うける可能かのう性せいがあるLGBT（レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー）を対象たいしょうとした社会しゃかい的てき困難こんなんの整理せいり、およびそれに伴ともなう社会しゃかい的てき費用ひようの試算しさんを行おこなうこと。

研究けんきゅうの方法ほうほう

外部がいぶ専門せんもん家かによって構成こうせいされる研究けんきゅう会かいにおいて、LGBTの直面ちょくめんする社会しゃかい的てき困難こんなんを整理せいりする。その困難こんなんの費用ひよう推計すいけいに向むけた先行せんこう研究けんきゅうのサーベイを実施じっしし、とくに自殺じさつ・うつによる社会しゃかい的てき損失そんしつに関かんする先行せんこう研究けんきゅう（金子かねこ・佐藤さとう（2010））の成果せいかを用もちいて、LGBTの自殺じさつ・うつによる社会しゃかい的てき損失そんしつの簡易かんい的てきな試算しさんを行おこなう。

なお、自殺じさつ・うつの社会しゃかい的てき損失そんしつには、①自殺じさつ死亡しぼうによる稼働かどう所得しょとくの減少げんしょう、②うつ病びょうによる自殺じさつと休業きゅうぎょうによる労災ろうさい補償ほしょう給付きゅうふの増加ぞうか、③うつ病びょうによる休業きゅうぎょうによる賃金ちんぎん所得しょとくの減少げんしょう、④うつ病びょうがきっかけとなって失業しつぎょうすることによる求職きゅうしょく者しゃ給付きゅうふの増加ぞうか、⑤うつ病びょうがきっかけとなって生活せいかつ保護ほごを受給じゅきゅうすることによる給付きゅうふの増加ぞうかおよび⑥うつ病びょうによる医療いりょう費ひの増加ぞうか（国民こくみん医療いりょう費ひベース）が含ふくまれる。また、社会しゃかい的てき損失そんしつは、金子かねこ・佐藤さとう（2010）の自殺じさつ者しゃ・うつ患者かんじゃ1人にん当あたり社会しゃかい的てき損失そんしつ額がくに、本ほん研究けんきゅうで推計すいけいしたLGBTの自殺じさつ者しゃ・うつ患者かんじゃ数すうを乗じょうじて試算しさんしている。

主おもな推計すいけい・観察かんさつ結果けっか

• LGBT人口じんこう比率ひりつ（日本にっぽんの人口じんこうに占しめるLGBTの比率ひりつ）や自殺じさつ率りつの想定そうていによって幅はばはあるが、LGBTの自殺じさつ・うつによる社会しゃかい的てき損失そんしつの試算しさん値ち（暫定ざんてい）は1,988～5,521億おく円えん（うち、差別さべつなどLGBT固有こゆうの社会しゃかい的てき困難こんなんによるものは994～4,186億おく円えん）となった（図表ずひょう）。
• 海外かいがいの先行せんこう研究けんきゅうによれば、レズビアンの収入しゅうにゅうは異い性愛せいあい女性じょせいより相対そうたい的てきに高たかく（レズビアンプレミアム）、ゲイ男性だんせいの収入しゅうにゅうは異い性愛せいあい男性だんせいより低ひくい傾向けいこう（ゲイペナルティ）があるが、その収入しゅうにゅう差さは先行せんこう研究けんきゅうによってばらつきが大おおきいことが確認かくにんされた。ただし、日本にっぽんでの研究けんきゅう事例じれいはほぼなく、日本にっぽんではゲイ男性だんせい同様どうよう、レズビアンも異い性愛せいあい女性じょせいより収入しゅうにゅうが低ひくいという成果せいかが存在そんざいする。

図表ずひょう　LGBTの自殺じさつ・うつによる社会しゃかい的てき損失そんしつの試算しさん値ち（暫定ざんてい）

政策せいさく的てきインプリケーション

LGBTの自殺じさつやうつ対策たいさくや、これの一因いちいんとなる職場しょくばのいじめ、ハラスメント対策たいさくを積極せっきょく的てきに実施じっしすることで大おおきな経済けいざい的てき損失そんしつを回避かいひできる可能かのう性せいがある。

政策せいさくへの貢献こうけん

LGBTに対たいするいじめ、ハラスメント等とうの国くにの政策せいさく的てき対応たいおうの根拠こんきょや企業きぎょうの取とり組くみの動機どうきになる。

本文ほんぶん

• ディスカッションペーパー19-05全文ぜんぶん（PDF：1.0MB）

お知しらせ

• 本文ほんぶんの試算しさんに用もちいた2017年ねんの自殺じさつ者しゃ数すう21,302人にんは暫定ざんてい値ちであったため、確かく定値ていち21,321人にんに更新こうしんしました。 それにともなって、社会しゃかい的てき損失そんしつ額がくが1～4億おく円えん程度ていど増ふえています。
  なお、HPに掲載けいさいの本文ほんぶんPDFファイルには、この更新こうしんが反映はんえいされています。（2019年ねん4月がつ24日にち）

研究けんきゅうの区分くぶん

プロジェクト研究けんきゅう「労使ろうし関係かんけいを中心ちゅうしんとした労働ろうどう条件じょうけん決定けっていシステムに関かんする研究けんきゅう」
サブテーマ「集団しゅうだん的てき及および個別こべつ労使ろうし関係かんけいの実態じったいに関かんする研究けんきゅう」

研究けんきゅう期間きかん

平成へいせい30年度ねんど

研究けんきゅう担当たんとう者しゃ

内藤ないとう 忍しのぶ

労働ろうどう政策せいさく研究けんきゅう・研修けんしゅう機構きこう 副ふく主任しゅにん研究けんきゅう員いん

中野なかの 諭さとし

労働ろうどう政策せいさく研究けんきゅう・研修けんしゅう機構きこう 副ふく主任しゅにん研究けんきゅう員いん

関連かんれんの研究けんきゅう成果せいか

• 諸しょ外国がいこくに関かんする報告ほうこく書しょ『諸しょ外国がいこくのLGBTの就労しゅうろうをめぐる状況じょうきょう』（2016年ねん）
• 報告ほうこく書しょ『LGBTの就労しゅうろうに関かんする企業きぎょう等とうの取組とりくみ事例じれい』（2017年ねん）
• 資料しりょうシリーズNo.154『職場しょくばのいじめ・嫌いやがらせ、パワーハラスメントの実態じったい―個別こべつ労働ろうどう紛争ふんそう解決かいけつ制度せいどにおける2011年度ねんどのあっせん事案じあんを対象たいしょうに―』（2015年ねん）

お問合といあわせ先さき

内容ないようについて

研究けんきゅう調整ちょうせい部ぶ 研究けんきゅう調整ちょうせい課か　お問合といあわせフォーム

※本ほん論文ろんぶんは、執筆しっぴつ者しゃ個人こじんの責任せきにんで発表はっぴょうするものであり、労働ろうどう政策せいさく研究けんきゅう・研修けんしゅう機構きこうとしての見解けんかいを示しめすものではありません。

ご意見いけん・ご感想かんそう

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