まだ食べられるのに、捨てられてしまう食べ物のことを「食品ロス」といいます。食べ物を捨ててしまうのは、もったいないだけでなく、地球環境にも悪影響が。今、これからの未来に向けて、食品ロスを減らすためのさまざまな取り組みが行われています。
日本と世界で食品ロスがどれだけあるの?
食べ残し、売れ残りや期限が近いなどさまざまな理由で、まだ食べられる食品がどれぐらい廃棄されているのでしょうか? 食品ロスの現状と発生してしまう原因について解説します。
出典/農林水産省・環境省調べ、FAO、総務省人口推計(2017年)
FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されています。
日本でも1年間に約612万トン(2017年度推計値)もの食料が捨てられており、これは東京ドーム5杯分とほぼ同じ量。日本人1人当たり、お茶碗1杯分のごはんの量が毎日捨てられている計算になります。
出典/農林水産省調べ、WFP
日本での食品ロスの原因は、大きく分けて2つあります。一つは、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど小売店での売れ残りや返品、飲食店での食べ残し、売り物にならない規格外品といった事業系食品ロス(328万トン)。もう一つは、家での料理の作り過ぎによる食べ残しや、買ったのに使わずに捨ててしまうこと、料理を作る時の皮のむき過ぎなどの家庭系食品ロス(284万トン)です。
実は開発途上国でもまた、先進国と同様に食品ロスが発生しています。ただし、理由は異なり、せっかく食べ物を作っても技術不足で収穫ができない、流通環境や保存設備、加工施設などインフラが整っていないため、市場に出回る前に腐ってしまうなどの理由からやむをえず捨ててしまう事が多いのです。
なぜ、食品ロス削減が必要なの?
食品ロスを放置すると、大量の食べ物が無駄になるだけでなく、環境悪化や将来的な人口増加による食料危機にも適切に対応できません。食品ロスの削減は、先進国にとっても途上国にとっても、避けて通れない喫緊の課題となっています。
現在、地球上には約77億もの人々が生活をしていますが、途上国を中心に8億人以上(約9人に1人)が十分な量の食べ物を口にできず、栄養不足で苦しんでいます。その一方で、先進国では余った食料がまだ食べられるのに捨てられているのが現状です。日本の食料自給率は先進国の中でも低く、多くの食べ物を海外からの輸入に頼っています。しかしながら、多くの食品ロスを生み出しているという状況は、社会全体で解決していかなくてはならない課題の一つです。
環境を守るために
余った食べ物は、加工業者や流通業者、飲食店、家庭などからごみとして出されます。これらは処理工場に運ばれ、可燃ごみとして処分されますが、水分を含む食品は、運搬や焼却の際に二酸化炭素(CO2)を排出。また、焼却後の灰の埋め立ても環境負荷につながります。
将来の人口増加を見据えて
世界の人口は2019年時点で約77億人ですが、2050年には今より20億人も増えて約97億人にのぼるとみられています(国連による世界人口推計2019年版)。食品ロスに関して何も手を打たず、今のままの状況が続けば、人口増加に伴って栄養不足で苦しむ人がますます増え、貧困に拍車がかかることになります。
世界の食品廃棄物
廃棄される食品の中で、まだ食べられる食べ物と、食品加工の段階で出る肉や魚の骨などのもともと食べられない部分の両方を合わせて食品廃棄物といいます。各国の食品廃棄物発生量は、その国の人口によりまばらですが、どの国も人口1人当たりの廃棄量は少なくありません。ヨーロッパ諸国では、廃棄処分対象になった食品のみを扱ったスーパーマーケットや廃棄予定の食品を活用したレストランが開かれるなど、食品廃棄物をビジネスに転換する動きが高まっています。
出典/「海外における食品廃棄物等の発生状況及び再生利用等実施状況調査」((公財)流通経済研究所)を加工して作成
食品ロスの削減と日本の目標
国連や各国政府は、食品ロス削減に向けて具体的な数値目標を掲げ、効果的な方法を探っています。こうした流れを受け、日本でも自治体や企業での積極的な取り組みが全国規模で広がりつつあります。
食品ロスや貧困、地球環境の悪化に関して国際的な関心が高まる中、2015年の国連サミットでは、食料の損失・廃棄の削減などを目標とする「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」が採択されました。2030年までの達成を目指す国際社会共通の持続可能な開発目標(SDGs、Sustainable Development Goals)として17のゴール(目標)と169のターゲット(達成基準)が示され、各国や地域で積極的な取り組みが始まっています。
SDGsにおける食品ロス削減への取り組み
SDGsのターゲットの一つに、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」という目標(ターゲット12.3)が盛り込まれました。食品ロスの削減を通じてこのターゲットを達成するには個人、事業者、自治体、NPO法人など、さまざまな方面からの協力が欠かせません。
日本の目標
国は事業系食品ロスを、2030年度までに2000年度比で半減するとの目標を立てています。同様に家庭系食品ロスについても2030年度までに半減させる目標を設定しています。私たち一人ひとりが身近なところから食品ロス削減を意識する事が、目標達成には必要不可欠です。
出典/食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢(農林水産省)
これからの食品ロス削減に向けて
食品ロス削減推進法(正式名称:食品ロスの削減の推進に関する法律)では、毎年10月を食品ロス削減月間、10月30日を食品ロス削減の日と定めています。食品ロスの削減に向けた取り組みを広げていくため啓発資材の提供、イベントの開催などを実施しています。
ろすのん(♂)
食品ロス削減国民運動のロゴマークで、食品ロスをなくす(non)が命名の由来です。話すときに語尾に「のん」がつくのが口グセで、好きな言葉は「残り物には福がある」。
1人ひとりにできること
外食時に食べきれる量を注文したつもりでも、つい食べ残してしまうことがあります。そんな時は、どうすればいいのでしょうか。ドギーバッグ普及委員会で委員長を務める小林富雄さんにお話しを伺いました。
「外食などで発生した食べ残しを自宅に持ち帰る行為、またはその容器のこと」をドギーバッグと呼びます。1940年代にアメリカ政府が食べ残しの持ち帰りを推奨したことが始まりだといわれています。現在は世界中に広がり、フランスでは2021年7月に飲食店からのドギーバッグ提供が法的に義務付けられる予定です。
私たちにできることとして、料理を注文する時は自分が食べられる量を考えてごはんを小盛りにしてもらうなど、適量注文を心がけてください。どうしても食べきれない場合のみ、お店の人に許可を得て持ち帰りましょう。しかし、もったいないからと持ち帰って、食中毒になっては元も子もありません。細菌をつけないように手や容器をしっかり洗浄し、料理が冷めてから詰めて早めに帰宅しましょう。持ち帰る際は、からしやわさびなどを活用して、細菌の増殖を抑制したり、家で食べる時は、再加熱することも大切です。
また、ドギーバッグは食品ロス削減だけでなく、お店と家で料理が二度楽しめる、おすそ分けできるなどの効果も期待でき、さらに、繰り返し使える容器であれば、容器ごみの削減にも役立つものと考えています。
ぜひ、持ち帰り容器の携帯や、食べ残した料理の持ち帰りを検討してみてください。
小林 富雄さん
愛知工業大学経営学部経営学科教授
(一社)サスティナブルフードチェーン協議会 代表理事
食品のサプライチェーンから発生する食品ロス研究に携わり、出版、執筆活動、講演などを行っている。2015年からドギーバッグ普及委員会委員長も務めている。
飲み会や外食などで食べ残しが出てしまい、帰り際「もったいないな…でもお腹いっぱいで食べきれない」という罪悪感を感じる方もいると思うのん。そんなときに活躍するのがドギーバックだのん。持ち帰っても大丈夫かお店の人に確認したうえで、適切に使用したいのん。(ろすのん)
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