火星かせいの接近せっきん

火星かせいの接近せっきんってどんな現象げんしょうなの？　大だい接近せっきんって何なに？

「火星かせいの接近せっきん」と聞きくと、火星かせいが地球ちきゅうに引ひきよせられるように近ちかづいてくるようすを想像そうぞうするかもしれません。しかし、実際じっさいにはそのようなことが起おこるわけではありません。では、「惑星わくせいが近ちかづいたり遠とおざかったりする」とはどのようなことなのでしょうか。

地球ちきゅうや火星かせいなどの太陽系たいようけいの惑星わくせいは、それぞれ違ちがう軌道きどうや周期しゅうきで太陽たいようの周まわりを公転こうてんしています。このため、惑星わくせいどうしの位置いち関係かんけいはいつも変化へんかしています。

地球ちきゅうよりも外側そとがわの軌道きどうにある火星かせいの公転こうてん周期しゅうきは687日にち、地球ちきゅうの公転こうてん周期しゅうきは365日にちです。火星かせいよりも公転こうてんのスピードの速はやい地球ちきゅうは、約やく780日にち（約やく2年ねん2カ月かげつ）ごとに火星かせいに追おいつき、追おい越こします。このとき、火星かせいと地球ちきゅうの距離きょりが近ちかくなります。

太陽たいようから見みて地球ちきゅうと火星かせいが同おなじ方向ほうこうになる瞬間しゅんかんを「会合かいごう^{（注ちゅう1）}」、会合かいごうが起おこる周期しゅうきを「会合かいごう周期しゅうき（この場合ばあいは780日にち）」と呼よびます。会合かいごうの頃ころには地球ちきゅうと火星かせいの距離きょりが近ちかくなります。そして、距離きょりが最もっとも近ちかくなることを「最さい接近せっきん」といいます。

しかし、火星かせいの最さい接近せっきんは、いつも同おなじ日びに、同おなじ距離きょりで起おこるわけではありません。これには2つのことが関連かんれんしています。

1. 地球ちきゅうの軌道きどうは円えんに近ちかい形かたちをしているのに対たいして、火星かせいの軌道きどうは楕円だえん形がた。このため、地球ちきゅうと火星かせいの軌道きどうの間あいだの距離きょりは一定いっていではない。
2. 地球ちきゅうと火星かせいの会合かいごう周期しゅうきはぴったり2年ねんではなく約やく2年ねん2カ月かげつ。このため、火星かせいと地球ちきゅうが接近せっきんする位置いちは毎回まいかいずれていく。

上うえの図ずは、2016年ねんから2035年ねんまでの火星かせい最さい接近せっきんを示しめした図ずです。

円えんに近ちかい地球ちきゅうの軌道きどうに対たいして火星かせいの軌道きどうは楕円だえん形がたで、地球ちきゅうの軌道きどうと火星かせいの軌道きどうの距離きょりが一定いっていではないことが分わかります。会合かいごう周期しゅうきがぴったり2年ねんであれば、地球ちきゅうと火星かせいは毎回まいかい同おなじ日びに、同おなじ位置いちで最さい接近せっきんし、最さい接近せっきんの距離きょりも変かわりません。しかし、約やく2カ月かげつの端はし数すうがあるために、最さい接近せっきんの位置いちが毎回まいかいずれていきます。そして、最さい接近せっきんの距離きょりも毎回まいかい異ことなるのです。

地球ちきゅうと火星かせいの軌道きどうが最もっとも近ちかい、つまり火星かせいの近日きんじつ点てん^{（注ちゅう2）}あたりで起おこる最さい接近せっきんのことを慣例かんれいとして「大だい接近せっきん^{（注ちゅう3）}」といいます。反対はんたいに、地球ちきゅうと火星かせいの軌道きどうが最もっとも遠とおく離はなれている、つまり火星かせいの遠日点えんじつてん^{（注ちゅう2）}あたりで起おこる最さい接近せっきんのことを「小しょう接近せっきん^{（注ちゅう3）}」といいます。また、その中なか間あいだあたりで起おこる最さい接近せっきんのことは「中ちゅう接近せっきん^{（注ちゅう3）}」といわれることもあります。小しょう接近せっきんと大だい接近せっきんとでは、地球ちきゅうと火星かせいの間あいだの距離きょりや、火星かせいの視み直径ちょっけい^{（注ちゅう4）}が、倍ばいほども違ちがいます。大だい接近せっきんは、15年ねんから17年ねんに一いち度どほど起おこります。

火星かせいの最さい接近せっきんは約やく2年ねん2カ月かげつごとに起おこるため、特別とくべつ珍めずらしい現象げんしょうではありません。しかし、大だい接近せっきんの頃ころには、火星かせいが特とくに明あかるく、大おおきくなり、火星かせい観察かんさつの大だいチャンスとなるのです。