岸田文雄首相は8日、首相官邸でケニアのルト大統領と会談した。両国の防衛当局は国連平和維持活動(PKO)などを念頭に協力関係をうたう文書に署名した。防衛協力に関する文書を交わすのはアフリカ諸国の中では初めてとなる。
首相は2023年5月にケニアを訪れた。短期間で首脳が相互に訪問し、両国関係を深めた。
首相は共同記者発表で「インド太平洋とアフリカの平和と安定に貢献する」と述べた。
「食料安全保障の確保へ緊密に連携する」とも表明した。食料支援を実施する。ロシアによるウクライナ侵攻が続き、アフリカ各国は穀物価格の高騰などに直面している。
ケニアは16年に当時の安倍晋三首相が「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の構想を提唱した場所だ。岸田政権もケニアをインド太平洋とアフリカ大陸の連結の「ハブ」になるとみて、FOIP推進の重要なパートナーに位置づける。
今回の首脳会談を機に円建て債券「サムライ債」に関する覚書を交わした。鉄道建設などを手掛ける中国に対するケニアの巨額の債務を意識し、公正で透明な開発金融の重要性を共有した。
主要7カ国(G7)で24年の議長国を担うイタリアは主要テーマに「アフリカ」を掲げる。欧州に渡る移民の急増を踏まえ、アフリカの開発支援に注力することで不法移民の流入を抑える思惑がある。
アフリカ連合(AU)の20カ国・地域(G20)加盟や南アフリカによる国際司法裁判所(ICJ)へのイスラエルの提訴など、国際秩序の形成の観点でアフリカの声も強まる。
米国のブリンケン国務長官と中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相は1月、それぞれアフリカ4カ国に足を運んだ。親ロシアの軍事政権の発足も相次ぐ。
日本政府はケニアを法の支配や民主主義といった共通の価値観を持ち、モンバサ港を拠点に東アフリカ経済の中心になると評価する。日系企業の進出も100社を超え、アフリカでは南アフリカに次ぐ規模になった。
日本は世界各国に先駆け、1993年にアフリカ各国と協力を築くアフリカ開発会議(TICAD)を立ち上げた。今夏にも都内で閣僚会合を催し、25年に横浜市で開催する第9回のTICADに向けた日本の貢献策を探る。