岸田文雄首相が10日、ニューデリーで開いた内外記者会見の要旨は次の通り。
【冒頭】
主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)で国際社会の諸課題に対してG7を超えたパートナーと協力して取り組んでいくことを確認した。そのためにはグローバルサウス(南半球を中心とする途上国)が抱える課題や脆弱性を理解し、協力する姿勢を示さなければならない。
その使命を果たすことを目的に東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に臨んだ。
日ASEAN関係を包括的戦略的パートナーシップに格上げした。ASEANが目指すインド太平洋構想(AOIP)の支持を表明し、AOIPと日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想で協力を推進していくことを確認した。
G20サミットで食料安全保障や開発、保健、デジタルといった国際社会が直面する喫緊の課題について議論し、日本の立場や取り組みについて発信した。
G7広島サミットの成果をつなげていくことを意識して、交渉にあたってきた。G20にも引き継げた。G7・G20で得られた成果を今後も各国首脳とともにフォローアップしていく。
ロシアのウクライナ侵略について、G20首脳宣言においてウクライナにおける公正かつ恒久的な平和や領土一体性や主権を含む国連憲章の原則の堅持について全てのG20メンバーの間で一致することができた。大きな成果だったと考えている。
多核種除去設備(ALPS)処理水の海洋放出について一連の会合や2国間会談で日本の対応を改めてしっかりと説明した。国際原子力機関(IAEA)とも緊密に連携し、科学的根拠に基づき高い透明性をもって国際社会に丁寧に説明し、理解を深めていく。
中国の李強(リー・チャン)首相にALPS処理水について日本の立場を改めて明確に述べた。科学的根拠に基づき高い透明性を持って国際社会に丁寧に説明を行い、理解を深めていく。水産物輸入停止措置については、引き続き即時撤回を求める。
12月には日ASEAN特別首脳会議を東京で開催し、日ASEAN協力の新たなビジョンを発表する。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序に向けた取り組みの強化を世界に強く発信したい。
19日からニューヨークを訪問し、国連総会に出席する。国際社会が複合的な危機に直面するなか、分断、対立ではなく協調に向けた日本ならではの対応や考え方を示す機会にしたい。
【質疑】
――G20サミット首脳宣言についてウクライナ政府から不満の声があります。
2022年のG20首脳宣言の成果もしっかりと想起しつつ、新たな表現で様々な新たな要素を盛り込めた。ウクライナにおける包括的公正かつ恒久的な平和や国連憲章の原則の堅持をロシアが参加する形で確認し、一致できた。
――ALPS処理水の説明での手応えを教えてください。
丁寧に説明をしてきた結果、各国の理解は着実に広がっていると認識する。多くの国から理解や支持が示された。
――李首相と立ち話して、日中関係改善の兆しが見えたのでしょうか。
対話を重視しながら建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていくことが私の一貫した方針だ。初めて李強首相と会い、私の考えをしっかりと伝えられたのは重要なことだった。引き続きハイレベルも含めてあらゆるレベルで意思疎通をはかっていきたい。
――自民党役員人事・内閣改造で政権の骨格は維持しますか。
早ければ13日に党役員人事・閣僚人事を行う。具体的な内容については11日あるいは12日に本格的に調整するので、今の時点では具体的な内容について申し上げることは控える。
――月内にとりまとめる経済対策に関連して補正予算の編成を指示する考えはありますか。臨時国会の召集や衆院解散の考えについても教えてください。
経済対策は物価高から国民生活を守り、そして賃上げと投資の拡大の流れをより力強いものにする。必要な予算にしっかりと裏打ちされた思い切った内容の経済対策を実行したい。
臨時国会などの政治スケジュールについて、新たな体制で思い切った経済対策を作り、早急に実行していくことを最優先にする。新体制の発足直後からスタートダッシュしていきたいと考えている。その陣頭指揮をとる決意だ。
――日本のインド太平洋政策にはインドとの防衛協力も含まれていますか。
3月にニューデリーでFOIPの新プランを発表した。その中で海や空の安全保障などを協力の柱の一つとした。インドはFOIP実現において必要不可欠なパートナーであると思っている。
自衛隊とインド軍の間では、既に陸海空で共同訓練を実施し、協力関係を着実に進めている。今後も自由と法の支配を重んじる場となるように、インドと防衛協力や交流を活発に進めていきたい。