「カメラ位置いち」を意識いしきすれば、絵えは変かわる！プロのアニメーターが、イラストを添削てんさくしてみた結果けっか

そうですね。みなさんの思おもいが伝つたわって素直すなおにうれしかったですし、どの作品さくひんにもそれぞれの個性こせいがあって観みるのが楽たのしかったです。

パッと見みたとき、下した側がわの空間くうかんが少すこし寂さびしく感かんじました。ヴィヴィと小鳥ことりとマツモトをメインにした作品さくひんだと思おもうので、その3つにもっとわかりやすくスポットライトを当あててもいいんじゃないかな。ただ、女性じょせいキャラクターの身体しんたいのラインはある程度ていど見みせたいですよね。なのでカメラ位置いちを下さげて、少すこしアオリっぽくしました。元もとのイラストはヴィヴィの顔かおあたりにカメラが向むいているので、どうしても下半身かはんしんが俯瞰ふかん気味ぎみになり、それが下した側がわの寂さびしさに繋つながっているのではないかと。

自分じぶんのイメージした通とおりにしっかり色いろを塗ぬれている印象いんしょうなので、そのきちんとした姿勢しせいは大事だいじにしてほしいですね。一方いっぽうで、もうちょっと「遊あそび」を取とり入いれると、より良よくなるんじゃないでしょうか。素直すなおに塗ぬるのもひとつの手てですが、あえてコントラストを強つよめてみるなどのチャレンジをすると、いろんな色味いろみが身みにつくはずです。

初はじめに見みたとき、「これはキャラが地面じめんに寝転ねころがっているのかな？　立たっているのかな？」と一瞬いっしゅん迷まよってしまいました。なぜ迷まよったかというと、地面じめんに落おちたふたりの影かげがわかりにくいんですよね。あとは髪かみの毛けです。立たっているときは髪かみが重力じゅうりょくで足あしに向むかってサラッと落おちるんですが、寝転ねころがると後頭部こうとうぶが押おさえつけられ、予期よきせぬ髪かみの広ひろがりや曲まがり方かたが出でてきます。「ふたりは地面じめんに寝転ねころがっている」というのを明確めいかくにするために、影かげと髪かみを調整ちょうせいしました。

そうですね。自分じぶんの添削てんさくではふたりとも目めをつぶって穏おだやかな表情ひょうじょうを浮うかべていますが、逆ぎゃくにどちらかひとりだけ目めを開あけさせると、それぞれの気持きもちにすれ違ちがいがあるような印象いんしょうに変かわります。「『この点てんについて、自分じぶんはこのように解釈かいしゃくしている』というのをビジュアルで表現ひょうげんするにはどうしたらいいだろう？」と考かんがえながらイラストを描えがいています。

作品さくひんの世界せかい観かんとも合あっていますし、落おち着ついた色味いろみが良よいですね。ちゃんと資料しりょうを見みて花はなを描えがいていることや、服ふくのシワや影かげの入いれ方かたをしっかり考かんがえていることも伝つたわります。そこは長所ちょうしょとして、ぜひ伸のばしていってください。

ウタが空中くうちゅうをパルクールで駆かけていく姿すがたを見みせたいんだと思おもうので、それなら手足てあしを長ながく描えがいたほうが動うごきが映はえます。あとはちょっとした違ちがいですが、つま先さきを伸のばしてあげるだけで「ジャンプしている最中さいちゅう」というアクションが強調きょうちょうできますよ。

どうもお仕事しごとっぽい感かんじが出でちゃって照てれくさいですけどね（笑）。このイラストの場合ばあい、カメラマンの役割やくわりを果はたしているのは、おそらく主人公しゅじんこうのヒビキです。きっとヒビキの目線めせんから見みたウタを描えがいているのでしょう。となると、ヒビキとウタのお互たがいに対たいする思おもいというのも景色けしきに乗のってきそうですよね。「ヒビキの目めにはウタしか見みえていない」という表現ひょうげんとして、ウタ以外いがいの物体ぶったいは思おもい切きって全部ぜんぶボカシちゃってもおもしろい気きがします。

青あおだけではなく緑りょくや黄色おうしょくも入いれ込こんで空そらの色いろを塗ぬっていますよね。その発想はっそうはとても「わかっているな」と感かんじました。さらに遊あそび心ごころを出だしていくと良よいんじゃないでしょうか。

この作品さくひんは添削てんさくに迷まよいました。というのも元もとの時点じてんで絵柄えがら的てきに完成かんせいされているので、手てを加くわえたらせっかくの持もち味あじを壊こわしてしまいそうで心配しんぱいで……。ただ、今回こんかいは『王様おうさまランキング』のファンアートということで、アニメスタッフの立場たちばから「こうすると作品さくひんの世界せかい観かんがより表現ひょうげんできるんじゃないか」と提案ていあんする形かたちで添削てんさくしました。

それでいうとボッジとカゲが出会であうのは丘おかなんですよね。なので丘おからしく地面じめんを湾曲わんきょくさせて、その丸まるみの奥おくに木々きぎを配置はいちすると良よいんじゃないでしょうか。その上うえで、「この空間くうかんにふたりきり」というのを明確めいかくにするため、ボッジとカゲの周囲しゅういは空あけています。あとはさっきも言いった「遠とお・中なか・近こん」で、手前てまえの花はなを強調きょうちょうしました。こうすれば空間くうかんがぽっかり空あいて寂さびしく見みえてしまうのを避さけられますし、のどかな雰囲気ふんいきも出でると思おもいます。

まるで絵本えほんのように温あたたかな世界せかい観かんを確立かくりつしていますよね。こういう企画きかくなので添削てんさくはしてみましたが、アドバイスに無理むりに合あわせる必要ひつようもなくて、隣となりの客きゃくはよく柿かき食くう客きゃくださんのスタイルをそのまま貫つらぬき通とおすのもありなんじゃないかと思おもっています。

クロッキーやデッサン……と言いいたいところですが、自分じぶんはあまり熱心ねっしんだったクチではなくて（笑）。ただ、仕事しごとを通とおしてラフをたくさん描えがいていました。たとえば何なにかの作品さくひんのポスターを描えがくとするじゃないですか。ラフだけを何なん枚まいも何なん枚まいも描えがいていると、収おさまりの良よい構図こうずなどがなんとなく理解りかいできてくるんですよ。

どんなポスターにも必かならず「作品さくひんをどう見みせたいか」という意図いとがあり、それがビジュアルに落おとし込こまれている。いろんな作品さくひんのポスターを見みるだけでも、ずいぶん勉強べんきょうになります。だから仕事しごとの中なかで、参考さんこうになりそうなポスターを調しらべてラフをたくさん描えがいていたのが、結果けっか的てきに練習れんしゅうにもなっていたんだと思おもいます。

うーん。「二に次元じげんを描えがくのに二に次元じげんのものだけを参考さんこうにしちゃダメ」っていうのも、それはそれで発想はっそうを狭せばめているように感かんじるんですよね。二に次元じげんだろうが三さん次元じげんだろうが、取とり入いれたもの全部ぜんぶを1枚まいのイラストに詰つめ込こめむってことでいいと思おもいます。

そう。あまり枠わくにはめて考かんがえないほうがダイナミックなものが描えがけそうじゃないですか。ああ、でも「自分じぶんの肉眼にくがんで味あじわう」ってことは大切たいせつかもしれません。どこか高たかいところに上のぼって街まちを見下みおろすと、すごく広ひろがりを感かんじます。あの広ひろがりを自分じぶんでも表現ひょうげんしたいんですけど、どうしても絵えである限かぎり、フレームというものが存在そんざいするから難むずかしいんですよね。イラストでも写真しゃしんでも映画えいがでも、作品さくひんにはフレームがある。でも世界せかいはフレームの外そとにも広ひろがっている。そういうことを実感じっかんした上うえで「フレームの内側うちがわ」を描えがくと、絵えがまた少すこし変かわる気きがします。

もちろん絵えを描えがくことは上達じょうたつに繋つながります。経験けいけん値ちを積つむと人間にんげんは自然しぜんと成長せいちょうしていくものなので、「とにかく100枚まい描えがいてみる」っていうのは有効ゆうこうだと思おもいますよ。あと若わかい子こたちに「主観しゅかんと客観きゃっかんを行いき来きする能力のうりょくを身みに着つけろ」とはよく伝つたえています。

描えがいている最中さいちゅうは「俺おれって上手うまいなー」と思おもっていたのに、翌日よくじつ見みたら「なんだこれ……」ってことはよくありますよね。そこで落おち込こむ必要ひつようはなくて、むしろ冷静れいせいになったことを大おおいに利用りようして、絵えをブラッシュアップしていくんです。

描えがいた翌日よくじつではなく1時じ間あいだ後ごに「なんだこれ」と気きづけるようになったら、そのぶんブラッシュアップに早はやく取とりかかれて、制作せいさくのスピードも上あがりますよね。主観しゅかんと客観きゃっかんの切きり替かえをある程度ていどコントロールできるようになると強つよいと思おもいます。主観しゅかん／客観きゃっかんの切きり替かえ方かたは人ひとによっていろいろなので、ちょっと散歩さんぽに出でるでもいいですし、いったんコーヒーを飲のむでもいいですし。なんにせよ自分じぶんに合あったやり方かたをみつけることが大切たいせつです。

歳としをとったからこそ言いえることですが、自分じぶんは「なんだこれ。全然ぜんぜんダメじゃん」と感かんじたときに同時どうじに「キター！」って思おもうんですよ。欠点けってんが見みえたら、あとは直なおせばいいだけなので。

もちろん落おち込こむ時期じきはありますが、やっぱりそれなりに長ながく生いきてきたぶん、「下さがったなら、そのうち上あがるだろう」と多少たしょうは余裕よゆうがありますね。あと、「若わかい頃ころにハマっていたアニメや漫画まんがを見返みかえす」などモチベーションを上あげるためのスイッチみたいなものも一応いちおういくつか持もっています。