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オラクルもRed Hatに反論。RHELクローンOSへの非難は、競合他社を減らして儲けようとしているからではないか - Publickey

オラクルもRed Hatに反論はんろん。RHELクローンOSへの非難ひなんは、競合きょうごう他社たしゃらしてもうけようとしているからではないか

2023ねん7がつ11にち

Red Hatは先月せんげつ(2023ねん6がつ)、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のソースコードの一般いっぱん公開こうかい事実じじつじょう終了しゅうりょうさせる措置そち発表はっぴょうし、さらにRHELのクローンOSを提供ていきょうしているベンダを「オープンソースにたいする脅威きょういだ」と非難ひなんする内容ないようをブログであきらかにすることで、RHELのクローンOSの存在そんざい否定ひていする意志いし明確めいかくにしました。

参考さんこうRed HatがクローンOSベンダを非難ひなん、「付加ふか価値かちもなくコードをリビルドするだけなら、それはオープンソースにたいする脅威きょういだ」と

これによってRHELのクローンOSを開発かいはつする作業さぎょう従来じゅうらいよりも困難こんなんになりました。

RHELはエンタープライズLinuxにおける事実じじつじょう標準ひょうじゅんとなっており、クローンOSもそのエコシステムの一部いちぶになっている現状げんじょうにおいて、そのクローンOSをRed HatがてようとするうごきはエンタープライズLinuxの今後こんご動向どうこうおおきく影響えいきょうする可能かのうせいがあります。

そして当然とうぜん、クローンOSベンダの代表だいひょうてきな2しゃであるRocky LinuxとAlmaLinuxはRed Hatへの反論はんろんあきらかにします。

参考さんこうRed HatにRocky LinuxとAlmaLinuxが反論はんろん。OSSの精神せいしん目的もくてき違反いはんしている、ダウンストリームのリビルドは価値かちをもたらす、など

おなじくRHELクローンOSベンダの大手おおてとしてOracle Linuxとして提供ていきょうし、Oracle DatabaseやOracle Cloudの正式せいしき対応たいおうOSとしてきたオラクルの動向どうこう注目ちゅうもくされていました。

オラクルがRed Hatに反論はんろんするブログを公開こうかい

そのオラクルが7がつ10にちけのブログ「Keep Linux Open and Free—We Can’t Afford Not To」を公開こうかいし、Red Hatによる一連いちれん発表はっぴょうたいする反論はんろんあきらかにしています。

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ブログの執筆しっぴつしゃは、同社どうしゃのチーフコーポレートアーキテクトのEdward ScrevenとHead of Oracle Linux DevelopmentのWim Coekaertsの2めい

ちなみにEdward ScrevenおもにMySQLやVirtual Boxなどオープンソース分野ぶんや担当たんとうする同社どうしゃのエグゼクティブバイスプレジデントでもありますが、このブログの署名しょめいにはチーフコーポレートアーキテクトの肩書かたがきのみしめされています。

同社どうしゃのツイッター公式こうしきアカウントも、このブログを紹介しょうかいしています。

オラクルはこのブログのなか反論はんろん相手あいて一貫いっかんしてRed Hatではなく「IBM」とび(これはオラクルが長年ながねんにわたってIBMを敵視てきししてきたことをおもさせます)、クローンOSをてる目的もくてき競合きょうごうらしてもうけをやすためではないのか、などの指摘してきおこなっています。

内容ないようのポイントをていきましょう。

オラクルは25ねんまえからLinuxコミュニティの一員いちいん

ブログの冒頭ぼうとうで、オラクルがオープンソースの分野ぶんやでのビジネスを長年ながねんつづけてきたことをしめしています。

Oracle has been part of the Linux community for 25 years. Our goal has remained the same over all those years: help make Linux the best server operating system for everyone, freely available to all, with high-quality, low-cost support provided to those who need it.

オラクルは、25ねんまえからLinuxコミュニティの一員いちいんです。その目的もくてきは、Linuxをすべてのひとにとって最高さいこうのサーバOSとし、だれもが自由じゆう利用りようできるようにし、必要ひつようひとにはこう品質ひんしつていコストのサポートを提供ていきょうすることです。

RHEL互換ごかんのOracle Linuxが登場とうじょうしたのは2006ねん。このときRHEL互換ごかん選択せんたくしたのは、Linuxコミュニティを分断ぶんだんしたくなかったためだと説明せつめいします。

We chose to be RHEL compatible because we did not want to fragment the Linux community.

わたしたちがRHELとの互換ごかんせいえらんだのは、Linuxコミュニティを分断ぶんだんしたくなかったからです。

この互換ごかんせいはこれまでたかいレベルで維持いじされてきており、Oracle Linuxだけでテストされてきた製品せいひんもRHEL対応たいおうとされてきたと説明せつめいされます。

and we certify Oracle software products on RHEL even though they are built and tested on Oracle Linux only, never on RHEL.

オラクルのソフトウェア製品せいひんはRHEL対応たいおうとしていますが、Oracle LinuxのみでビルドおよびテストされておりRHELではテストされていないのです。

IBMが競合きょうごうらすのはもうけるためではないか?

こうした前置まえおきのうえで、IBM(Red Hat)への反論はんろんはじまります。

Red Hatは6がつ26にちけのブログ「Red Hat’s commitment to open source: A response to the git.centos.org changes」(Red Hatのオープンソースへのコミット:git.centos.orgの変更へんこうたいする返答へんとう)のなかで、クローンOSを非難ひなんする理由りゆうの1つとして、しん機能きのうやバグの修正しゅうせいおおくのコストをかけていることをつぎのようにげていました。

At Red Hat, thousands of people spend their time writing code to enable new features, fixing bugs, integrating different packages and then supporting that work for a long time - something that our customers and partners need.

Red Hat では、なんせんにんもの人々ひとびとが、しん機能きのう有効ゆうこうにするためのコードをくこと、バグを修正しゅうせいすること、さまざまなパッケージを統合とうごうすること、そしてその作業さぎょう長期ちょうきにわたってサポートすることに時間じかんついやしています。

オラクルはこの部分ぶぶんについて、つぎのように指摘してきします。

IBM doesn’t want to continue publicly releasing RHEL source code because it has to pay its engineers? That seems odd, given that Red Hat as a successful independent open source company chose to publicly release RHEL source and pay its engineers for many years before IBM acquired Red Hat in 2019 for $34 billion.

IBMがRHELのソースコードを公開こうかいつづけたくないのは、エンジニアに報酬ほうしゅう支払しはらわなければならないからでしょうか? これは不思議ふしぎですね。独立どくりつけいオープンソース企業きぎょうとして成功せいこうしたRed Hatは、IBMが2019ねんにRed Hatを340おくドルで買収ばいしゅうするなんねんまえから、RHELのソースを公開こうかいしエンジニアに給与きゅうよ支払しはらうことを選択せんたくしていたというのに。

そのうえで、RHELの互換ごかんOSであったCentOSをめ、Rocky LinuxやAlmaLinuxを非難ひなんした理由りゆうは、もうけるためであろうとしました。

And perhaps that is the real answer to the question of why: eliminate competitors. Fewer competitors means more revenue opportunity for IBM.

それが「なぜ」といういにたいする本当ほんとうこたえなのでしょう。競合きょうごう他社たしゃるということは、IBMにとって収益しゅうえき機会きかいえるということなのです。

Oracle Linuxはダウンストリームを歓迎かんげいする

オラクルのブログでは、ここから同社どうしゃのLinuxにたいする姿勢しせい表明ひょうめいされます。

まず、今後こんごはRHELとの互換ごかんせい問題もんだい発生はっせいする可能かのうせいたかくなることを説明せつめいしつつ、その改善かいぜんむと説明せつめいします。

From a practical standpoint, we believe Oracle Linux will remain as compatible as it has always been through release 9.2, but after that, there may be a greater chance for a compatibility issue to arise. If an incompatibility does affect a customer or ISV, Oracle will work to remediate the problem.

現実げんじつてき観点かんてんからは、Oracle Linuxはリリース 9.2 まではこれまでと同様どうよう互換ごかんせい維持いじするとかんがえていますが、それ以降いこう互換ごかんせい問題もんだい発生はっせいする可能かのうせいたかくなるかもしれません。互換ごかんせい顧客こきゃくやISVに影響えいきょうする場合ばあい、オラクルは問題もんだい改善かいぜんみます。

そして、オラクルは今後こんご同社どうしゃのLinuxディストリビューションがオープンであることを約束やくそくし、ダウンストリームディストリビューションも歓迎かんげいすることを表明ひょうめい

We want to emphasize to Linux developers, Linux customers, and Linux distributors that Oracle is committed to Linux freedom. Oracle makes the following promise: as long as Oracle distributes Linux, Oracle will make the binaries and source code for that distribution publicly and freely available. Furthermore, Oracle welcomes downstream distributions of every kind, community and commercial.

Linux開発かいはつしゃ、Linux顧客こきゃく、Linuxディストリビュータにたいして、オラクルがLinuxの自由じゆう約束やくそくすることを強調きょうちょうさせてください。オラクルがLinuxディストリビューションを提供ていきょうするかぎり、オラクルはそのディストリビューションのバイナリとソースコードを公開こうかいし、自由じゆう利用りようできるようにします。それだけでなく、オラクルはコミュニティや商用しょうようわず、あらゆる種類しゅるいのダウンストリームディストリビューションを歓迎かんげいします。

最後さいご段落だんらくではIBM(Red Hat)にたいして、Oracle Linuxのダウンストリームディストリビューターにならないかと、皮肉ひにくべてブログをむすんでいます。

Finally, to IBM, here’s a big idea for you. You say that you don’t want to pay all those RHEL developers? Here’s how you can save money: just pull from us. Become a downstream distributor of Oracle Linux. We will happily take on the burden.

最後さいごに、IBMにおおきな提案ていあんをします。RHELの開発かいはつしゃたちに給料きゅうりょうはらいたくないのですね? であれば、こうするのはどうでしょう? それをわたしたちがはらいましょう。Oracle Linuxのダウンストリームディストリビューターになるのです。わたしたちはよろこんでそれをけましょう。

Red Hatに明確めいかく反論はんろんしたオラクルの目論見もくろみ

オラクルはこのように、Red Hatの姿勢しせいたいして明確めいかく反論はんろんきつけました。正直しょうじきなところ、ここまでオラクルが明確めいかく反論はんろん公開こうかいしたことにはすこおどろきをかんじました。

オラクルはこのブログのなかで、RHELとOracle Linuxの互換ごかんせい維持いじむずかしくなることや、Oracle Linuxのダウンストリームディストリビューションを歓迎かんげいすることなどをしめすことで、エンタープライズLinuxの主導しゅどうけんをOracle Linuxにたせようとしているめんをちらりとのぞかせているようにおもいます。

また同社どうしゃは、今後こんごOracle LinuxとRHELの互換ごかんせい問題もんだい発生はっせいした場合ばあい、その改善かいぜんむといています。しかし、もしもRed Hatの今回こんかい施策しさくによってRHELとOracle Linuxの互換ごかんせいがとれなくなった場合ばあい、RHELにおけるオラクル製品せいひんぐん動作どうさ保証ほしょううしなわれる可能かのうせいがあることも今回こんかい文面ぶんめんから想像そうぞうされます。それはRHELにとってダメージとなるでしょう。

オラクルの今回こんかい主張しゅちょうは、同社どうしゃのLinuxにたいするオープンな姿勢しせい強調きょうちょうすることと、RHELにたいする反論はんろんもしくはビジネスでの牽制けんせいをそれとなくかさねためんで、同社どうしゃらしいしたたかな内容ないようになったようにかんじました。

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Junichi Niino(jniino)
ITけい雑誌ざっし編集へんしゅうしゃ、オンラインメディア発行はっこうじん独立どくりつ。2009ねんにPublickeyを開始かいししました。
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