Red HatがクローンOSベンダを非難ひなん、「付加ふか価値かちもなくコードをリビルドするだけなら、それはオープンソースに対たいする脅威きょういだ」と

Red Hatは、Red Hat Enterprise Linux（以下いかRHEL）のクローンOSを提供ていきょうしているベンダを「オープンソースに対たいする脅威きょういだ」と非難ひなんする内容ないようを、6月26日にち付づけのブログ「Red Hat’s commitment to open source: A response to the git.centos.org changes」（Red Hatのオープンソースへのコミット：git.centos.orgの変更へんこうに対たいする返答へんとう）で明あきらかにしました。下記かきはその部分ぶぶんの引用いんようです。

Simply rebuilding code, without adding value or changing it in any way, represents a real threat to open source companies everywhere. This is a real threat to open source, and one that has the potential to revert open source back into a hobbyist- and hackers-only activity.

単たんにコードをリビルドするだけで、付加ふか価値かちや変更へんこうを加くわえることをしないのであれば、それはあらゆるオープンソース企業きぎょうにとって真しんの脅威きょういなのだ。これこそオープンソースに対たいする真しんの脅威きょういであり、そしてオープンソースをホビイストやハッカーだけの活動かつどうに逆戻ぎゃくもどりさせてしまうかもしれないのだ。

これは、同社どうしゃが6月がつ21日にち付づけのブログ「Furthering the evolution of CentOS Stream」で発表はっぴょうした内容ないように関かんして起おこったさまざまな議論ぎろんに対たいする同社どうしゃの返答へんとうです。

ここまでの経緯けいいを手短てみじかにまとめてみました。

RHEL関連かんれんのリポジトリをRed Hatが変更へんこう

発端ほったんとなったのは、同社どうしゃのブログ「Furthering the evolution of CentOS Stream」による発表はっぴょうです。

同社どうしゃは今後こんごはCentOS StreamがRed Hat Enterprise Linux関連かんれんのパブリックなソースコードリリースの唯一ゆいいつのリポジトリになると発表はっぴょうしました。

参考さんこう：Red Hat、今後こんごはCentOS StreamがRHEL関連かんれんのパブリックなソースコードの唯一ゆいいつのリポジトリになると発表はっぴょう

これは事実じじつ上じょう、RHELのソースコードを一般いっぱん公開こうかいする場所ばしょがなくなることを意味いみします。RHELユーザーはオープンソースライセンスによってRed HatからRHELのソースコードを入手にゅうしゅ可能かのうですが、RHEL自体じたいの利用りよう契約けいやくによって、ユーザーはこのソースコードからクローンOSを作つくることはできないとされています。

これにより、Rocky LinuxやAlmaLinux、MIRACLE LINUXなどのRHELクローンOSを提供ていきょうしてきたベンダは、何なんらかの対応たいおうを迫せまられることになりました。

AlmaLinux：パートナーやコミュニティと協力きょうりょくし最善さいぜんの道みちを

AlmaLinuxはこの変更へんこうを受うけてブログ「Impact of RHEL changes to AlmaLinux」を公開こうかいしました。

同社どうしゃは今後こんご数すう週間しゅうかんかけて影響えいきょうと対応たいおうについて議論ぎろんしていくとしつつ、次つぎのように説明せつめいしました。

In the short term, we will be working with other members of the RHEL ecosystem to ensure that we continue to deliver security updates with the speed and stability that we have become known for.

In the long-term, we’ll be working with those same partners and with our community to identify the best path forward for AlmaLinux as part of the enterprise linux ecosystem.

短期たんき的てきには、私わたしたちはRHELエコシステムの他ほかのメンバーと協力きょうりょくし、私わたしたちのこれまでの実績じっせきと同様どうようにスピードと安定あんてい性せいをもってセキュリティ・アップデートを提供ていきょうし続つづけることを確実かくじつにするつもりです。

長期ちょうき的てきには、私わたしたちはパートナーやコミュニティと協力きょうりょくして、エンタープライズLinuxエコシステムの一部いちぶとしてAlmaLinuxのための最善さいぜんの道みちを特定とくていしていきます。

また、FAQにおいて、セキュリティパッチをどのように作つくっていくかについて「our plan is to pull from CentOS Stream updates and Oracle Linux updates to ensure security patches continue to be released」と、CentOS StreamとOrace Linuxのアップデートを基もとに作つくっていくと説明せつめいしています。

Rocky Linux：パートナーに混乱こんらんや変化へんかはない

Rocky Linuxは「Rocky Linux Expresses Confidence Despite Red Hat's Announcement」で、次つぎのように記しるしています。

While this decision does change the automation we use for building Rocky Linux, we have already created a short term mitigation and are developing the longer term strategy. There will be no disruption or change for any Rocky Linux users, collaborators, or partners.

Red hatの決定けっていによってRocky Linuxの自動じどうビルドには変更へんこうが発生はっせいしますが、私わたしたちはすでに短期たんき的てきな緩和かんわ策さくを作成さくせいし、長期ちょうき的てきな戦略せんりゃくを策定さくていしています。Rocky Linuxのユーザー、協力きょうりょく者しゃ、パートナーに混乱こんらんや変化へんかはありません。

国内こくないでRHELのクローンOSであるMIRACLE LINUXを開発かいはつ提供ていきょうしているサイバートラストは「Red Hat 社しゃの変更へんこうによる当社とうしゃ事業じぎょうへの影響えいきょうについて」の中なかで、MIRACLE LINUXへの影響えいきょうを「今回こんかいの Red Hat 社しゃのソース提供ていきょう変更へんこうによる影響えいきょうはございません」としています。

Red Hat：RHELの開発かいはつには多おおくの労力ろうりょくを費ついやしている

RHELクローンOS各社かくしゃの反応はんのうは、まだ明確めいかくな具体ぐたい策さくは模索もさく中ちゅうのようでありつつも、エンタープライズ市場いちば向むけらしくどれも落おち着ついた内容ないようで前向まえむきなメッセージを発はっしています。

しかしオープンソースコミュニティの中なかには、今回こんかいのRed Hatの発表はっぴょうに対たいして反発はんぱつする内容ないようも数多かずおおくみられました。こうした反発はんぱつに対たいして今回こんかいのブログ「Red Hat’s commitment to open source: A response to the git.centos.org changes」（Red Hatのオープンソースへのコミット：git.centos.orgの変更へんこうに対たいする返答へんとう）では、次つぎのようにばっさりと切きり返かえしています。以下いか、同どうブログからの引用いんようにより、Red Hatの主張しゅちょうを見みていきましょう。

I feel that much of the anger from our recent decision around the downstream sources comes from either those who do not want to pay for the time, effort and resources going into RHEL or those who want to repackage it for their own profit.

今回こんかいのダウンストリームソースに関かんする我々われわれの決定けっていに対たいする怒いかりの多おおくは、RHELに費ついやされた時間じかん、労力ろうりょく、リソースにお金かねを払はらいたくない人ひとたちか、自分じぶんたちの利益りえきのためにRHELをリパッケージしたい人ひとたちによるものだと感かんじています。

Red HatはRHELの開発かいはつに多おおくの労力ろうりょくを費ついやしており、クローンOSベンダはそれをリパッケージしているだけだ、というのがRed Hatの主張しゅちょうです。

We don’t simply take upstream packages and rebuild them. At Red Hat, thousands of people spend their time writing code to enable new features, fixing bugs, integrating different packages and then supporting that work for a long time - something that our customers and partners need.

私わたしたちはアップストリームパッケージを単純たんじゅんにリビルドしているわけではありません。Red Hat では、何なん千せん人にんもの人々ひとびとが、新しん機能きのうを有効ゆうこうにするためのコードを書かくこと、バグを修正しゅうせいすること、さまざまなパッケージを統合とうごうすること、そしてその作業さぎょうを長期ちょうきにわたってサポートすることに時間じかんを費ついやしています。

と同時どうじに、今後こんごもRed hatはオープンソースラインセンスを遵守じゅんしゅすることも強調きょうちょうしています。今回こんかいの変更へんこうもオープンソースライセンスとして問題もんだいないとのスタンスです。

We will always send our code upstream and abide by the open source licenses our products use, which includes the GPL.

私わたしたちは常つねにコードをアップストリームに送おくり、私わたしたちの製品せいひんが使用しようするオープンソースライセンス（GPLを含ふくむ）を遵守じゅんしゅします。

その上うえで、健全けんぜんなオープンソースのエコシステムは、それぞれ開発かいはつ努力どりょくを伴ともなうLinuxディストリビューションの作成さくせいであると主張しゅちょうします。

In a healthy open source ecosystem, competition and innovation go hand-in-hand. Red Hat, SUSE, Canonical, AWS and Microsoft all create Linux distributions with associated branding and ecosystem development efforts. These variants all utilize and contribute Linux source code, but none claim to be “fully compatible” with the others.

健全けんぜんなオープンソースのエコシステムでは、競争きょうそうとイノベーションは密接みっせつに関係かんけいしています。Red Hat、SUSE、Canonical、AWS、マイクロソフトはすべてブランディングとエコシステムの開発かいはつ努力どりょくを伴ともなうLinuxディストリビューションを作成さくせいしているのです。これらのディストリビューションはすべてLinuxソースコードに対たいする利用りようと貢献こうけんが存在そんざいする一方いっぽう、他たのディストリビューションと「完全かんぜんな互換ごかん性せいがある」と主張しゅちょうしているものはありません。

そしてこの記事きじの冒頭ぼうとうで紹介しょうかいしたとおり「単たんにコードをリビルドするだけで、付加ふか価値かちや変更へんこうを加くわえることをしないのであれば、それはあらゆるオープンソース企業きぎょうにとっての本当ほんとうの脅威きょういなのだ。」と、クローンOSベンダを非難ひなんしているのです。

エンタープライズLinuxのエコシステムが変かわっていく可能かのう性せい

もちろんRed Hatのこの意見いけんに対たいして、クローンOSベンダからのい分いぶんはあるはずですし、オープンソースコミュニティの中なかにもさまざまな意見いけんがあるでしょう。いずれにせよ、Red Hatが提起ていきしたクローンOSの存在そんざいに対たいする異議いぎ申もうし立たては、簡単かんたんに議論ぎろんの決着けっちゃくが付つく問題もんだいではないと思おもわれます。

一方いっぽうで、RHELはエンタープライズLinuxを代表だいひょうするOSであり、多おおくのLinuxアプリケーションが動作どうさ保証ほしょう環境かんきょうとしてRHELを指定していしています。そしてRHELクローンOSの存在そんざいは、そうしたエンタープライズLinuxの大おおきなエコシステムを形成けいせいする一部いちぶとして機能きのうしていたこともまた現実げんじつです。

しかし今回こんかい、Red HatがクローンOSの存在そんざいをかなり明確めいかくに否定ひていしたことが明あきらかになりました。また、クローンOSベンダ側がわの対策たいさくは、少すくなくとも現時点げんじてんで十分じゅうぶんに具体ぐたい的てきなものになっていない可能かのう性せいも読よみ取とれます。

これらを考慮こうりょすると、RHELを中心ちゅうしんとして形成けいせいされてきたエンタープライズLinuxのエコシステムの形かたちは、これから変かわっていく可能かのう性せいがあるように思おもえます。エンタープライズLinuxに関かかわる形かたちでビジネスをしている企業きぎょうや個人こじんは、今回こんかいの動向どうこうを注意深ちゅういぶかく見みていく必要ひつようがあるのではないでしょうか。

RHELクローンOSに関かんする記事きじ

Red Hatの動向どうこう

• Red Hat、今後こんごはCentOS StreamがRHEL関連かんれんのパブリックなソースコードの唯一ゆいいつのリポジトリになると発表はっぴょう
• Red HatがクローンOSベンダを非難ひなん、「付加ふか価値かちもなくコードをリビルドするだけなら、それはオープンソースに対たいする脅威きょういだ」と

クローンOSベンダの反論はんろんと対応たいおう

• Red HatにRocky LinuxとAlmaLinuxが反論はんろん。OSSの精神せいしんと目的もくてきに違反いはんしている、ダウンストリームのリビルドは価値かちをもたらす、など
• オラクルもRed Hatに反論はんろん。RHELクローンOSへの非難ひなんは、競合きょうごう他社たしゃを減へらして儲もうけようとしているからではないか
• RHEL互換ごかんディストリビューション、SUSEも参入さんにゅうへ。制限せいげんなく誰だれでも利用りようできるRHEL互換ごかんOSを開発かいはつしていくと
• AlmaLinux、今後こんごはRed Hat Enterprise LinuxのABI互換ごかんを目指めざすと発表はっぴょう。これまでの「バグまでRHEL互換ごかん」の路線ろせんを変更へんこう

SUSEがRHEL互換ごかんOSに参入さんにゅう、OpenELAを設立せつりつ

• RHEL互換ごかんディストリビューション、SUSEも参入さんにゅうへ。制限せいげんなく誰だれでも利用りようできるRHEL互換ごかんOSを開発かいはつしていくと
• バグまでRHEL互換ごかんのLinux公開こうかいのため、オラクル、SUSE、Rocky LinuxメインスポンサーのCIQが「Open Enterprise Linux Association」を設立せつりつ

その他たの動向どうこう

• RHELクローンOSのAlmaLinuxにMIRACLE LINUXが合流ごうりゅうを発表はっぴょう。国内こくないでAlmaLinuxのサポートも提供ていきょう開始かいし
• オラクルとRed Hatが戦略せんりゃく的てき提携ていけい。Red Hat Enterprise LinuxをOracle Cloudが正式せいしきにサポート。ハイブリッドクラウド構築こうちくなど容易よういに