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メッセージ 美馬達哉 教授・研究科長(2020~2023年度) | 立命館大学大学院 先端総合学術研究科

メッセージ 美馬みま達哉たつや 教授きょうじゅ研究けんきゅうちょう(2020~2023年度ねんど

美馬達哉
 先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう〇〇さんねんよんがつ発足ほっそくした大学院だいがくいんのみの独立どくりつ研究けんきゅうで、ねん一貫いっかんせい博士はかせ課程かていというのが特徴とくちょうだ。じっくりこしけてねん、ときにはそれ以上いじょう時間じかんをかけて骨太ほねぶと研究けんきゅう達成たっせいすることを目標もくひょうとしている。
 いちななねんむかえ、わたしがはじめての、創設そうせつらない世代せだい研究けんきゅうちょうとなる。これまでの「学風がくふう」をどう継承けいしょうするか、どう変革へんかくするか、あるいは、そもそもどんな学風がくふうだったっけ?と、COVID-19のためいえにこもりながらかんがえている。
 わたし自身じしんほん研究けんきゅう着任ちゃくにんしてねんだが、範囲はんいでの志願しがんしゃ現役げんえき大学院生だいがくいんせい修了しゅうりょうせい印象いんしょう一言ひとことでいえば、「ダイバーシティ(多様たようせい)」になる。
 新卒しんそつ進学しんがくした院生いんせいのとなりに後期こうき高齢こうれいしゃ社会しゃかいじん院生いんせいすわったり、すでに研究けんきゅう機関きかんやNPO法人ほうじん企業きぎょう所属しょぞくしているひとびとがキャリアを中断ちゅうだんして博士はかせ課程かていでの学術がくじゅつ研究けんきゅういどんだり、学問がくもんこころざ出発しゅっぱつてんのもつダイバーシティに、しばしばおどろかされた。こうした事情じじょう反映はんえいして、修了しゅうりょうせい進路しんろは、いわゆるアカデミック・ポスト、つまり研究けんきゅう教育きょういく機関きかんへの就職しゅうしょくだけにはまらない。社会しゃかいじんとしてのもと活動かつどう場所ばしょでのキャリアアップや博士はかせごうゆうする社会しゃかいじんとしてのあたらしい視点してんからの活動かつどう発展はってんさせていったりしている。
 さらに、博士はかせ論文ろんぶんとして公表こうひょうされたり、いままさに進行しんこうしていたりする研究けんきゅうのテーマや方法ほうほうろんめんではをかけて多様たようだ。エスニシティ、ジェンダー、健常けんじょう障害しょうがいなどでマイノリティとされてきたひとびとがみずからそれを研究けんきゅうテーマにするというのはひとつのトレンドだったが、それだけではない。このめんでのダイバーシティはもう紙面しめんでは表現ひょうげんのしようもないほどなので、ほん研究けんきゅうしている年報ねんぽう「コア・エシックス」や大学だいがくリポジトリに公開こうかいされている博士はかせ論文ろんぶん検索けんさくして入手にゅうしゅしたり、それをもとにして出版しゅっぱんされた書籍しょせきにとったりしていただくほかない。
 いま、たていのちかん学園がくえんは2030ねんけたビジョンワード「挑戦ちょうせんをもっと自由じゆうに~Challenge your mind Change our Future」を策定さくていし、そのおおきなはしらとして「ダイバーシティ&インクルージョン(包摂ほうせつ)を実現じつげんする学園がくえん」との理念りねんかかげている。それをゼロ年代ねんだいから実践じっせんしてきたのがほん研究けんきゅうなのだ、ととりあえずはむねっておこう。

 さて、わたし着任ちゃくにんしてはじめてったのだが、「先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう」(略称りゃくしょう先端せんたんけん)というしたをかみそうな学科がっかめい英語えいごでは”The Graduate School of Core Ethics and Frontier Sciences”(コア・エシックス・アンド・フロンティア・サイエンスィズ)である。
 サイエンスというかたり現代げんだいでは理系りけい学問がくもん領域りょういきおもしているが、もともとは知識ちしき一般いっぱんあらわしていたので、複数ふくすうがたの「サイエンスィズ」は「総合そうごう学術がくじゅつ」に対応たいおうしているという趣旨しゅしでよい。
 わたし語感ごかんでは、「先端せんたん」よりも「フロンティア」のほうがほん研究けんきゅうあらわ言葉ことばとしててきしているとおもう。なぜなら、「先端せんたん」は物事ものごと分析ぶんせきしてひとつのせま分野ぶんや尖端せんたん)に集中しゅうちゅうすることにつうじるが、「フロンティア」は既存きそん学問がくもん学問がくもん境界きょうかい学問がくもん学問がくもん境界きょうかいえてまえすすむプロセスを意味いみするからだ。そのことを実践じっせんする院生いんせい修了しゅうりょうせい研究けんきゅうテーマと方法ほうほうろん多様たようせいは、ほん研究けんきゅうほこりでありたからである。
 学問がくもん対象たいしょうとはおもわれてこなかった事象じしょうものになるかどうかわからないテーマを研究けんきゅうしたい学生がくせいには、ときに「立命館大学りつめいかんだいがく先端せんたんぼうという大学院だいがくいんがあって・・・」との進路しんろ指導しどうおこなわれているとの真偽しんぎ不明ふめいうわさ一部いちぶにある。まったく上等じょうとうだ。そうわれたひと自己じこ診断しんだんでそうおもっているひとも、先端せんたんけんだい歓迎かんげいである。もちろんそれだけではなく、ほん研究けんきゅうようする教員きょういんじん——かく学問がくもん領域りょういきでの先端せんたんてき研究けんきゅうしゃたち——にあこがれて、専門せんもんてき研究けんきゅうをバリバリすすめたい学生がくせいだい歓迎かんげいである。
 さて、最後さいごのこったのは「コア・エシックス」、つまり「中核ちゅうかくとしての倫理りんり」ないし「現代げんだい社会しゃかいのコアをなす倫理りんり問題もんだい」であるが、これは日本語にほんご研究けんきゅうめいには存在そんざいしない。だが、このてん言葉ことばくして研究けんきゅうちょうから説明せつめいする必要ひつようはない、とわたし確信かくしんしている。コア・エシックスが目指めざすものは、いちきゅうねんさんがつまでにほん研究けんきゅうから巣立すだったいちななめい博士はかせごう取得しゅとくしゃたちとかれ彼女かのじょらが達成たっせいした研究けんきゅう成果せいかしめされているからだ。

2020ねん4がつ1にち
美馬みま達哉たつや

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