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研究科長からのメッセージ 千葉雅也 教授・研究科長 | 立命館大学大学院 先端総合学術研究科

研究けんきゅうちょうからのメッセージ 千葉ちば雅也まさや 教授きょうじゅ研究けんきゅうちょう

んでく ―

  

 先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅうは2003ねん4がつ創設そうせつされた、5ねん一貫いっかんせい博士はかせ課程かてい大学院だいがくいんです。昨年さくねん、20周年しゅうねんむかえ、その区切くぎりをて、21ねんからの研究けんきゅうちょうわたしつとめることとなりました。任期にんきは3ねんです。よろしくおねがいたします。
 ほん研究けんきゅう大学院だいがくいんのみの組織そしきであり、学部がくぶちません。このような大学院だいがくいん本学ほんがくでは独立どくりつ研究けんきゅうびます。
 個人こじんてきがえりをおゆるしいただくならば、わたしがここ「先端せんたんけん」に着任ちゃくにんしたのは2012ねん東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい翌年よくねんでした。それから10ねん以上いじょう歳月さいげつちました。
 そのときはわたしもっとわか教員きょういんでした。はじめて教授きょうじゅかい出席しゅっせきしたときの感覚かんかくよみがえってきます。そこでわされる、しっかりと手続てつづきをんだ「会議かいぎ言説げんせつ」にはじめてれ、こういうなにかをうなんてできるのだろうかと戸惑とまどったのをおぼえています。しかしがついたら、意見いけんうようになっていました。人間にんげんというのはれるものです。
 その、2019〜20年度ねんどふく研究けんきゅうちょう担当たんとうすることになりました。そのときの研究けんきゅうちょう小泉こいずみ義之よしゆき先生せんせいでした。おなじくフランスの哲学てつがく専門せんもんとする小泉こいずみ先生せんせいの、裏方うらかた仕事しごとにおけるさまざまな表情ひょうじょうから、おおくのことをまなびました。
 ほん研究けんきゅう当初とうしょからのメンバーである小泉こいずみ先生せんせい西にし成彦なるひこ先生せんせいは、2024年度ねんど最後さいごたていのちかんられることになります。
 2023ねんには、先端せんたんけんながらくささえ、日本にっぽんにおける障害しょうがいがく、マイノリティのしょ研究けんきゅうのまさしく先端せんたん開拓かいたくしてこられた立岩たていわしん先生せんせい急逝きゅうせいされました。あまりにもおおきな喪失そうしつであり、言葉ことばになりません。
 まちわっていくように、教育きょういく研究けんきゅう空間くうかんわっていきます。
 異動いどうされた方々かたがたもおり、あらたなメンバーもくわわって更新こうしんされていきながら、先端せんたんけんはそのにふさわしいであるべくつとめてまいりました。
 それにしても、がついたら、一番いちばん年少ねんしょうだったぼく責任せきにんになわなければいけない時代じだいになっていて——それはちか時期じきにここにやってきた、ほぼどう世代せだい小川おがわさやかさんもそうなのですが——奇妙きみょう感覚かんかくおぼえています。
 2024年度ねんどには、哲学てつがく倫理りんりがくをご専門せんもんとする戸谷とたに洋志ひろし先生せんせい着任ちゃくにんされます。あらたなかぜはじめます。
 このあいだ、たくさんの学生がくせいたちがここを旅立たびだち、いろいろな立場たちば活動かつどうしています。研究けんきゅうしゃ大学だいがく教員きょういん多数たすう輩出はいしゅつしてきたことはもちろん、多様たようかたち社会しゃかいかかわる人々ひとびとがいます。個性こせいてき面々めんめんだとおもいます。
 学生がくせいみなさんと議論ぎろんしていると、まだ自分じぶん大学院だいがくいん時代じだい延長線えんちょうせんじょうにいるような感覚かんかくがあり、教員きょういんというより、チューターのような感覚かんかく仕事しごとをしてきたのかもしれません。しかし、がついたら自分じぶんもそれなりの年齢ねんれいになってしまった。
 震災しんさい直後ちょくご関西かんさいて、そしてコロナがあり(まだわっていませんが)、戦争せんそうき、格差かくさ拡大かくだい気候きこう変動へんどうといった深刻しんこく状況じょうきょう地球ちきゅうおおっています。2030ねん節目ふしめとして意識いしきされています(いわゆるSDGsの目標もくひょうねん)。
 ほん研究けんきゅうは、ディシプリン=専門せんもん分野ぶんや横断おうだんして、各人かくじん問題もんだい意識いしきによる研究けんきゅうプロジェクトを展開てんかいしていくという研究けんきゅう教育きょういく姿勢しせい方針ほうしんとしています。それは、「学問がくもんとはなにか」自体じたいなおしをふくむような姿勢しせいだとおもっています。
 研究けんきゅうするということを人類じんるいてきにどのようにかんがえていくかがあらためて、根本こんぽんからわれている状況じょうきょう現在げんざいです。特定とくてい研究けんきゅう対象たいしょうむだけでなく、学問がくもんてき知識ちしき推論すいろん、コミュニケーションを人々ひとびとのあいだでどのようにかしていくか。ほん研究けんきゅう当初とうしょよりそうしたなおしをおこなってきました。
 世界せかい急速きゅうそく変化へんかしています。
 ほん研究けんきゅうは、人文じんぶん社会しゃかいけい研究けんきゅうおもですが、従来じゅうらい方法ほうほう今後こんご維持いじできるかは予断よだんゆるしません。たとえば、いわゆるAIの技術ぎじゅつは、学問がくもんのありかたにもおおきな影響えいきょうおよぼすことになるでしょう。知的ちてき生産せいさん社会しゃかいてき倫理りんりてき位置いちづけも変動へんどうしています。
 「先端せんたん」を名乗なの以上いじょう我々われわれ大学院だいがくいんは、変化へんかする世界せかいにおいて提示ていじされるべき学問がくもんぞう探求たんきゅうするでなければなりません。
 しかし、だからこそ、ここでの教育きょういくはつねに基礎きそ重視じゅうしつづけるべきだとわたしかんがえています。文系ぶんけい大学院だいがくいんとは、「んでくこと」をふかめる場所ばしょです。
 これからも人間にんげんは「んでくこと」をつづけるのでしょうか。それも不確ふたしかな状況じょうきょうになりつつあるとおもいます。言葉ことばしんじること——いつか、情報じょうほうのノイズがあまりにもえ、エントロピーがたかまって、それがどういうことであったかがわからなくなる時代じだいるのかもしれません。
 そうだとしても、言葉ことばもちいてひとひとなにかをつたえる、言葉ことばによってひとしんじるということ、それが人類じんるいにおいて最大さいだい重要じゅうようせいってきたということを、いかなる未来みらい予想よそうがあろうとも、継承けいしょうするべく努力どりょくつづけなければならないとわたしおもいます。
 ここには多様たようなテーマをった人々ひとびとあつまってきます。そして、それをかたちにしようとする。つまりこうとする。わたしたち教員きょういんもまた、つづけ、つづけています。
 ここは、言葉ことばうためのひとつの空間くうかんです。

2024ねん4がつ1にち
千葉ちば 雅也まさや

歴代れきだい研究けんきゅうちょうからのメッセージ

2003~2005年度ねんど 渡辺わたなべこうさん教授きょうじゅ
2006~2008年度ねんど 西にし成彦なるひこ教授きょうじゅ
2009~2011年度ねんど 小泉こいずみ義之よしゆき教授きょうじゅ
2012~2014年度ねんど 松原まつばら洋子ようこ教授きょうじゅ
2015~2017年度ねんど 西にし成彦なるひこ教授きょうじゅ
2018~2019年度ねんど 小泉こいずみ義之よしゆき教授きょうじゅ
2020~2023年度ねんど 美馬みま達哉たつや教授きょうじゅ

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