他陣営の演説に横付けして大音量、「選挙妨害」批判相次ぐ　衆院３補選２８日投開票

衆院東京１５区補選には９氏が立候補した＝東京都江東区（原田成樹撮影） — 衆院しゅういん東京とうきょう１５区く補選ほせんには９氏しが立候補りっこうほした＝東京とうきょう都と江東こうとう区く（原田はらだ成樹しげき撮影さつえい）

衆院しゅういん３補選ほせんが２８日にち、投開票とうかいひょうされる。公選法こうせんほう違反いはん事件じけんで前まえ職しょくが辞職じしょくしたのに伴ともなう東京とうきょう１５区くでは、諸派しょは新人しんじん陣営じんえいが遊説ゆうぜい中ちゅうの他た陣営じんえいの横よこで大だい音量おんりょうで演説えんぜつするなどし、「選挙せんきょ妨害ぼうがいにあたる」との批判ひはんが飛とび交かった。警視庁けいしちょうは一部いちぶ行為こういに同どう法ほう違反いはん（選挙せんきょの自由じゆう妨害ぼうがい）の疑うたがいがあるとして警告けいこくを出だしたものの、同様どうようの行為こういは選挙せんきょ戦せんを通つうじて続つづいた。諸派しょは新人しんじん側がわは「法律ほうりつ内ないの選挙せんきょ活動かつどうだ」と主張しゅちょうしており、選挙せんきょ活動かつどうのあり方かたが問とわれる事態じたいとなっている。（大泉おおいずみ晋すすむ之これ助すけ、外崎そとざき晃彦あきひこ）

選挙せんきょ戦せん最終さいしゅう日びの２７日にち午前ごぜん１０時じ、東京とうきょう都と江東こうとう区内くないで街頭がいとう演説えんぜつの準備じゅんびをしていた他た候補こうほの場所ばしょを奪うばう形かたちで演説えんぜつを始はじめた諸派しょは新人しんじん陣営じんえい。過激かげきな言葉ことばで他たの候補者こうほしゃを名指なざしする場面ばめんもあった。

午後ごご３時じ、国会こっかい議員ぎいんらが応援おうえんにかけつけた無所属むしょぞく新人しんじん陣営じんえいの街頭がいとう演説えんぜつでは多おおくの警察官けいさつかんが警戒けいかいに当あたり、周囲しゅういに幾重いくえにも柵しがらみが設置せっちされるなど最後さいごまで緊張きんちょう感かんが漂ただよった。

異様いような光景こうけいは告示こくじ前まえから始はじまった。諸派しょは新人しんじん陣営じんえいが無所属むしょぞく新人しんじんの選挙せんきょカーに近ちかづき、相手あいての声こえを遮さえぎるように「答こたえろよ」「おい」などと大だい音量おんりょうでまくし立たてた。１６日にちの告示こくじ日びも同おなじ無所属むしょぞく新人しんじんの演説えんぜつ中ちゅう、横付よこづけした選挙せんきょカーから大だい音量おんりょうの主張しゅちょう。無所属むしょぞく新人しんじん側がわの声こえがしばしばかき消けされた。

各かく陣営じんえいなどへの取材しゅざいによると、この諸派しょは新人しんじん陣営じんえいの行為こういとして、他た陣営じんえいの選挙せんきょ事務所じむしょ前まえで大だい音量おんりょうで演説えんぜつする▽他た陣営じんえいの選挙せんきょカーを追おい回まわす▽無所属むしょぞく新人しんじんを支援しえんする政治せいじ家かの自宅じたく付近ふきん（東京とうきょう１５区く外がい）で街頭がいとう活動かつどうする－などがあったとされる。

「こんなことは想定そうていしていなかった」。ある新人しんじんを支援しえんする国政こくせい政党せいとう幹部かんぶはこう語かたる。公選法こうせんほうの規定きていのほか、選挙せんきょ戦せんは陣営じんえい同士どうしの〝信義しんぎ則そく〟で成立せいりつしてきた。他た陣営じんえいの遊説ゆうぜいの邪魔じゃまにならないようにする▽遊説ゆうぜい場所ばしょが重かさなりそうな場合ばあいは調整ちょうせいを行おこなう▽選挙せんきょカーがすれ違ちがう際さいには音量おんりょうを下さげたり、エールを送おくりあったりする－といったものだ。

一連いちれんの行為こういは、他た陣営じんえいの選挙せんきょ活動かつどうの萎縮いしゅくにつながった。遊説ゆうぜい日程にっていなどを交流こうりゅうサイト（ＳＮＳ）などで拡散かくさんすることが重視じゅうしされる中なか、「妨害ぼうがいの対象たいしょうになる」として、多おおくの陣営じんえいはＳＮＳでの予定よてい公開こうかいを控ひかえた。また、演説えんぜつ会場かいじょうに大量たいりょうの警察官けいさつかんが投入とうにゅうされたことで、重苦おもくるしい雰囲気ふんいきに包つつまれた。

一方いっぽう、批判ひはん対象たいしょうの諸派しょは新人しんじん陣営じんえいは「選挙せんきょ妨害ぼうがいには当あたらない。法律ほうりつで認みとめられた範囲はんい内ないで活動かつどうしている」と主張しゅちょう。「他たの候補者こうほしゃに聞ききたいことがあるから直接ちょくせつ問といかけている。答こたえてくれれば終おえている」としている。

問題もんだいは国会こっかいにも波及はきゅうした。岸田きしだ文雄ふみお首相しゅしょうは２２日にちの衆院しゅういん予算よさん委員いいん会かいで、一般いっぱん論ろんとしつつ「選挙せんきょ制度せいどの根幹こんかんに関かかわる事柄ことがらとして、各党かくとう会派かいはで議論ぎろんするべき課題かだいだと認識にんしきしている」とした。

拓殖大たくしょくだい政経学部せいけいがくぶの岡田おかだ陽介ようすけ准じゅん教授きょうじゅは「街頭がいとう演説えんぜつは候補者こうほしゃと有権者ゆうけんしゃが直接ちょくせつ触ふれ合あえる場ばで、重要じゅうような選挙せんきょ活動かつどうだ。偶然ぐうぜん通とおりかかって足あしを止とめる場合ばあいも想定そうていされ、選挙せんきょ啓発けいはつにつながってきた。今回こんかいの手法しゅほうはその機会きかいを奪うばうことにつながり、さらなる選挙せんきょ離ばなれを招まねきかねない」と危惧きぐ。一方いっぽう、現行げんこうの公選法こうせんほうでの規制きせいには限界げんかいがあるとして「法ほう改正かいせいを求もとめる声こえが出でており、実害じつがいがあれば何なんらかの対策たいさくが必要ひつようだろう。一方いっぽうで特定とくていの存在そんざいを排除はいじょすることは民主みんしゅ主義しゅぎに反はんする。政治せいじ家かや有権者ゆうけんしゃが望のぞましい選挙せんきょのあり方かたを考かんがえることも必要ひつようだ」としている。