＜社説しゃせつ＞米べい英えい豪ごうとの連携れんけい　軍事ぐんじ技術ぎじゅつ協力きょうりょくの危あやうさ

2024年ねん4月がつ22日にち 07時じ38分ふん

　米べい英えい豪ごう3カ国かこくの安全あんぜん保障ほしょう枠組わくぐみAUKUS（オーカス）。日本にっぽんが初はつのパートナー国こくとして協力きょうりょくする見通みとおしになった。中国ちゅうごくに対抗たいこうするため創設そうせつされた枠組わくぐみへの日本にっぽんの技術ぎじゅつ協力きょうりょくが東ひがしアジア情勢じょうせいの緊迫きんぱくに拍車はくしゃをかけないか、慎重しんちょうな対応たいおうが必要ひつようだ。

　21年ねん創設そうせつのAUKUSの「第だい1の柱はしら」は米べい英えいが非核ひかく保有ほゆう国こくの豪州ごうしゅうに原子力げんしりょく潜水せんすい艦かん（原潜げんせん）8隻せきを配備はいびすることで、既すでに独自どくじの次世代じせだい型がた原潜げんせんの設計せっけいが始はじまっている。

　日本にっぽんの協力きょうりょくは「第だい2の柱はしら」とされる先端せんたん軍事ぐんじ技術ぎじゅつの分野ぶんや。極ごく超ちょう音速おんそく兵器へいきや人工じんこう知能ちのう（AI）、量子りょうし技術ぎじゅつなどへの協力きょうりょくと資金しきん拠出きょしゅつが想定そうていされ、年内ねんないにも具体ぐたい的てきな協力きょうりょく内容ないようが検討けんとうされる見通みとおしだ。

　ただ、日本にっぽんと同おなじパートナー参加さんかに意欲いよくを示しめすカナダとニュージーランドは、米べい英えい豪ごうとともに英語えいご圏けんの機密きみつ情報じょうほう共有きょうゆう枠組わくぐみ「ファイブ・アイズ」のメンバー。日本にっぽんがAUKUSと軍事ぐんじ技術ぎじゅつの連携れんけいを強つよめれば、いずれ厳きびしい情報じょうほう管理かんりを求もとめられ、国際こくさい諜報ちょうほう（ちょうほう）網もうに組くみ込こまれる懸念けねんすらある。

　現在げんざい、原潜げんせんを配備はいびするのは米べい英えい中ちゅう仏ふつロ印しるしの核兵器かくへいき保有ほゆう6カ国かこく。豪州ごうしゅうに配備はいびされれば非核ひかく保有ほゆう国こくとして初はじめてとなる。動力どうりょくとするウラン燃料ねんりょうは核兵器かくへいきへの転用てんようが容易よういなため核かく拡散かくさん防止ぼうし条約じょうやく（NPT）に抵触ていしょくする恐おそれもある。

　原潜げんせんは長期間ちょうきかんの潜航せんこうが可能かのうで、核弾頭かくだんとうを搭載とうさいする弾道だんどうミサイルも装備そうびできる。豪州ごうしゅうへの配備はいびは、海洋かいよう進出しんしゅつの動うごきを強つよめる中国ちゅうごくとの間あいだで新あらたな緊張きんちょうを生うみかねない。

　非核ひかく三さん原則げんそくを堅持けんじする日本にっぽんは原潜げんせん保有ほゆうに至いたらないとしても、先端せんたん軍事ぐんじ技術ぎじゅつへの協力きょうりょくは新しん兵器へいき開発かいはつや軍拡ぐんかく競争きょうそうを加速かそくさせるだろう。

　中国ちゅうごく外務省がいむしょうは、AUKUS拡大かくだいに反発はんぱつし、日本にっぽんの協力きょうりょくに対たいしても「歴史れきしの教訓きょうくんをくみ取とり、軍事ぐんじ・安保あんぽ分野ぶんやの言行げんこうを慎つつしまなければならない」とくぎを刺さしている。

　日本にっぽんは英国えいこく・イタリアと共同きょうどう開発かいはつする次期じき戦闘せんとう機きの第三国だいさんごく輸出ゆしゅつを解禁かいきんしたが、紛争ふんそうに使用しようされる可能かのう性せいもある。軍事ぐんじ技術ぎじゅつの協力きょうりょくは常つねに戦争せんそうと隣となり合あわせだ。戦後せんご日本にっぽんの「平和へいわ国家こっかの歩あゆみ」を踏ふみ外はずす振ふる舞まいをしてはならない。