スキマバイトのヤバさとは…「法ほうのスキマ」突ついた劣悪れつあく労働ろうどう　職場しょくばに行いくと「アプリ名めい」で呼よばれた人ひとも

2024年ねん5月がつ20日はつか 12時じ00分ふん

　履歴りれき書しょや面接めんせつ不要ふようで、好すきな時間じかんに好すきなだけ働はたらくことができる…。近年きんねん、CMで目めにする機会きかいが増ふえた「スキマバイト」。求人きゅうじん、求職きゅうしょく側がわがそれぞれスマホアプリに情報じょうほうを登録とうろくし、自動的じどうてきに仕事しごとをマッチングする仕組しくみだ。自由じゆうな働はたらき方かたとして注目ちゅうもくを集あつめる一方いっぽうで、専門せんもん家かからは「労働ろうどう者しゃの権利けんりを守まもるルール作づくりを」と求もとめる声こえが上あがっている。（山田やまだ祐一郎ゆういちろう）

◆アプリ登録とうろく者しゃは1500万まん人にん超ちょう

　「スキマバイトで働はたらく人ひとは、職場しょくばでは最下さいか層そうの存在そんざい。名前なまえも呼よばれない」。4月24日にちに市民しみん団体だんたい「非ひ正規せいき労働ろうどう者しゃの権利けんり実現じつげん全国ぜんこく会議かいぎ」が企画きかくしたオンライン集会しゅうかいで、フリージャーナリストの藤田ふじた和恵かずえさんがこう切きり出だした。

マッチングアプリのバイト募集ぼしゅう画面がめん

　スキマバイトは、スポットワークとも呼よばれる。求人きゅうじん企業きぎょうと求職きゅうしょく者しゃがそれぞれマッチングアプリに情報じょうほうを登録とうろくし、短期間たんきかん、単発たんぱつのバイト契約けいやくを結むすぶ。

　アプリ業者ぎょうしゃなどでつくるスポットワーク協会きょうかいによると、2019年ねん末まつに330万まん人にんだったアプリ登録とうろく者しゃは、今年ことし3月がつ時点じてんで1500万まん人にん超ちょうに。この背景はいけいについて同どう協会きょうかいは「勤務きんむ後ごに給料きゅうりょうが即そく支払しはらわれ、コロナの影響えいきょうで収支しゅうしが悪化あっかした人ひとにとって魅力みりょくであるなど、企業きぎょうと働はたらき手て双方そうほうのニーズがマッチした」と説明せつめいする。

◆スマホ一ひとつでできる究極きゅうきょくの不安定ふあんてい雇用こよう

　「○○さん」「△△さん」。藤田ふじたさんがこれまで取材しゅざいしたスキマバイト労働ろうどう者しゃはマッチングアプリの名前なまえで呼よばれるという。「労働ろうどう者しゃからは『どうせ1日にち限かぎり。どうでもいいと思おもわれている』という声こえが聞きかれる。名前なまえを呼よばれないのは、個別こべつに認識にんしきされないということ。対等たいとうな関係かんけいではなく、労働ろうどう者しゃの人権じんけんが奪うばわれることにつながる」

　現場げんばではトラブルも。藤田ふじたさんは「40代だいの男性だんせいはピザの宅配たくはいで契約けいやくしたのに、店みせ側がわに仕込しこみや電話でんわ応対おうたい、トイレ掃除そうじまで要求ようきゅうされた。断ことわると怒鳴どなられ、警察官けいさつかんを呼よばれた」「ファストフードの注文ちゅうもん受うけ付つけのはずなのに草くさむしりをさせられた」などの事例じれいを挙あげる。

渋谷しぶやを行いき交かう人々ひとびと（写真しゃしんは記事きじとは直接ちょくせつ関係かんけいありません）

　アプリでは、企業きぎょう側がわ、労働ろうどう者しゃが双方そうほうを評価ひょうかするシステムがある。「理不尽りふじんな指示しじに、労働ろうどう者しゃが文句もんくを言いえば企業きぎょうからは悪わるい評価ひょうかが付つけられ、その企業きぎょうの求人きゅうじんが届とどかなくなる。最悪さいあくの場合ばあい、アプリ自体じたいの利用りようもできなくなる。説明せつめいがないまま一方いっぽう的てきに労働ろうどう者しゃに不利益ふりえきな対応たいおうができる」と藤田ふじたさんは問題もんだい視しする。

　東京とうきょう新聞しんぶん「こちら特報とくほう部ぶ」の取材しゅざいに「コロナ禍か以降いこう、スキマバイトで生計せいけいを立たてているという人ひとが増ふえていると感かんじる。この働はたらき方かたは副業ふくぎょうや学生がくせいアルバイトには便利べんりだが、例外れいがい的てきであるべきだ。スマホ一ひとつでできる究極きゅうきょくの不安定ふあんてい雇用こようが命綱いのちづなになっている状況じょうきょうに、何なんらかの規制きせいやルールが必要ひつようだ」と警鐘けいしょうを鳴ならす。

◆「実態じったいは日雇ひやとい派遣はけんだ。政府せいふは違法いほう状態じょうたいを追認ついにんしている」

　「派遣はけん切ぎり」「雇やとい止とめ」が社会しゃかい問題もんだい化かし、労働ろうどう者しゃ保護ほごのため、12年ねんの労働ろうどう者しゃ派遣はけん法ほう改正かいせいで30日にち以内いないの短期間たんきかんの「日雇ひやとい派遣はけん」は一部いちぶ例外れいがい業務ぎょうむを除のぞいて原則げんそく禁止きんしされた。

　オンライン集会しゅうかいで龍谷大りゅうこくだいの脇田わきた滋しげる名誉めいよ教授きょうじゅ（労働ろうどう法ほう）は「労働ろうどう者しゃに対たいする評価ひょうかやペナルティー、賃金ちんぎん支払しはらいなどをアプリ側がわが管理かんりしている。実態じったいとしてスキマバイトは日雇ひやとい派遣はけんだ。政府せいふは違法いほう状態じょうたいを追認ついにんしている」と指摘してきし、こう強調きょうちょうした。「スキマバイトで企業きぎょう側がわは、社会しゃかい保険ほけんの手続てつづきが不要ふような範囲はんいで働はたらかせることができる。企業きぎょうが都合つごうよく必要ひつような時間じかんだけ働はたらかせるという法ほうの隙間すきまを利用りようした劣悪れつあく労働ろうどうで、世界せかいの流ながれに逆行ぎゃっこうする」

　冒頭ぼうとうの全国ぜんこく会議かいぎで副ふく代表だいひょう幹事かんじを務つとめる中村なかむら和雄かずお弁護士べんごしは、スキマバイト労働ろうどう者しゃから相談そうだんが寄よせられているとし、「直前ちょくぜんに仕事しごとがキャンセルされても、評価ひょうかが下さがることを恐おそれて何なにも言いえず、労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょなどにも対応たいおうしてもらえない」と話はなす。同どう会議かいぎは近ちかく、スキマバイトの実態じったいについてアンケートを行おこなう予定よていだ。