経済産業省は25日、持続化給付金事業で問題となった民間への事業委託の手法や入札プロセスなどを検証する「調達等のあり方に関する検討会」の初会合を開いた。給付金事業では、外注費の10%を上限として利益を得られる経産省の独自ルールによって、業務の大半を外注する電通の利益が膨らむ見通しで、このルールの見直しも議論される。(石川智規、皆川剛)
◆給付金問題で「不透明」と批判受け
検討会の委員長には、太陽有限責任監査法人会長の梶川融氏が就任。ほかの委員は、弁護士や大学教授ら5人。検討会は年内をめどに報告書をまとめる。
この日の会合は、経産省の飯田健太会計課長の冒頭あいさつのみ公開。飯田氏によると、会合では委託先の事業者が再委託を行った際の情報開示のあり方などが議論された。
また、持続化給付金事業の2次補正予算の事務委託費850億円について、事業を給付金の振り込み業務と審査業務を分けて契約を行うことや、再委託や外注が重なる「多重下請け」への対応も議論された。
さらに、委託事業に関する経産省ルールによって、外注を重ねる電通の利益が膨らむ構図となっていたことを受け、同省の独自ルールの妥当性も今後議論するという。25日の参院経済産業委員会で、梶山弘志経済産業相はこのルールについて「他省庁との比較、世間一般常識との比較を含め、見直してまいりたい。見直しの結果をしっかり反映させていきたい」と答弁した。
給付金事業は一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ協)が受注。サ協から事業の再委託を受けた電通が子会社に業務の大部分を発注するなど、外注が繰り返されている。業務の流れが不透明で、予算の無駄につながるとの批判が相次ぎ、検討会の開催につながった。
経済産業省で開かれた検討会の初会合に臨む外部有識者ら=25日、東京・霞が関で
◆でも、会議は非公開 「当事者」一貫して表に出さず
持続化給付金の事業委託が不透明だとの批判を受けて設けられた経済産業省の有識者検討会は、非公開となった。梶山弘志経済産業相の「透明性を高めるため」との言葉とは裏腹に、情報公開に後ろ向きな姿勢を浮き彫りにした。
経産省が当初報道陣に示した運営方針では、会議終了後に同省の担当課長が内容を説明することになっていた。だが、有識者のチェックを受ける側の経産省が、チェックする側の議論を代弁するのは難しい。自らに都合の悪い意見を開示しない懸念があるからだ。結局、本紙などの要請を受け、経産省は2回目からは終了後の説明に委員長が同席するよう改めた。
しかし、会議は非公開のまま。当事者を表に出さず、経産省が代弁するやり方は給付金の問題では一貫している。
野党は5月下旬から、経産省に対し、事業を受託したサービスデザイン推進協議会(サ協)や再委託先の電通担当者へのヒアリングを求めてきた。これに対し、経産省は「事業の発注者に説明責任がある」と拒否。その経産省は給付金事業の複雑な外注関係の末端まで把握し切れておらず、野党との議論はたびたび止まった。
◆「伝言ゲーム」やめない経産省
それでも経産省は「伝言ゲーム」をやめない。6月上旬、経産省の担当幹部は取材に対し、サ協側にヒアリング要請があったことさえ伝えていなかったことを明らかにした。
こうした経産省の姿勢は、サ協や電通をかばっているように見える。本紙が取材を始めた直後の5月下旬、経産省はサ協からの詳しい業務の流れを明かそうとしなかった。何度も問いただすと、別の幹部は「そんなことを追及しても世の中は良くならない」と言った。(森本智之、皆川剛、桐山純平)