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第37回:魂動デザインの未来を問う(前編) ―「マツダCX-80」にただよう危険な香り― 【カーデザイン曼荼羅】 - webCG クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

だい37かいたましいどうデザインの未来みらいう(前編ぜんぺん) ―「マツダCX-80」にただよう危険きけんかおり―

2024.08.28 カーデザイン曼荼羅まんだら ふち 健太郎けんたろう清水しみず くさいち

マツダがようやく……ホントにようやく新型しんがたクロスオーバー「CX-80」を発表はっぴょう! FRベースのプラットフォームをもちいたしん時代じだい旗手きしゅを、カーデザインのプロはどうるか? 次世代じせだい商品しょうひんぐんだい1じんそろったタイミングで、しん時代じだいのマツダデザインをかたくす。

デザインにおけるコストパフォーマンスは世界せかい最強さいきょう

webCGほった(以下いか、ほった):今回こんかいのテーマはマツダのデザインについてでございます。いや~、ようやく日本にっぽんでも発表はっぴょうされましたね! CX-80。

ふち健太郎けんたろう以下いかふち):今回こんかいはCX-80をじくとしつつ、基本きほんてきにはマツダ全体ぜんたいはなしをすればいいですね?

ほった:そんなかんじでおねがいします。

ふちわたしがマツダで一番いちばんおもうのは、デザインにコスパというものがあるとすれば、一番いちばんたかいメーカーだとおもうんですよ。

清水しみずくさいち以下いか清水しみず):たしかにコスパがたかいですよね。あれだけ質感しつかんたかくて、デザインりょう実質じっしつタダですから。

ほった:配送はいそうりょう無料むりょうみたい(笑)。

清水しみず本当ほんとうはデザインはタダじゃないんだけど、マツダはタダでいいデザインがえる。

ふちマツダはとくにプロポーションにこだわってるんですよね。プロポーションでちがいをそうとしてるメーカーって、ほかは欧州おうしゅうのプレミアムブランドぐらいしかないんですよ。いつもってますけど、ボルボとかポルシェとかランドローバーとか、あとはメルセデスぐらい。そういう視点してんると、マツダはすごくコスパがいい。だれてもこう品質ひんしつえる。

ここでう「クルマのプロポーションがいい」っていうのは、たんにスポーティーっていうだけじゃなくて、質感しつかんたかえるってことなんです。プレミアムブランドはそういうところにこだわってたかせている。つまりマツダしゃは“こうえ”するんですよね。

清水しみずでもマツダは、お値段ねだん国産こくさんしゃレベルですからねぇ。

ふちそういうマツダデザインがいつからはじまったかというと……。

ほった:かれこれ10ねん以上いじょうまえですね。

清水しみず前田まえだ育男いくおさんがデザイン部門ぶもんのトップにったのが2009ねんで、翌年よくねんコンセプトカーの「うつぼ(SHINARI)」が発表はっぴょうされて、2012ねんに3代目だいめ「アテンザ」(その「マツダ6」に改名かいめい)がたというながれですね。

ほった:そうですね。製品せいひんとしては、アテンザよりさき初代しょだい「CX-5」がていますが。

欧州おうしゅうでの世界せかいはつ公開こうかいからおよそ4カ月かげつ……。ようやく日本にっぽんでも発表はっぴょうされた「マツダCX-80」。発売はつばいは2024ねんあき予定よていだ。(写真しゃしん向後こうご一宏かずひろ
欧州での世界初公開からおよそ4カ月……。ようやく日本でも発表された「マツダCX-80」。発売は2024年秋の予定だ。(写真:向後一宏)拡大かくだい
うえからじゅんに「CX-60」「CX-70」「CX-80」「CX-90」。CX-80の登場とうじょうにより、当初とうしょ計画けいかくされていたラージ商品しょうひんぐんは、すべてのモデルがそろうこととなった。
上から順に「CX-60」「CX-70」「CX-80」「CX-90」。CX-80の登場により、当初計画されていたラージ商品群は、すべてのモデルが出そろうこととなった。拡大かくだい
マツダのデザインテーマ「たましいどう-Soul of Motion」を体現たいげんするコンセプトカーとして、2010ねん9がつ発表はっぴょうされた「うつぼ(SHINARI)」。このクルマの登場とうじょうが、マツダのデザイン改革かいかくのはじまりだった。
マツダのデザインテーマ「魂動-Soul of Motion」を体現するコンセプトカーとして、2010年9月に発表された「靭(SHINARI)」。このクルマの登場が、マツダのデザイン改革のはじまりだった。拡大かくだい
2012ねん10がつ受注じゅちゅう開始かいし同年どうねん11がつ発売はつばいされた3代目だいめ「アテンザ」。前年ぜんねん発表はっぴょうのコンセプトカー「ゆう(TAKERI)」をベースとした、ダイナミックなデザインが特徴とくちょうだった。
2012年10月に受注開始、同年11月に発売された3代目「アテンザ」。前年発表のコンセプトカー「雄(TAKERI)」をベースとした、ダイナミックなデザインが特徴だった。拡大かくだい
2016ねんのロサンゼルスオートショーより、コンセプトカー「RXビジョン」と前田まえだ育男いくお
2016年のロサンゼルスオートショーより、コンセプトカー「RXビジョン」と前田育男氏。拡大かくだい
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ライバルはポルシェか、アストンか

ふちいまのラインナップをても、「マツダ2」とか「CX-3」は、もうデビューから結構けっこうたってますよね。

ほった:ながいですねぇ。マツダ2と同型どうけい最終さいしゅうがた「デミオ」が2014ねん9がつ発売はつばいだから、今年ことしで10ねん選手せんしゅです。

ふちだけどいまでもかなり魅力みりょくてきでしょう。まえ清水しみずさんが、「レクサスLBX」のかいその1その2)で「マツダCX-3のほうがカッコイイ!」ってったじゃないですか。自分じぶんもこのクルマはすごくきで、いまだにカッコいいなとおもうんですよ。マツダ2もあれだけコンパクトでありながら躍動やくどうかんがあって、プロポーションもすごくよくて、インテリアの質感しつかんたかいですよね。そうかんがえると、タイムレスな魅力みりょくがある。やっぱりデザインの本質ほんしつてきなところがすぐれているんだとおもいます。ただ自分じぶんにとって1ばんは、「マツダ3ファストバック」です。これには衝撃しょうげきけましたよ。

清水しみずカーデザイナーとして。

ふちこの、なだらかなCピラーからリアフェンダーにかけてのながれ。普通ふつう、Cピラーとフェンダーはけてデザインするのがじょうとう手段しゅだんなんですけど、こんなにつなげてせるんだなっていうところが……。実際じっさいにはマツダ3もかれてるんですよ。でもかれていないようになだらかにせつつ、プロポーションにすごく寄与きよしてる。「こんなことできるんだな」って、カーデザインのあらたな可能かのうせいかんじました。アストンマーティンがとなりにあっても遜色そんしょくない存在そんざいかんがある。

清水しみずわたし常々つねづね、「ロードスター」はあのサイズで、「アストンマーティンDB11」に匹敵ひってきするデザインだっておもってます! マツダデザインはアストンっぽいのかも。

ほった:おおきくましたね。

ふちマツダ3はレンタカーやカーシェアリングでもよくますよね。こんなデザインのクルマが、そんなに普通ふつうりられるっていうのが、そもそもコスパがいい。

清水しみずアストンはレンタカーじゃ無理むりですから!

ふち「CX-30」もマツダ3とたようなかんじですけど、このクルマもやっぱりシルエットに特徴とくちょうがある。高速こうそく道路どうろとおくからシルエットだけえたとき、「『ポルシェ・マカン』かな?」とおもったんです。それくらいキャビンからロアボディーにかけてぐっとしてる。これもやっぱりプロポーションがすごくいい。

清水しみず比較ひかく対象たいしょうはアストンやポルシェなんですねぇ。

2014ねん9がつ受注じゅちゅう開始かいしされた4代目だいめ「デミオ」。2019ねん一部いちぶ改良かいりょうともない、日本にっぽんでもくるまめい海外かいがいめいの「マツダ2」にあらためられた。
2014年9月に受注が開始された4代目「デミオ」。2019年の一部改良に伴い、日本でも車名が海外名の「マツダ2」に改められた。拡大かくだい
2014ねんのロサンゼルスオートショーで発表はっぴょうされ、翌年よくねん2がつ日本にっぽん発売はつばいされた「CX-3」。こちらもくるまよわいはすでにまん9ねんかぞえる。
2014年のロサンゼルスオートショーで発表され、翌年2月に日本で発売された「CX-3」。こちらも車齢はすでに満9年を数える。拡大かくだい
いまても斬新ざんしんなスタイリングの「マツダ3」。「ワールドカー・オブ・ザ・イヤー」の部門ぶもんしょうで、そのとしにデビューしたクルマのなかでもっとうつくしいクルマを選出せんしゅつする「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞じゅしょうしている。
今見ても斬新なスタイリングの「マツダ3」。「ワールドカー・オブ・ザ・イヤー」の部門賞で、その年にデビューしたクルマのなかで最も美しいクルマを選出する「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。拡大かくだい
2015ねん登場とうじょうした4代目だいめ「ロードスター」。あまりにデザインの評価ひょうかたかいことから、2023ねん10がつ大幅おおはば改良かいりょう発売はつばいは2024ねん1がつ)では、「いかにデザインをえないか」という、通常つうじょうとはぎゃく問題もんだい苦労くろうしたとか。
2015年に登場した4代目「ロードスター」。あまりにデザインの評価が高いことから、2023年10月の大幅改良(発売は2024年1月)では、「いかにデザインを変えないか」という、通常とは逆の問題で苦労したとか。拡大かくだい
これまたプロポーションがナイスなコンパクトSUV「CX-30」。マツダは欧州おうしゅうのプレミアムどころとならんで、プロポーションで勝負しょうぶしているメーカーなのだ。
これまたプロポーションがナイスなコンパクトSUV「CX-30」。マツダは欧州のプレミアムどころと並んで、プロポーションで勝負しているメーカーなのだ。拡大かくだい

しん時代じだいの“ラージ商品しょうひんぐん”におぼえた違和感いわかん

ふち……で、今回こんかいのCX-80なんですが、これは「CX-60」のストレッチばんって位置いちなので、まずはそのCX-60のデザインからかんがえてみましょう。みなさんどうかんじますか?

清水しみずいまどき、こんなロングノーズけてること自体じたいがカッコイイじゃないですか。カッコつけてて、それがサマになってる。

ほった:わたしゃまえのCX-5のほうがカッコイイとおもったなぁ。CX-60も十分じゅうぶんステキなんですが、CX-5や「CX-8」のデザインがかがやきすぎているんですよ、わたしのなかでは。

ふちCX-60をマツダがFRにした理由りゆうってなんでしたっけ?

ほった:ゆびえんマークをつくりつつ)おかねでしょう……ってったらいいかた下世話げせわですけど。マツダはブランドの上級じょうきゅう移行いこうをもくろんでますし、つくりしゅ手間てま見合みあった、ちゃんとおかねをとれるクルマをつくりたかったっていうことです。なんだかんだっても、高級こうきゅうしゃこう駆動くどうって信仰しんこうつよいですからね。

ふちっていうことは、やっぱり「FRである」っていう事実じじつもそうだけど、それに付随ふずいするデザイン、FRらしいプロポーションのデザインであることも、おおきいってことですよね。

ほった:デザイナーさんはすっごく苦労くろうしたみたいですけど。

ふちわたしはCX-60のデザインをぱっとて、上質じょうしつだしFRのプロポーションもすごくいいとおもったけれど、これまでのマツダデザインからると“いきおい”がややりないなってかんじたんです。

ほった:そうなんです。いきおいがないんですよ。

清水しみずいきおい、ない?

ほった:おれらからしたら、たましいどうデザインっていったらこれじゃないですか(コンセプトカー「うつぼ(SHINARI)」の写真しゃしんせつつ)。既存きそんのマツダのSUVもコンパクトも、ノッポなくるまがただけどそのながれをちゃんとくんできたわけですよね。それからすると、やっぱりいちゃってる。

ふちですね。これがCX-60で、こっちがCX-5、そしてCX-8ですけど(写真しゃしんならべる)、CX-5やCX-8は、かおがもうちょっとひくいんですよ。そのぶんフードのながれに“タメ”がある。よそでも、たとえばトヨタの「クラウン スポーツ」(その1その2)あたりは、極端きょくたんすぎるぐらいにそれをやってるんですよね。グリルやランプをひく位置いちにして、そのぶんフードのタメをしっかりけてるから、キュンってながれをかんじる。

CX-60は、そこがこれまでのマツダデザインとはちがっている。このクルマをフロントクオーターからたときに、かおのデカさがバンときて、まずは“絶壁ぜっぺきかん”をおぼえるわけです。

2022ねん3がつ世界せかいはつ公開こうかい同年どうねん6がつ日本にっぽん受注じゅちゅう開始かいしされた「CX-60」。マツダのラージ商品しょうひんぐんだい1だんモデルだ。
2022年3月に世界初公開、同年6月に日本で受注が開始された「CX-60」。マツダのラージ商品群の第1弾モデルだ。拡大かくだい
うえからじゅんに「CX-60」と「CX-5」「CX-8」のサイドビュー。の2車種しゃしゅぜんはしにいくほどボンネットがひくめられていくのにたいし、「CX-60」はフードのシルエットは比較的ひかくてき水平すいへい基調きちょうで、鼻先はなさきたか位置いちにある。
上から順に「CX-60」と「CX-5」「CX-8」のサイドビュー。他の2車種が前端にいくほどボンネットが低められていくのに対し、「CX-60」はフードのシルエットは比較的水平基調で、鼻先が高い位置にある。拡大かくだい
「CX-5」のフロントまわりは、ぜんはしにいくにつれひくおさえられていくボンネットのRで、“タメ”を表現ひょうげん。ボンネットからフロントフェンダーのうえとおり、ドアパネルへとまわむキャラクターラインも躍動やくどうてきだ。
「CX-5」のフロントまわりは、前端にいくにつれ低く抑えられていくボンネットのRで、“タメ”を表現。ボンネットからフロントフェンダーの上を通り、ドアパネルへと回り込むキャラクターラインも躍動的だ。拡大かくだい
こちらは「CX-60」のノーズ。「CX-5」ほどのタメかんはなく、ヘッドランプの位置いちたかめ。またキャラクターラインで躍動やくどうかん表現ひょうげんするような手法しゅほうれられていない。 
ほった「躍動やくどうかんよりくるまかくかんとか、高級こうきゅうかん意識いしきしたんでしょうか」
こちらは「CX-60」のノーズ。「CX-5」ほどのタメ感はなく、ヘッドランプの位置も高め。またキャラクターラインで躍動感を表現するような手法も取り入れられていない。 
	ほった「躍動感より車格感とか、高級感を意識したんでしょうか」拡大かくだい
ほった「たしかに、このかおでグイグイくるかんじは、過去かこのマツダしゃにはないものですね」 
清水しみず「『CX-60』はそこがイイとおもうんだけどなぁ」
ほった「確かに、この顔でグイグイくる感じは、過去のマツダ車にはないものですね」 
	清水「『CX-60』はそこがイイと思うんだけどなぁ」拡大かくだい

このデザインはマーケティングの要望ようぼうか?

清水しみず絶壁ぜっぺきかんですかぁ。CX-60はそこが魅力みりょくだとおもうんだけどな。いまどき絶壁ぜっぺきってめずらしいじゃないですか。すごく古典こてんてきなカッコよさがあるとおもうけど。

ほった:ワタシもきらいではありませんが、やっぱCX-5のかおのほうがきですね。

ふちサイドビューでも、CX-60はその絶壁ぜっぺきからたか位置いちで“じく”をとおしてるから、CX-5あたりにくらべるとボディーの全部ぜんぶたかかんじられるんですよね。

もしかしたら、デザイン部門ぶもん以外いがいからの要望ようぼうでこのかおたかさにしたのかもしれませんね。たとえば北米ほくべい中国ちゅうごく存在そんざいかんすのが目的もくてきだったり。自分じぶんまえ会社かいしゃでよくそういうはなしがありました。かおたかくすることでくるまかく以上いじょうにクルマをおおきくせようっていう意図いとが、CX-60にはあるがします。

清水しみずいや、自分じぶんがわったら、かおたかいほうがいいですね。ひととはちが雰囲気ふんいきがあるじゃないですか。「6はつめるんだぞ」っていう。Lがたんだ「スカG」みたいな。

ほった:んでも実際じっさいにはふるいCX-5がまだまだれてるわけでしょ? CX-60がても、CX-5の人気にんきちてない。

清水しみずそう、CX-5はつづけてる。CX-5のデザインは、それはそれでいいわけですよね?

ふちCX-5はいいです。ただわたしとしては、CX-8のほうがもっといい。なぜかというと、CX-5ではフロントからのながれ、いきおいを、みじかいリアがめてしまってえるからです。うしろがながいCX-8では、そのままスパーってそれがながれていって、バランスがいい。むしろCX-8が“ただし”かなっておもえるぐらいです。

清水しみずうーん、正直しょうじきどっちでもいいというか、どっちもいいけど。

ほった:相変あいかわらず、フロントマスク以外いがい興味きょうみなさそうっすね。

清水しみずいまどき、これほどいさぎよくフロントが絶壁ぜっぺきなクルマはないよ!」 
ほった「わたし絶壁ぜっぺきがおきらいじゃないんですが、『CX-60』はキャビンからうしろのフォルムをおもうと、もうすこひくくてもいいがするんですよねぇ」
清水「今どき、これほど潔くフロントが絶壁なクルマはないよ!」 
	ほった「私も絶壁顔は嫌いじゃないんですが、『CX-60』はキャビンから後ろのフォルムを思うと、もう少し低くてもいい気がするんですよねぇ」拡大かくだい
2代目だいめ「プリンス・スカイライン」に1965ねんから設定せっていされた「GT」。鼻先はなさきを200mmばし、無理むりやり2リッターじき6エンジンをんだ高性能こうせいのうモデルだった。 
ほった「『Lがたんだ~』ってことは3代目だいめ以降いこうのモデルなんでしょうが、スカGといえばこれだろ! とおもうので、2代目だいめ写真しゃしん使つかわせていただきました」
2代目「プリンス・スカイライン」に1965年から設定された「GT」。鼻先を200mm延ばし、無理やり2リッター直6エンジンを積んだ高性能モデルだった。 
	ほった「『L型積んだ~』ってことは3代目以降のモデルなんでしょうが、スカGといえばこれだろ! と思うので、2代目の写真を使わせていただきました」拡大かくだい
「CX-5」の人気にんきは「CX-60」の発売はつばい以降いこう健在けんざい。2023ねんは60を僅差きんさおさえて“日本にっぽん一番いちばんれたマツダしゃ”に。2024ねん上半期かみはんきも「マツダ2」にぐ2位置いちにつけている。
「CX-5」の人気は「CX-60」の発売以降も健在。2023年は60を僅差で抑えて“日本で一番売れたマツダ車”に。2024年上半期も「マツダ2」に次ぐ2位の位置につけている。拡大かくだい
3れつ6にん・7にんりのキャパシティーを確保かくほする、ながいキャビンをそなえた「CX-8」。このキャビンはデザインのめんでも奏功そうこうしており、フロントでまれたいきおいがそのままリアへとながれていく、びやかな意匠いしょう実現じつげんしていた。
3列6人・7人乗りのキャパシティーを確保する、長いキャビンを備えた「CX-8」。このキャビンはデザインの面でも奏功しており、フロントで生まれた勢いがそのままリアへと流れていく、伸びやかな意匠を実現していた。拡大かくだい

設計せっけいからけられたきびしい要件ようけん

ふち……で、ようやく今回こんかいのCX-80なんですが、これはCX-60よりホイールベースがだいぶながくなってますよね? CX-60はフロントのオーバーハングはみじかく、リアはながせていてFRらしいプロポーションにかんじられるのですが、CX-80は前後ぜんごオーバーハングのバランスよりホイールベースのながさのほうがについて、ややダックスフントみたいなプロポーションにえるがします。

ほった:ほうほう。

ふちでも、北米ほくべい専用せんようの「CX-90」はそうはえないんですよ。かくかこれ、ホイールベースは一緒いっしょで、リアオーバーハングのながさがちがうんですよね。CX-90はリアがしっかりながいんで、ダックスフントかんがなくてスパーンとびやかにえる。それにたいしてCX-80は、リアをちぢめている。なぜかというと、全長ぜんちょう5mをりたかったから。これもおそらく営業えいぎょうからの要望ようぼうだろうとおもいます。

清水しみずまあ当然とうぜん要望ようぼうでしょう。

ふちそうなんです。そうなんですけど、マツダはここ10ねんとくにデザインコンシャスでやってきてて、マツダデザインにたいするユーザーの支持しじがすごくたかいですよね? もちろん営業えいぎょう要望ようぼう重要じゅうようなのですが、それでデザインがやりたいことをピュアに表現ひょうげんできなくなるとしたら、本末転倒ほんまつてんとうってことになるかもしれません。

ほった:うむむ……。ダックスフントとか寸法すんぽう要件ようけんとかについては、マツダのひと事前じぜん取材しゅざいかいでそのとおりのはなしをしていましたね。それこそ、まったくおなじダックスフントって言葉ことば使つかって。設計せっけいから仕様しようとどいたとき、最初さいしょは「おれはこのクルマやりたくないな。マツダデザインにできないし、カッコよくならない」って、そうおもったそうですよ。だから、これまでと全然ぜんぜんちがうデザインに挑戦ちょうせんされたとか(参照さんしょう)。

あたらしい3れつシートSUVの「CX-80」。マツダのデザイン主査しゅさで、同車どうしゃのチーフデザイナーをつとめる玉谷たまや さとしは「既存きそんのマツダしゃにはない“ゆたかさ”をせることにチャレンジした」という。(写真しゃしん向後こうご一宏かずひろ
新しい3列シートSUVの「CX-80」。マツダのデザイン主査で、同車のチーフデザイナーを務める玉谷 聡氏は「既存のマツダ車にはない“豊かさ”を見せることにチャレンジした」という。(写真:向後一宏)拡大かくだい
「CX-80」のボディーサイズは全長ぜんちょう×全幅ぜんぷく×全高ぜんこう=4990×1890×1710mm(ルーフレールありの場合ばあい、なしの場合ばあい全高ぜんこう=1705mm)。ホイールベースは3120mm。「CX-8」とくらべると全長ぜんちょうは+65mm、全幅ぜんぷくは+45mm、ぜんこうは-25mm、ホイールベースは+190mmとなっている。前後ぜんご左右さゆう方向ほうこうにサイズアップした格好かっこうだが、それ以上いじょうにホイールベースの伸長しんちょういちじるしい。(写真しゃしん向後こうご一宏かずひろ
「CX-80」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4990×1890×1710mm(ルーフレールありの場合、なしの場合は全高=1705mm)。ホイールベースは3120mm。「CX-8」と比べると全長は+65mm、全幅は+45mm、全高は-25mm、ホイールベースは+190mmとなっている。前後・左右方向にサイズアップした格好だが、それ以上にホイールベースの伸長が著しい。(写真:向後一宏)拡大かくだい
北米ほくべい販売はんばいされる「CX-90」のボディーサイズは全長ぜんちょう×全幅ぜんぷく×全高ぜんこう=5100×1994×1745mm。ホイールベースは「CX-80」と同等どうとうだが、全長ぜんちょうはこちらのほうが110mmおおきい。
北米で販売される「CX-90」のボディーサイズは全長×全幅×全高=5100×1994×1745mm。ホイールベースは「CX-80」と同等だが、全長はこちらのほうが110mm大きい。拡大かくだい
「CX80」のフロントビュー。日本にっぽん道路どうろ事情じじょう考慮こうりょして全幅ぜんぷくは1.9m未満みまんおさえられているが、それでも「CX-8」より拡幅かくふくしたいっぽうでぜんこうげられているので、真正面ましょうめんからたらスタンスはむしろよくなっている。(写真しゃしん向後こうご一宏かずひろ
「CX80」のフロントビュー。日本の道路事情を考慮して全幅は1.9m未満に抑えられているが、それでも「CX-8」より拡幅したいっぽうで全高は下げられているので、真正面から見たらスタンスはむしろよくなっている。(写真:向後一宏)拡大かくだい

ちょっとしょうえちゃってません?

ふちそういうおはなしいても、やっぱりマツダってこれまですごくトガってきてたのが、ちょっとずつしょうえてきているがするんですよ。

清水しみずきびしいなぁ。これはこれで全然ぜんぜんいいとおもうけど。ストレッチリムジンてきな、間延まのびしたカッコよさがあるんじゃないですか?

ほった:ワタシは一足いっそくさき実車じっしゃちゃったんですけど(自慢じまんげ)、たしかに堂々どうどうとしていてカッコよかったです。さっきのような苦労くろうばなしいたのちだと、せんえつながら「そんなきびしい条件じょうけんのなかで、よくここまでカッコよくできたな!」っておもうくらいに。

ふちいや、質感しつかんはすごくたかいですよ。でも私的してきにはたましいどうデザインの期待きたいはもっとたかいんです。

メルセデスやボルボなどのプレミアムブランドは、「全長ぜんちょうをここまでにおさめろ」とか、あまりかんがえないですよ。ながいクルマをひとにはながいクルマ、みじかいクルマをひとにはみじかいクルマって、それぞれモデルがかれてるので。そういうプレミアムブランドとくらべるのはこくですが、日本にっぽんのメーカーは「国内こくないではこうせたいけど、米国べいこくだとこうしたい」とか、そうしたことなる要望ようぼうを、ひとつのクルマでかなえようとするんです。そうするとデザインてき妥協だきょうてんさがすことになります。いまのマツダデザインはプレミアムブランドとくらべても遜色そんしょくないとかんじるくらい質感しつかんたかいですが、ジレンマも垣間見かいまみられますね。いまでも、マーケットにおうじてクルマをつくりけたりはしているんですけど……。

清水しみずうーん。それでもCX-80は十分じゅうぶんカッコイイですけどね。SUVは興味きょうみないんで、だいぶひとごとですけど。

ほった:ひとごとじゃダメでしょ!

後編こうへんつづく)

かたり=ふち健太郎けんたろうぶん清水しみずくさいち写真しゃしん=マツダ、向後こうご一宏かずひろ、webCG/編集へんしゅう堀田ほったつよし

清水しみず「ボクはストレッチリムジンてきなカッコよさがあるとおもうんだけどなぁ」 
ほった「実際じっさい、カッコよかったですよ。ただパッケージングとのいとかの苦労くろうもしのばれて、なんかいままでのマツダっぽくないというか、そのへんのアプローチはむしろ『……なんかスバルっぽいぞ?』っておもっちゃいました」
清水「ボクはストレッチリムジン的なカッコよさがあると思うんだけどなぁ」 
	ほった「実際、カッコよかったですよ。ただパッケージングとの折り合いとかの苦労もしのばれて、なんか今までのマツダっぽくないというか、そのへんのアプローチはむしろ『……なんかスバルっぽいぞ?』って思っちゃいました」拡大かくだい
マツダの現行げんこうSUV/クロスオーバーの国内こくないラインナップ。 
ほった「これにくわえて、日本にっぽん導入どうにゅうのモデルもあるわけでしょう。マツダも、ラインナップそのものはおおいんですけどね」  
清水しみず「マーケットにおうじて『CX-80』『CX-90』とつくりけているだけでも、たいしたものだよ」
マツダの現行SUV/クロスオーバーの国内ラインナップ。 
	ほった「これに加えて、日本未導入のモデルもあるわけでしょう。マツダも、ラインナップそのものは多いんですけどね」  
	清水「マーケットに応じて『CX-80』『CX-90』とつくり分けているだけでも、大したものだよ」拡大かくだい
ふち「クルマそのもののデザインは質感しつかんたかくていいんですけどね……」 
ほった「マツダのデザイン原理げんり主義しゅぎ変節へんせつしちゃったのか、それともそんなことはないのか。になるところですねぇ」
渕野「クルマそのもののデザインは質感が高くていいんですけどね……」 
	ほった「マツダのデザイン原理主義は変節しちゃったのか、それともそんなことはないのか。気になるところですねぇ」拡大かくだい
渕野 健太郎

ふち 健太郎けんたろう

20ねん選手せんしゅだったカーデザイナーを「体力たいりょく限界げんかい」ということで現役げんえき引退いんたい現役げんえき時代じだいは「自称じしょう」エースかくとしてさまざまな試合しあい投入とうにゅうされ、結果けっかしてきた(とおもう)。引退いんたい監督かんとくやコーチにはならず、チームをはなれセカンドキャリアを選択せんたく。これまでそだててくれた自動車じどうしゃ業界ぎょうかいへの恩返おんがえしとして、自動車じどうしゃ訴求そきゅう活動かつどうおこなう。福岡ふくおかけん出身しゅっしん日本にっぽん大学だいがく芸術げいじゅつ学部がくぶ卒業そつぎょう

清水 草一

清水しみず くさいち

わらいフェラーリ文学ぶんがくである『そのフェラーリください!』(さん推社/講談社こうだんしゃ)、『フェラーリをかいふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本にっぽんでただ一人ひとり高速こうそく道路どうろジャーナリストとして『首都高しゅとこうはなぜ渋滞じゅうたいするのか!?』(さん推社/講談社こうだんしゃ)、『高速こうそく道路どうろなぞ』(扶桑社ふそうしゃ新書しんしょ)といった著書ちょしょつ。慶大けいだいそつ編集へんしゅうしゃてフリーライター。最大さいだい趣味しゅみ自動車じどうしゃ購入こうにゅうで、現在げんざいまで通算つうさん47だい、うち11だいがフェラーリ。本人ほんにんいわく「『タモリ倶楽部くらぶ』に首都高しゅとこう研究けんきゅうとしてばれたのが人生じんせい金字塔きんじとう」とのこと。

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