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2024年6月28日に日本で発売される米Apple(アップル)のゴーグル型ヘッドマウントディスプレー「Apple Vision Pro」。個人の利用に加え、業務利用での期待も高まっている。日建設計は建築設計者向けに、仮想の建築模型を目の前にあるかのように再現するApple Vision Proアプリを開発。記者は同アプリをいち早く体験した。
日建設計が開発したApple Vision Proアプリの名称は「Whitemodel(仮)」。日建設計が構想や企画、建築データの提供などを行い、実際の開発や技術支援をアプリ開発のホロラボが手掛けた。
実際にWhitemodelを使ってみる。まずApple Vision Proを装着すると、まるで何も着用していないかのように、現実の光景が表示された。実際にはApple Vision Proが備えるカメラの映像をディスプレー越しに見ているのだが、映像だけではそのことを感じさせない。次に、机の上に置いてあるマーカーにポインターを合わせて注視すると、AR(拡張現実)マーカーの部分に仮想の建築模型が現れた。
Whitemodelで見た仮想の建築模型。Apple Vision Pro着用者視点
(出所:日建設計)
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現実の建築模型を見るときのように、利用者が左右に動いたり近くに寄ったりすると模型の見え方も変わる。机の上に手のひらを置き、回すように動かせば模型自体を回転できる。模型に添えられる樹木や人などの「点景」も表示される。複数人で同時に同じ模型を見ることも可能だ。
Whitemodelで模型を見ている様子。仮想の建築模型の向きを変えようとしている
(写真:日経クロステック)
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さらに、「コントロールパネル」を呼び出し、複雑な操作をすることもできる。模型の縮尺を変更できる他、外観と内観を切り替えることができる。内観に切り替えて拡大表示した模型の中に顔を突っ込み、内部のつくりをじっくり見ることも可能だ。点景を追加する機能もある。コントロールパネルで指定すれば、点景をあたかも実際につまんでいるかのように動かして模型のそばに配置できる。
Whitemodelでコントロールパネルを開いたところ。項目を選択するときは、ポインターを合わせて右手の親指と人さし指をつまむようにする。Apple Vision Pro着用者視点
(出所:日建設計)
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日建設計の光田祐介デジタルソリューション室アソシエイトは「模型らしさを出すためにどうすればよいか研究した。模型の向きを手で変えられる、点景をつまんで置けるといったUX(ユーザーエクスペリエンス)を大事にした」とこだわりを話す。
作製コストを削減し、細部の表現が可能に
仮想の建築模型は、現実の模型と比べたメリットが数多くある。顧客への説明時に欠かせない建築模型だが、現実に作る場合は、スチレンボードなどを切り貼りして手作りするため時間やコストがかかった。図面の修正があれば模型も作り直しになる。大型の模型だと建築プロジェクトが終了すると置き場所に困り、廃棄するにしても手間がかかる。
これに対し、仮想の模型であれば廃棄や保管場所の懸念はなくなる。模型の縮尺を自在に変更できる他、現実の模型では再現しにくかった手すりなど、細部まで表現できる。大きさなどによって差があるものの、1件当たりの制作コストを数万~数百万円程度、削減できるという。
Whitemodelで見た建築模型の内部。細い手すりなども再現できている。Apple Vision Pro着用者視点
(出所:日建設計)
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