二樂亭集/卷二

二に樂らく亭てい集しゅう
卷まき之の二に
作者さくしゃ：申さる用よう漑
1682年ねん

詩し

次じ赴凌河かわ驛えき十じゅう二に韻いん

遠とお客きゃく惜短景けい。窮きゅう陰かげ喜き得とく陽ひ。玄げん冥めい猶なお按節。朔風さくふう透とおる杯はい觴。日照ひでり氷ごおり噓煙。如看土生はぶ香が。王事おうじ心こころ靡盬。不覺ふかく身み他た鄕。脩おさむ途と鬢びん易えき雪ゆき。對たい鏡きょう歸き意い長ちょう。飛ひ塵ちり眯眼黑くろ。寒かん茆際天てん黃き。觀かん周しゅう愧專對たい。說せつ詩し思おもえ漢かん匡ただし。空そら揚あげ萬まん里さと鞭むち。日暮ひぐれ趨路傍ろぼう。長ちょう垣かき橫よこ一いち面めん。限かぎり彼かれ群ぐん豺狼さいろう。時とき平ひら絶ぜっ邊べ虞おそれ。景物けいぶつ森もり開張かいちょう。溟渤闊浮天てん。陰かげ山やま靑あお入にゅう望もち。遠とお遊ゆう無む所しょ采さい。聊此添歸裝そう。

雜ざつ詩し_{三さん首しゅ}

酬むくい世よ有ゆう機關きかん。悲懽摠心病びょう。嗒焉倚晨軒のき。落葉らくよう沒前ぼつぜん徑みち。棲禽欲よく下枝しずえ。日出にっしゅつ見物けんぶつ性せい。誰だれ將はた百ひゃく年ねん忙せわし。博ひろし此一いち日にち靜せい。

脚あし底そこ有ゆう危途。胸中きょうちゅう塞ふさが浩ひろし氣き。榮枯えいこ元もと一いち根ね。甘苦かんく各自かくじ味あじ。生涯しょうがい是ぜ溫ゆたか飽。跡あと外がい無む用地ようち。莫使虛きょ靈れい臺だい。紛然ふんぜん外物がいぶつ至いたり。

接せっ甍いらか朱しゅ陳ひね里さと。懽尋不ふ費ひ招。幽かそけ徑みち出場しゅつじょう圃。川原かわら晩ばん色しょく饒にょう。稻いね香が秋あき醪もろみ滑すべり。眼め纈野興きょう撩。一笑いっしょう齊ひとし鵬おおとり鷃。心地ここち有ゆう逍遙しょうよう。

寄よせ平安へいあん李り節度せつど使し希まれ剛つよし_{五ご首しゅ}

我わが眼め固かた多肉たにく。我わが心しん非ひ水鏡みずかがみ。雖然有ゆう兩りょう耳みみ。久ひさ聞英名めい盛もり。弱冠じゃっかん已やめ傾かたぶけ懷ふところ。中ちゅう歲とし閱才行ぎょう。文ぶん華はな陸海りくかい寬ひろし。武略ぶりゃく龍虎りゅうこ倂。從したがえ知ち范文正ただし。材ざい大だい天てん所しょ命いのち。

儒智古いにしえ難なん兼けん。公おおやけ今こん有餘ゆうよ地ち。金きむ鑾舊侍講じこう。建けん牙きば專せん閫寄。胸むね藏ぞう萬まん甲かぶと兵へい。本ほん之の五經ごきょう笥け。鎖くさり鑰西北門きたもん。戎えびす虜とりこ不ふ敢肆。回かい首くび笑わらい贊さん皇すめらぎ。籌邊空そら有ゆう記き。

塞ふさが上うえ苦く多た寒かん。墮指風雪ふうせつ錮。江こう氷こおり虜とりこ更さら驕おご。日夜にちや嚴げん城じょう戍。威い撫なで今こん得とく宜よろし。輕けい裘臥而護。士卒しそつ志こころざし欲ほっ用よう。勇いさみ銳するど敎きょう有ゆう素もと。共きょう道みち主ぬし帥そち賢けん。常つね稀まれ着ぎ戰せん袴はかま。

千載せんざい韓かん魏たかし公おおやけ。能のう令れい賊ぞく膽きも破やぶ。終おわり然しか入にゅう黃き閣かく。萬まん口くち稱たたえ王佐おうさ。所以ゆえん膺大受。臨機りんき志こころざし不ふ挫くじけ。歷れき試ためし俱適用てきよう。舍しゃ公おおやけ無む是ぜ過か。吾われ將はた持もち此說。得とく人爲じんい國賀こくか。

迂まが慵年空むなし深ふか。書しょ史詩しし兼けん廢はい。向むかい公こう訟吾拙つたな。毋以拙つたな故こ退すさ。展てん卷まき睡ねむ先せん甜。對たい酒さけ心こころ易えき憒。官かん事ごと了りょう何なん時じ。筆ふで花はな荒あら無む態たい。居然きょぜん霜しも滿まん鬢びん。此老誰だれ能のう貸かし。

耕こう歷れき山やま_{題だい洪ひろし進士しんし縢かが家いえ畫が屛八はち幅ぶく}

聖ひじり孝たかし初はつ泣慕。至誠しせい天てん獨どく享とおる。頑嚚竟底豫よ。貴以たかい天下でんか養やしなえ。如何いか世よ失しつ敎きょう。梟ふくろう獍聞往往おうおう。不ふ見み歷れき山麓さんろく。耕耘こううん有鳥あっとり象ぞう。

後こう車載しゃさい

渭陽匪熊叟。有ゆう釣つり非ひ爲ため釣つり。天てん錫すず西伯さいはく繇。得とく賢けん焉屈召。尊みこと之の載の後ご車しゃ。一語いちご先さき同調どうちょう。周しゅう齊ひとし竟匹休きゅう。勳くん名めい懸かか兩りょう曜。

扣馬諫

除じょ殘ざん衆しゅ歸心きしん。秉鉞天てん假かり柄え。於時扶君綱つな。義よし大だい扣馬諍いさかい。權けん經けい各かく得とく正ただし。守まもり性せい渠みぞ更さら聖ひじり。終おわり然しか不ふ食しょく周しゅう。采さい薇ぜんまい以畢命いのち。

彈琴だんきん

鼻はな堊人能のう斲。質しつ亡ほろび斤きん不運ふうん。知遇ちぐう古來こらい希まれ。誰だれ明あかり心しん所しょ蘊。峨洋魚ぎょ有ゆう耳みみ。指ゆび轉てん琴きん生せい韻いん。苟無子こ期き聽。絶ぜっ絃吾何なん慍。

牧羊ぼくよう

胡えびす雁かり不ふ南みなみ翔しょう。北海ほっかい無む羝乳。天てん寒さむ大だい窖あなぐら雪ゆき。握にぎ節ふし心こころ獨どく苦く。飢かつえ窮きゅう咽のど盡つき毛げ。義氣ぎき撑腸肚。麒麟きりん萬古ばんこ名めい。忍にん與あずか衛まもる李り伍ご。

七なな賢けん會かい

世よ紛まがえ煩はん糾結。人心じんしん苦く爭そう競きおい。超然ちょうぜん七なな賢けん會かい。竹林たけばやし淸きよし相しょう倂。玄げん牝めす開ひらけ老ろう嚴げん。高風こうふう入にゅう觴詠。焉知一いち嘯餘。竟爲神州しんしゅう病びょう。

賞しょう鵝

坦ひろし腹はら性せい自じ眞しん。齅花憂う更さら遠とお。山陰やまかげ換かわ鵝來。對たい賞しょう聊遣悶もだえ。波なみ晴はれ意氣いき閑。日照ひでり毛げ衣ころも嫩。因よし想そう筆ひつ臨經。滿まん紙し銀ぎん鉤かぎ健けん。

遊ゆう西湖さいこ

孤こ山やま淡あわ髻たぶさ鬟。洗あらい粧西湖水こすい。皓あきら鶴づる如孤雲くも。飛ひ來報らいほう客きゃく喜き。高こう人じん對たい雪ゆき魂たましい。春寒しゅんかん褪絳蘤。疑うたぐ是ぜ橫よこ斜影しゃえい。傳つて神しん得とく骨髓こつづい。

送金そうきん季き雲くも赴京_{二に首しゅ}

自じ恨吾生せい僻へき。眞ま同どう繫隅匏ふくべ。多た君きみ才さい博雅はくが。去さ入にゅう天王てんのう郊。翼つばさ長ちょう誰だれ得とく礙。鵬おおとり飛ひ已やめ凌しのげ霄。歸來きらい六ろく月がつ息いき。刮目かつもく以相邀。

鶴野つるの風かぜ戰せん雪ゆき。遼りょう海うみ日向ひなた曛。行あるき行ゆき念ねん堂どう萱かや。愁殺東ひがし飛ひ雲くも。賴よりゆき有ゆう伯仲はくちゅう賢けん。庶慰阻晨昏。名めい揚あげ道どう更さら大だい。求もとめ之の忠孝ちゅうこう門もん。

送金そうきん國こく卿きょう觀察かんさつ湖南こなん_{名めい安國やすくに}

共きょう理り二に千せん石せき。分ぶん憂ゆう重じゅう循良。龔卓世よ難なん人じん。誰だれ能のう體たい如傷。治ち柄がら付づけ按察。善ぜん化か期き周しゅう棠。耘鋤去さ稂莠。藥石やくせき醫い膏肓こうこう。施ほどこせ敎きょう待まち富とみ庶。務つとむ本ほん惟おもんみ耕こう桑くわ。宣せん流りゅう勤つとむ導しるべ率りつ。受委攬治綱つな。膏あぶら潤じゅん洽あまね春雨はるさめ。威い克かつ嚴いむ秋霜しゅうそう。黜陟稱しょう幽明ゆうめい。貪むさぼ猾遠退藏たいぞう。民みん安やす俗ぞく向こう善ぜん。禮れい義知よしとも大だい防ぼう。提ひさげ將はた一道いちどう命いのち。撫なで活かつ倚忠良りょう。所以ゆえん重じゅう其選。敷じき政せい要よう得とく當とう。精せい剛つよし兼けん愷悌。然しか後こう愜衆望しゅうぼう。吾われ友國ともくに卿きょう父ちち。英えい達たち傾かたぶけ班はん行ぎょう。經けい術じゅつ植うえ其本。才藝さいげい攻おさむ文章ぶんしょう。論ろん思おもえ與あずか讜議。理り棼復鋤すき荒あら。不ふ器うつわ君子人くんしじん。旁つくり通どおり該衆長ちょう。曾仗嶺みね嶠節。威い惠めぐみ民みん未み忘。末すえ俗ぞく要よう歸き厚あつ。遺のこ才ざい多た薦こも揚あげ。利器りき無む盤ばん錯。恢恢刃は發はつ鋩。觀かん風かぜ勤つとむ周しゅう度ど。首くび善重よししげ虞おそれ庠。天心てんしん眷勞績。陞擢名めい益えき昌あきら。恪勤かっきん靡夙夜よる。引道陳ひね羲皇。事業じぎょう更さら煥赫。才ざい譽ほまれ殊こと未央みお。全ぜん羅ら國府こくふ庫こ。地ち沃物蕃昌ばんしょう。頑嚚俗ぞく難なん化か。訟牒雲くも堆うずたか牀ゆか。飢かつえ窮きゅう聚萑蒲がま。豪ごう富とみ武たけ莊そう鄕。邑宰或ある無む良りょう。不ふ軟類麤強。習尙況きょう甄濟。從したがえ善ぜん如登岡おか。人ひと非ひ經濟けいざい幹みき。化か機き誰だれ開張かいちょう。公おおやけ今こん荷重かじゅう寄よせ。意氣いき先さき激昂げっこう。烹鮮戒勿擾。去さ苛先猛もう狼おおかみ。漸やや磨すり新舊しんきゅう染しみ。發育はついく噓三さん陽ひ。南みなみ人じん刮目かつもく待まち。寬ひろし猛もう宜よろし相あい將しょう。細大さいだい俱致曲きょく。利り病びょう分ぶん毫芒。吏畏民みん樂らく業ぎょう。懲勸仍年穰みのる。仁じん威い仗舊聲ごえ。化か行ぎょう應おう無な方かた。朝廷ちょうてい方かた渴賢。訪おとずれ屈こごめ須采芳よし。政成まさなり還かえ大だい受。隆たかし委い入にゅう廟びょう廊ろう。經濟けいざい乃能事のうじ。大廈たいか須棟樑。勿察淸水しみず魚ぎょ。更さら恢河海うみ量りょう。澄きよし淆不淸濁せいだく。千頃波汪汪。酬むくい酢す一いち世事せじ。包括ほうかつ休きゅう有光ありみつ。

書しょ驄馬契ちぎり軸じく

烏がらす府ふ是ぜ高だか選せん。登とう臺だい要よう振ふ綱つな。寧やすし爲ため強きょう項こう子こ。莫化繞にょう指ゆび剛ごう。風霜ふうそう生せい約やく誓ちかい。淸濁せいだく入にゅう激げき揚あげ。時とき平ひらた多た暇ひま日び。君子くんし有ゆう弛張しちょう。花筵はなむしろ開ひらき禮れい會かい。秩秩戒無荒あら。共とも把わ歲とし寒かん操みさお。相對そうたい輸心腸ちょう。

寄よせ堂どう弟おとうと海うみ州しゅう申さる牧まき使し永えい洪ひろし

別べつ久ひさ歲月さいげつ深ふか。思想しそう詎能任にん。前まえ承うけたまわ金玉きんぎょく音おん。中有ちゅうう不ふ刊かん心しん。老兄ろうけい身み抱だき病びょう。坐すわ因いん白髮はくはつ侵おかせ。閑中得とく舊友きゅうゆう。俱是雙そう南みなみ金きん。柴しば荊住百ひゃく川がわ。蕭しょう索さく無人むじん尋ひろ。雖贍朝夕あさゆう奉たてまつ。無む以開幽かそけ襟えり。君きみ今こん典てん鉅州。善政ぜんせい人じん所しょ欽。須分魯肅粟あわ。百ひゃく斛誰能のう禁きん。況きょう復ふく中ちゅう賢けん聖ひじり。以酒代だい書淫しょいん。一いち斗と詩し百ひゃく篇へん。李り白方しらかた時じ吟ぎん。酒色しゅしょく元もと不離ふり。眼め花落はなおち花はな林りん。好こう待まち此兩豪ごう。好こう醪もろみ無む算さん斟。卽そく如吾與あずか子こ。相對そうたい無む古今ここん。壬みずのえ五ご廿にじゅう之の七なな。聊以此代このしろ音おん。

莊そう周しゅう夢ゆめ蝶ちょう圖ず

莊そう周しゅう夢ゆめ蝴蝶こちょう。蝴蝶こちょう夢ゆめ莊そう周しゅう。周しゅう蝶ちょう無む定一さだいち。眞ま幻まぼろし將はた焉求。因いん之の觀み大化たいか。化か化か元もと同流どうりゅう。神かみ奇き與あずか臭ぐさ腐くさ。形影けいえい摠浮休きゅう。

倚睡圖ず

軒のき轅ながえ夢ゆめ華胥かしょ。世道せどう登のぼり煕ひろし皥。盧の生なま隱かくれ呂りょ枕まくら。得意とくい還かえ潦にわたずみ倒たおせ。方ほう將すすむ辨べん隍鹿。已やめ失しつ巫みこ山雨さんう。不ふ如成蘧裏。闔眼送おく今こん古いにしえ。

次じ礪原_宋そう軼畫が屛韻四よん絶ぜっ

天機てんき自じ活動かつどう。游泳ゆうえい俱性得とく。相あい忘湖海中かいちゅう。何なに物ぶつ嬰其樂らく。

理り可か躍おど處しょ會かい。樂らく豈あに濠ほり上じょう得う。欲よく尋ひろ至いたり樂らく地ち。無む樂らく是ぜ眞ま樂らく。〈右みぎ四よん魚さかな〉

至人しじん本ほん無む累るい。妙みょう道どう貴き淵ふち默だま。會得えとく安心あんしん方かた。不要ふよう大だい還かえ藥くすり。

目擊もくげき道どう自存じそん。神通じんずう外語がいご默だま。從したがえ知ち靜せい境さかい頭あたま。還かえ有ゆう長年ながねん藥やく。〈右みぎ四よん仙せん〉

題だい逍遙しょうよう堂どう_{三さん五ご七なな言こと}

秋江あきえ漲みなぎ。細雨さいう霏。鼓笛こてき催歸興きょう。倦客已やめ忘歸。座下ざか蛾眉がび如媚我が。我わが心しん如絮濕しめ難なん飛ひ。

醉よい中ちゅう贈おく客きゃく

花はな已やめ謝しゃ酒しゅ已やめ闌たけなわ。君くん與あずか我意がい俱閑。前ぜん望もち煙けむり雲くも闊。聊憑酒しゅ面めん寬ひろし。

姜きょう晉すすむ原はら_{龜かめ孫まご}夫人ふじん挽詞

德美とくみ時じ爲ため範はん。天てん慳不與あずか年とし。崇たかし封ふう貞さだ敬けい字じ。芳よし籍せき上じょう淸せい仙せん。厚あつ夜よる玄げん扃閉。空閨くうけい曉あかつき月がつ穿ほじ。劍けん從したがえ重陽ちょうよう合あい。名めい許もと外がい人傳ひとづて。莫恨無む蘭らん玉だま。傳家でんか不ふ失しつ賢けん。

李り參議さんぎ元之もとゆき挽詞_{名めい世よ仁ひとし}

達人たつじん任にん去來きょらい。安やす得とく而處順じゅん。萬まん類るい摠隨化か。流りゅう芳よし實じつ賢けん俊しゅん。元之もとゆき是ぜ吾われ友とも。於道早さ篤信とくしん。性せい稟元直ちょく諒りょう。氣き岸がん更さら勁峻。立身りっしん本ほん經けい術じゅつ。才ざい譽ほまれ日び登のぼり進すすむ。天てん衢雲路ろ迥。鵬翼ほうよく摶風迅。薇ぜんまい垣かき與あずか柏かしわ府ふ。讜論朝あさ綱つな振ふ。斗と舌した轉てん召棠。盤ばん錯恢游ゆう刃は。入にゅう參さん銓注議ぎ。方かた皐さつき辨べん駑駿。生平おいだいら有ゆう執と守もり。內顧無む悔吝。如何いか望もち希まれ年ねん。二豎にじゅ來らい作さく疢。終おわり然しか天てん不ふ遺のこ。前ぜん堂どう出で素もと殯。善積よしづみ還かえ食しょく報ほう。餘慶よけい在ざい祚胤。門もん高だか容よう駟し蓋ぶた。幹みき蠱儘忠ちゅう藎。公おおやけ逝猶不ふ亡ほろび。夜よる臺だい藏ぞう瑜瑾。哭挽朋とも舊情きゅうじょう。耿耿憑誰訊。

朴ほお二に相そう_說せつ挽詞

操みさお心こころ要よう守もり約やく。秉德擬なずらえ前賢ぜんけん。自然しぜん性分しょうぶん得とく。寧やすし爲ため外物がいぶつ遷。早さ歲とし篤あつし於學。得とく善ぜん常つね拳拳けんけん。馳はせ英えい再さい折おり桂かつら。逸いっ驥加策さく鞭むち。聲譽せいよ滿まん朝あさ著ちょ。華はな藻も耀靑錢ぜに。佐さ理り歷れき卿きょう相しょう。弘ひろし化か事ごと更さら全ぜん。如何いか二に豎侵。不ふ及耳順じゅん年ねん。冥めい然しか乘の大化たいか。眉まゆ宇隔重泉しげいずみ。衆しゅう心こころ如失倚。朋とも舊きゅう意い益えき煎せんじ。念ねん予よ心こころ夙契。步武ほぶ相しょう後先あとさき。靑年せいねん到いた白首しらくび。久ひさ敬志たかし常つね堅けん。公おおやけ今いま先さき我わが逝。有ゆう淚なみだ長ちょう河かわ懸かか。幽明ゆうめい意い可か通どおり。聽我薤らっきょう露ろ篇へん。

朴ぼく正ただし_聃孫挽詞

篤實とくじつ根ね於性。堅けん貞さだ不ふ詭隨。胸むね中有ちゅうう綜理。事こと上じょう無む棼絲。早年そうねん登とう上うえ舍しゃ。才ざい選せん入いれ仕つかまつ版ばん。勤つとむ謹理官かん務つとむ。晩ばん躡寺監かん判ばん。中ちゅう歲とし値ち橫よこ禍か。胤たね子こ死し於直。兒こ孫まご滿まん眼め膝ひざ。腸ちょう裂きれ忍にん食しょく息いき。末すえ遭衛玉だま沈。怛怛心しん更さら傷きず。心こころ傷きず仍作祟たたり。疾やまし作さく效こう無な方かた。奄然身み就木。天てん何なん不ふ與あずか年とし。伊い我わが托たく姻婭。意い結由ゆゆ宿緣しゅくえん。含淚顧兒小しょう。耿耿徒と自じ悲。幽明ゆうめい此永別べつ。只ただ有心うしん相知おうち。

辟寒犀さい

霜しも威い折おり綿めん風ふう裂きれ膚はだ。狐きつね裘無權けん酒しゅ無力むりょく。却陰何なん術じゅつ敵てき玄げん冥めい。南みなみ交有犀さい寒さむ可か辟。開ひらけ元もと年中ねんじゅう獻けんじ一角いっかく。日照ひでり黃金おうごん色相しきそう射しゃ。金きむ鑾殿高だか玉樓ぎょくろう粟あわ。襲かさね人じん一いち團だん和氣わけ積つもる。烈れつ熾おき不ふ數すう爐ろ火ひ烘。回かい陽ひ似に斡春有ゆう脚あし。天てん公こう巧たくみ賦ふ物性ぶっせい殊こと。炎ほのお海うみ多年たねん氣き交錯こうさく。此物何處どこ稟此奇き。奪だつ換かわ寒さむ威たけし暖だん相しょう薄うす。我欲がよく持じ此問眞ま宰おさむ。辟塵却暑渠みぞ亦また得う。君王くんのう莫倚一物いちもつ功こう。遍あまね舒陽和わ籠かご四よん極きょく。

鑿氷行ぎょう

寒かん雲くも漠漠ばくばく山やま雪ゆき深ふか。天地てんち閉塞へいそく成なり錮陰。層そう氷ごおり峨峨がが高だか倚薄。千夫荷斧鑿江心。江こう心しん氷ごおり片へん出で深ふか穴あな。積せき鐵てつ稜稜りょうりょう堆うずたか玉だま屑くず。鑿聲驚おどろき透とおる馮夷宮みや。殷殷いんいん數すう里さと雷かみなり不ふ絶ぜっ。車くるま輸馬馱藏土宇つちう。傍はた江こう羅列られつ高だか倉くら庾。下した隨ずい潛せん陽ひ蘊地中ちゅう。尖とんが飆助寒かん日び未み煦。明年みょうねん四よん陽ひ萬まん蟄起。司つかさ寒かん獻けんじ韭にら氷ごおり用よう始はじめ。開ひらき藏元くらもと爲ため順じゅん時じ令れい。闔闢陰陽いんよう天與てんよ理り。朱しゅ夏なつ炎えん雲くも爇天紅べに。金きむ流石さすが鑠深甑こしき中ちゅう。此時一いち片へん敵てき萬金まんきん。所以ゆえん普ふ用よう於無窮きゅう。生なま寒かん鑑かん肉にく御ご至尊しそん。瑪瑠盤ばん冷ひや排はい朝あさ暾。聖ひじり孝たかし格かく天てん先さき廟びょう薦こも。皇すめらぎ恩おん下か覃頒千せん門もん。慣看淸きよし朝明あさけ玉だま燭しょく。燮調四よん時じ無む愆伏。民みん不ふ扎瘥天てん不ふ災わざわい。讀罷豳詩歌か位い育いく。

送おく希まれ剛つよし

希まれ剛つよし投とう筆ひつ手しゅ雕戈。意氣いき已やめ淸きよし蒲がま猪いのしし波は。身上しんじょう征せい袍ほう爛ただれ宮みや錦にしき。袖そで裏うら寶劍ほうけん盤ばん靑あお蛇へび。少年しょうねん曾踏北門きたもん道どう。奪だつ盡つき虜とりこ情じょう籌策老ろう。俊しゅん鶻秋空あきぞら鐵てつ翮高。玉堂きょくどう烏がらす府ふ名譽めいよ早はや。自じ是ただし君くん身み爲國ためくに器き。文ぶん經けい武たけ緯ぬき兼けん儒智。才ざい贍八はち斗と筆生ひっせい花はな。不ふ獨どく穿ほじ楊有猿臂えんぴ。上馬かみうま擊げき賊ぞく下草したくさ檄げき。古來こらい此人名めい無敵むてき。謀はかりごと懷ふところ落落定じょう遠とお侯こう。齷齪あくせく何なに數すう薛與狄。煩はん君くん佐幕さばく善ぜん爲ため記き。不ふ久ひさ閫寄應おう歸き已やめ。朝廷ちょうてい他日たじつ倚范韓かん。漢かん家か飛ひ將はた徒と姓せい李り。

別べつ李り參さん判ばん_堣歸かえり覲嶺南みなみ。醉よい書しょ。

季き鷹たか思おもえ鄕借蓴鱸。淵ふち明あかり把わ菊きく愁無酒しゅ。時とき淸酒せいしゅ美び官かん爲ため貴とうと。主しゅ聖せい言行げんこう今こん獨どく有ゆう。問とい君くん何事なにごと苦く思おもえ歸き。逢秋對たい菊きく先さき念ねん母はは。誦君此語淚なみだ雙そう流りゅう。我わが是ぜ孤兒こじ誰だれ與あずか友とも。仰天ぎょうてん天てん多た俯多地ち。悠悠ゆうゆう簇むらが簇むらが人ひと如藪。人ひと如藪奈如之の何なに。未み別べつ江頭えがしら吾われ亦また負まけ。

希まれ醇あつし第だい醉よい後ご翌日よくじつ。得とく蕉葉之の惠めぐみ。兼けん敍じょ別べつ懷ふところ以奉。

天生あもう酒しゅ。君くん與あずか我わが年とし不ふ後ご。人ひと言げん可か敬けい亦また可か懼。然しか有ゆう天性てんせい任にん誰だれ咎とがめ。醉よい對たい高だか屛蕉葉は厚あつ。今朝けさ得とく之の驚おどろき老ろう叟。蛟みずち綃綠淨きよし不ふ忍にん手しゅ。軟嫩可か口こう還かえ自負じふ。多謝たしゃ故人こじん懷ふところ舊友きゅうゆう。故こ分數ぶんすう葉は馳はせ下か走はし。