周しゅう易えき鄭てい康成やすなり註

鄭てい康成やすなり註
作者さくしゃ：王おう應おう麟　南みなみ宋そう

宋そう王おう應おう麟編。應おう麟字伯はく厚あつ，慶けい元もと人ひと，自署じしょ浚儀，蓋ぶた其祖籍せき也。淳あつし祐ゆう元年がんねん進士しんし，寶たから祐ゆう四年復中博學鴻詞科，官かん至いたり禮れい部ぶ尚書しょうしょ，兼けん給きゅう事ごと中ちゅう。事蹟じせき具ぐ《宋そう史し》、《儒林傳でん》。案あん，隋ずい志こころざし載の鄭てい元もと周しゅう易えき註九きゅう卷かん，又また稱たたえ鄭てい元もと王おう弼二に註。梁はり陳列ちんれつ於國學がく。齊ひとし代だい，惟おもんみ傳でん鄭てい義よし。至いたり隋ずい，王おう註盛行せいこう，鄭てい學まなぶ浸ひた微ほろ。然しか新しん唐とう書しょ著錄ちょろく十じゅう卷かん。是ぜ唐とう時じ，其書猶なお在ざい，故こ李り鼎かなえ祚集解かい多た引之。宋そう崇たかし文ぶん總そう目め惟おもんみ載の一いち卷かん，所存しょぞん者しゃ僅文言もんごん、序じょ卦け、說せつ卦け、雜ざつ卦け四よん篇へん，餘よ皆みな散佚さんいつ。至いたり中興ちゅうこう書目しょもく，始はじめ不ふ著錄ちょろく（案あん中興ちゅうこう書しょ目今もっこん不ふ傳つて。此據馮椅易學えきがく所しょ引）。則のり亡ほろび於南北きた宋そう之の閒あいだ。故こ晁あきら說せつ之の、朱しゅ震しん尚なお能見のうみ其遺文いぶん，而淳熙以後ご，諸しょ儒昻罕所稱しょう引也。應おう麟始旁つくり摭諸書しょ，裒爲此帙，經文きょうもん異字いじ亦また皆みな並存へいそん。其無經文きょうもん可か綴つづり者しゃ，則のり總そう錄ろく於末簡。又また以元註多言たげん互體，幷取左ひだり傳でん、禮れい記き、周しゅう禮あや正義まさよし中ちゅう論ろん。互體者しゃ八はち條じょう，以類附ふ焉。考こう元もと，初はつ從したがえ第だい五ご，元げん先さき受京氏し易えき，又また從したがえ馬うま融とおる，受費氏し易えき，故こ其學出入でいり於兩家か。然しか要よう其大旨むね，費ひ義ぎ居きょ多た，實じつ爲ため傳でん易えき之の正せい脈みゃく。齊ひとし，陸りく澄きよし與あずか王おう儉書曰：「王おう弼註易えき，元學もとがく之の所ところ宗はじめ，今こん若わか祟たたり儒，鄭てい註不可ふか廢はい。」其論最さい篤あつし。唐とう初はつ，詔みことのり修正しゅうせい義ぎ，仍黜鄭てい崇たかし王おう，非ひ達識たっしき也。應おう麟能於散佚さんいつ之の餘よ，蒐羅放ひ失しつ，以存漢かん易えき之の一線いっせん，可か謂いい篤志とくし。遺のこ經けい研けん心こころ古こ義ぎ者しゃ矣，近時きんじ惠めぐみ棟とう，別べつ有ゆう考こう訂てい之の本ほん。體からだ例れい較密，然しか經營けいえい剏始，實じつ自じ應おう麟。其捃拾じつ之の勞ろう亦また不可ふか泯。今こん並なみ著ちょ於錄，所以ゆえん兩りょう存そん其功也。 謹按前代ぜんだい遺書いしょ。後人こうじん重じゅう編者へんしゃ。如有所しょ竄改增益ぞうえき，則のり從したがえ重じゅう編へん之の時代じだい。曾子子こ思おもえ子こ之これ類るい是也これや。如全輯舊文ぶん，則のり仍從原書げんしょ之の時代じだい。故こ此書雖宋人じん所しょ輯。而列於漢代だい之の次つぎ，後ご皆みな倣此。

乾いぬい

九きゅう二に，見み龍りゅう在田ありた。二に於三さん才さい為ため地道じみち。地上ちじょう即そく田た，故こ稱しょう田でん也。九きゅう二に利り見み九きゅう五ご之これ大人おとな。九きゅう三さん，君子くんし終日しゅうじつ乾いぬい乾いぬい。三さん於三さん才さい為ため人道じんどう。有ゆう乾徳けんとく而在人道じんどう，君子くんし之の象ぞう。九きゅう五ご，飛ひ龍りゅう在天ざいてん。五ご於三さん才さい為ため天道てんとう。天てん者しゃ清明せいめい無形むけい而龍在ざい焉，飛ひ之の象ぞう也。上うえ九きゅう，亢龍こうりょう有ゆう悔。堯之末まつ年ねん，四よん凶きょう在朝ざいちょう，是ぜ以有悔，未み大凶だいきょう也。用よう九きゅう，見み羣龍无首，吉きち。六爻皆體龍一作乾，羣龍之の象ぞう也。舜しゅん既すんで受道，禹與稷きび、契ちぎり咎とがめ繇之屬ぞく，並なみ在ざい于朝。萬物ばんぶつ資始すけはる乃統天てん。資し，取と也。統すべ，本ほん也。大人おとな造づくり也。造みやつこ，為ため也。不ふ成なり乎名，當とう隱かくれ之これ時じ以從世俗せぞく。不ふ自じ殊こと異い无所成なり名めい也。確かく乎其不可ふか拔，拔移也。聖人せいじん作さく，作さく起おこり也。利貞としさだ者しゃ情じょう性せい也。

坤ひつじさる

履くつ霜しも，履くつ讀為禮れい。六ろく二に，直也なおや，方ほう也，地ち之これ性せい。此爻得とく中氣ちゅうき而在地上ちじょう，自然しぜん之これ性せい，廣こう生なま萬物ばんぶつ，故こ主動しゅどう直ちょく而且方かた。龍りゅう戰せん于野，聖人せいじん喻龍，君子くんし喻蛇儀禮ぎれい注ちゅう蛇へび龍りゅう君子きみこ之これ類るい。必有餘あまり殃，殃禍惡あく也。慊於无陽，慊讀如「羣公溓」之の「溓」，古書こしょ篆作「立だて」。心こころ與あずか水みず相近すけちか，讀者どくしゃ失しつ之の，故こ作さく溓。溓，雜ざつ也。隂謂此，上うえ六ろく也。陽ひ謂いい今いま，消息しょうそく用事ようじ，乾いぬい也。上うえ六ろく為ため蛇へび，得とく乾いぬい氣き，雜ざつ似に龍りゅう釋しゃく文ぶん云うん鄭てい作つくる謙けん。

屯たむろ

而不寧やすし讀而，曰能。能のう，猶なお安やす也。六ろく二に，乗馬じょうば般如。馬うま牝牡ひんぼ曰乗。冓，猶なお會かい也。六ろく三さん，機き不ふ如舎。弩いしゆみ牙きば也。

蒙こうむ

蒙こうむ，幼よう小しょう之の貌。齊ひとし人じん謂いい萌もえ為ため蒙こうむ也。蒙こうむ亨とおる，匪我求もとめ童蒙どうもう。蒙こうむ者しゃ，蒙こうむ蒙こうむ，物もの初生しょせい形がた，是ぜ其未開ひらく著ちょ之の名めい也。人ひと幼稚ようち，曰童，未み冠かんむり之の稱しょう。亨とおる者しゃ，陽ひ也。互體震ふるえ而得中ちゅう，嘉よしみ會かい禮れい通どおり，陽ひ自動じどう其中，徳とく施ほどこせ地道じみち之の上うえ，萬物ばんぶつ應おう之の而萌芽ほうが生せい。教授きょうじゅ之の師し取と象ぞう焉。修道しゅうどう藝げい於其室しつ，而童蒙どうもう者しゃ求もとめ為之ためゆき，弟子でし非ひ已やめ乎求之の也。弟子でし初はつ問とい，則のり告つげ之の以事，義よし不ふ思おもえ其三隅すみ。相あい況きょう以反解かい而筮者しゃ，此勤師し而功寡，學者がくしゃ之の災わざわい也。瀆筮則そく不ふ復ふく告つげ，欲よく令れい思おもえ而得之の，亦また所以ゆえん利り，義ぎ而幹事かんじ是也これや。初はつ六ろく，用よう說せつ桎梏しっこく。木在きさら足あし，曰桎。在ざい手て，曰梏。九きゅう二に，包つつみ蒙こうむ。包つつみ當とう作さく彪あや，彪ぴょう，文也ふみや。六ろく五ご，順じゅん以巽也。巽たつみ，當とう作さく遜へりくだ。

需

需讀為ため秀しゅう。陽氣ようき秀しゅう而不直前ちょくぜん者しゃ，畏かしこ上じょう坎也。位い乎天位い。位くらい，音おと涖。宴うたげ，享とおる宴えん也。九きゅう二に，需于沚。九きゅう三さん，致戎至いたり。

訟

辯才べんさい曰訟。有ゆう孚まこと咥。咥，覺さとし悔貌。九きゅう二に，歸き而逋其邑人じん三さん百ひゃく戸こ，无眚。小國しょうこく之の下しも大夫たいふ，采さい地方ちほう一いち，成なり其定税ぜい，三さん百ひゃく家いえ，故こ三さん百ひゃく戸こ也。不易ふえき之の田た，歲さい種之たねゆき。一いち易えき之の田た，休きゅう一いち歲さい乃種。再さい易えき之の田た，休きゅう二に歲さい乃種。言げん至いたり薄うす也。茍自藏じぞう隱かくれ，不ふ敢與五ご相そう敵てき，則のり无災眚眚過か也。患，至いたり惙也。惙，憂ゆう也。九きゅう四よん，渝然也。上うえ九きゅう，鞶帶。佩鞶之の帶おび。三拕之拕徒可反。

師し

軍ぐん二に千せん五ご百ひゃく人為じんい師し。多た以軍為ため名めい，次じ以師為ため名めい，少しょう以旅為ため名めい。師し者しゃ，舉中之の言げん，丈人たけと能のう以法度はっと長ちょう於人。丈たけ之の言げん長ちょう，能のう御ご衆しゅう有正ありまさ人じん之の徳とく，以法度はっと為ため人じん之これ長ちょう，吉よし而无咎とがめ，謂いい天子てんし諸侯しょこう，主おも軍ぐん者しゃ。初はつ六ろく，否ひ藏ぞう凶きょう。否いや，方ほう有ゆう反はん。九きゅう二に，王おう三さん錫すず命いのち。寵ちょう，光耀こうよう也。

比ひ

初はつ六ろく，有ゆう孚まこと盈みつる缶かん。爻辰在ざい未み上うえ，值東井い。井い之の水みず，人にん所しょ汲用。缶かん，缶かん汲器也。九きゅう五ご，王おう用よう三さん驅か，失しつ前ぜん禽。王おう因いん天下でんか顯あらわ，習兵于蒐狩かり焉。驅か禽而射しゃ之の，三さん則のり已やめ發はつ，軍ぐん禮れい也。失しつ前ぜん禽者，謂いい禽在前ぜん来者らいしゃ，不ふ逆ぎゃく而射之の，傍はた去さ又また不ふ射い，唯ただ背走はいそう者しゃ，順じゅん而射之の。不ふ中なか亦また已やめ，是ぜ皆みな所以ゆえん失しつ之の，用兵ようへい之の法ほう亦また如之。降くだ者しゃ不ふ殺ころせ，奔者不ふ禁きん，皆みな敵てき不ふ殺ころせ，以仁恩おん養やしなえ威い之の道みち。

小しょう畜

畜養也。九きゅう三さん，輿こし説せつ輻や。謂いい輿こし下か缚木，與あずか軸じく相しょう連れん。鈎かぎ心しん之の木き是也これや輻や伏ふく莬。

泰やすし

泰たい，通つう也。后きさき以財成なり，天地てんち之の道みち，財たから節也せつや。輔相左右さゆう，助じょ也。以者取と其順隂陽之の節ふし，為ため出で内ない之の政せい。春はる崇たかし寛仁かんじん，夏なつ以長養やしなえ，秋あき教きょう收斂しゅうれん，冬ふゆ勅みことのり蓋ぶた藏ぞう，皆みな可か以成物ぶつ助じょ民みん也。初はつ九きゅう，彚，類るい也。茹，牽引けんいん也。茅ちがや喻君，有ゆう絜白之の徳とく。臣下しんか引其類るい而仕之の。九きゅう二に，荒あら，讀為康やすし，虚きょ也。六ろく五ご，帝みかど乙おつ歸き妹いもうと，以祉元吉もとよし。五ご爻，辰たつ在ざい卯う春はる，為ため陽ひ中ちゅう，萬物ばんぶつ以生。生育せいいく者しゃ，嫁よめ娶めと之これ貴とうと。仲春ちゅうしゅう之これ月がつ，嫁よめ娶めと男女だんじょ之の禮れい，福ぶく祿ろく大吉だいきち。

否いや

九きゅう四よん，畴離祉。九きゅう五ご，繋つなぎ于苞桑くわ。猶なお紂囚文ぶん王おう於羑里さと之の獄ごく，四臣獻珍異之物而終免於難，繫于苞つと桑くわ之の謂いい。

同人どうじん

乾いぬい為ため天てん，離はなれ為ため火ひ，卦け體たい有ゆう巽たつみ。巽たつみ為ため風ふう，天てん在ざい上うえ，火ひ炎上えんじょう而從之の，是ぜ其性同どう於天也。火ひ得とく風ふう，然しか後こう炎上えんじょう益えき熾おき，是これ猶なお人君じんくん在ざい上うえ，施政しせい教きょう使し天下でんか之これ人にん和かず同どう而事之の，以是為ため人じん和わ同どう者しゃ，君きみ之の所為しょい也。故こ謂いい之の同人どうじん。風ふう行ぎょう无所不ふ遍あまね，遍へん則のり會かい通どおり之の徳とく大だい行ぎょう，故こ曰同人じん于野，亨とおる。六ろく二に，天子てんし諸侯しょこう后きさき夫人ふじん。茅ちがや，音おと苗なえ。無む子こ不出ふしゅつ。九きゅう三さん，莽，叢くさむら木き也。九きゅう四よん，乗じょう其庸。

大だい有ゆう

明あかり辯べん遰也讀如明星みょうじょう晢晢。六ろく五ご，體たい離はなれ處しょ乾いぬい之の上うえ，猶なお大臣だいじん有ゆう聖ひじり明あきら之の徳とく，代だい君くん為政いせい，處しょ其位有ゆう其事，而理之の也。元げん亨とおる者しゃ，又また能のう長ちょう羣臣以善使し，嘉よしみ會かい禮れい通どおり，若わか周しゅう公こう攝政せっしょう，朝あさ諸侯しょこう於明堂どう是也これや。

謙けん

君子くんし有終ゆうしゅう。艮うしとら為山いざん，坤ひつじさる為ため地ち。山やま體たい髙，今こん在地ざいち下か。其於人道じんどう，高こう能のう下下しもじも，謙之けんじ象ぞう。亨とおる者しゃ，嘉よしみ會かい之の禮れい，以謙為ため主ぬし。謙けん者しゃ，自じ貶損以下いか人ひと，唯ただ艮うしとら之の堅固けんご，坤ひつじさる之の厚あつ順じゅん，乃能終おわり之の。故こ君子くんし之の人ひと有終ゆうしゅう也。捊多益えき寡捊取也，撝謙讀為宣せん。初はつ六ろく，牧まき養よう也。

豫よ

坤ひつじさる順じゅん也。震動しんどう也。順じゅん其性而動者しゃ，莫不得とく其所，故こ謂いい之の豫よ。豫よ喜き，豫よ悦樂えつらく之の貌也。震ふるえ又また為ため雷かみなり，諸侯しょこう之の象ぞう。坤ひつじさる又また為ため衆しゅ，師し役やく之の象ぞう。故こ利り建けん侯こう行ぎょう師し。靁出地ち奮。奮，動どう也。靁動於地上じょう，而萬物ぶつ豫よ也。忒差也。六ろく二に，砎于石せき右みぎ八切盖謂唐砎也。六ろく三さん，盱，誇ほこ也。九きゅう四よん，由よし豫よ。由よし，用よう也。簪かんざし，速そく也。上うえ六ろく，冥めい豫よ冥めい讀為鳴な。

隨ずい

震動しんどう也。兑説也。内うち動どう之の以徳，外そと説せつ之の以言，則のり天下でんか之の人ひと一作民咸慕其行，而隨從ずいじゅう之の，故こ謂いい之の隨したがえ也。既すんで見み隨從ずいじゅう，能のう長ちょう之の以善，通つう其嘉禮れい和之かずゆき，以義幹みき之の，以正則せいそく功こう成なり，而有福ぶく。若わか无此四よん徳とく，則のり有ゆう凶きょう咎とがめ焉。出だし門もん交有功ゆうこう，震ふるえ為ため大だい塗ぬり，又また為ため日門ひかど，當とう春分しゅんぶん，隂陽之これ所しょ交也。是ぜ臣しん出で君くん門もん，與あずか四方しほう賢人けんじん交，有ゆう成功せいこう之の象ぞう也。昔むかし舜しゅん慎まき徽五典てん，五ご典てん克かつ從したがえ，納おさめ于百ひゃく揆，百ひゃく揆時序じょ，賓まろうど于四門もん，四よん門かど穆きよし穆きよし，是ぜ其義也よしや。

蠱

先さき甲かぶと三さん日にち，後こう甲かぶと三さん日にち。甲かぶと者しゃ，造作ぞうさく新令しんれい之これ日にち。先さき之の三日而用辛也，欲ほっ取と改あらため過か自じ新しん之の義ぎ。後ご之の三さん日にち而用丁ひのと也，取と其丁寧ていねい之の義ぎ。

臨

臨，大だい也。陽氣ようき自じ此浸而長大だい。陽ひ浸ひた長ちょう矣，而有四よん徳とく，齊ひとし功こう於乾，盛もり之の極ごく也。人ひと之の情じょう盛もり則そく奢おご滛奢淫いん，將はた亡ほろび。故こ戒以凶きょう也。臨卦，斗と建けん丑うし而用事ようじ，殷いん之の正月しょうがつ也。當とう文ぶん王おう之の時とき，紂為无道，故こ于是卦け為ため殷いん家か著ちょ興きょう衰おとろえ之の戒，以見周しゅう改あらため殷いん正之まさゆき數すう，云うん臨。自じ周しゅう二に月がつ用事ようじ，訖其七月至八月而遯卦受之，此終而復始はじめ，王命おうめい然しか矣。

觀かん

坤ひつじさる為ため地ち，為ため衆しゅ。巽たつみ為ため木き，為ため風ふう。九きゅう五ご，天子てんし之の爻，互體有ゆう艮うしとら。艮うしとら，為ため鬼門きもん，又また為ため宫闕。地上ちじょう有木ありき，而為鬼門きもん宫闕者しゃ，天子てんし宗廟そうびょう之の象ぞう也。觀かん盥たらい而不薦こも，諸侯しょこう貢みつぎ士し於天子こ，鄉さと大夫たいふ貢みつぎ士し於其君くん，必以禮れい賔之。唯ただ主人しゅじん盥たらい而獻賔，賔盥而酢。主人しゅじん設しつらえ薦こも，俎まないた則そく弟子でし也。初はつ六ろく，童わらわ觀かん。童わらわ稚やや也。

噬嗑

敕法。敕，猶なお理り也。九きゅう四よん，噬乾胏。胏，簀す也。上うえ九きゅう，離はなれ為ため槁けやき木き，坎為耳みみ，木在きさら耳みみ上じょう，何なん校こう滅めつ耳みみ之の象ぞう也。聰さと不ふ明也あきや，目め不明ふめい，耳みみ不ふ聰さとし。

賁

賁，變へん也。文飾ぶんしょく之の貌。賁，文飾ぶんしょく也。離はなれ為ため日び，日にち，天文てんもん也。艮うしとら為石ためし，石せき，地文ちぶん也。天文てんもん在ざい下した，地文ちぶん在ざい上うえ，天地てんち之の文ぶん交，相そう飾かざり成なり賁者也。猶なお人君じんくん以剛柔やわら仁義じんぎ之の道みち，飾かざり成なり其徳也とくや。剛つよし柔やわら雜ざつ，仁義じんぎ合あい，然しか後ご嘉よしみ會かい禮れい通どおり，故こ亨とおる也。卦け互體坎艮，艮うしとら止とめ于上，坎險於下おした，夾震在中ざいちゅう，故こ不利ふり大だい行ぎょう。小しょう有ゆう所しょ之の，則のり可か矣。折おり獄ごく。折おり，斷だん也。初はつ九きゅう，舎しゃ輿こし而徒。六ろく四よん，賁如燔如。六ろく四よん，巽たつみ爻也。有ゆう應おう於初九きゅう，欲よく自じ飾かざり以適初はつ，既すんで進退しんたい未定みてい，故こ燔如也。白馬はくば翰如。謂いい九きゅう三さん位い在ざい辰たつ，得とく巽たつみ氣き為ため白馬はくば。翰，猶なお幹也みきや。見み六ろく四よん，適てき初はつ未定みてい，欲よく幹みき而有之の。翰，白也はくや。

剥へず

隂氣侵おかせ陽ひ，上うえ至いたる於五，萬物ばんぶつ零落れいらく，故こ謂いい之の剥へず也。五ご隂一陽ひ，小人こども極ごく盛もり，君子くんし不可ふか有ゆう所しょ之の，故こ不利ふり有ゆう攸往也。六ろく二に，剥へず牀ゆか以辨。足あし上じょう稱しょう辨べん，謂いい近きん膝ひざ之の下した，屈こごめ則そく相近すけちか，申さる則そく相しょう逺，故こ謂いい之の辨べん。辨べん，分ふん也。蔑，輕けい慢。六ろく四よん，切きり近きん災わざわい也。切きり，急きゅう也。小人こども剥へず廬いおり，小人こども傲很，當とう剥へず徹てっ廬いおり舎しゃ而去。

復ふく

復ふく，反はん也，還かえ也。隂氣侵おかせ陽ひ，陽ひ失しつ其位，至いたり此始還かえ，反はん起おこり於初，故こ謂いい之の復ふく。陽ひ，君きみ象ぞう。君きみ失しつ國こく而還，反はん道徳どうとく更さら興きょう也。商しょう旅たび不ふ行くだり，資し貨而行ぎょう。曰商旅客りょかく也。初はつ九きゅう，无祗悔。祗，病やまい也。六ろく三さん卑復。六ろく五ご，中ちゅう以自考かんがえ，考かんがえ，成なり也。上うえ六ろく，有ゆう災わざわい眚。異い自じ内うち生せい，曰眚。自じ外そと，曰祥。害がい物ぶつ曰災。

无妄

妄，猶なお望もち。謂いい无所希望きぼう也。祐ゆう，助じょ也。六ろく二に，不ふ菑畬。一いち歲さい曰菑，二に歲さい曰新田しんでん。三さん歲さい曰畬。

大だい畜

日新にっしん絶句ぜっく，其徳連れん下か句く。良りょう馬ば逐。逐，兩りょう馬走まばせ也。日にち閑輿衞まもる，日にち習車徒と。自じ九きゅう三さん至上しじょう九きゅう，有ゆう頥象。居きょ外がい，是ぜ不ふ家いえ食しょく而養賢けん。六ろく四よん，童わらわ牛うし之の梏，元吉もとよし。巽たつみ為ため木き，互體震ふるえ。震ふるえ為ため牛うし之の足あし，足あし在ざい艮うしとら，體たい之の中なか。艮うしとら為ため手しゅ持木もちき，以就足あし，是ぜ施ほどこせ梏鄭志こころざし泠剛問とえ，蒙こうむ初はつ六ろく注ちゅう云うん，木在きさら足あし，曰桎。在ざい手て，曰梏。今こん大だい畜六ろく四よん，施ほどこせ桎于足あし，不審ふしん桎梏しっこく手足てあし，定てい有ゆう别否。答こたえ曰，牛うし無手むて故こ以足言ごと之の。六ろく五ご，豶豕之の牙きば牙きば讀為互。上うえ九きゅう，艮うしとら為ため手しゅ，手て上じょう肩かた也。乾いぬい為ため首くび，首しゅ肩かた之の間あいだ，荷物にもつ處しょ。乾いぬい為ため天てん，艮うしとら為ため徑路けいろ，天てん衢象也。

頥

朶動也。頥者，口車くちぐるま輔之名めい也。震動しんどう於下おした，艮うしとら止とめ於上。口車くちぐるま動どう而上，因いん輔嚼物ぶつ以養人じん，故こ謂いい之の頥。頥，養やしなえ也。能行よしゆき養やしなえ則そく其幹事かんじ，故こ吉きち矣。二に五ご，離はなれ爻皆得どく中ちゅう，離はなれ為ため目め觀かん象ぞう也。觀かん頥，觀かん其養賢けん與あずか不肖ふしょう也。頥中有ちゅうう物ぶつ者しゃ，口實こうじつ。自じ二に至いたり五ご，有ゆう二に坤ひつじさる，坤ひつじさる載の養やしなえ物ぶつ而人所しょ食しょく之の物もの皆みな存そん焉。觀かん其求可か食しょく之の物もの，則のり貪むさぼ亷之情じょう可か别也。

大過たいか

九きゅう二に，枯楊生せい荑。枯音姑しゅうと謂いい无。姑しゅうと山やま榆荑木き更生こうせい音おん夷えびす。謂いい山やま榆之實み，以丈夫じょうぶ年ねん過か娶めと二に十じゅう之これ女おんな，老婦ろうふ年ねん過か嫁よめ於三さん十じゅう之これ男おとこ，皆みな得とく其子。

習坎

六ろく三さん，檢けん且枕。木在きさら手しゅ，曰檢。木在きさら首くび，曰枕。六ろく四よん，尊みこと酒しゅ，簋貳，用よう缶かん，納おさめ約やく自じ牖。六ろく四よん，上じょう承うけたまわ九きゅう五ご，又また互體在ざい震ふるえ，上うえ爻辰在ざい丑うし，丑うし上じょう值斗，可か以斟之の象ぞう。斗と上じょう有ゆう建けん星ぼし，建けん星ぼし之の形かたち似に簋。貳に，副ふく也。建けん星ぼし上じょう有ゆう弁べん星ほし，弁べん星ぼし之の形かたち又また如缶。天子てんし大臣だいじん以王命いのち，出いずる?諸侯しょこう，主おも國こく尊みこと於簋副ふく，設しつらえ元もと酒さけ而用缶かん也。九きゅう五ご，祗既平たいら。祗，當為とうい坻，小しょう邱也。上うえ六ろく，繋つなぎ，拘かかわ也。爻辰在ざい己おのれ，巳み為ため虵，虵之蟠わだかま屈こごめ似に徽纆也。三さん五ご互體，艮うしとら又また與あずか震ふるえ同體どうたい，艮うしとら為ため門もん闕，於木為ため多た節ふし，震ふるえ之の所為しょい，有ゆう叢くさむら拘かかわ之これ類るい。門もん闕之内ない有ゆう叢くさむら木き，多た節ふし之の木き，是ぜ天子てんし外がい朝あさ，左右さゆう九棘之象也。外そと朝あさ者しゃ，所以ゆえん詢事之の處しょ也。左ひだり嘉よしみ石平いしだいら，罷やめ民みん焉。右みぎ肺はい石せき達たち，窮民きゅうみん焉。罷やめ民みん，邪惡じゃあく之の民みん也。上うえ六ろく，乘じょう陽ひ有ゆう邪惡じゃあく之の罪つみ，故こ縛ばく約やく徽墨，置おけ于叢棘とげ，而後公卿くぎょう以下いか議ぎ之の，其害人じん者しゃ置おけ之の圜土，而施職しょく事ごと焉。以明刑けい耻之能のう復ふく者しゃ。上うえ罪ざい三さん年ねん而赦，中ちゅう罪ざい二に年ねん而赦，下した罪ざい一いち年ねん而赦。不ふ得とく者しゃ，不ふ自じ思おもえ以得正道せいどう，終おわり不ふ自じ改あらため而出圜土者しゃ殺ころせ。故こ凶きょう。

離はなれ

明あきら兩りょう作さく。離はなれ。作さく起おこり也。九三くぞう，不ふ擊げき缶かん而歌。艮うしとら爻也。位い在ざい丑うし，丑うし上じょう值弁星ぼし，弁べん星ぼし似に缶かん。詩し云うん，坎其擊げき缶かん。則のり樂器がっき亦また有ゆう缶かん，麗うらら王おう公也きみや。九四突如其来如。震ふるえ為ため長子ちょうし，爻失正ただし又また互體兑。兑為附ふ決けつ。子こ居きょ明あかり法ほう之の家いえ，而無正ただし，何なに以自繼つぎ其君父ちち之の志こころざし也。突如とつじょ，震ふるえ之これ失しつ正ただし，不知ふち其所如。又また為ため巽たつみ，巽たつみ為ため進退しんたい不知ふち所しょ従したがえ，不孝ふこう之の罪つみ，五ご刑けい莫大ばくだい焉。得用とくよう，議ぎ貴之たかゆき辟刑之の，莫如所しょ犯はん之の罪つみ。焚如，殺ころせ其親之の刑けい。死し如，殺人さつじん之の刑けい也。棄如，流りゅう宥なだめ之これ刑けい。

咸

咸，感かん也。艮うしとら為山いざん，兑為澤さわ。山氣やまき下か，澤さわ氣き上じょう，二に氣き通どおり而相應おう，以生萬物ばんぶつ，故こ曰咸也。其於人じん也，嘉よしみ會かい禮れい通どおり，和かず順じゅん於義，幹事かんじ能のう正ただし，三さん十之男有此三徳，以下いか二に十じゅう之これ女おんな，正せい而相親おや，説せつ娶めと之これ則そく吉きち也。初はつ六ろく，拇おやゆび，足あし大指おおざす也。六ろく二に，腓こむら，膊腸也。九きゅう五ご，脢，背せ脊肉也。上うえ六ろく，媵，口説くぜつ也。媵，送おく也。咸道極きょく薄うす，徒と送おく口舌こうぜつ，言語げんご相しょう感かん而已，不ふ復ふく有志ゆうし於其間あいだ。

恒つね

恒つね，久也ひさや。巽たつみ為ため風ふう，震ふるえ為ため雷かみなり，雷かみなり風ふう相須あいす，而養物ぶつ猶なお長ちょう。女おんな承うけたまわ長男ちょうなん，夫婦ふうふ同心どうしん而成家か，久長ひさなが之の道也みちや。夫婦ふうふ以嘉會かい禮れい通どおり，故こ无咎。其能和わ順じゅん幹事かんじ，所行しょぎょう而善矣。初はつ六ろく，濬恒。九三くぞう，或ある承うけたまわ之これ羞。巽たつみ為ため進退しんたい，不ふ恒つね其徳之の象ぞう。又また互體兑，兑為毁折，後ご將はた有ゆう羞辱也。上うえ六ろく，振ふ恒つね。振ふ，摇落也。

遯

遯，逃去之の名めい也。艮うしとら為ため門もん闕，乾いぬい有ゆう健けん徳とく，互體有ゆう巽たつみ。巽たつみ為ため進退しんたい，君子くんし出で門もん，行ぎょう有ゆう進退しんたい，逃去之の象ぞう。二に五ご得とく位い而有應おう，是ぜ用よう正道せいどう，得とく禮れい見み召，聘始仕つかまつ他國たこく，當とう尚なお謙けん。謙けん，小しょう其和順じゅん之の道みち。居きょ小官しょうかん，幹みき小事しょうじ，其進以漸則そく逺妬忌き之の害がい。昔むかし陳ちん敬たかし仲なか奔齊辭じ卿きょう是也これや。九きゅう三さん，憊，困こま也。九きゅう四よん，否いや，塞ふさが也備鄙ひな反はん。

大だい壯たけし

壯たけし，氣力きりょく浸ひた强つよ之これ名めい。九きゅう三さん，纍其角かく。六ろく五ご，丧羊于易音おん亦また，謂いい佼易也。上うえ六ろく，不祥ふしょう也。祥さち，善ぜん也。

晉すすむ

康かん侯こう。康かん，尊みこと也，廣也ひろなり。晝ひる日び三さん接せっ音おと捷とし。接せっ，勝也かつや。蕃しげる庶，蕃しげる發はつ袁反庶止奢おご反はん，謂いい蕃しげる遮さえぎ禽也。明あかり出で地上ちじょう，晉すすむ。地ち雖生萬物ばんぶつ，日出ひので于上，其功乃著。故こ君子くんし法ほう之の，而以明あかり自照じしょう其徳。初はつ六ろく，摧如讀如南山みなみやま崔ちぇ崔ちぇ之の崔ちぇ。六ろく二に，愁如愁，子し小しょう反はん，變色へんしょく貌。九きゅう四よん，鼫鼠。詩し云うん：碩せき鼠ねずみ碩せき鼠ねずみ，无食我わが黍きび。謂いい大だい鼠ねずみ也。六ろく五ご，矢や得とく勿恤。

明あかり夷えびす

夷えびす，傷きず也。日出にっしゅつ地上ちじょう，其明乃光，至いたり其入也，明則あきのり傷きず矣，故こ謂いい之の明あかり夷えびす。日にち之の明あかり傷きず，猶なお聖人せいじん君子くんし有明ありあけ徳とく，而遭亂世らんせい，抑そもそも在ざい下位かい，則のり宜よろし自じ艱无幹事かんじ政せい，以避小人こども之の害がい也。文ぶん王おう似に之これ，箕み子こ似に之これ。拯，承うけたまわ也。六ろく二に，明あかり夷えびす，睇于左股ひだりまた。旁つくり視し為ため睇。六ろく二に，辰たつ在ざい酉とり，酉とり是ぜ西方せいほう，又また下しも體からだ離はなれ，離はなれ為ため目め。九きゅう三さん，體たい在ざい震ふるえ，震ふるえ東方とうほう。九三くぞう，又また在ざい辰たつ，辰たつ得とく巽たつみ，氣き為ため股また。此謂六ろく二に有明ありあけ徳とく，欲ほし承うけたまわ九きゅう三さん，故こ云うん睇于左股ひだりまた。

家人かじん

初はつ九きゅう，閑，習也。九きゅう三さん，嗃嗃，苦熱くねつ之の意い。嘻嘻，驕おご佚喜笑わらい之の意い。九きゅう五ご，假かり。登とう也，六ろく二に，中ちゅう饋，酒食しゅしょく也。

睽

睽，乖也。火ひ欲ほっ上じょう，澤さわ欲よく下か。猶なお人ひと同居どうきょ而志異い也。故こ謂いい之の睽。二に五ご相應そうおう，君きみ隂臣陽ひ，君きみ而應臣しん，故こ小事しょうじ吉きち睽音圭けい。六ろく三さん，其牛挈。牛うし角かく皆みな踊おどり，曰挈。

蹇あしなえ

往得中也ちゅうや。中なか，和也かずや。初はつ六ろく，宜むべ，待まち時じ也。六ろく四よん，往蹇来らい連れん。連れん如字，遲おそ久之ひさゆき意い。

解かい

百ひゃく果はて草木くさき皆みな甲かぶと宅たく，木き實じつ曰果。皆みな讀如人じん倦之解かい。解かい，謂いい坼。呼よび呼よび火ひ亞あ反はん皮かわ曰甲，根ね曰宅。宅たく，居きょ也。

損そん

艮うしとら為山いざん，兑為澤さわ。互體坤ひつじさる。坤ひつじさる為ため地ち，山やま在地ざいち上じょう，澤さわ在地ざいち下か，澤さわ以自損そん，増山ますやま之の髙也。猶なお諸侯しょこう損そん其國之の富とみ，以貢獻こうけん於天子こ，故こ謂いい之の損そん矣。二に簋，可用かよう享とおる四よん。以簋進しん黍きび稷きび於神也。初はつ與あずか二に直じき，其四與五承上，故こ用よう二に簋四，巽たつみ爻也。巽たつみ為ため木き。五ご離はなれ爻也。離はなれ為ため日び。日にち體たい圜，木器こうずき而圜，簋象也。六ろく五ご，十じゅう朋之ともゆき龟。案あん爾しか雅みやび云うん，十じゅう朋之ともゆき龟者，一いち曰神龟，二に曰靈龟，三さん曰攝龟，四よん曰寶龟，五ご曰文龟，六ろく曰筮龟，七なな曰山龟，八はち曰澤龟，九きゅう曰水龟，十じゅう曰火龟。徴しるし忿，懫欲徴ちょう，猶なお清きよし也。懫，止とめ也。

益えき

隂陽之の義よし，陽ひ稱しょう為ため君くん，隂為臣しん。今いま震ふるえ一いち陽ひ二に隂，臣しん多た於君矣。而四よん體たい巽たつみ之の不ふ應おう，初はつ是ぜ天子てんし損そん其所有しょゆう，以下いか諸侯しょこう也。人君じんくん之の道みち以益下か為ため徳とく，故こ謂いい之の益えき也。震ふるえ為ため雷かみなり，巽たつみ為ため風ふう。雷かみなり動どう風ふう行ぎょう，二に者しゃ相成あいな，猶なお人君じんくん出で教きょう令れい，臣しん奉行ぶぎょう之の，故こ利り有ゆう攸往，利り涉わたる大川おおかわ矣。

夬

夬，決けつ也。陽氣ようき浸ひた長ちょう至いたり於五，五ご尊みこと位い也，而隂先さき之の，是これ猶なお聖人せいじん積せき徳とく悦えつ天下でんか，以漸消去しょうきょ小人こども，至いたり於受命じゅめい，為ため天子てんし，故こ謂いい之の夬。揚あげ，越えつ也。五ご互體乾ひ，乾いぬい為ため君くん又また居きょ尊みこと位い，王おう庭にわ之の象ぞう也。隂爻越えつ其上，小人こども乗じょう君子くんし，罪惡ざいあく上じょう，聞于聖人せいじん之の朝あさ，故こ曰夬，揚あげ于王庭にわ。九きゅう二に，惕號音おん号ごう莫夜莫如字じ，无也。无夜，非ひ一いち夜や。九三くぞう，壯たけし于頯。頯，夾面也。九きゅう五ご，莧陸，一いち名めい商しょう陸りく。

姤

遘遇也。一いち隂承五ご陽ひ，一女いちじょ當とう五ご男なん，茍相遇ぐう耳みみ，非禮ひれい之の正ただし，故こ謂いい之の遘。女おんな壯たけし如是にょぜ，壯健そうけん似に滛，故こ不可ふか娶めと。婦人ふじん以婉，娩為其徳也とくや。詰つめ四方しほう。詰つめ，正也まさや。九きゅう五ご，杞，桞也。

萃

萃亨无亨字じ。萃，聚也。坤ひつじさる為ため順じゅん，兑為悦えつ，臣下しんか以順道どう承うけたまわ事こと，其君悦えつ徳居とくい上じょう，待まち之の上下じょうげ相應そうおう，有事ゆうじ而和通どおり，故こ曰萃亨とおる也。假かり，至いたり也。互有艮うしとら，巽たつみ為ため木き。艮うしとら為ため闕木，在ざい闕上，宫室之の象ぞう也。四よん本震ほんしん爻，震ふるえ為ため長子ちょうし。五ご本ほん坎爻，坎為隱かくれ伏ふく，居きょ尊みこと而隱伏ふく，鬼神きじん之の象ぞう。長子ちょうし入にゅう闕，升ます堂どう祭さい祖そ，禰之禮れい也，故こ曰王假かり有ゆう廟びょう。二に本ほん離はなれ爻也，離はなれ為ため目め，居きょ正せい應おう五ご，故こ利り見み大人おとな矣。大だい牲牛也，言げん大人おとな有ゆう嘉よしみ?，時じ可か幹事かんじ，必殺ひっさつ牛うし以盟，既すんで盟めい則そく可か以行，故こ曰利往。除じょ戎えびす器き。除じょ，去さ也。初はつ六ろく，一いち握にぎ。握にぎ當とう讀為夫おっと三さん為ため屋や之これ屋や。六ろく二に，禴，夏なつ祭さい名めい。上うえ六ろく，自じ目め曰涕，自じ鼻はな曰洟。

昇のぼり

昇のぼり，上うえ也。坤ひつじさる地ち巽たつみ木き，木き生地きじ中ちゅう，日長ひなが而上，猶なお聖人せいじん在ざい諸侯しょこう之の中なか，明徳めいとく日び益えき髙大也，故こ謂いい之の昇のぼり。昇のぼり，進しん益えき之の象ぞう。六ろく四よん，王おう用よう亨とおる于岐山やま。亨とおる，獻けんじ也許兩りょう反はん。

困こま

坎為月がつ，互體離はなれ。離はなれ為ため日び，兑為暗くら。昧，日にち所しょ入にゅう也。今上きんじょう掩日月がつ之の明あきら，猶なお君子くんし處しょ亂世らんせい，為ため小人こども所しょ不ふ容よう，故こ謂いい之の困こま也。君子くんし雖困居きょ險けわし，能のう悦えつ，是ぜ以通而无咎とがめ也。九きゅう二に，困こま于酒食しょく，朱しゅ韍方来らい，利用りよう享とおる祀まつ。二に據よりどころ初はつ，辰たつ在ざい未ひつじ，未み為ため土ど，此二に為ため大だい，夫おっと有ゆう地ち之の象ぞう。未み上うえ值天，厨くりや酒食しゅしょく象ぞう。困こま于酒食しょく者しゃ，采さい地ち薄うす不足ふそく已やめ用よう也。二與日為體，離はなれ為ため鎮霍。爻四為ため諸侯しょこう有明ありあけ徳とく，受命じゅめい當とう王者おうじゃ。離はなれ為ため火ひ，火色ひいろ赤あか。四よん爻辰在ざい午うま時じ，離はなれ氣き赤あか又また朱しゅ是也これや。文ぶん王將おうしょう王おう，天子てんし制せい用よう朱しゅ韍。朱しゅ，深ふか于赤。九きゅう五ご，劓刖。當為とうい倪□。

井い

井い，法ほう也。坎，水みず也。巽たつみ木き，桔橰也。互體離はなれ兑，離はなれ外がい堅けん中ちゅう，虚きょ瓶びん也。兑為暗くら澤さわ，泉いずみ口こう也。言げん桔橰引瓶，下した入にゅう泉いずみ口こう，汲水きゅうすい而出井い之の象ぞう也。井い以汲人じん，水みず无空竭，猶なお人君じんくん以政教養きょうよう天下でんか，惠澤けいたく无窮也。九きゅう二に，井谷いたに射しゃ鮒ぶな。九きゅう二に，坎爻也。坎為水すい，上うえ直ただし巽たつみ。九きゅう三さん，艮うしとら爻也。艮うしとら為山いざん，山下やました有井ありい，必因谷水たにみず所生しょせい魚ぎょ，無む大だい魚さかな但ただし多た鮒ふな魚ぎょ耳みみ。夫おっと感動かんどう天地てんち，此魚之の至大しだい。射い鮒ぶな井谷いたに，此魚之の至いたり小しょう，故こ以相況きょう。甕う，停とま水みず器き也。井い渫不食しょく，謂いい已やめ浚渫しゅんせつ也。猶なお臣しん修正しゅうせい其身以事君くん也。

革かわ

革かわ，改あらため也。水火すいか相しょう息いき而更用事ようじ。猶なお王者おうじゃ受命じゅめい，改正かいせい朔ついたち，易えき服ふく色しょく，故こ謂いい之の革かわ也。

鼎かなえ

鼎かなえ象ぞう也。卦け有木あらき火ひ之の用もちい，互體乾いぬい兑。乾いぬい為ため金きん，兑為澤さわ，澤さわ鍾金而含水すい，?以木火ひ，鼎かなえ烹熟物ぶつ之の象ぞう。鼎かなえ烹熟以養人じん，猶なお聖きよし君くん興きょう仁義じんぎ之の道みち以教天下でんか也，故こ謂いい之の鼎かなえ矣。凝しこり命いのち，凝しこり成なり也。初はつ六ろく，鼎かなえ顛趾。顛，踣也。趾，足そく也。無事ぶじ曰趾，設しつらえ陳ひね曰足。爻體巽たつみ為ため股また。初はつ爻在股また之の下した，足そく象ぞう也。足あし所しょ以承，正せい鼎かなえ也。初はつ隂爻而柔與あずか乾いぬい同體どうたい，以否正ただし承うけたまわ乾いぬい。乾いぬい為ため君くん，以喻君くん。夫人ふじん事ごと君くん，若わか失しつ正禮しょうふだ，踣其為ため足あし之の道みち，情じょう無む怨，則のり當とう以和，義ぎ出で之の然しか。如否者しゃ，嫁よめ於天子こ，雖失禮しつれい，无出道どう，廢はい逺之而已。若わか其无子こ，不ふ廢はい逺之，后きさき尊みこと如故其犯。六出則廢之逺之。子こ廢はい。坤ひつじさる為ため順じゅん，又また為ため子こ，母はは牛うし。在ざい后妃こうひ之の旁つくり，側がわ妾わらわ之の例れい也。有ゆう順徳じゅんとく，子こ必賢，賢けん而立じりつ以為世子せいし，又また何なに咎とがめ也。九きゅう二に，我わが仇かたき有ゆう疾やまし。怨耦曰仇。九きゅう三さん，雉膏，食しょく之の美び者しゃ。九きゅう四よん，鼎かなえ折おり足あし，覆くつがえ公おおやけ餗，其刑屋や釋しゃく文ぶん剭周禮れい注ちゅう云うん其刑剭音屋や。糝，謂いい之の餗。震ふるえ為ため竹ちく，竹たけ萌もえ曰筍，筍たけのこ者しゃ，餗之為ため菜さい也。餗，美よし饌，具ぐ八はち珍ちん之の食しょく。鼎かなえ三さん足そく，三公みつきみ象ぞう。若わか三公傾覆王之美道，屋や中ちゅう刑けい之の一いち云うん臣下しんか曠官，失しつ君くん之の美び道どう，當とう刑けい之の于屋中ちゅう。餗，一作いつさく蔌。注ちゅう，一いち蔌為八はち珍ちん所用しょよう。六ろく五ご，金きん鉉，喻明道どう能のう舉君之の官職かんしょく也。

震ふるえ

震ふるえ驚おどろき百里不丧匕鬯。震ふるえ為ため雷かみなり，雷かみなり動物どうぶつ之の氣き也。雷かみなり之の發聲はっせい，猶なお人君じんくん出で政教せいきょう以動國こく中之なかの人じん也，故こ謂いい之の震ふるえ。人君じんくん有ゆう善ぜん聲ごえ，教則きょうそく嘉よしみ會かい之の禮れい通どおり矣。驚おどろき之の言げん，警戒けいかい也。雷かみなり發聲はっせい聞於百ひゃく里り，古いにしえ者しゃ諸侯しょこう之の象ぞう。諸侯しょこう之の出で教きょう令れい，能のう警戒けいかい其國疆之内ない，則のり守もり其宗廟そうびょう社稷しゃしょく為之ためゆき祭主さいしゅ，不ふ亡ほろび其匕與鬯也。人君じんくん於祭之の禮れい，匕牲體たい薦こも鬯而已やめ，其餘不ふ親おや為ため也。升ます牢ろう於俎，君きみ匕之，臣しん載の之これ，鬯秬酒しゅ。芬芳條じょう，鬯因名めい焉。啞啞，樂らく也。六ろく二に，億おく，丧貝十じゅう萬曰億於力反。六ろく三さん，蘇そ蘇そ，不安ふあん也。上うえ六ろく，索さく索さく，猶なお縮ちぢみ縮ちぢみ，足あし不ふ正也まさや。矍矍，目もく不正ふせい。

艮うしとら

艮うしとら之の言げん很也。艮うしとら為山いざん，山立やまだち峙各於其所しょ，无相順じゅん之の。時とき猶なお君きみ在ざい上うえ，臣しん在ざい下した，恩おん敬けい不ふ相あい與あずか通どおり，故こ謂いい之の艮うしとら也。九きゅう三さん，限げん要よう也。列れつ其腰。

漸やや

初はつ六ろく，干ひ，謂いい大水おおみず之の傍はた，故こ停とま水みず處しょ。九きゅう三さん，婦ふ孕不育いく。九きゅう三さん，上じょう與あずか九きゅう五ご，互體為ため離はなれ。離はなれ為ため大だい腹はら孕之象ぞう也。又また互體為ため坎，坎為大だい。夫おっと坎為水すい，水流すいりゅう而去，是ぜ夫おっと征せい不ふ復ふく也。夫おっと既すんで不ふ復ふく，則のり婦人ふじん之の道みち顛覆てんぷく，故こ孕而不ふ育いく。孕猶娠也。

歸かえり妹いもうと

六ろく三さん，歸き妹いもうと以須。須，有ゆう才智さいち之の稱たたえ天文てんもん有ゆう須女屈こごめ原之はらの姊名女おんな須姊一いち作さく妹いもうと。上うえ六ろく，女じょ承うけたまわ筐かたみ无實。宗廟そうびょう之の禮れい，主婦しゅふ奉たてまつ筐かたみ米まい。

豐ゆたか

豐ゆたか之の言げん，腆充滿じゅうまん意い也。初はつ九きゅう，遇ぐう其妃主ぬし。嘉よしみ耦曰妃ひ。雖曰无咎，初はつ修おさむ禮れい，上うえ朝あさ四よん。四よん以匹敵ひってき，恩おん厚あつ待まち之の，雖留十じゅう旬しゅん，不為ふため咎とがめ。正せい以十じゅう日にち者しゃ，朝あさ聘之禮れい止とめ於主，國くに以為限げん，聘禮畢歸。大禮たいれい曰：旬しゅん而稍。旬しゅん之の外為がいため稍やや。久留くる非常ひじょう。六ろく二に，豐ゆたか其菩。菩，小しょう席せき。九三くぞう，豐ゆたか其芾。芾，祭祀さいし之の蔽膝。日にち中ちゅう見みる昧，折おり其右肱ひじ。三さん艮うしとら爻，艮うしとら為ため手しゅ，互體為ため巽たつみ。巽たつみ又また為ため進退しんたい，手て而便于進退しんたい，右みぎ肱ひじ也。猶なお大臣だいじん用事ようじ于君，君きみ能のう誅之，故こ无咎。上うえ六ろく，闃無人じん，貌天際ぎわ翔しょう也。際さい，當為とうい瘵。瘵，病やまい也，自じ戕也戕傷也。

旅たび

初はつ六ろく，瑣瑣，猶なお小しょう小しょう也。爻互體たい艮うしとら。艮うしとら，小石こいし，小しょう小しょう之の象ぞう。三さん為ため聘客。初はつ與あずか二に其介也。介かい當とう以篤實とくじつ之の，人為じんい之の而用小人こども。瑣瑣然しか。客きゃく主人しゅじん為ため言ごと，不能ふのう辭じ曰，非禮ひれい。不能ふのう對たい曰，非禮ひれい。每まい者しゃ不能ふのう以禮行ぎょう之の，則のり其所以得罪ざい。

兑

九きゅう四よん，商しょう兑。商しょう，隱かくれ度ど也。

節ふし

節ふし以制度せいど，空そら府ふ藏ぞう則そく傷きず財ざい，力ちから役やく繁則しげのり害がい民みん。二者奢泰之所致。

中なか孚まこと

豚ぶた魚ぎょ吉きち。三さん辰たつ在ざい亥い，亥い為ため豕いのこ。爻失正ただし，故こ變へん而從小しょう。名言めいげん豚ぶた耳みみ。四よん辰たつ在ざい丑うし，丑うし為ため鼈すっぽん，蟹かに。鼈すっぽん，蟹かに，魚さかな之の微ほろ者しゃ。爻得正ただし，故こ變へん而從大だい。名言めいげん魚ぎょ耳みみ。互體兑，兑為澤さわ。四よん上じょう值天淵ふち，二に五ご皆みな坎。爻坎為ため水すい，二侵澤則豚。利り五亦以水灌淵，則のり魚ぎょ利り。豚ぶた魚ぎょ以喻小しょう民みん也。而為明君めいくん賢けん臣しん，恩おん意い所しょ供養くよう，故こ吉きち。乘の木舟きふね，虚きょ也。舟ふね謂いい集しゅう板いた，如今自じ空そら大木おおき為之ためゆき，曰虚。

小しょう過か

不ふ宜よろし上じょう，上うえ如字謂いい君くん也。中なか孚まこと為ため陽ひ，貞さだ於十じゅう一いち月がつ。子こ小しょう過か為ため隂，貞さだ於六ろく月がつ法ほう於乾坤けんこん。

未み既すんで

濟すみ，既すんで已やめ也。盡つき也。濟すみ，度ど也。六ろく二に，茀車蔽也。九きゅう三さん，憊劣弱じゃく也。九きゅう五ご，東ひがし鄰殺牛うし，不ふ如西鄰之禴祭。互體為ため坎，又また互體為ため離はなれ。離はなれ為ため日び，坎為月がつ，日出ひので東方とうほう，東ひがし鄰象月がつ。出西しゅつさい方かた，西にし鄰象也坊記き疏云：東ひがし鄰謂紂國中也ちゅうや。西にし鄰謂文ぶん王國おうこく中也ちゅうや。既濟きさい，離はなれ下か坎上。離はなれ為ため牛うし，坎為豕いのこ。西にし鄰禴祭さい則のり用よう豕いのこ，與あずか言げん殺ころせ牛うし而凶，不ふ如殺豕いのこ受福。喻奢而慢，不ふ如儉而敬也。與あずか易やす注ちゅう不同ふどう。禴，夏なつ祭さい之の名な。

未濟みさい

汔几也。凡卦爻二に至いたり四よん，三さん至いたり五ご，兩りょう體たい交互こうご，各かく成なり一いち卦け。先さき儒謂之の互體。

繫辭

君臣くんしん尊卑そんぴ之の貴き賤，如山澤之さわの有ゆう髙卑也，動静どうせい雷かみなり風ふう也。類聚るいじゅう羣分，謂いい水火すいか也。成なり象ぞう日月じつげつ星ほし辰也たつや。成形せいけい謂いい草木くさき鳥獸ちょうじゅう也。乾いぬい以易知音ちいん亦また，翫其辭じ。震ふるえ无咎，震ふるえ懼也。

原始げんし及終，精氣せいき為ため物ぶつ，遊ゆう魂たましい為ため變へん。精氣せいき謂いい七なな八はち也，遊ゆう魂たましい謂いい九きゅう六ろく也。七なな八はち，木き火ひ之の數かず。九きゅう六ろく，金きん水すい之の數かず。木き火ひ用事ようじ而物生せい，故こ曰精氣き為ため物ぶつ。金かね水すい用事ようじ而物變へん，故こ曰遊魂たましい為ため變へん。遊ゆう魂たましい謂いい之の鬼おに物ぶつ，終おわり所しょ歸き。精氣せいき謂いい之の神かみ物ぶつ生せい，所ところ信也しんや。言げん木き火ひ之の神かみ生物せいぶつ東南とうなん，金かね水すい之の鬼おに終おわり物ぶつ西北せいほく。二に者しゃ之の情じょう其狀，與あずか春はる夏なつ生物せいぶつ，秋冬あきふゆ終おわり物ぶつ相似そうじ一いち云うん二に物ぶつ變化へんか其情，與あずか天地てんち相似そうじ。故こ無む所しょ差違さい之の也。道みち濟ずみ天下てんか道どう當とう作さく導みちびけ，範圍はんい，範はん法ほう也。故こ君子くんし之の道みち尟矣。臧諸用よう。臧，善ぜん也。言げん天下でんか之の至いたり賾賾當為とうい動どう，慎まき斯術也。術じゅつ，道みち。有功ゆうこう而不置おけ置おけ當とう作さく誌し，野の容よう誨滛言げん妖野容儀ようぎ。大だい衍之數すう五ご十じゅう，天地てんち之の數すう五ご十じゅう，有ゆう五ご以五ご行ぎょう氣き通どおり。凡五ご行ぎょう減げん五ご，大だい衍又減げん一いち，故こ四よん十じゅう九きゅう也。衍，演えんじ也。揲，取と也。天てん一いち生水なまみず於北地ち，二に生なま火ひ於南，天てん三さん生木なまき於東おひがし地ち，四よん生せい金きん於西，天てん五ご生土いきど於中。陽ひ无耦，隂无配はい，未み得え相成あいな。地ち六ろく成なり水すい於北，與あずか天てん一并天七成火於南，與あずか地ち二并地八成木於東，與あずか天てん三并天九成金於西，與あずか地ち四并地十成土於中。與あずか天てん五ご并也，大だい衍之數すう五ご十じゅう有ゆう五ご。五行ごぎょう各かく氣き并，氣き并而減げん五ご，惟おもんみ有ゆう五ご十じゅう。以五十之數不可以為七八，九きゅう六ろく。卜筮ぼくぜい之の占うらない以用之の，故こ更さら減げん其一，故こ四よん十じゅう有ゆう九きゅう也。天てん數すう五ご，地ち數すう五ご，五位相得而各有合。天地てんち之の氣き各かく有ゆう五ご，五ご行ぎょう之の次つぎ，一いち曰水，天てん數也かずや。二に曰火，地ち數也かずや。三さん曰木，天てん數也かずや。四よん曰金，地ち數也かずや。五ご曰土，天てん數也かずや。此五者しゃ，隂无匹ひき，陽ひ无耦，故こ又また合ごう之の。地ち六ろく為ため天てん一いち匹ひき也，天てん七なな為ため地ち二に耦也，地ち八はち為ため天てん三さん匹ひき也，天てん九きゅう為ため地ち四よん耦也，地ち十じゅう為ため天てん五ご匹ひき也。二に五ご隂陽各かく有ゆう合あい，然しか後こう氣き相しょう得とく施ほどこせ化か行ぎょう也。研とぎ機き，機き當とう作さく几。几，微ほろ也。蓍めどぎ之の徳とく圓えん而神，蓍めどぎ形がた圓えん而可以立變化へんか之の數かず，故こ謂いい之の神かみ也。四よん象ぞう，布ぬの六ろく於北方ほっぽう，以象水すい。布ぬの八はち於東おひがし方かた，以象木き。布ぬの九きゅう於西方かた，以象金きん。布ぬの七なな於南方かた，以象火ひ。河出かわで圖ず，洛らく出で書しょ，聖人せいじん則之のりゆき。春秋しゅんじゅう緯ぬき云うん，河かわ以通乾出いぬいで天てん，苞つと洛らく以流坤ひつじさる吐地。符ふ河かわ龍りゅう圖ず，發はつ洛らく龟書。感かん河かわ圖ず有ゆう九きゅう篇へん，洛らく書しょ有ゆう六ろく篇へん，有ゆう以尚賢也けんや。樞くるる，戸こ樞くるる也。機き，弩いしゆみ牙きば也。戸と樞くるる之の發はつ，或ある明あかり或ある闇やみ。弩いしゆみ牙きば之の發はつ，或ある中なか或ある否ひ。以譬言語げんご之の，發はつ有ゆう榮さかえ有ゆう辱はずかしめ。包つつみ犧，包つつめ，聚也。鳥獸ちょうじゅう全ぜん具ぐ，曰犧。盖取諸しょ乾坤けんこん，乾いぬい為ため天てん，其色元もと。坤ひつじさる為ため地ち，其色黄き。但ただし土ど無む正せい位い，託たく於南方かた，南方なんぽう色しょく赤あか，黄き而兼赤あか，故こ為ため纁也。重じゅう門もん擊げき柝，豫よ，坤ひつじさる下か震ふるえ上じょう。九きゅう四よん體たい震ふるえ，又また互體有ゆう艮うしとら。艮うしとら為ため門もん。震ふるえ日び所出しょしゅつ，亦また為ため門もん。重じゅう門もん象ぞう艮うしとら，又また為ため手しゅ。巽たつみ爻也，應おう在ざい四よん，皆木みなき也。手持てもち二木ふたき也，手持てもち二木以相敲是為擊柝，擊げき柝為守備しゅび警戒けいかい也。四又互體為坎，坎為盜ぬすめ，五離爻為甲胄戈兵，盜とう謂いい持じ兵へい，是ぜ暴客也。又また以其卦け為ため豫よ，有ゆう守備しゅび則そく不可ふか自じ逸いっ。結繩けつじょう為ため約やく，事大じだい大だい其繩，事こと小しょう小しょう其繩。書契しょけい，書しょ之の於木，刻こく其側為ため契ちぎり，各かく持じ其一，後ご以相考こう。合ごう以制器き者しゃ，尚なお其象。存そん於器，象ぞう可か得とく而用。一切いっさい器物きぶつ及造立ぞうりゅう皆みな是ぜ。一いち君くん二に民みん，君子くんし之の道也みちや。二に君くん一民かずたみ，小人こども之の道也みちや。一いち君くん二に民みん，謂いい黄き帝みかど，堯，舜しゅん。謂いい地方ちほう萬まん里さと為ため方かた，千里せんり者しゃ百ひゃく，中國ちゅうごく之の民みん居きょ七なな千里せんり，七なな七なな四よん十じゅう九きゅう，方ぽう千里せんり者しゃ四よん十じゅう九きゅう。夷狄いてき之の民みん居きょ千せん里さと者しゃ五ご十じゅう一いち，是ぜ中國ちゅうごく夷狄いてき二に民みん共ども事ごと一いち君くん。二に君くん一民かずたみ，謂いい三さん代だい之の末すえ，以地方ちほう五ご千里せんり一いち君くん，有ゆう五ご千里せんり之の土ど，五ご五ご二に十じゅう五ご，更さら足あし以一君くん。二に十じゅう五始滿千里之方，五ご十じゅう乃當堯，舜しゅん一民かずたみ之これ地ち，故こ云うん二に君くん一民かずたみ。男女だんじょ覯精，覯，合ごう也。男女だんじょ以隂陽ひ合あい其精氣き，因いん貳に以濟民みん，行ぎょう貳に當為とうい弍損。徳之のりゆき修也しゅうや。修おさむ，治ち也。困こま徳之のりゆき辯べん也。辯わきまえ，别也。遭困之の時とき，君子くんし固かた窮きゅう，小人こども窮きゅう則そく濫徳，於是别也。益えき，長ちょう裕ひろし而不設しつらえ。設しつらえ，大だい也。雜ざつ物ぶつ算さん徳とく。算さん，數也かずや。居きょ可知かち矣居音おん基もと。知者ちしゃ，觀かん其彖辭じ。彖辭，爻辭也。亹亹，汲汲きゅうきゅう也。

説せつ卦け

昔むかし者しゃ，聖人せいじん謂いい伏ふく犧、文ぶん王おう也。參まいり天てん兩りょう地ち而倚數すう。天地てんち之の數すう，備於十じゅう，乃三之の。以天兩りょう之これ，以地而倚託たく。大だい演えんじ之これ數すう，五ご十じゅう也。必三之の以天，兩りょう之の以地者しゃ。天てん三さん覆くつがえ，地ち二に載の。必極於數，庶得吉きち，凶きょう之の審也しんや。揮，揚あげ也。雷かみなり風ふう相しょう薄うす，薄うすき，入にゅう也。莫盛乎艮，盛もり，音成おとなり，裏うら也。其于人じん也為宣せん髮かみ，宣せん髮かみ，取と四よん月がつ靡草，死し髮かみ在ざい人體じんたい猶なお靡草在地ざいち。為ため黄き顙，為ため乾いぬい卦け。乾いぬい當為とうい幹みき，陽ひ在外ざいがい能のう幹みき正也まさや。為ため科か上じょう槀，為ため黚喙，謂いい虎とら豹ひょう之の屬ぞく，貪むさぼ冒おかせ之これ類るい。兑為羊ひつじ，其畜好こう剛つよし鹵。

序じょ卦け

訟猶爭そう也。言げん飲食いんしょく之の會かい，恒つね多た諍いさかい也一いち作さく争そう。故こ受之以豫，言げん國こく既すんで大だい而能謙けん，則のり于政事せいじ恬逸。雷かみなり出で地ち，奮逸。豫よ，行ぎょう出で而喜樂らく之の意い。豫よ必有隨したがえ，喜樂きらく而出，人にん則そく隨從ずいじゅう。孟子もうこ曰：吾われ君くん不ふ游ゆう，吾われ何なん以休。吾われ君くん不ふ豫よ，吾われ何なん以助。此之謂いい也。物もの穉不可ふか不ふ養やしなえ也，言げん孩稚不ふ養やしなえ則そく不ふ長ちょう也。可か觀かん而後有ゆう所しょ合あい。易えき乾いぬい鑿度曰：陽ひ起おこり于子，隂起于午。天てん數すう天分てんぶん，以陽出離しゅつり，以隂入にゅう坎，坎為中ちゅう男おとこ，離はなれ為ため中ちゅう女おんな。太ふと乙おつ之これ行ぎょう，出で從したがえ中ちゅう男おとこ，入にゅう從したがえ中ちゅう女おんな。因よし隂陽男女だんじょ之の偶為終始しゅうし也，故こ受之以大過たいか。以養賢者けんじゃ，宜むべ過か于厚。夫婦ふうふ之の道みち，不可ふか以不久也ひさや。言げん夫婦ふうふ當とう有終ゆうしゅう身み之の義よし，夫婦ふうふ之の道みち謂いい咸恒也つねや。致飾然しか後ご亨とおる亨とおる許もと兩りょう反はん。

雜ざつ卦け

蠱則飾かざり也。

原はら跋ばつ

康成やすなり注ちゅう易えき九きゅう卷かん，多た論ろん互體，江こう左ひだり與あずか王おう輔嗣學がく竝立へいりつ，荀崧謂いい其書根源こんげん顔がお延之のぶゆき為ため祭さい酒しゅ。黜鄭置おけ王おう，齊ひとし，陸りく澄きよし詒王儉書云うん，易えき自じ商しょう瞿之後ご，雖有異こと家か之の學まなべ，同どう以象數すう為ため宗むね，數すう年ねん後ご乃有王おう弼之説せつ。王おう濟わたる云うん弼所誤あやま者しゃ多た，何なん必能頓ひたぶる廢はい，前ぜん儒河北きた諸しょ儒，專せん主ぬし鄭てい氏し。隋ずい興きょう學者がくしゃ，慕弼之これ學がく。遂とげ為ため中ちゅう原之はらの師し，唐から因いん之の，今こん鄭てい注ちゅう不ふ傳つて，此景迂まが晁あきら氏し所しょ慨歎がいたん也。李り鼎かなえ祚云，鄭てい多た參さん天象てんしょう，王おう全あきら釋しゃく人事じんじ易えき道どう，豈あに偏へん滯とどこお於天人じん者しゃ哉。合ごう彖象於經，葢自康成やすなり始はじめ。其説間あいだ見み於鼎祚集解かい，及釋文ぶん易えき詩し，三さん禮れい，春秋しゅんじゅう義ぎ疏，後ご漢書かんしょ文選ぶんせん注ちゅう。應おう麟讀易えき之の暇ひま，輯為此編，庶几先さき儒，象ぞう數すう之の學まなべ，猶なお有ゆう攷焉。癸みずのと酉とり季夏きか哉生明あかり汲古堂どう。