孝こう經けい註序

孝こう經けい註序
作者さくしゃ：李り隆たかし基もと　唐とう

本ほん作品さくひん收錄しゅうろく於《全ぜん唐から文ぶん》

朕ちん聞上古じょうこ，其風樸しらき略りゃく。雖因心こころ之孝ゆきたか已やめ萌もえ，而資敬之たかゆき禮れい猶なお簡。及乎仁義じんぎ既すんで有ゆう，親おや譽ほまれ益えき著ちょ。聖せい人知じんち孝之たかゆき可か以教人じん也，故こ因いん嚴げん以教敬けい，因いん親おや以教愛あい。於是以順移うつり忠之ただゆき道昭みちあき矣，立身りっしん揚あげ名めい之の義彰よしあき矣。子こ曰：“吾われ誌し在ざい《春秋しゅんじゅう》，行ぎょう在ざい《孝こう經けい》。”是ぜ知孝ともたか者しゃ德之のりゆき本ほん歟。《經けい》曰：“昔むかし者しゃ明王みょうおう之の以孝理り天下でんか也，不ふ敢遺小國しょうこく之の臣しん，而況於公侯こう伯はく子こ男おとこ乎。”朕ちん嘗三さん復ふく斯言，景けい行ぎょう先哲せんてつ。雖無德とく教きょう加か於百姓ひゃくしょう，庶幾しょき廣こう愛あい刑けい於四海しかい。

嗟夫！夫子ふうし沒ぼつ而微言げん絕ぜっ，異端いたん起おこり而大義たいぎ乖。況きょう泯絕於秦，得とく之これ者しゃ皆みな煨燼之の末すえ；濫觴らんしょう於漢，傳つて之これ者しゃ皆みな糟粕そうはく之の餘よ。故こ魯史《春秋しゅんじゅう》，學がく開ひらけ五ご傳つて，國風くにぶり雅みやび頌，分ふん為ため四よん詩し。去さ聖せい逾遠，源流げんりゅう益えき別べつ。近こん觀かん《孝こう經けい》舊きゅう註，蹖駮尤ゆう甚。至いたり於跡相しょう祖述そじゅつ，殆且百ひゃく家いえ；業ぎょう擅專門もん，猶なお將しょう十じゅう室しつ。希まれ升ます堂どう者しゃ，必自開ひらき戶ど牖；攀よじ逸いっ駕が者しゃ，必騁殊こと軌轍。是ぜ以道隱かくれ小成しょうせい，言こと隱かくれ浮偽。且傳以通經けい為ため義ぎ，義ぎ以必當為とうい主ぬし。至當しとう歸一きいつ，精義せいぎ無二むに，安やす得え不ふ翦其繁しげる蕪かぶら而撮其樞要よう也？

韋昭、王おう肅，先さき儒之領袖りょうしゅう；虞おそれ翻こぼし、劉りゅう邵，抑そもそも又次またじ焉。劉りゅう炫明安國やすくに之の本ほん，陸りく澄きよし譏そし康かん成之しげゆき註，在ざい理り或ある當とう，何なん必求人じん？今こん故こ特とく舉六ろく家いえ之の異同いどう，會かい五經ごきょう之の旨趣ししゅ，約やく文ぶん敷じき暢とおる，義よし則昭のりあき然しか。分ぶん註錯綜さくそう，理り亦また條じょう貫つらぬけ，寫うつし之の琬王，庶有補ほ於將來らい。且夫子ふうし談だん經けい。誌し取と垂たれ訓くん，雖五孝之たかゆき用よう則のり別べつ，而百ひゃく行ぎょう之の源みなもと不ふ殊こと。是ぜ以一いち章しょう之の中なか，凡有數すう名めい，一句いっく之の內，意い有ゆう兼明かねあきら，具ぐ載の則のり文ぶん煩はん，略りゃく之の又また義ぎ闕，今こん存そん於疏，用もちい廣こう發揮はっき。