明あかり史し/卷まき12

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明あかり史し卷まき十じゅう二に 本紀ほんぎ第だい十じゅう二に　英えい宗むね後ご紀き

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天てん順じゅん元年がんねん

　　天てん順じゅん元年がんねん春はる正月しょうがつ壬みずのえ午うま，昧爽まいそう，武たけ清きよし侯こう石せき亨とおる，都みやこ督ただし張ちょう輗、張ちょう軏，左ひだり都と御ご史し楊善，副ふく都と御ご史し徐じょ有ゆう貞さだ，太ふとし監かん曹吉祥きっしょう以兵迎むかえ帝みかど於南宮みや，御ご奉天ほうてん門もん，朝あさ百官ひゃっかん。徐じょ有ゆう貞さだ以原官かん兼けん翰林かんりん學士がくし，入閣にゅうかく預あずか機き務つとむ。日にち中ちゅう，御ご奉天ほうてん殿でん即位そくい。下兵しもへい部ぶ尚書しょうしょ于謙、大だい學士がくし王おう文ぶん錦にしき衣ころも衞まもる獄ごく。太ふと常つね寺てら卿きょう許もと彬あきら、大だい理り寺てら卿きょう薛瑄為ため禮れい部ぶ侍さむらい郎ろう兼けん翰林かんりん學士がくし，入閣にゅうかく預あずか機き務つとむ。丙へい戌いぬ，詔みことのり赦天下か，改あらため景けい泰たい八はち年ねん為ため天てん順じゅん元年がんねん。論ろん奪だつ門もん迎むかい復ふく功こう，封ふう石せき亨とおる忠國ただくに公おおやけ，張ちょう軏太平たいへい侯こう，張ちょう輗文安やす伯はく，楊善興きょう濟ずみ伯はく，曹吉祥きっしょう嗣子しし欽都督とく同どう知ち。丁ちょう亥い，殺ころせ于謙、王おう文あや，籍せき其家。陳ひね循、江こう淵ふかし、俞士悅えつ謫戍，蕭しょう鎡、商しょう輅除名じょめい。己おのれ丑うし，復ふく論ろん奪だつ門かど功いさお，封ふう孫まご鏜懷寧やすし伯はく，董ただし興おき海かい寧やすし伯はく，欽天監かん正せい湯ゆ序じょ禮れい部ぶ右みぎ侍さむらい郎ろう，官舍かんしゃ旂軍晉すすむ級きゅう者しゃ凡三さん千せん餘人よにん。辛からし卯う，罷やめ巡めぐ撫なで提督ていとく官かん。壬みずのえ辰たつ，榜于謙けん黨人とうじん示しめせ天下でんか。甲かぶと午うま，殺ころせ昌平しょうへい侯こう楊俊。

　　二に月がつ乙おつ未み朔ついたち，廢はい景けい泰たい帝みかど為ため郕王。庚かのえ子こ，高こう穀こく致仕ちし。湯ゆ序じょ請除景けい泰たい年號ねんごう，不ふ許もと。癸みずのと卯う，吏部侍さむらい郎ろう李り賢けん兼けん翰林かんりん學士がくし，入閣にゅうかく預あずか機き務つとむ。殺ころせ都と督とく范廣。戊つちのえ申さる，柳やなぎ溥破廣西ひろせ蠻。癸みずのと丑うし，郕王薨。戊つちのえ午うま，方ほう瑛あきら、石いし璞大破たいは湖みずうみ廣こう苗なえ。召璞還。壬みずのえ戌いぬ，免めん南みなみ畿被災ひさい秋あき糧かて。

　　三月さんがつ己おのれ巳み，復ふく立りつ長子ちょうし見み深ふか為ため皇太子こうたいし，封ふう皇子おうじ見み潾為德王とくおう，見み澍秀王おう，見澤みさわ崇たかし王おう，見み浚吉王おう。癸みずのと酉とり，封ふう徐じょ有ゆう貞さだ武功ぶこう伯はく。乙おつ亥い，大だい賚文武ぶんぶ軍民ぐんみん。庚かのえ辰たつ，賜たまもの黎はじむ淳じゅん等とう進士しんし及第きゅうだい、出身しゅっしん有ゆう差さ。石いし亨とおる為ため征せい虜とりこ副ふく將軍しょうぐん，剿寇延のべ綏。丁ちょう亥い，振ふ山東さんとう饑ひだる。

　　夏なつ四よん月がつ甲かぶと午うま朔ついたち，以災異數いすう見み求もとめ直言ちょくげん。乙未おとみ，免めん浙江せっこう被災ひさい稅ぜい糧かて。丁ちょう酉とり，方ほう瑛あきら攻おさむ銅どう鼓こ藕はす洞ほら苗なえ，悉平之の。丁未ていみ，錄ろく囚しゅう。癸みずのと丑うし，罷やめ團だん營。乙おつ卯う，孛來寇寧夏なつ，參まいり將はた种興戰死せんし。

　　五月ごがつ辛つら未み，安やす遠とお侯こう柳やなぎ溥備宣せん、大だい邊あたり。是これ月がつ，以石亨とおる言下ごんか御ご史し楊瑄、張ちょう鵬ほう獄ごく。

　　六ろく月がつ甲かぶと午うま，下しも右みぎ都と御ご史し耿九疇、副ふく都と御ご史し羅ら綺あやぎぬ錦にしき衣ころも衞まもる獄ごく。己おのれ亥い，下した徐じょ有ゆう貞さだ、李り賢けん錦にしき衣ころも衞まもる獄ごく。是ぜ日び，大風おおかぜ雨う雹，壞奉天ほうてん門もん鴟みみずく吻，敕修省しょう。庚かのえ子こ，徐じょ有ゆう貞さだ、李り賢けん、羅ら綺あやぎぬ、耿九疇謫外がい任にん，楊瑄、張ちょう鵬ほう戍邊。通つう政司せいじ參議さんぎ兼けん侍講じこう呂りょ原げん入閣にゅうかく預あずか機き務つとむ。壬みずのえ寅とら，薛瑄致仕ちし。癸みずのと卯う，修おさむ撰せん岳だけ正せい入閣にゅうかく預あずか機き務つとむ。甲かぶと辰たつ，復ふく李り賢けん為ため吏部侍さむらい郎ろう。乙おつ巳み，巡じゅん撫なで貴き州しゅう副ふく都と御ご史し蔣琳坐于謙黨とう棄市。

　　秋あき七なな月がつ乙おつ丑うし，復ふく下か徐じょ有ゆう貞さだ於獄。丙へい寅とら，承うけたまわ天てん門もん災わざわい。丁ちょう卯しげる，躬禱於南郊なんこう。戊つちのえ辰たつ，敕修省しょう。庚午こうご，李り賢けん復ふく入閣にゅうかく。改あらため許もと彬あきら南京なんきん禮れい部ぶ侍さむらい郎ろう。辛からし未み，出で岳だけ正せい為ため欽州同どう知ち，尋ひろ下獄げごく，謫戍。癸みずのと酉とり，大赦たいしゃ。癸みずのと未み，放ひ徐じょ有ゆう貞さだ於金齒ぱ。辛からし卯う，大だい賚諸邊べ軍ぐん士し。

　　八はち月がつ甲かぶと午うま，以彗星ぼし屢見，躬禱於上帝じょうてい。

　　九きゅう月がつ甲子きのえね，太ふとし常つね少しょう卿きょう彭時兼けん翰林かんりん學士がくし，入閣にゅうかく預あずか機き務つとむ。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ丁ちょう酉とり，賜たまもの王おう振ふ祭まつり葬そう，立たて祠ほこら曰「旌忠」。壬みずのえ寅とら，徵しるし江西えにし處士しょし吳ご與あずか弼。丙へい辰たつ，釋しゃく建けん文ぶん帝みかど幼子おさなご文ぶん圭けい及其家か屬ぞく，安置あんち鳳おおとり陽よう。

　　十一月じゅういちがつ甲かぶと戌いぬ，廣西ひろせ總そう兵へい官かん朱しゅ瑛あきら討田州しゅう叛蠻。己おのれ丑うし，免めん山東さんとう被災ひさい夏なつ稅ぜい。

　　十二月じゅうにがつ壬みずのえ辰たつ，封ふう曹欽昭武あきたけ伯はく。辛からし丑うし，安やす遠とお侯こう柳やなぎ溥充總そう兵へい官かん，禦孛來らい於甘、涼りょう。

　　是これ年ねん，琉球りゅうきゅう中山ちゅうざん、安やす南みなみ、暹羅しゃむ、占うらない城じょう、哈密、烏がらす斯藏入貢にゅうこう。

天てん順じゅん二に年ねん

　　二に年ねん春はる正月しょうがつ辛からし酉とり，兵部ひょうぶ尚書しょうしょ陳ひね汝なんじ言げん有罪ゆうざい下獄げごく。乙おつ丑うし，享とおる太ふとし廟びょう。甲かぶと戌いぬ，大だい祀まつ天地てんち於南郊なんこう。己おのれ卯う，上うえ皇太后こうたいごう尊號そんごう。

　　二に月がつ戊つちのえ申さる，開ひらき雲南うんなん、福建ふっけん、浙江せっこう銀ぎん場じょう。中ちゅう官かん市し雲南うんなん珍寶ちんぽう。

　　閏月じゅんげつ己おのれ卯う，瘞土木どぼく暴骸。

　　夏なつ四よん月がつ，復ふく設しつらえ巡めぐ撫なで官かん。

　　五月ごがつ壬みずのえ寅とら，授處士し吳くれ與あずか弼左諭さとし德とく，辭じ不ふ拜はい，尋ひろ送還そうかん鄉きょう。

　　秋あき七なな月がつ癸みずのと卯う，定じょう遠どお伯はく石せき彪あや為平ためひら夷えびす將軍しょうぐん，充たかし總そう兵へい官かん，禦寇寧やすし夏なつ。

　　八はち月がつ戊つちのえ辰たつ，孛來寇らいこう鎮番。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ甲子きのえね，獵りょう南海子みなこ。壬みずのえ午うま，武平ぶへい伯はく陳ちん友とも為ため征せい夷えびす將軍しょうぐん，充たかし總そう兵へい官かん，剿寇寧やすし夏なつ。

　　十一月じゅういちがつ甲きのえ寅とら，免めん山東さんとう秋あき糧かて。

　　是これ年ねん，安やす南みなみ、烏がらす斯藏、占うらない城じょう、哈密入貢にゅうこう。

天てん順じゅん三さん年ねん

　　三さん年ねん春はる正月しょうがつ乙未おとみ，大だい祀まつ天地てんち於南郊なんこう。甲かぶと辰たつ，定じょう遠どお伯はく石せき彪あや、彰あきら武たけ伯はく楊信敗はい孛來於安邊べ營，都と督とく僉事周しゅう賢けん、都と指揮しき李り鑑あきら戰死せんし。進すすむ彪あや為ため侯こう^[1]。

　　二に月がつ丁ちょう卯しげる，遣や御ご史し及中官かん採と珠たま廣東かんとん。

　　夏なつ四よん月がつ壬みずのえ子こ，巡じゅん撫なで兩りょう廣こう僉都御ご史し葉は盛もり破やぶ瀧水たきみず瑤よう。己おのれ巳み，南みなみ和わ侯こう方ほう瑛あきら克かつ貴き州しゅう苗なえ。

　　六ろく月がつ辛からし酉とり，復命ふくめい巡じゅん撫なで官かん以八はち月がつ集しゅう京師けいし議事ぎじ。

　　秋あき八はち月がつ庚かのえ戌いぬ，石せき彪あや有罪ゆうざい，下しも錦にしき衣ころも衞まもる獄ごく。己おのれ未み，禁きん文武ぶんぶ大臣だいじん、給きゅう事ごと中ちゅう、御ご史し、錦にしき衣ころも衞まもる官かん往來おうらい交通こうつう，違たがえ者しゃ依よ鐵てつ榜例論ろん罪ざい。乙おつ亥い，免めん湖みずうみ廣こう被災ひさい秋あき糧かて。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ己おのれ未み，幸さいわい南海子みなこ。庚午こうご，石せき亨とおる以罪罷やめ。諸しょ奪だつ門もん冒おかせ功こう者しゃ許もと自首じしゅ改正かいせい。是これ月がつ，命いのち法ほう司會しかい廷臣ていしん，每歲まいさい霜降しもふり錄ろく囚しゅう，後ご以為常つね。

　　十一月じゅういちがつ癸巳きし，振ふ湖みずうみ廣ひろ饑ひだる。

　　是これ年ねん，哈密、疏球中山なかやま、錫すず蘭山あららぎやま、滿まん剌加入貢にゅうこう。

天てん順じゅん四よん年ねん

　　四よん年ねん春はる正月しょうがつ丁ひのと亥い，大だい祀まつ天地てんち於南郊なんこう。癸みずのと卯う，石せき亨とおる有罪ゆうざい下獄げごく，尋ひろ死し。

　　二に月がつ壬みずのえ子こ，僮陷梧州。丁ちょう卯しげる，石いし彪あや棄市。

　　三さん月がつ庚かのえ辰たつ，賜たまもの王おう一いち夔等進士しんし及第きゅうだい、出身しゅっしん有ゆう差さ。戊つちのえ戌いぬ，免めん南みなみ畿被災ひさい秋あき糧かて。

　　夏なつ四よん月がつ己おのれ酉とり，分遣ぶんけん內臣督とく浙江せっこう、雲南うんなん、福建ふっけん、四川しせん銀ぎん課か。壬みずのえ子こ，襄じょう王おう瞻墡來朝らいちょう。

　　五月ごがつ壬みずのえ午うま，免めん畿內、浙江せっこう被災ひさい秋あき糧かて。己おのれ亥い，罷やめ中ちゅう官かん督とく蘇そ、杭くい織お造みやつこ。

　　六ろく月がつ癸みずのと亥い，免めん湖みずうみ廣こう被災ひさい稅ぜい糧かて。

　　秋あき七なな月がつ乙おつ亥い朔ついたち，日にち有ゆう食しょく之の。辛からし卯う，自じ五月雨さみだれ至いたり是これ月がつ，淮水決けつ，沒ぼつ軍ぐん民田たみだ廬いおり，遣や使つかい振ふ卹。

　　八はち月がつ甲子きのえね，孛來三さん道みち入寇にゅうこう，大同だいどう總そう兵へい官かん李り文あや、宣せん府ふ總そう兵へい官かん楊能禦之。癸みずのと酉とり，孛來入にゅう雁かり門もん，掠かすめ忻、代だい、朔さく諸しょ州しゅう。

　　九きゅう月がつ庚かのえ辰たつ，孛來圍かこえ大同だいどう右みぎ衞まもる。庚かのえ寅とら，撫なで寧やすし伯はく朱しゅ永ひさし，都と督とく白玉しらたま、鮑あわび政せい備宣府ふ邊あたり。甲かぶと午うま，免めん江西えにし被災ひさい秋あき糧かて。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ甲子きのえね，閱京營將領りょう騎射きしゃ於西苑えん。戊つちのえ辰たつ，幸さいわい南海子みなこ。

　　十一月じゅういちがつ丁ひのと酉とり，閱隨操みさお武臣ぶしん騎射きしゃ於西苑えん。

　　閏月じゅんげつ己おのれ未み，幸さいわい鄭てい村むら壩，閱甲仗軍馬ば。

　　是これ年ねん，疏球中山なかやま、安やす南みなみ、占うらない城じょう、爪つま哇、哈密、烏がらす斯藏入貢にゅうこう。

天てん順じゅん五ご年ねん

　　五ご年ねん春はる正月しょうがつ庚かのえ戌いぬ，大だい祀まつ天地てんち於南郊なんこう。

　　二に月がつ己おのれ卯う，免めん山東さんとう被災ひさい稅ぜい糧かて。丙へい申さる，都と督とく僉事顏がお彪あや為ため征せい夷えびす將軍しょうぐん，充たかし總そう兵へい官かん，討兩廣こう瑤よう賊ぞく。

　　三さん月がつ壬みずのえ子こ，免めん蘇そ、松まつ、常つね、鎮被災ひさい稅ぜい糧かて。甲きのえ寅とら，湖みずうみ廣ひろ、貴き州しゅう總そう兵へい官かん李り震しん會かい廣西ひろせ軍ぐん剿瑤、僮，悉破之の。

　　夏なつ四よん月がつ癸巳きし，兵部ひょうぶ侍さむらい郎ろう白はく圭けい督とく陝西せんせい諸しょ邊あたり，討孛來らい。

　　五月ごがつ丁未ていみ，免めん河南かなん被災ひさい秋あき糧かて。

　　六ろく月がつ丙へい子こ，孛來寇らいこう河西かさい，官軍かんぐん敗はい績。壬みずのえ午うま，兵部ひょうぶ尚書しょうしょ馬うま昂のぼる總督そうとく軍務ぐんむ，懷ふところ寧やすし伯はく孫まご鏜充總そう兵へい官かん，帥そち京きょう營軍禦之。

　　秋あき七なな月がつ庚かのえ子こ，總督そうとく京きょう營太監かん曹吉祥きっしょう及昭武たけ伯はく曹欽反はん，左ひだり都と御ご史し寇深、恭順きょうじゅん侯こう吳くれ瑾被殺ころせ，懷ふところ寧やすし伯はく孫まご鏜帥兵へい討平之の。癸みずのと卯う，磔はりつけ吉祥きっしょう於市，夷えびす其族，其黨湯ゆ序じょ等とう悉伏誅。丁未ていみ，免めん南みなみ畿被災ひさい稅ぜい糧かて。庚かのえ戌いぬ，大赦たいしゃ，求もとめ直言ちょくげん。丁ちょう巳み，河かわ決けつ開封かいふう，侍さむらい郎ろう薛遠往治之の。戊つちのえ午うま，都と督とく馮宗充たかし總そう兵へい官かん，禦寇於河西にし，兵部ひょうぶ侍さむらい郎ろう白はく圭けい、副ふく都と御ご史し王おう竑參贊さん軍務ぐんむ。辛からし酉とり，孛來上書うわがき乞和。

　　九きゅう月がつ壬みずのえ戌いぬ，京師けいし地震じしん有ゆう聲ごえ。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ壬みずのえ申さる，以西いせい邊べ用兵ようへい，令れい河南かなん、山西さんせい、陝西せんせい士民しみん納おさめ馬ば者しゃ予よ冠かんむり帶たい。

　　十一月じゅういちがつ丁ひのと酉とり朔ついたち，日にち有ゆう食しょく之の。壬みずのえ戌いぬ，幸さいわい南海子みなこ。

　　是これ年ねん，安やす南みなみ、疏球中山なかやま、哈密、亦また力ちから把わ里さと入貢にゅうこう。

天てん順じゅん六ろく年ねん

　　六ろく年ねん春はる正月しょうがつ丁未ていみ，大だい祀まつ天地てんち於南郊なんこう。戊つちのえ申さる，孛來遣や使つかい入貢にゅうこう。

　　二に月がつ癸みずのと酉とり，諭さとし孛來。

　　三さん月がつ癸みずのと丑うし，召馮宗むね等とう還かえ。

　　夏なつ四よん月がつ壬みずのえ申さる，免めん河南かなん被災ひさい秋あき糧かて。

　　五月ごがつ庚かのえ子こ，顏かお彪あや討平兩りょう廣こう諸しょ瑤よう。己おのれ未み，免めん陝西せんせい被災ひさい秋あき糧かて。

　　六ろく月がつ戊つちのえ辰たつ，淮王祁銓來朝らいちょう。

　　秋あき七なな月がつ，淮安海うみ溢。

　　九きゅう月がつ乙未おとみ，皇太后こうたいごう崩くずし。

　　冬ふゆ十じゅう一いち月がつ甲かぶと午うま，葬そう孝こう恭きょう章あきら皇后こうごう。

　　是これ年ねん，琉球りゅうきゅう中山ちゅうざん、哈密、烏がらす斯藏、暹羅しゃむ入貢にゅうこう。

天てん順じゅん七なな年ねん

　　七なな年ねん春はる正月しょうがつ丙午ひのえうま，大だい祀まつ天地てんち於南郊なんこう。

　　二に月がつ壬みずのえ戌いぬ，詹事陳ひね文ぶん為ため禮れい部ぶ侍さむらい郎ろう兼けん翰林かんりん學士がくし，入閣にゅうかく預あずか機き務つとむ。

　　三さん月がつ壬みずのえ寅とら，旱ひでり，詔みことのり行ぎょう寬ひろし卹之政せい，停とま各かく處しょ銀ぎん場じょう。

　　夏なつ四よん月がつ壬みずのえ午うま，逮宣、大だい巡じゅん按御史し李り蕃しげる，荷に校こう於長安やす門もん，尋ひろ死し。丙へい戌いぬ，復ふく遣や中ちゅう官かん督とく蘇そ、杭くい織お造みやつこ。

　　五月ごがつ己おのれ丑うし朔ついたち，日にち有ゆう食しょく之の。甲きのえ寅とら，遼東りゃおとん巡じゅん按御史し楊璡以擅撻軍職しょく逮治。

　　六ろく月がつ丁ちょう卯しげる，逮山西にし巡じゅん按御史し韓かん祺，荷に校こう於長安やす門もん，數日すうじつ死し。

　　秋あき七なな月がつ庚かのえ戌いぬ，免めん陝西せんせい被災ひさい稅ぜい糧かて。

　　閏月じゅんげつ甲かぶと戌いぬ，上うえ宣せん宗むね廢はい后きさき胡えびす氏し尊みこと諡おくりな。戊つちのえ寅とら，命いのち湖こ廣ひろ、貴き州しゅう會かい師し討洪江こう叛苗。

　　九きゅう月がつ甲かぶと戌いぬ，敕廣東總とうそう兵へい官かん歐おう信しん會かい廣西ひろせ兵へい討瑤賊ぞく。

　　冬ふゆ十じゅう月がつ丁ちょう酉とり，振ふ西安しーあん諸もろ府ふ饑ひだる。丁未ていみ，巡じゅん撫なで廣西ひろせ僉都御ご史し吳くれ楨節制せっせい兩りょう廣こう諸しょ軍ぐん，討瑤賊ぞく。

　　十一月じゅういちがつ癸みずのと酉とり，賊ぞく陷おちい梧州，致仕ちし布ぬの政せい使し宋そう欽死之の^[2]。壬みずのえ午うま，下しも右みぎ都と御ご史し李り賓まろうど、副ふく都と御ご史し林はやし聰さとし於錦衣ころも衞まもる獄ごく。

　　十二月じゅうにがつ辛からし卯う，下した刑部おさかべ尚書しょうしょ陸りく瑜，侍さむらい郎ろう周しゅう瑄、程ほど信しんじ於錦衣ころも衞まもる獄ごく，尋ひろ釋しゃく之の。

　　是これ年ねん，琉球りゅうきゅう中山ちゅうざん、哈密、安やす南みなみ、烏がらす斯藏入貢にゅうこう。

天てん順じゅん八はち年ねん

　　八はち年ねん春はる正月しょうがつ乙おつ卯う，帝みかど不ふ豫よ。己おのれ未み，皇太子こうたいし攝と事こと於文華はな殿どの。己おのれ巳み，大だい漸やや，遺のこ詔みことのり罷やめ宮みや妃ひ殉葬。庚午こうご，崩くずし，年ねん三さん十じゅう有ゆう八はち。

　　二に月がつ乙未おとみ，上うえ尊たかし諡おくりな^[3]，廟びょう號ごう英えい宗むね，葬そう裕ひろし陵りょう。

贊さん

　　贊さん曰：英えい宗むね承うけたまわ仁ひとし、宣之のぶゆき業ぎょう，海うみ內富庶，朝野あさの清きよし晏。大臣だいじん如三さん楊、胡えびす濙、張ちょう輔，皆みな累るい朝あさ勳くん舊きゅう，受遺輔政，綱紀こうき未み弛たゆ。獨どく以王振ふ擅權開ひらき釁，遂とげ至いたり乘じょう輿こし播遷。乃復辟而後ご，猶なお追つい念ねん不ふ已やめ，抑そもそも何なん其惑溺わくでき之の深ふか也。前後ぜんご在位ざいい二に十じゅう四よん年ねん，無む甚稗政せい。至いたり於上恭きょう讓ゆずる后きさき諡おくりな，釋しゃく建けん庶人之の繫，罷やめ宮みや妃ひ殉葬，則のり盛德せいとく之の事こと可か法ほう後世こうせい者しゃ矣。

校勘こうかん記き

1. 進すすむ彪あや為ため侯こう　此繫於正月がつ，本ほん書卷しょかん一いち０七なな功臣こうしん世よ表ひょう、英えい宗むね實錄じつろく卷まき三さん０二に繫於四よん月がつ己おのれ巳み。
2. 致仕ちし布ぬの政せい使し宋そう欽死之の　宋そう欽，原作げんさく「宗そう欽」，據よりどころ本ほん書卷しょかん三さん一いち七なな潯州傳でん、明あかり史し稿こう紀き一いち０英えい宗むね後ご紀き、英えい宗むね實錄じつろく卷まき三さん五ご九きゅう改あらため。
3. 二に月がつ乙未おとみ上じょう尊みこと諡おくりな　二に月がつ，原作げんさく「三さん月がつ」，據よりどころ英えい宗むね實錄じつろく卷まき三さん六ろく一いち、憲けん宗そう實錄じつろく卷まき二に改あらため。

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