パンチラ

パンチラとは、（主おもに）女性じょせい用ようの短みじかい下穿したばき（パンティー）がチラリと見みえてしまうことを意味いみする語句ごく。

概要がいよう

チラリズムの一種いっしゅとされ、1951年ねんの流行りゅうこう語ごである。女優じょゆうの浅香あさか光代みつよが舞台ぶたいでの立たち回まわりの際さいに太腿ふとももをチラリと見みせたことから発生はっせいした語句ごくであり「ちょっとだけ見みえることから気きづかれていなかった欲求よっきゅうを励起れいきし、想像そうぞう力りょくがかき立たてられる」といった効果こうかを引ひき起おこすものである。広告こうこく、演出えんしゅつ手法しゅほうで言いうところの「ティーザー」（teaser / 焦じらし）が該当がいとうする。そこから転てんじて、パンチラとは主おもに男女だんじょや状況じょうきょうなどを特とくに限定げんていせず「意識いしきしてモロに見みせる」のではなく「見みせるつもりはないが、何なんらかの拍子ひょうしでちょっとだけ見みえてしまった」ものを意味いみする。ただし「極端きょくたんに短みじかい」「ある程度ていどパンツが見みえるのは覚悟かくごの上うえのミニスカート」「極端きょくたんなローライズのジーンズ」など、明確めいかくな区分くぶんは難むずかしい。

また、チラリどころではなくモロに見みえてしまっているような状況じょうきょうを「パンモロ」と呼よぶ場合ばあいがある。ズボンから下着したぎがはみ出だして見みえる状態じょうたいは指ささず、専もっぱらスカートについて、しかも裾すそがめくれて見みえている状態じょうたいのみを指さす。

別べつの概念がいねんとしては、パンチラに近ちかいほど際きわどい露出ろしゅつをしながらパンツを描えがかずに、下着したぎそのものを履はいているかをあいまいに描写びょうしゃする「はいてない」という漫画まんがやアニメならではの方法ほうほうもある。

歴史れきし

注目ちゅうもくされるようになった時期じきは不明ふめいである。1986年ねん版はん『現代げんだい用語ようごの基礎きそ知識ちしき』で初はつ掲載けいさいされたが、実際じっさいは1970年代ねんだいより使つかわれている。日本にっぽんでは和服わふくの時代じだいには基本きほん的てきに下穿したばきは着用ちゃくようしないものであり、裾すそがまくれた場合ばあいにはパンティーではなく性器せいきが見みえる状況じょうきょうであった。しかし、この頃ころからの羞恥心しゅうちしんの変遷へんせんについて研究けんきゅうした井上いのうえ章一しょういちによれば、当時とうじは「見みえてしまうこと」はさして大変たいへんなことではなく、日常にちじょう的てきな風景ふうけいであったとされる。また、そのような視点してんから白木屋しらきやの火事かじのエピソードを否定ひていしている。

その後ご、洋装ようそうに切きり替かわって女性じょせいが下穿したばきを着用ちゃくようするようになり、次第しだいにパンティーが見みえることが受うけ止とめられるようになるが、明確めいかくな時期じきは不明ふめいである。少すくなくとも1960年代ねんだいにはアンダースコートなどのスポーツ用よう下着したぎは、見みせても良よい下着したぎとして社会しゃかい的てきコンセンサスができていた。

1930年代ねんだいのアメリカでは、既すでにマックス・フライシャーが手掛てがけたキャラクターベティ・ブープが、風ふうによってパンティが見みえる演出えんしゅつが出来上できあがっており、1950年代ねんだいのハリウッドを代表だいひょうする女優じょゆうマリリン・モンローの出演しゅつえんした映画えいが『七なな年ねん目めの浮気うわき』（1955年ねん）においてはスカートが大おおきくまくれあがるシーンがあり、話題わだいを呼よんだ。日本にっぽんでは1969年ねんに小川おがわローザが出演しゅつえんして「オー!モーレツ」のキャッチコピーで一世いっせいを風靡ふうびした丸善まるぜん石油せきゆ（現げん：コスモ石油こすもせきゆ）のテレビCMで、ミニスカートがめくれるシーンがあり、話題わだいになった。また、それに前後ぜんごして1968年ねんから連載れんさいが始はじまった永井豪ながいごうの漫画まんが作品さくひん『ハレンチ学園がくえん』に影響えいきょうされてのスカートめくりが流行りゅうこうした。遅おそくともこの時期じきには、既すでに「パンチラ」という概念がいねんがある程度ていど定着ていちゃくしていたと考かんがえることができる。

1970年代ねんだいから1980年代ねんだいにはパンチラが人々ひとびとの関心かんしんを集あつめる効果こうかが注目ちゅうもくされ、青少年せいしょうねん向むけ雑誌ざっしのグラビアだけでなくテレビCMの常套じょうとう手段しゅだんとなり、テレビドラマなどにもしばしば登場とうじょうした。その後ごに雑誌ざっしのグラビアなどが過激かげきな方向ほうこうにシフトしたこと、ミニスカートが一般いっぱんに浸透しんとうして見みえる可能かのう性せいがある場合ばあいには見みえてもいいものを重かさね穿はきする習慣しゅうかんが普及ふきゅうしたことなどの事情じじょうが重かさなり、パンチラ自体じたいの注目ちゅうもく度どは低下ていかしたように思おもえた。

1993年ねん、NHK社員しゃいんが取材しゅざい腕章わんしょうを悪用あくようして甲子園こうしえんの応援おうえん中ちゅうの女おんな生徒せいとのスカートの中なかを盗ぬすめ撮うつし、兵庫ひょうご県けん迷惑めいわく防止ぼうし条例じょうれいで書類しょるい送検そうけんされる事件じけんが起おき、撮影さつえいは犯罪はんざいであると判断はんだんされた。パンチラが異性いせいの性的せいてきな視線しせんを集あつめることが周知しゅうちされて嫌悪けんお感かんを持もつ人ひとが増ふえたため、不ふ特定とくてい多数たすうを対象たいしょうとしたテレビなどの媒体ばいたいではあまり見みられなくなっている。男性だんせいの視線しせんを諧謔かいぎゃく的てきに描えがいた作品さくひんとしては、グループ魂たましいによる「パンチラ・オブ・ジョイトイ」（2004年ねん『荒こうぶる日本にっぽんの魂たましいたち 』収録しゅうろく楽曲がっきょく）があった。

漫画まんが・アニメなどでの表現ひょうげん

漫画まんがにおいては、パンチラは健康けんこう的てきなエロティシズムの象徴しょうちょうとして多おおくの漫画まんが家かが作中さくちゅうで使用しようされた。中なかでも金井かないたつおはその作品さくひん『ホールインワン』において漫画まんがにおけるパンチラ描写びょうしゃをほぼ完成かんせいさせた人物じんぶつとして『サルまん』等とうで高たかく評価ひょうかされている。

アニメにおいては、その視聴しちょう者しゃ層そうも意識いしきしてパンチラが性的せいてきな意味いみで使用しようされることは抑おさえられてきた。小学生しょうがくせいまたはその前後ぜんごに相当そうとうする年齢ねんれいの女児じょじに関かんするパンチラやパンモロは、その女児じょじの「元気げんきの良よさ」の象徴しょうちょうとして一般いっぱん的てきな演出えんしゅつ方法ほうほうであり、類例るいれいは多おおかった。アニメーション映画えいがの『ミッキー・マウスシリーズ』（1928年ねん～）のヒロインミニーマウスや、『パンダコパンダ』（1972年ねん・1973年ねん）の主人公しゅじんこうのミミ子みね、テレビアニメ『ムーミン』（1969年ねん・1972年ねん）のミイなどが例れいとして挙あげられる。また、『サザエさん』（1969年ねん - ）のワカメ（原作げんさくの描写びょうしゃにもよる）なども同様どうようである。

ただし、これらの作品さくひんにおいて見みえるパンツは俗ぞくに「かぼちゃパンツ」と呼よばれるもので、露骨ろこつに性欲せいよくを煽あおるものでなかったのに対たいし、マックス・フライシャーのベティ・ブープや、『ドラえもん』（1979年ねん -）の源みなもとしずかは身体しんたいのラインを想起そうきさせるものもあった。バトルアニメにおいても、ミニスカート姿すがたの女性じょせいキャラクターがバトルで身体しんたいを激はげしく動うごかすシーンであれば、パンチラ描写びょうしゃは当然とうぜんのように存在そんざいしている（『科学かがく忍者にんじゃ隊たいガッチャマン』の白鳥はくちょうのジュンなど）。1997年ねんにOVA『AIKa』が制作せいさくされると、それまでは受動じゅどう的てきであったパンチラを能動のうどう的てきにパンツを見みせるという演出えんしゅつ手法しゅほうが取とられると同時どうじに、臀部でんぶにおける肉感にっかんやパンツの皺しわなどの精密せいみつな描写びょうしゃが用もちいられている。『ゴリラーマン』11巻かんでは、高校こうこうの女子じょしテニス部ぶの部員ぶいんが、白しろのポロシャツの上うえにジャンパーを着込きこみ、白しろのスコート、白しろのソックスに運動うんどう靴くつの恰好かっこうで登場とうじょう。女子じょしテニス部員ぶいんのひとりがおしゃべりしている最中さいちゅうにベンチから立たち上あがって、白しろのスコートを自みずから捲めくり上あげて、自分じぶんの白しろのアンダースコートを見みせている姿すがたが描写びょうしゃされたケースもある。

2000年代ねんだいに入はいり、テレビアニメでのパンチラ表現ひょうげんは『サザエさん』や『クレヨンしんちゃん』を除のぞくと、あまり見みられなくなった。これには「未成年みせいねん者しゃによる犯罪はんざいの増加ぞうか」や（実際じっさいの犯罪はんざい発生はっせい率りつはほぼ横這よこばい、メディア効果こうか論ろんも参照さんしょう）日本にっぽんのアニメが海外かいがいでも数多かずおおく放映ほうえいされるようになり、自主じしゅ規制きせいが高たかまったことなどが背景はいけいにあるとされる。初期しょきにはパンチラが存在そんざいし、商品しょうひん化かされた人形にんぎょうやぬいぐるみでもパンツ丸見まるみえだった『ちびまる子こちゃん』や『ブラック・ジャック』のピノコなどからも、その種たねの表現ひょうげんがなくなっている。

2019年ねん現在げんざいでは、アニメにおけるパンチラは最初さいしょから視聴しちょう者しゃに見みせることを意図いとした、深夜しんやアニメや商品しょうひん化かされたテレビアニメおよびOVA、有料ゆうりょうの有線ゆうせん・衛星えいせい放送ほうそうに限かぎられつつある（『いちご100%』など）。劇場げきじょう公開こうかい作品さくひんではイベントとして大胆だいたんなパンチラやパンモロが描えがかれることも少すくなくなく、地上波ちじょうは放送ほうそう時じに編集へんしゅうや削除さくじょを施ほどこされることはまずない（ただし、「ドラえもん のび太たのひみつ道具どうぐ博物館はくぶつかん」では規制きせいが行おこなわれた）が、2015年ねん後期こうきからは地上波ちじょうはの深夜しんや帯たいでもパンチラを描えがくことは難むずかしくなっている。

倫理りんりコードによりパンチラ描写びょうしゃが難むずかしくなった代かわりに、上うえ節ぶしに記載きさいされている「はいてない」描写びょうしゃでカバーするところも増ふえているが、当然とうぜんながら平面へいめん作画さくがでのみ通用つうようする方法ほうほうであり、立体りったいのフィギュアではスカートの中なかを描写びょうしゃしないことは不可能ふかのうであるため、作中さくちゅうで明あかされなかったスカートの中なかがフィギュア発売はつばいによって明あきらかになる流ながれが出来上できあがっている。

実写じっしゃ作品さくひんでの表現ひょうげん

実写じっしゃ作品さくひんでは、漫画まんがやアニメのように意図いと的てきに描写びょうしゃを控ひかえることが不可能ふかのうであるため、スカート姿すがたで大おおきな動うごきをすることのないストーリーにするか、そうせざるを得えない場合ばあいは撮影さつえいのアングルや編集へんしゅう、もしくは衣装いしょうそのものにパンチラ防止ぼうしの工夫くふうがされる。特とくに多おおいのは明あきらかに見みせパンと分わかる下着したぎを着用ちゃくようする方法ほうほうだが、サービスショットを作つくるためにパンツに外観がいかんが似にていて一見いっけんしただけでは見みせパンと分わからない下着したぎを着用ちゃくようすることもある。例れいとして2012年ねんに放送ほうそうされたテレビドラマ『メグたんって魔法まほうつかえるの?』では、スカートをたくし上あげてパンツを見みせることがストーリー上じょう重要じゅうような要素ようそとなっていたため、大胆だいたんなパンモロが描えがかれた。

コンピュータゲームでの表現ひょうげん

アダルトゲームではごく日常にちじょう的てきに描えがかれることはあるが、家庭かてい用ようゲームではあまり描えがかれることはなかった。一時期いちじき、セガサターン用ようのゲームソフトで「X指定してい（18禁きん）」「推奨すいしょう年齢ねんれい18歳さい以上いじょう」の区分くぶんでパンチラや半裸はんらまでは容認ようにんされていた（下級生かきゅうせいなど）。

2002年ねんに家庭かてい用ようゲームソフトの審査しんさを行おこなう業界ぎょうかい団体だんたいコンピュータエンターテインメントレーティング機構きこう（CERO）が設立せつりつされたのを機きに、同どう団体だんたいによる審査しんさでパンチラも対象たいしょうになったことと、各かくゲーム機きのメーカー（任天堂にんてんどう、セガ、ソニー・コンピュータエンタテインメント、マイクロソフト）によって異ことなっていた表現ひょうげんの規制きせいがほぼ統一とういつされたことで、家庭かてい用ようゲームでも少すこしずつ見みられつつある（パンチラやその他た性欲せいよくを想起そうきさせる描写びょうしゃによって「B（12才さい以上いじょう対象たいしょう）」「C（15才さい以上いじょう対象たいしょう）」に、より露骨ろこつな描写びょうしゃだと「D（17才さい以上いじょう対象たいしょう）」に区分くぶんされることもある）。

参考さんこう文献ぶんけん

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• 上野うえの千鶴子ちづこ『スカートの下したの劇場げきじょう　ひとはどうしてパンティにこだわるのか』河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ〈河出かわで文庫ぶんこ う3-1〉、1989年ねん8月がつ。ISBN 4-309-24109-3。OCLC 673331844。 ISBN 978-4-309-24109-8。
• 林はやし美一よしかず『時代じだい風俗ふうぞく考証こうしょう事典じてん』（新装しんそう版ばん）河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、2001年ねん1月がつ11日にち。ISBN 4-309-22367-2。OCLC 54397654。 ISBN 978-4-309-22367-4。
• メダルト・ボス 著しる、村上むらかみ仁ひとし・吉田よしだ和夫かずお 訳わけ『性的せいてき倒錯とうさく─恋愛れんあいの精神病せいしんびょう理学りがく』みすず書房しょぼう、1957年ねん6月がつ（原著げんちょ1952年ねん）。ASIN B000JBWMWE。 
  • 新装しんそう版ばん：メダルト・ボス 著ちょ、村上むらかみ仁ひとし・吉田よしだ和夫かずお 訳やく『性的せいてき倒錯とうさく─恋愛れんあいの精神病せいしんびょう理学りがく』（新装しんそう）みすず書房しょぼう、1998年ねん6月がつ2日にち。ISBN 4-622-04929-5。OCLC 675844374。https://www.msz.co.jp/book/detail/04929/。 ISBN 978-4-622-04929-6。
  • 原著げんちょ：Boss, Medard (1952) (ドイツ語ご). Sinn und Gehalt der sexuellen Perversionen. Huber: Auflage: 2., erw. u. neu bearb. Aufl.. ASIN B0000BGQQ7 
• ワコール宣伝せんでん部ぶ 編へん『実用じつよう版ばん 下着したぎおもしろ雑学ざつがく事典じてん』講談社こうだんしゃ、1986年ねん9月がつ。ISBN 4-06-202559-0。OCLC 673259468。 ISBN 978-4-06-202559-1。
• (英語えいご) Diagnostic and statistical manual of mental disorders : DSM-IV-TR (4 ed.). Arlington, Va.: American Psychiatric Association. (2005). ISBN 0890420246 ISBN 9780890420256.
• Jonathan E. Abel, "Packaging Desires: The Unmentionables of Japanese Film,” Perversion and Modern Japan: Psychoanalysis, Literature, Culture edited by Keith Vincent and Nina Cornyetz, Routledge, 2009. 272-307.ISBN 0415691435 ISBN 978-0415691437.

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