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玉井 真理子・中澤 英之・阿部 史子「3-1-1 アメリカ臨床腫瘍学会声明:がん昜罹患性遺伝子検査について」
last update: 20131126
第 だい 3章 しょう 特定 とくてい の領域 りょういき に焦点 しょうてん をあてた指針 ししん ・勧告 かんこく ・声明 せいめい など
[資料集 しりょうしゅう p.20]
◇3-1 がんに関 かん して
◆3-1-1
アメリカ臨床 りんしょう 腫瘍 しゅよう 学会 がっかい 声明 せいめい :がん昜罹患 りかん 性 せい 遺伝子 いでんし 検査 けんさ について
Statement of the American Society of Clinical Oncology: Genetic Testing
for Cancer Susceptibility
Adopted on February 20, 1996 by the American Society of Clinical Oncology
Journal of Clinical Oncology, 14:1730-36
声明 せいめい 文 ぶん (p.1730)の全訳 ぜんやく と、解説 かいせつ 部分 ぶぶん の(3)「インフォームドコンセントの必要 ひつよう
性 せい 」の部分 ぶぶん の全訳 ぜんやく
声明 せいめい 文 ぶん
アメリカ臨床 りんしょう 腫瘍 しゅよう 学会 がっかい ( American Society of Clinical Oncology;ASCO)は、
がんの治療 ちりょう に携 たずさ わる医師 いし によって構成 こうせい される団体 だんたい の中 なか で指導 しどう 的 てき な立場 たちば にある組織 そしき と
して、がん専門医 せんもんい はがんリスクの遺伝子 いでんし 検査 けんさ に関 かん しても幅広 はばひろ い知識 ちしき を持 も つべきであ
るという認識 にんしき をもっている。発 はつ がんリスクの高 たか い個人 こじん を見 み つける技術 ぎじゅつ は、最近 さいきん 発見 はっけん
されたものでまだなお開発 かいはつ 中 ちゅう であるが、この技術 ぎじゅつ はがんのよりよい予防 よぼう 法 ほう や早期 そうき 発 はつ
見 み の方法 ほうほう を約束 やくそく するものである。しかし同時 どうじ に、この検査 けんさ 技術 ぎじゅつ は医学 いがく 的 てき 、心理 しんり 的 てき 、
あるいはその他 た の、個別 こべつ なリスクを伴 ともな っているため、遺伝子 いでんし 検査 けんさ の説明 せつめい および同意 どうい
意思 いし の確認 かくにん の過程 かてい で、こういったリスクについても明確 めいかく に述 の べておかなければなら
ない。ASCOは、遺伝子 いでんし 検査 けんさ を行 おこな ういかなる医師 いし も、現行 げんこう の検査 けんさ 手順 てじゅん による利益 りえき と検 けん
査の限界 げんかい とについて十分 じゅうぶん わかっていること、可能 かのう な予防 よぼう 、治療 ちりょう 方法 ほうほう の様々 さまざま な選択肢 せんたくし
によく通 つう じていること、さらにそれを患者 かんじゃ とその家族 かぞく に伝 つた えることができること、
などの条件 じょうけん が求 もと められていると信 しん じている。以上 いじょう の理由 りゆう でASCOは下記 かき の原則 げんそく を表明 ひょうめい
する。
・臨床 りんしょう 腫瘍 しゅよう 学者 がくしゃ の役割 やくわり は、患者 かんじゃ の家族 かぞく 歴 れき を記録 きろく すること、家族 かぞく 性 せい がんであるという
リスクおよび発症 はっしょう 予防 よぼう 方法 ほうほう と早期 そうき 発見 はっけん 方法 ほうほう についてカウンセリングを行 おこな うこと、そ
して、遺伝子 いでんし 検査 けんさ の適用 てきよう となる家族 かぞく を特定 とくてい することである、とASCOは考 かんが える。
・がん昜罹患 りかん 性 せい 検査 けんさ はできる限 かぎ り、患者 かんじゃ の長期 ちょうき 的 てき フォローをする研究 けんきゅう の枠 わく の中 なか で、
行 おこな うべきである。ASCOは、まず適切 てきせつ な守秘 しゅひ 制度 せいど を徹底 てってい させた上 うえ で、研究 けんきゅう および患者 かんじゃ
登録 とうろく を全国 ぜんこく 的 てき に行 おこな う協力 きょうりょく 体制 たいせい を確立 かくりつ し、がん責任 せきにん 遺伝子 いでんし とわかっている遺伝子 いでんし 部位 ぶい
の突然変異 とつぜんへんい が持 も つ臨床 りんしょう 的 てき 意味 いみ を明確 めいかく にしていくべきである、と考 かんが える。
・ASCOは、腫瘍 しゅよう 学者 がくしゃ が遺伝 いでん カウンセリングと遺伝子 いでんし 検査 けんさ とを臨床 りんしょう 腫瘍 しゅよう 学 がく と予防 よぼう 腫瘍 しゅよう
学 がく の場 ば に具体 ぐたい 的 てき
[資料集 しりょうしゅう p.50]
に組 く み入 い れることができるように、医師 いし に対 たい して、がんリスクの数量 すうりょう 評価 ひょうか 、遺伝子 いでんし
検査 けんさ 、検査 けんさ 前 まえ および検査 けんさ 後 ご のカウンセリングなどについて教育 きょういく の機会 きかい を提供 ていきょう する責 せめ
任 にん を担 にな っている。(訳注 やくちゅう :後述 こうじゅつ 参照 さんしょう )
・腫瘍 しゅよう 学者 がくしゃ は、遺伝 いでん 体質 たいしつ 検査 けんさ を行 おこな う場合 ばあい 、それが臨床 りんしょう レベルのものであれ研究 けんきゅう レベ
ルのものであれ、患者 かんじゃ に対 たい して検査 けんさ について納得 なっとく のいく説明 せつめい をした上 うえ で同意 どうい の意思 いし
の確認 かくにん をとるという作業 さぎょう を、その検査 けんさ 全体 ぜんたい に不可欠 ふかけつ なものとして必 かなら ず行 おこな われるよう
にしなければならない。
・ASCOは、下記 かき のすべての条件 じょうけん を満 み たした場合 ばあい にのみ、がん体質 たいしつ 検査 けんさ を行 おこな うよう薦 こも
めている。
1)がんあるいは非常 ひじょう に若年 じゃくねん で発症 はっしょう する疾患 しっかん の家族 かぞく 歴 れき が明 あき らかに見 み られること
2)検査 けんさ 結果 けっか が適切 てきせつ に解釈 かいしゃく できること
3)検査 けんさ をすることが患者 かんじゃ やその家族 かぞく の医療 いりょう 管理 かんり 方法 ほうほう に影響 えいきょう を与 あた えること
臨床 りんしょう の場 ば で検査 けんさ がより行 おこな いやすくなるであろうことから、腫瘍 しゅよう 学者 がくしゃ は有効 ゆうこう な検査 けんさ
技術 ぎじゅつ を持 も つ検査 けんさ 施設 しせつ に検査 けんさ を依頼 いらい し、そして家族 かぞく には長期 ちょうき 的 てき 研究 けんきゅう への参加 さんか を勧 すす める
べきであると、ASCOは考 かんが える。
・腫瘍 しゅよう 学者 がくしゃ はその検査 けんさ 前 まえ ・検査 けんさ 後 ご のカウンセリングの際 さい に、がんの早期 そうき 発見 はっけん と早期 そうき
予防 よぼう の様々 さまざま な様式 ようしき について、また、遺伝 いでん 性 せい がんリスクの非常 ひじょう に高 たか い人 ひと に対 たい するそれ
らの効果 こうか がまだ仮説 かせつ レベルを超 こ えるものでなく証明 しょうめい されたわけではないという点 てん に
ついて、話 はな し合 あ いの中 なか で触 ふ れるべきであると、ASCOは考 かんが える。
・ASCOは患者 かんじゃ の臨床 りんしょう 上 じょう の決断 けつだん に使 つか われるようながん昜罹患 りかん 性 せい 検査 けんさ を行 おこな う検査 けんさ 施設 しせつ に
対 たい して、規制 きせい 権限 けんげん を強 つよ める努力 どりょく が必要 ひつよう であると考 かんが える。遺伝子 いでんし 検査 けんさ に使用 しよう される製 せい
品 ひん に対 たい する適切 てきせつ な管理 かんり 、照合 しょうごう サンプルの検査 けんさ 結果 けっか の検査 けんさ 施設 しせつ 間 あいだ 比較 ひかく 、そして品質 ひんしつ 管 かん
理 り メカニズムなどは、その規制 きせい 内容 ないよう に含 ふく まれていなければならない。
・ASCOは、がん昜罹患 りかん 性 せい が遺伝 いでん したことを理由 りゆう に、個人 こじん が保険 ほけん 会社 かいしゃ や雇用 こよう 者 しゃ からの
差別 さべつ を受 う けないように、法律 ほうりつ 制定 せいてい を含 ふく めて、あらゆる努力 どりょく をしなければならないと
考 かんが える。
・遺伝 いでん 性 せい がんのリスクがある人 ひと は誰 だれ でも適切 てきせつ な遺伝子 いでんし 検査 けんさ および関連 かんれん の医療 いりょう を受 う け
る機会 きかい を与 あた えられなければならず、その費用 ひよう も税金 ぜいきん や企業 きぎょう 寄付 きふ によって賄 まかな われるべ
きである。
・ASCOは、遺伝子 いでんし 検査 けんさ がハイリスクの人 ひと にもたらす心理 しんり 的 てき 影響 えいきょう について、患者 かんじゃ 中心 ちゅうしん
の研究 けんきゅう が行 おこな われるよう継続 けいぞく 的 てき に支援 しえん をして行 い くべきであると、考 かんが えている。
[以上 いじょう が声明 せいめい 文 ぶん ,以下 いか は(3)インフォームドコンセントの必要 ひつよう 性 せい に関 かん する記述 きじゅつ ]
[資料集 しりょうしゅう p.51]
(3)インフォームドコンセントの必要 ひつよう 性 せい
ASCOは、腫瘍 しゅよう 学者 がくしゃ が遺伝 いでん カウンセリングと遺伝子 いでんし 検査 けんさ とを臨床 りんしょう 腫瘍 しゅよう 学 がく と予防 よぼう 腫瘍 しゅよう
学 がく の場 ば に具体 ぐたい 的 てき に組 く み入 い れることができるように、医師 いし に対 たい して、がんリスクの数 かず
量 りょう 評価 ひょうか 、遺伝子 いでんし 検査 けんさ 、検査 けんさ 前 まえ および検査 けんさ 後 ご のカウンセリングなどについて教育 きょういく の機 き
会 かい を提供 ていきょう する責任 せきにん を担 にな っている。
新 あら たな技術 ぎじゅつ が開発 かいはつ されればされるほど、検査 けんさ や治療 ちりょう のもつ研究 けんきゅう 的 てき (investiga
tional)な性格 せいかく が増 ま し、インフォームドコンセントへの関心 かんしん もますます高 たか まってき
ている。遺伝子 いでんし 検査 けんさ は臨床 りんしょう 腫瘍 しゅよう 学 がく の場 ば で行 おこな われているが、遺伝 いでん 情報 じょうほう の持 も つ特別 とくべつ な性 せい
格 かく により、インフォームドコンセントが継続 けいぞく 的 てき に必要 ひつよう とされる。同意 どうい にいたる以前 いぜん
に、検査 けんさ のリスク、検査 けんさ のメリット、検査 けんさ の限界 げんかい について徹底的 てっていてき に話 はな し合 あ い、それ
を書面 しょめん で記録 きろく に残 のこ すことも必要 ひつよう で、さらにそのための訓練 くんれん を受 う けた医療 いりょう 専門 せんもん 家 か が行 くだり
うことも重要 じゅうよう である。書面 しょめん で記録 きろく を残 のこ すことは、教育 きょういく 教材 きょうざい にもなるし、話 はな し合 あ いの
記録 きろく としても役立 やくだ つ。インフォームドコンセントというプロセスは、現在 げんざい 遺伝 いでん カウ
ンセリングを行 おこな う上 うえ でなくてはならない重要 じゅうよう な要素 ようそ なのである。
検査 けんさ に先立 さきだ ち、表 ひょう 1(訳注 やくちゅう :以下 いか の1〜11に対応 たいおう しているため省略 しょうりゃく )に掲 かか げたよ
うな論点 ろんてん について話 はな し合 あ わなければならない。検査 けんさ 結果 けっか がわかってからではいけな
い。話 はな し合 あ いでは次 つぎ のようなことについて話 はな さなければならない。
1)検査 けんさ の目的 もくてき が、DNA上 じょう で、特定 とくてい の発 はつ がん性 せい 遺伝子 いでんし 部位 ぶい に突然変異 とつぜんへんい があるか
どうかを知 し る、ということにあること。
2)検査 けんさ の結果 けっか が陽性 ようせい であれ陰性 いんせい であれ、それから何 なに がわかるかについて。すな
わち、陽性 ようせい の場合 ばあい はもちろんのこと、陰性 いんせい の場合 ばあい もリスクがまったくないとは限 かぎ ら
ないので、どのような発症 はっしょう リスクがあり、そのリスクがどれほど高 たか いかという最新 さいしん
知識 ちしき について。
3)検査 けんさ が一 いち 通 とお り終 お わっても、リスクに関 かん する結果 けっか が出 で ない場合 ばあい があるというこ
と。
4)検査 けんさ を行 おこな わなくても、他 た の方法 ほうほう を使 つか ってリスクをだいたい知 し ることもできる
こと。例 たと えば、様々 さまざま な家族 かぞく 歴 れき を分析 ぶんせき することで作 つく られた、乳 にゅう がんリスク査定 さてい 一覧 いちらん 表 ひょう
を使 つか って知 し ることもできる。
5)突然変異 とつぜんへんい が子 こ どもに遺伝 いでん する可能 かのう 性 せい について
6)検査 けんさ の正確 せいかく さの技術 ぎじゅつ 的 てき な限界 げんかい について
7)検査 けんさ そのものにかかる費用 ひよう 、および医療 いりょう 専門 せんもん 家 か が患者 かんじゃ に対 たい して行 おこな う検査 けんさ 前 まえ の
教育 きょういく 、結果 けっか の説明 せつめい 、そして検査 けんさ 後 ご のフォローなどにかかる費用 ひよう について
8)突然変異 とつぜんへんい が発見 はっけん されてもされなくても、いずれの場合 ばあい も心理 しんり 的 てき 負担 ふたん のリスク
と家族 かぞく 崩壊 ほうかい のリスクがつきまとうこと
9)遺伝 いでん 検査 けんさ の結果 けっか を人 ひと に知 し られると、雇用 こよう や保険 ほけん において差別 さべつ を受 う ける可能 かのう 性 せい
があること
10)遺伝子 いでんし 検査 けんさ の結果 けっか は、その他 た の医療 いりょう 検査 けんさ 結果 けっか や検査 けんさ 過程 かてい が秘密 ひみつ を守 まも られるの
と同様 どうよう 、守秘 しゅひ の原則 げんそく に従 したが って管理 かんり されること
[資料集 しりょうしゅう p.52]
11)検査 けんさ で陽性 ようせい と出 で た後 のち 、観察 かんさつ (サーベイランス)を続 つづ けても限界 げんかい があることに
ついて。観察 かんさつ 以外 いがい にも選択肢 せんたくし があり、また検査 けんさ が陰性 いんせい であってもがんのスクリーニ
ングを受 う けることが一般 いっぱん 的 てき に勧 すす められること。この後者 こうしゃ の場合 ばあい 、すなわち、陰性 いんせい だ
が、検査 けんさ 以外 いがい での遺伝 いでん 要因 よういん 、年齢 ねんれい 、環境 かんきょう 、その他 た の発 はつ がん要因 よういん がある場合 ばあい 、偽 にせ 陰性 いんせい
で安心 あんしん しきってしまったり、偽 にせ 陽性 ようせい で不 ふ 必要 ひつよう に観察 かんさつ (サーベイランス)することを
避 さ けることが重要 じゅうよう である。
患者 かんじゃ はこれらについて話 はな し合 あ うことで、がんリスク要因 よういん や、がんによる致死 ちし 率 りつ を
下 さ げると考 かんが えられる方法 ほうほう のうち、検査 けんさ を受 う けると何 なに がわかり、何 なに がわからないかを
知 し ってから、検査 けんさ を受 う けるかどうか決 き めることができる。すなわち、これらの議論 ぎろん
は、個人 こじん には検査 けんさ を受 う けない権利 けんり があるということを、言下 ごんか に意味 いみ しているのであ
る。
[資料集 しりょうしゅう p.53]
*作成 さくせい :小川 おがわ 浩史 こうじ