(Translated by https://www.hiragana.jp/)
障害者差別解消法
◆川島 聡 20130701 「障害者差別解消法Q&A」
『SYNODOS』http://synodos.jp/faq/4699
◆差別解消法Q&A(内閣府サイト)
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65_qa_kokumin.html
◆障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)
施行日:平成28年4月1日(施行後3年を目処に必要な見直し検討)(↓)
◆韓国障害者差別禁止法(2007年3月国会で可決)・日本語訳
http://dpi.cocolog-nifty.com/website/kankokusabetukinnsi.doc
■経緯
◆2006年12月:国連で障害者権利条約が採択
◆2009年12月8日:障がい者制度改革推進本部設置
◆2010年6月 制度改革推進会議「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」閣議決定
◆2010年11月の第25回障がい者制度改革推進会議で差別禁止部会設置。
11月22日議論開始。以後計21回開催
◇障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/kaikaku.html#bukai
◇障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会 構成員名簿
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/pdf/bukai_meibo.pdf
◆2012年3月16日 部会意見中間まとめ「障害を理由とする差別の禁止に関する法制の制定に向けて」
◆2012年7月 障害者政策委員会のもとで差別禁止部会を改編、小委員会も設置して開催
◇障害者政策委員会 差別禁止部会についてのページ
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/index.html#kinshibukai
◇障害者政策委員会 差別禁止部会 構成委員名簿
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/pdf/bukai_meibo.pdf
◆2012年9月14日 「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会意見を公表
◇「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/pdf/bukai_iken1-1.pdf
◇「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見(概要)
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/pdf/bukai_iken_gaiyo.pdf
◆2013年4月26日 障害者差別解消法案、閣議決定、通常国会(第183回国会)上程
◆2013年5月31日 衆議院本会議 全会一致で採択
◆DPI(障害者インターナショナル)日本会議 2013/06/16 「障害者差別解消法の今国会成立を求める緊急アピール」 [Korean]
◆20130604 本国会での障害者差別解消法の成立を目指して
◆20130605 障害者差別解消法の今国会での成立を求める東京アピール行動!
◆2013年6月18日:参議院内閣委員会で可決
◆2013年6月19日 参議院本会議 全会一致で採択、障害者差別解消法が成立
◆2013年6月26日:公布
◆2016年4月:施行(予定)
*報道、成立後の動き(等)については下↓
■cf.
◆立岩 真也 2013/11/22 「障害者差別禁止の限界と可能性」,障害学国際セミナー2013,於:立命館大学
◆立岩 真也 2010/12/25 「政治に関わるに際して」,『季刊福祉労働』129:13-25
■障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)
※太字は引用者による
目次
第一章 総則(第一条―第五条)
第二章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(第六条)
第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置(第七条―第十三条)
第四章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置(第十四条―第二十条)
第五章 雑則(第二十一条―第二十四条)
第六章 罰則(第二十五条・第二十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
二 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
三 行政機関等 国の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体(地方公営企業法(昭和二十七年法律第二百九十二号)第三章の規定の適用を受ける地方公共団体の経営する企業を除く。第七号、第十条及び附則第四条第一項において同じ。)及び地方独立行政法人をいう。
四 国の行政機関 次に掲げる機関をいう。
イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関
ロ 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項及び第二項に規定する機関(これらの機関のうちニの政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
ハ 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関(ホの政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)
ニ 内閣府設置法第三十九条及び第五十五条並びに宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)第十六条第二項の機関並びに内閣府設置法第四十条及び第五十六条(宮内庁法第十八条第一項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの
ホ 国家行政組織法第八条の二の施設等機関及び同法第八条の三の特別の機関で、政令で定めるもの
ヘ 会計検査院
五 独立行政法人等 次に掲げる法人をいう。
イ 独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。ロにおいて同じ。)
ロ 法律により直接に設立された法人、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(独立行政法人を除く。)又は特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち、政令で定めるもの
六 地方独立行政法人 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人(同法第二十一条第三号に掲げる業務を行うものを除く。)をいう。
七 事業者 商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)をいう。
(国及び地方公共団体の責務)
第三条 国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。
(国民の責務)
第四条 国民は、第一条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに鑑み、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。
(社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備)
第五条 行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。
第二章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針
第六条 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向
二 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
三 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
四 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項
3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。
5 内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
6 前三項の規定は、基本方針の変更について準用する。
第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置
(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)
第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
(事業者における障害を理由とする差別の禁止)
第八条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。
(国等職員対応要領)
第九条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第三条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。
2 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
3 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 前二項の規定は、国等職員対応要領の変更について準用する。
(地方公共団体等職員対応要領)
第十条 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該地方公共団体の機関及び地方独立行政法人の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第四条において「地方公共団体等職員対応要領」という。)を定めるよう努めるものとする。
2 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
3 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。
4 国は、地方公共団体の機関及び地方独立行政法人による地方公共団体等職員対応要領の作成に協力しなければならない。
5 前三項の規定は、地方公共団体等職員対応要領の変更について準用する。
(事業者のための対応指針)
第十一条 主務大臣は、基本方針に即して、第八条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。
2 第九条第二項から第四項までの規定は、対応指針について準用する。
(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)
第十二条 主務大臣は、第八条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。
(事業主による措置に関する特例)
第十三条 行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)の定めるところによる。
第四章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置
(相談及び紛争の防止等のための体制の整備)
第十四条 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。
(啓発活動)
第十五条 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。
(情報の収集、整理及び提供)
第十六条 国は、障害を理由とする差別を解消するための取組に資するよう、国内外における障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集、整理及び提供を行うものとする。
(障害者差別解消支援地域協議会)
第十七条 国及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの(以下この項及び次条第二項において「関係機関」という。)は、当該地方公共団体の区域において関係機関が行う障害を理由とする差別に関する相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。
2 前項の規定により協議会を組織する国及び地方公共団体の機関は、必要があると認めるときは、協議会に次に掲げる者を構成員として加えることができる。
一 特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他の団体
二 学識経験者
三 その他当該国及び地方公共団体の機関が必要と認める者
(協議会の事務等)
第十八条 協議会は、前条第一項の目的を達するため、必要な情報を交換するとともに、障害者からの相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関する協議を行うものとする。
2 関係機関及び前条第二項の構成員(次項において「構成機関等」という。)は、前項の協議の結果に基づき、当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を行うものとする。
3 協議会は、第一項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき、又は構成機関等が行う相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは、構成機関等に対し、相談を行った障害者及び差別に係る事案に関する情報の提供、意見の表明その他の必要な協力を求めることができる。
4 協議会の庶務は、協議会を構成する地方公共団体において処理する。
5 協議会が組織されたときは、当該地方公共団体は、内閣府令で定めるところにより、その旨を公表しなければならない。
(秘密保持義務)
第十九条 協議会の事務に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
(協議会の定める事項)
第二十条 前三条に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
第五章 雑則
(主務大臣)
第二十一条 この法律における主務大臣は、対応指針の対象となる事業者の事業を所管する大臣又は国家公安委員会とする。
(地方公共団体が処理する事務)
第二十二条 第十二条に規定する主務大臣の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、地方公共団体の長その他の執行機関が行うこととすることができる。
(権限の委任)
第二十三条 この法律の規定により主務大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、その所属の職員に委任することができる。
(政令への委任)
第二十四条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。
第六章 罰則
第二十五条 第十九条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第二十六条 第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。
附則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成二十八年四月一日から施行する。ただし、次条から附則第六条までの規定は、公布の日から施行する。
(基本方針に関する経過措置)
第二条 政府は、この法律の施行前においても、第六条の規定の例により、基本方針を定めることができる。この場合において、内閣総理大臣は、この法律の施行前においても、同条の規定の例により、これを公表することができる。
2 前項の規定により定められた基本方針は、この法律の施行の日において第六条の規定により定められたものとみなす。
(国等職員対応要領に関する経過措置)
第三条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、この法律の施行前においても、第九条の規定の例により、国等職員対応要領を定め、これを公表することができる。
2 前項の規定により定められた国等職員対応要領は、この法律の施行の日において第九条の規定により定められたものとみなす。
(地方公共団体等職員対応要領に関する経過措置)
第四条 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、この法律の施行前においても、第十条の規定の例により、地方公共団体等職員対応要領を定め、これを公表することができる。
2 前項の規定により定められた地方公共団体等職員対応要領は、この法律の施行の日において第十条の規定により定められたものとみなす。
(対応指針に関する経過措置)
第五条 主務大臣は、この法律の施行前においても、第十一条の規定の例により、対応指針を定め、これを公表することができる。
2 前項の規定により定められた対応指針は、この法律の施行の日において第十一条の規定により定められたものとみなす。
(政令への委任)
第六条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
第七条 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、第八条第二項に規定する社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮の在り方その他この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。
(障害者基本法の一部改正)
第八条 障害者基本法の一部を次のように改正する。
第三十二条第二項に次の一号を加える。
四 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)の規定によりその権限に属させられた事項を処理すること。
(内閣府設置法の一部改正)
第九条 内閣府設置法の一部を次のように改正する。
第四条第三項第四十四号の次に次の一号を加える。
四十四の二 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)第六条第一項に規定するものをいう。)の作成及び推進に関すること。
■障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議
2013年5月29日 衆議院内閣委員会
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべ
きである。
1 本法が、これまで我が国が取り組んできた国連障害者権利条約の締結に
向けた国内法整備の一環として制定されることを踏まえ、同条約の早期締結
に向け、早急に必要な手続を進めること。
2 基本方針、対応要領及び対応指針は障害者基本法に定められた分野別の
障害者施策の基本的事項を踏まえて作成すること。また、対応要領や対応指
針が基本方針に即して作成されることに鑑み、基本方針をできる限り早期に
作成するよう努めること。
3 対応要領や対応指針においては、不当な差別的取扱いの具体的事例、合
理的配慮の好事例や合理的配慮を行う上での視点等を示すこととし、基本方
針においてこれらの基となる基本的な考え方等を示すこと。また、法施行後
の障害者差別に関する具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえ、不当な
差別的取扱いや合理的配慮に関する対応要領や対応指針の内容の充実を図る
こと。
4 合理的配慮に関する過重な負担の判断においては、事業者の事業規模、
事業規模から見た負担の程度、事業者の財政状況、業務遂行に及ぼす影響等
を総合的に考慮することとし、中小零細企業への影響に配慮すること。また、
意思の表明について、障害者本人が自ら意思を表明することが困難な場合に
はその家族等が本人を補佐して行うことも可能であることを周知すること。
5 国及び地方公共団体において、グループホームやケアホーム等を含む、
障害者関連施設の認可等に際して周辺住民の同意を求めないことを徹底する
とともに、住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うこと。
6 障害を理由とする差別に関する相談について「制度の谷間」や「たらい
回し」が生じない体制を構築するため、障害者差別解消支援地域協議会の設
置状況等を公表するなど、その設置を促進するための方策を講じるとともに、
相談・紛争解決制度の活用・充実及び本法に規定される報告徴収等の権限の
活用等を図ることにより、実効性の確保に努めること。
7 附則第7条に規定する検討に資するため、障害を理由とする差別に関す
る具体的な相談事例や裁判例の集積等を図ること。また、同条の検討に際し
ては、民間事業者における合理的配慮の義務付けの在り方、実効性の確保の
仕組み、救済の仕組み等について留意すること。本法の施行後、特に必要性
が生じた場合には、施行後3年を待つことなく、本法の施行状況について検
討を行い、できるだけ早期に見直しを検討すること。
8 本法が、地方公共団体による、いわゆる上乗せ・横出し条例を含む障害
を理由とする差別に関する条例の制定等を妨げ又は拘束するものではないこ
とを周知すること。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議
2013年5月29日 衆議院内閣委員会
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべ
きである。
1 本法が、これまで我が国が取り組んできた国連障害者権利条約の締結に
向けた国内法整備の一環として制定されることを踏まえ、同条約の早期締結
に向け、早急に必要な手続を進めること。
2 基本方針、対応要領及び対応指針は障害者基本法に定められた分野別の
障害者施策の基本的事項を踏まえて作成すること。また、対応要領や対応指
針が基本方針に即して作成されることに鑑み、基本方針をできる限り早期に
作成するよう努めること。
3 対応要領や対応指針においては、不当な差別的取扱いの具体的事例、合
理的配慮の好事例や合理的配慮を行う上での視点等を示すこととし、基本方
針においてこれらの基となる基本的な考え方等を示すこと。また、法施行後
の障害者差別に関する具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえ、不当な
差別的取扱いや合理的配慮に関する対応要領や対応指針の内容の充実を図る
こと。
4 合理的配慮に関する過重な負担の判断においては、事業者の事業規模、
事業規模から見た負担の程度、事業者の財政状況、業務遂行に及ぼす影響等
を総合的に考慮することとし、中小零細企業への影響に配慮すること。また、
意思の表明について、障害者本人が自ら意思を表明することが困難な場合に
はその家族等が本人を補佐して行うことも可能であることを周知すること。
5 国及び地方公共団体において、グループホームやケアホーム等を含む、
障害者関連施設の認可等に際して周辺住民の同意を求めないことを徹底する
とともに、住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うこと。
6 障害を理由とする差別に関する相談について「制度の谷間」や「たらい
回し」が生じない体制を構築するため、障害者差別解消支援地域協議会の設
置状況等を公表するなど、その設置を促進するための方策を講じるとともに、
相談・紛争解決制度の活用・充実及び本法に規定される報告徴収等の権限の
活用等を図ることにより、実効性の確保に努めること。
7 附則第7条に規定する検討に資するため、障害を理由とする差別に関す
る具体的な相談事例や裁判例の集積等を図ること。また、同条の検討に際し
ては、民間事業者における合理的配慮の義務付けの在り方、実効性の確保の
仕組み、救済の仕組み等について留意すること。本法の施行後、特に必要性
が生じた場合には、施行後3年を待つことなく、本法の施行状況について検
討を行い、できるだけ早期に見直しを検討すること。
8 本法が、地方公共団体による、いわゆる上乗せ・横出し条例を含む障害
を理由とする差別に関する条例の制定等を妨げ又は拘束するものではないこ
とを周知すること。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議
2013年6月18日 参議院内閣委員会
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべ
きである。
1 本法が、これまで我が国が取り組んできた国連障害者権利条約の締結
に向けた国内法整備の一環として制定されることを踏まえ、同条約の早期締
結に向け、早急に必要な手続を進めること。また、同条約の趣旨に沿うよう、
障害女性や障害児に対する複合的な差別の現状を認識し、障害女性や障害児
の人権の擁護を図ること。
2 基本方針、対応要領及び対応指針は、国連障害者権利条約で定めた差
別の定義等に基づくとともに、障害者基本法に定められた分野別の障害者施
策の基本的事項を踏まえて作成すること。また、対応要領や対応指針が基本
方針に即して作成されることに鑑み、基本方針をできる限り早期に作成する
よう努めること。
3 対応要領や対応指針においては、不当な差別的取扱いの具体的事例、
合理的配慮の好事例や合理的配慮を行う上での視点等を示すこととし、基本
方針においてこれらの基となる基本的な考え方等を示すこと。また、法施行
後の障害者差別に関する具体的な相談事例や裁判例の集積等を踏まえ、不当
な差別的取扱いや合理的配慮に関する対応要領や対応指針の内容の充実を図
ること。
4 合理的配慮に関する過重な負担の判断においては、その水準が本法の
趣旨を不当にゆがめることのない合理的な範囲で設定されるべきであること
を念頭に、事業者の事業規模、事業規模から見た負担の程度、事業者の財政
状況、業務遂行に及ぼす影響等を総合的に考慮することとし、中小零細企業
への影響に配慮すること。また、意思の表明について、障害者本人が自ら意
思を表明することが困難な場合にはその家族等が本人を補佐して行うことも
可能であることを周知すること。
5 本法の規定に基づき、主務大臣が事業者に対して行った助言、指導及
び勧告については、取りまとめて毎年国会に報告すること。
6 国及び地方公共団体において、グループホームやケアホーム等を含む、
障害者関連施設の認可等に際して周辺住民の同意を求めないことを徹底する
とともに、住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うこと。
7 本法の規定に基づいて行う啓発活動については、障害者への支援を行
っている団体等とも連携を図り、効果的に行うこと。
8 障害を理由とする差別に関する相談について「制度の谷間」や「たら
い回し」が生じない体制を構築するため、障害者差別解消支援地域協議会の
設置状況等を公表するなど、財政措置も含め、その設置を促進するための方
策を講じるとともに、相談・紛争解決制度の活用・充実を図ること。また、
国の出先機関等が地域協議会に積極的に参加するとともに、本法に規定され
る報告徴収等の権限の活用等を図ることにより、実効性の確保に努めること。
9 附則第7条に規定する検討に資するため、障害を理由とする差別に関
する具体的な相談事例や裁判例の集積等を図ること。また、同条の検討に際
しては、民間事業者における合理的配慮の義務付けの在り方、実効性の確保
の仕組み、救済の仕組み等について留意すること。本法の施行後、特に必要
性が生じた場合には、施行後3年を待つことなく、本法の施行状況について
検討を行い、できるだけ早期に見直しを検討すること。
10 本法が、地方公共団体による、いわゆる上乗せ・横出し条例を含む障
害を理由とする差別に関する条例の制定等を妨げ又は拘束するものではない
ことを周知すること。
11 本法施行後、障害を理由とする差別に関する具体的な相談事例や裁判
例の集積等を踏まえ、「不当な差別的取扱い」や「合理的配慮の不提供」の
定義を検討すること。
12 本法第16条に基づく国の「障害を理由とする差別及びその解消のため
の取組に関する情報の収集、整理及び提供」に関する措置のうち、特に内閣
府においては、障害者差別解消支援地域協議会と連携するなどして、差別に
関する個別事案を収集し、国民に公開し、有効に活用すること。
右決議する。
■報道等
◆障害者差別解消 違いを認め合う社会へ[社説]
2013.06.03東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013060302000128.html×
◆障害連事務局FAXレター NO.274 2013.6.7(金)
「会期末、間に合うか?差別解消法案―ひとりひとりの声を届けよう!参議院へ―
会期末を目前にして、参議院があまり動かない。先月末衆議院を通過した「障害者差別解消法案」の行方が実に微妙なものとなっている。多くの皆さん、メール、FAX、電話で、国会に私たちの声を届けていこうではないか
そんな中、6月4日(火)と、6月5日(水)に障害者差別解消法の成立をめざす集会とデモが行われた。
6月5日(水)、JDF地域フォーラムin東京実行委員会主催の「障害者差別解消法の今国会での成立を求める東京アピール行動!」が行われた。東京・霞ヶ関にある弁護士会館に全国から350名の当事者・関係者が集まり、集会、ビラ配布、パレード(デモ)を行った。
集会には、障害者政策委員会委員長の石川准さんも静岡から駆けつけて参加した。集会後、会館入り口付近にて、今国会での成立を訴えるビラを通行人に配った。
パレードは、シュプレヒコールを繰り返しながら、弁護士会館から国会まで。日差しが強かったが、全員は暑さに負けず懸命に訴えた。衆議院前と参議院前には、差別解消法案で尽力していただいている与野党の議員や秘書が出迎えてくれ、私たちの思いを受け止めた。
国会の会期末が迫り、審議が進みにくい事情もある。差別と向き合うことができる国にするのは、今しかない。
一方前日の6月4日(火)、参議院会館の講堂で、日本弁護士連合会主催の「本国会での障害者差別解消法の制定を目指して」が開かれた。280名の当事者や関係者が集まった。集会では、同法の成立にむけて尽力している自民・公明・民主をはじめとする与野党の国会議員の挨拶、基調報告、パネルディスカッションと、日弁連からの基調報告などが行われた。
議員挨拶では、差別解消法案があと参議院を通過するところまで来たという感慨と同時に、何とか今国会で成立させるように全党一致で頑張りたいという強い意気込み等が聞かれた。
パネルディスカッションでは、衛藤晟一参議院議員(自民)、高木美智代衆議院議員(公明党)、中根康浩衆議院議員(民主党)が以下のような内容を話された。
・差別解消法案の政治経緯とポイントの説明。
・自民、公明、民主の連携
・今後とも、障害者差別をなくす、偏見をなくす、障害のない人と平等に扱うことに関して取り組んでいく。
・2009年の麻生政権のときに、障害者権利条約を批准する動きがあったが、JDF等から「差別禁止法制なくして批准はとんでもない」と言われた。拙速な批准よりも、国内法整備をという考え方が貫かれた。
・自民党内や各省庁の反対派(「法で裁かれる」不安)に対して、どうしたら具体的に差別解消になり、障害者の幸せになるか一緒に考えてほしいと訴えてきた。
・民主党の海江田代表もこの国会で必ず成立させるとJDFに言った。
・障害があってもなくても、みな快適に安心して暮らせ共生社会を実現させるための共通のルール、ものさしをこの法律できちんと決めていく。
・なぜ一部の分野を同法に盛り込めないのか等、不十分さを指摘する議員もいたが、法律の対象範囲との関係で整理をした。
フロアからは以下のような発言があった。
・過去4年間の政治を見ていると、民主党に不信感がある。払しょくさせてほしい。
・差別部会の意見があまり反映されていない。民間の義務づけ、障害のある女性の複合差別が入らなかったが、スタートラインとしてここまで来たことは歴史的なことだと思う。
・成年後見を受けている人たちの選挙権について先日、衆参満場一致で公職選挙法が改正されたことは、感激だった。
・この法律をつくることは、現在の障害者だけでなく、次世代の障害者にとっても極めて大きな歴史的なプレゼントだと思う。
冒頭でも述べたが参議院で足踏み状態にある。ひとりひとりの声を国会に届けていこうではないか!(文:太田、尾上(裕))」(全文)
◆川島 聡 20130701 「障害者差別解消法Q&A」
『SYNODOS』http://synodos.jp/faq/4699
◆「われら自身の声」を届けます!
DPI日本会議メールマガジン(13.07.17)第388号
1)障害連シンポジウム2013
しゃべり場「どうする!障害者差別解消法」
2013年6月、長年の悲願が実り、
障害を理由とする差別の解消を推進する法律案(差別解消法)が国会で成立しました。
これは障害者制度改革の大きな柱のひとつで、
2010年から内閣府の障害者政策委員会の差別禁止部会で議論が重ねられたものが、形となりました。
ただ、まだ不十分な点がいっぱい残されており、これらの解決が課題となっています。
差別解消法によって、本当に障害者差別はなくなっていくのでしょうか。
そんな疑問も交えながら、今回はしゃべり場ふうのものにし、
参加者との対話に重きをおきたいと考えています。
皆様のご参加をお待ちしております。
□日 時:2013年7月27日(土)午後1時〜
□会 場:東京都障害者福祉会館(〒108-0014 東京都港区芝5-18-2)
会場URL http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/syoukan/index.html
□話す人 大野更紗(作家)
少し話す人 臼井久実子(欠格条項をなくす会)、尾上裕亮(障害連)、白井誠一朗(障害連)
きりもり 西田えみ子(障害連)、太田修平(障害連)
□参加申込:参加希望の方はメールや電話等で事前にご連絡下さい。
□参加費:無料
※手話通訳、要約筆記等の情報保障をご希望の方は事務局までご連絡下さい
□主催、お問い合せ
障害連(障害者の生活保障を要求する連絡会議)
〒101-0054東京都千代田区神田錦町3-11-8武蔵野ビル5階
TEL 03-5282-0013 FAX 03-5282-0017 E-mail shogairen@infoseek.jp
▽障害連ホームページ
http://www9.plala.or.jp/shogairen/newpage10.html#130613
◆障害連事務局FAXレター No.279 2013.7.29(月)
◇差別解消法をテーマに「しゃべり場」
「同日(7月27日)午後障害者差別解消法をテーマに大野更紗さん(作家)、臼井久実子さん(欠格条項をなくす会)を招いてしゃべり場を東京都障害者福祉会館で行った。(参加者60名)
施設の問題、例えば在宅で重度訪問介護であれば外出介護が受けられるが、施設だと外出に大きな制限がある、などや、交通機関の乗車拒否の問題、女性障害者に対する根深い差別などが出されていき、3年後の施行に向けての運動が重要であることが確認された。さらに合理的配慮の中身についても様々な立場から意見が出された。
障害連では後日報告書を出す予定である。(文 太田)」
◆障害者欠格条項をなくす会ニュースレター58号 2013年7月下旬発行
本号のもくじ
差別解消法、成立 審議と法律の内容について…1
差別解消法の基本方針、対応要領、対応指針、今後のスケジュール…3
差別解消法の附帯決議…4
差別解消法 図解…6
差別解消法 全文…7
運転関係の法律審議から…11
道路交通法の附帯決議…12
成立した法律、審議未了の法律/新刊情報「生活保護リアル」…14
報道から…15
このニュースレターは点字版などを用意しています。案内は裏表紙にあります。
差別解消法、成立
ようやく日本でも障害者差別をなくしていくための法律が成立しました。
年初には法案提出も危ぶまれていましたが、多くの人の立場を超えた努力が
束になって、会期末の土壇場で成立を後押ししました。法律の名称は「障害
を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下、差別解消法)で、日
本で法律名に「差別」が使われたのは初めてです。障害当事者の組織活動は
長年、障害者を分離、抹消、隔離、排除する古くからの法制度を変える取組
を続けてきました。そのなかでようやく、差別解消法という新しい法制度を
創設するに到ったと言えます。国連障害者権利条約(以下、条約)批准を進
める上でも大きな意味をもちます。
条約の批准は早期におこなうことを共通認識として国会でも審議されまし
た。また、条約との関係について次のような政府の確認答弁がありました。
差別解消法は条約をふまえて策定するものであり、差別の定義や合理的配慮
について基本的な考え方を示す基本方針も、条約2条等の考え方をふまえて
策定するということです(6月18日参議院内閣委)。差別解消法は、準備期
間を経て2016年度から施行し、施行後3年をめどに見直すことになっていま
す(付則1条、7条)。具体的には、2013年度中に基本方針をまとめ、それ
をもとに2014年度に省庁等が指針等をつくり、2015年度に周知普及をはかる
ことになります。成立した差別解消法は今後不十分な点を改善していくス
タートラインであり、基本方針について意見を出す政策委員会、各地で差別
にかかわる相談を受け連携協議を進める障害者差別解消支援地域協議会(以
下、地域協議会)、地方条例による「上乗せ、横出し」などの取組を障害当
事者関係者が参画して作っていくことが、今後の展開を決定づけます。
本号は、今年の通常国会に提出された法律のうち、差別解消法と、運転に
関する法律について、要点を見ていきます。そのほかの法律についてはp14
にリストがあります。
審議と法律の内容 差別解消法
差別解消法の1条(目的)は、障害を理由とする差別の解消を推進するこ
とによって、「障害者基本法の基本的な理念にのっとり、(中略)全ての国
民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊
重し合いながら共生する社会の実現に資すること」と述べています。この部
分は、法案の検討段階で書き入れられた、この法律の魂といえるものです。
差別解消法は、2011年に改正された障害者基本法(以下、基本法)の4条
「差別の禁止」を具体化する法律です。基本法4条は「何人も、障害者に対
して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為を
してはならない」として、社会的障壁の除去および合理的配慮の提供につい
ても述べています。社会的障壁については、差別解消法2条に「障害がある
者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における
事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう」と記述されていて、これ
も基本法2条の「定義」と同じ記述です。差別解消法が「差別的取扱い」と
「合理的配慮の不提供」を禁止するものであることがわかります。
では、社会的障壁のなかでも「制度の障壁」の除去に取り組む立場から見
たときに、差別解消法のどこが特に関連するか見ましょう。制度の障壁は、
国・地方公共団体が設けているものが殆どなので、5条と7条(民間事業者に
ついては8条)はご覧のとおり関連が深く活用できる条文です。
5条(社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環
境の整備)
行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理
的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、
関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。
7条(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)
1、行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障
害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を
侵害してはならない。
2、行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会
的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その
実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとな
らないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁
の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
今も、当会に寄せられる連絡の多くは、取得したい資格や免許に欠格条項
があるかどうかという照会、そして、欠格条項がある資格をとろうとしてい
る障害者や関係者からの「試験に合格しても、免許交付申請を却下されるの
ではないか?」という不安の声、そして働いている人からの「中途で病気や
障害をもったが、相対的欠格条項があるので免許をとりあげられるのではな
いか?」という懸念の声です。こうした不安や懸念は制度の障壁を除去しな
いかぎり拭うことができません。条約と差別解消法に基づく取組が重要です
し、障害者基本計画においても、2012年12月の政策委員会意見に基づいて
「先送りできない重要な課題−欠格条項」を課題に据えることが必要です。
不安や懸念があるだけではなく実際に、国家試験に合格して仮免許も交付
されないまま、何ヶ月も審査結果を待たなければならなかった人が今年もい
ました(獣医師国家試験)。結果が伝えられるまで先の見通しも収入もない
毎日を強いられました。少なくとも試験合格者一般に仮免許を交付するのと
同日に審査結果を出すよう求める根拠として、差別解消法を使うことが考え
られます。
膨大な問題が、資格試験にたどりつく以前のところに存在しています。
「相対的欠格条項の存在を理由に、学校が受け入れない」「入試に合格した
が入学を辞退するよう学校から求められた」「平等に受験するために必要な
配慮を求めたが断られた」これらは学校教育および試験のありかたの問題で
あり、障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会の実現をめざ
し合理的配慮を提供していく差別解消法の遂行と不可分の課題です。
上述のような相談が多数あることから見ても、差別解消法に定められた地
域協議会が各地で設立され、差別にかかわる相談を受けて協議し、行政機関
や紛争解決機関との橋渡しをしていく機能を有効に発揮することが肝要です。
国会で質疑に立った議員が地域協議会モデル事業の実施を求め、担当大臣が
予算要求を含めて頑張ると答弁しました(6月18日参議院内閣委)。参議院
附帯決議10条(本紙p5)が明記しているとおり、地方公共団体で差別解消法
を上回るレベルで取り組みが進むことが期待されています。地域協議会の構
成員にはNPO法人や学識経験者なども加えることができ(差別解消法17条)、
権利擁護に取り組んできた当事者団体や弁護士の参画が重要です。
本紙p3の表のとおり、事業者の場合は合理的配慮の提供は努力義務とされ
ました。これを義務にしていけるよう法の趣旨を浸透させることが必要で、
そのうえでも、地域協議会の取組が社会のさまざまな立場の人に説得力をも
っていくことが、差別解消法の実効性の試金石になります。
表の記述
▼基本方針に即した対応要領と対応指針の策定
■対応要領(国等に対する対応要領)
□策定者は?
国の行政機関の長、独立行政法人
□策定する義務は?
義務
□誰の差別行為について?(行為主体)
行政機関等
□不当な差別的取扱いに対しては?
禁止する
□行為主体が合理的配慮を提供する義務は?
義務
■対応要領(地方公共機関等に対する対応要領)
□策定者は?
地方公共団体の長、地方独立行政法人
□策定する義務は?
努力義務
□誰の差別行為について?(行為主体)
行政機関等
□不当な差別的取扱いに対しては?
禁止する
□行為主体が合理的配慮を提供する義務は?
義務
■対応指針
□策定者は?
主務大臣。主務大臣は対応指針に定める事項に関して報告の徴収、助言、指
導、勧告の行政措置ができる。
□策定する義務は?
義務
□誰の差別行為について?(行為主体)
事業者。そのうち雇用主については障害者雇用促進法の定めによる→本紙p1
4参照
□不当な差別的取扱いに対しては?
禁止する
□行為主体が合理的配慮を提供する義務は?
努力義務
全般および行政機関、事業者、それぞれが講ずべき差別解消措置について、
基本的な事項と重要事項を、基本方針として定める。政府は障害者政策委員
会の意見を聞いて基本方針を閣議決定・公表する(差別解消法6条)。基本
方針を受けて、各省庁でガイドライン(行政機関の場合は対応要領、事業者
の場合は対応指針)を作成するなお、地方公共団体による対応要領作成は努
力義務になっている。対応要領・対応指針の策定者は、あらかじめ、障害者
その他の関係者からの意見を反映させるための措置をとる必要がある(差別
解消法9-11条)。
▼スケジュール
2013年度(H25)
□差別解消法
基本方針の検討作成と閣議決定(障害者政策委員会の意見を聞く。関係団体
等にヒアリングを行う)
□基本法などの動き
国の障害者基本計画策定(5か年計画の検討中。計画策定にむけて2012年12
月に障害者政策委員会が意見をとりまとめている。障害者政策委員会は基本
計画の実施状況を監視する役割もある)
□付記
基本方針作成にむけては、差別にかかわる経験や事例の集積と整理の作業が
重要なこと。基本計画については、差別解消法に基づく取組について項目を
立てることや、政策委員会意見が述べた「先送りできない重要な課題(欠格
条項の見直しなど)」についての盛込みも課題としてあげられる。
障害者権利条約の早期批准
2014年度(H26)
□差別解消法
対応要領、対応指針の作成
地域協議会モデル事業の開始?
□基本法などの動き
「障害者基本法」施行後3年目(施行状況を検討し必要な措置をとる)
□付記
差別解消法に基づく地域協議会の役割は、各地域において連携し、障害当事
者や関係者からの相談について検討協議し、既存の紛争解決機関などとの橋
渡しをすること。
2015年度(H27)
□差別解消法
法の周知期間
□基本法などの動き
「障害者総合支援法」施行後3年目(検討を加え所要の措置を講ずる)
□付記
障害当事者が参画した研修などの実施も重要なこと。
2016年度(H28)
□差別解消法
法の施行
□付記
事例の集積、協議、紛争解決への取組、裁判判例などが、施行後3年目の法
見直しのためにも重要なこと。
2018年度(H30)
□差別解消法
施行後3年目(必要な見直しを検討する)→2019年度に改定施行?
本表の各法律のスケジュールは国会議事録等を参照してまとめた。2013年7
月22日現在
※差別解消法Q&A 内閣府サイトに掲載中!
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/law_h25-65_qa_kokumin.html
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議
2013年5月29日 衆議院内閣委員会[略]
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議
2013年6月18日 参議院内閣委員会 [略]
図解(内閣府ウェブサイトから転載)
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案(障害者差別解消法)の
概要
障害者基本法 第4条 基本原則 差別の禁止
第1項:障害を理由とする差別等の権利侵害行為の禁止
〔何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利
利益を侵害する行為をしてはならない。〕
第2項:社会的障壁の除去を怠ることによる権利侵害の防止
〔社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、そ
の実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定
に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮が
されなければならない。〕
第3項:国による啓発・知識の普及を図るための取組
〔国は、第1項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を
図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提
供を行うものとする。〕
↓
上記の具体化として下記の1、2がある。
1、差別を解消するための措置
差別取扱いの禁止
国・地方公共団体等、民間事業者→法的義務
合理的配慮の不提供の禁止
国・地方公共団体等→法的義務
民間事業者→努力義務
↓
具体的な対応として
政府全体の方針として、差別の解消に関する基本方針を策定(閣議決定)
・国・地方公共団体→当該機関における取組に関する要領を策定※
・事業者→当該分野別の指針(ガイドライン)を策定
※地方の策定は努力義務
□実効性の確保 主務大臣による民間事業者に対する報告徴収、助言・指導、
勧告
2、差別を解消するための支援措置
□紛争解決・相談 相談、紛争解決の体制整備→既存の相談、紛争解決の制
度の活用・充実
□地域における連携 障害者差別解消支援地域協議会における関係機関等の
連携
□啓発活動 普及・啓発活動の実施
□情報収集等 国内外における差別および差別の解消に向けた取組に関わる
情報の収集、整理及び提供
施行日:平成28年4月1日(施行後3年を目処に必要な見直し検討)
法律条文全文[略]
理由
全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格
と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資するため、障害を理由
とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者に
おける障害を理由とする差別を解消するための措置等を定める必要がある。
これが、この法律案を提出する理由である。
☆障害者差別解消法の成立まで[略]
◆「障害理由の差別解消法が成立 2016年に施行 国などに配慮義務づけ 紛争解決機関実現せず」
2013.08.15中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2013081502000003.html
「障害を理由にした差別の解消を目指し、六月に成立した障害者差別解消法。二〇一六年に施行される。障害者団体からは差別解消のきっかけにと期待の声が上がる一方、民間事業者の差別解消を法的義務にせず、努力義務にした点などに、改善の余地があるとの指摘もある。
◇国などに配慮義務づけ
小学生の男児がいる愛知県の女性は、男児の入学で差別を感じた。
男児は生まれつきの重い心臓病。配慮は必要だが、地元の学校に通いたいと男児は望んだ。ところが就学前の健康診断の案内が届かない。学校に入学希望を伝えると、特別支援学校の名前を列挙され、暗にそちらへの入学を勧められた。
女性が、男児の健康状態を説明しても、十分に受け入れ策を検討せず、木で鼻をくくったような回答。女性が主婦のため「付き添い可能」として、入学できたが「もし働いていたら、どうなっていたか」と憤る。
愛知県重度障害者団体連絡協議会の辻直哉事務局長も「重度の障害児は、入学を認められても看護師不在時に親が付き添うことを求められるなど、一緒に学ぶ障壁は高い」と指摘。他の人と同じように社会で生活したいと障害者や家族が求めれば、負担が重すぎない限り、国や自治体に障害に配慮するよう義務付ける差別解消法の成立で「少しは状況が変われば」と辻さんは期待する。
◇紛争解決機関実現せず
障害者団体は障害者差別を禁止する法制度を求めてきた。障害者の権利確立のため活動する団体「日本障害フォーラム」は、差別解消法成立の際、「実現に向け力を傾けてきた。感慨深い」との声明を出している。
同法は国や自治体に、障害を理由にした差別を解消する施策をつくり、実行するよう求めている。特定の障害というだけで、のけ者にするような差別的な扱いは禁止する。
負担が重すぎない限り障害に配慮する「合理的配慮」をしないことは差別に当たると規定。国、自治体など公的機関には合理的配慮をする義務を負わせ、民間企業には努力義務にとどめる。配慮を欠く企業などには、行政機関が助言や指導、勧告することで差別の解消を目指す。
障害者の小規模作業所などで構成する「きょうされん」などは、より確実に差別を解消するため「民間も法的義務にすべきだ」と訴える。
差別解消を障害者が訴えた場合は、今ある枠組みで問題の解決を図る。新たな紛争解決機関は設けない。この点も多くの関係者が課題に挙げる。
脳性まひで、内閣府障害者政策委員会差別禁止部会の委員を務めた太田修平・障害者の生活保障を要求する連絡会議事務局長は「例えば、ハンドルで進む方向を変えるハンドル形の電動車いす。鉄道会社によっては原則、乗車拒否するなど、差別を感じる場面はまだある」と指摘。「紛争解決機関は、裁判によらず、より簡便に問題提起する、制度の核心部。抜けたのは残念」と語る。
全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の新谷友良副理事長は「法律では必要に応じて、大臣が事業者に指導、勧告できる。これが活用できるかが焦点」と指摘する。
何が差別に当たるのかは、各省庁で定める指針に委ねる。太田さんは「障害者が何が差別かを問題提起しないとガイドラインが骨抜きになり、法律が機能しない。内容が決まるこれからが大事だ」と語る。(佐橋大)」
*写真:全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の新谷さん(左)と、障害者の生活保障を要求する連絡会議の太田さん=東京都新宿区で
■DPI日本会議発
http://dpi.cocolog-nifty.com/vooo/sabekai.html
◆「「障害者市民案」について<経過、差別禁止法の意義と必要性、守備範囲>」
http://dpi.cocolog-nifty.com/website/sabetsukinshi/shiminan_igikeika.doc
◆「「障害者市民案」の概要」
http://dpi.cocolog-nifty.com/website/sabetsukinshi/shiminan_gaiyou.doc
◆「障害者市民案」の全文
「障害者市民案」の全文(ワードファイル・外部リンク)
◆「障害者市民案」原案に対して寄せられた意見と意見に対するコメントなどの対照表
◆政策研究集会全体会報告から
http://dpi.cocolog-nifty.com/website/sabetsukinshi/shiminan_seisakuken.doc
◆意見募集についてのブログ掲載ページ(2008年6月18日)
http://dpi.cocolog-nifty.com/vooo/2008/06/post_ea95.html
◆政策研究集会・差別禁止法作業チーム 障害者差別禁止法・要綱案(第三次案まで掲載)
http://members.at.infoseek.co.jp/dpi_advocacy/
UP:2013 REV:20131013,20140917