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立岩真也「「公的介護保険」をどうするか」
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公的こうてき介護かいご保険ほけん」をどうするか

自立じりつ生活せいかつ運動うんどう現在げんざい・14

立岩たていわ しん 19951225
季刊きかん福祉ふくし労働ろうどう69:155-162


 今回こんかい最終さいしゅうかいとするはずでしたが、のばしてもらい、こん話題わだいの「公的こうてき介護かいご保険ほけん」をげることにしました。
 「公的こうてき介護かいご保険ほけん」の導入どうにゅう検討けんとうされていることについては、新聞しんぶん、テレビなどでもしばしば報道ほうどうされている。といっても、厚生省こうせいしょうほうから肝心かんじん部分ぶぶんについて情報じょうほうてこない。それではやければ、きゅうなな年度ねんどから導入どうにゅうするのだという。けしからんことではある。けれども、あんてたらそれにたいしてどうこうおうというのは、まだ、行政ぎょうせい官僚かんりょう依存いぞんしているということでもあって、独自どくじあんしていく必要ひつよう本当ほんとうだったらあるのだとおもう。そういう意味いみでは、当事とうじしゃ民間みんかん組織そしきがわ対応たいおう(というよりは相手あいて見越みこし、先回さきまわりした提言ていげん)がちょっとおそいかなというかんじは、正直しょうじきってする。たとえば、だいいちかい十二月じゅうにがつきゅうにち開催かいさいされた「障害しょうがいしゃ政策せいさく研究けんきゅう全国ぜんこく集会しゅうかい」(事務じむきょく障害しょうがいしゃ総合そうごう情報じょうほうネットワーク)が、集会しゅうかいにとどまらず、継続けいぞくてき作業さぎょうすすめ、政策せいさく提案ていあん積極せっきょくてきにしていくことを期待きたいしたい。

情報じょうほう

 まず情報じょうほうげんについての情報じょうほう以前いぜん紹介しょうかいした「障害しょうがいしゃ総合そうごう情報じょうほうネットワーク(ビギン)」(電話でんわ・ファックス〇さんはちさんよんはちよん)が以下いか報告ほうこくとうだい部分ぶぶん提供ていきょうしている。[]はその請求せいきゅう番号ばんごうすこくわしく動向どうこうりたいとおもったら、あわせて、資料しりょうせることである。
 ほんとしては宮武みやたけつよし毎日新聞まいにちしんぶん論説ろんせつ委員いいんちょ『「介護かいご保険ほけん」とはなにか』(保健同人社ほけんどうじんしゃきゅうねんいちはち〇〇えん)がある。また今回こんかい検討けんとうされている制度せいどは、ドイツの制度せいど参考さんこうにしているのだが、これについては宮武みやたけほんでも取上とりあげられているほか、『ドイツ介護かいご保険ほけんのすべて』(筒井つつい書房しょぼうきゅうねんいちなな〇〇えん)、またビギン提供ていきょう資料しりょうでは[][はちなな]がある。介護かいご保険ほけんについていわゆる学問がくもんてき論文ろんぶんほかにもあるが、入手にゅうしゅ自体じたいむずかしいし、ここで紹介しょうかいする必要ひつようはとりあえずないとおもう。『ジョンフル・ビギン』さんごうきゅうねんさんがつ)の伊部いべ広行ひろゆき文章ぶんしょう「『介護かいご保険ほけん構想こうそう』と当事とうじしゃ主体しゅたい」だけあげておく。以下いかわたし文章ぶんしょうでは取上とりあげられないおおくの大切たいせつ論点ろんてんについてろんじられているから、是非ぜひんでいただきたい。
 つぎ行政ぎょうせい関係かんけい報告ほうこくとうたような名前なまえ審議しんぎかいとうがごちゃごちゃてきて面倒めんどうだ。ただ、こういう答申とうしんているではないか、それと実際じっさいてきたあんとではここがわっているではないか、どういうことなのだとっていくというようなかたちで使つかうことはできる。現場げんばをどれだけっているのかをべつにして、審議しんぎかい等々とうとうには、それなりまっとうなことをっている人達ひとたちはいっている。そういう人達ひとたち直接ちょくせつものをうとか、(個人こじんてきかんがえであっても)かんがえをくという方法ほうほうもあるとおもう。
 まず、厚生こうせい大臣だいじん私的してき諮問しもん機関きかんとしてきゅうさんねん発足ほっそくした「高齢こうれい社会しゃかい福祉ふくしビジョン懇談こんだんかい」がきゅうよんねんさんがつ提出ていしゅつした「いち世紀せいき福祉ふくしビジョン」[さんさんいち]。
 つぎに、首相しゅしょう諮問しもん機関きかん社会しゃかい保障ほしょう制度せいど審議しんぎかい」の「社会しゃかい保障ほしょう将来しょうらいぞう委員いいんかいだい報告ほうこくしょ」(きゅうよんねんきゅうがつ)[よんなな]。公的こうてき介護かいご保険ほけんについて、「介護かいごサービスを負担ふたん能力のうりょくさまたげられずにけられることを保障ほしょうし、くわえて、供給きょうきゅうりょうしつてき水準すいじゅん確保かくほおこな公的こうてき施策しさくである」「くに地方ちほう公共こうきょう団体だんたいが、介護かいごサービスのしつりょう確保かくほや、そのための財源ざいげん確保かくほ責任せきにんつ。また利用りようあたっては、利用りようしゃ主体しゅたいてき選択せんたく尊重そんちょうされなければならない」とう、それなりのことがかれている。こののちきゅうねんなながつ勧告かんこくななよんさん]。
 また厚生省こうせいしょうない設置せっちされた「介護かいご対策たいさく本部ほんぶ」のしたかれた「高齢こうれいしゃ介護かいご自立じりつ支援しえんシステム研究けんきゅうかい」(学者がくしゃとうじゅうめい構成こうせい)がきゅうよんねんいちがつに「あらたな高齢こうれいしゃ介護かいごシステムの構築こうちく目指めざして」を報告ほうこく宮武みやたけほん全文ぜんぶん委員いいん名簿めいぼ掲載けいさいされている)。また高齢こうれいしゃ介護かいご対策たいさく本部ほんぶ事務じむきょくあらたな高齢こうれいしゃ介護かいごかたについて」[ななよん]。
 現在げんざいは「老人ろうじん保健ほけん福祉ふくし審議しんぎかい」で検討けんとうちゅう中間なかま報告ほうこくきゅうねんなながつななさん])。
 このほか、ビギンが提供ていきょうしているものとしては、[なななな](連立れんりつ与党よとう中間なかままとめ)、[ななよんいち](自治労じちろう資料しりょうあらたな高齢こうれいしゃ介護かいご保障ほしょうシステムと公的こうてき介護かいご保険ほけん制度せいど創設そうせつみを理解りかいするために」、きゅうねんろくがつ)。
 つぎ当事とうじしゃ団体だんたいうごきについて。「障害しょうがいしゃ生活せいかつ保障ほしょう要求ようきゅうする連絡れんらく会議かいぎ障害しょうがいれん)」の厚生こうせい大臣だいじんての「要望ようぼうしょ」(きゅうねんよんがつ)[なないちなな]は「かり高齢こうれいしゃ介護かいご保険ほけん制度せいど創設そうせつされるはこびになったとしても、…高齢こうれいしゃ障害しょうがいしゃあいだ格差かくさもうけないこと」「介護かいご保険ほけん制度せいど創設そうせつにあたっては、障害しょうがいしゃ当事とうじしゃ団体だんたいとの協議きょうぎ十分じゅうぶんおこなうこと」といった内容ないようになっている。
 「全国ぜんこく公的こうてき介護かいご保障ほしょう要求ようきゅうしゃ組合くみあい」の厚生こうせい大臣だいじんての「要望ようぼうしょ」(がつさんいちにち)では、「障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ着目ちゃくもくした介護かいご制度せいど具体ぐたいてき検討けんとうはじめてくこと。そのさい介護かいご保険ほけん制度せいど開始かいしにあたって、障害しょうがいしゃ介護かいごについてもその対象たいしょうとしてみとめること」を要求ようきゅうしている。ただ、組合くみあいとしての全体ぜんたいてき検討けんとう態度たいど決定けっていはまだ。『要求ようきゅうしゃ組合くみあい通信つうしんきゅうねんはちがつごう別冊べっさつ特集とくしゅうしていて、正憲まさのり文章ぶんしょう介護かいご保険ほけん制度せいどたいするみを開始かいししよう」などが掲載けいさいされている。また、「DPI日本にっぽん会議かいぎ」の厚生省こうせいしょう交渉こうしょう厚生省こうせいしょうによる説明せつめい)についての野口のぐち俊彦としひこ報告ほうこく、DPI・JIL主催しゅさいのシンポジウム(はちがつじゅうにち)の報告ほうこくが、機関きかん『われら自身じしんこえじゅういちかんごうじゅうがつ)にある。

負担ふたん給付きゅうふのありかたについて――とく年齢ねんれい制限せいげんのこと

 検討けんとうすべきポイントはたくさんあるが、以下いかではおおきくふたつ(+ひとつ)にしぼりたい。
 なんってきたことだが、自分じぶんかねときにはなにうかえらんでよく、そうでないときにはその権利けんりはないというのはおかしい。だれがおかねすかと、どのようにそのおかね使つかうかとはべつのことだ。前者ぜんしゃ社会しゃかい保険ほけん方式ほうしきは、おかねあつかたかたとしては、うまくいけば、わるくない。なにがうまくいけばよいのかをべる。後者こうしゃ。あまりうれしいというかんじがしない。そして大切たいせつてん議論ぎろんされていない。
 わるくないという理由りゆう負担ふたん能力のうりょくおうじて負担ふたん必要ひつようおうじて給付きゅうふするという方式ほうしきているあん一応いちおうそうなっている)にすれば、社会しゃかい保険ほけん方式ほうしきは、税金ぜいきんから負担ふたんする方式ほうしきよりわる方法ほうほうだとはえない(これらについては伊部いべ文章ぶんしょうくわしい)。つぎに、いま医療いりょう保険ほけん制度せいどのようにぐちゃぐちゃに分立ぶんりつした制度せいどにならないなら、普遍ふへんてき全国ぜんこくてきなものになる。ひとつのサービスについて、おかねかたがそうたくさんある必要ひつようはなく、ひとつにまとまっていたほうがよい。これはあとべるサービスの多様たようせい矛盾むじゅんしない。
 保険ほけんりょうはらっていないひとのこされることが心配しんぱいされている。たしかに障害しょうがい基礎きそ年金ねんきんについてこの問題もんだいがあり、障害しょうがいれんなどはずっとこれにんできた。ただ、障害しょうがい基礎きそ年金ねんきんふく年金ねんきん保険ほけんことなり、今回こんかいのはあたらしく創設そうせつされるものだから、きちっとした徴収ちょうしゅうシステムにすれば、はら機会きかいがなくて支給しきゅうされないという問題もんだいはない。はらえないのとはらわないのとはちがう。はらわないひとからはてること、ペナルティもすことだ。はらえないひとは、免除めんじょする、あるいは保険ほけんりょう上乗うわのせした所得しょとく保障ほしょうをする。民間みんかん保険ほけんではなく「公的こうてき保険ほけんなのだから当然とうぜんだ。さき引用いんようした社会しゃかい保障ほしょう将来しょうらいぞう委員いいんかい報告ほうこくもそうなっている。
 すっきりした包括ほうかつてきなシステムになれるのに、それをさまたげるのが年齢ねんれい制限せいげんである。ろくさい未満みまんひとには支給しきゅうしないというあんている。そしてなんとはなしに、あまり検討けんとうされていないまま、そういうことになりそうな気配けはいだ。
 「システム研究けんきゅうかい報告ほうこくではこうなっている。「なお高齢こうれいしゃ以外いがい障害しょうがいしゃについては、障害しょうがいしゃ基本きほんほう趣旨しゅし沿って障害しょうがいしゃ態様たいようおうじた教育きょういく授産じゅさん更生こうせい援助えんじょ住宅じゅうたくなどの総合そうごうてき障害しょうがいしゃ施策しさく計画けいかくてき推進すいしんし、適切てきせつ対応たいおうしていくことがのぞまれるところであるが、そのなか介護かいごサービスをして社会しゃかい保険ほけん対象たいしょうにすることが適当てきとうかどうか、慎重しんちょう検討けんとう必要ひつようである。」
 ここにはいてないが、保険ほけんとは、いまはらえるときに、どうなるかわからない将来しょうらいにそなえてけるもので、すで障害しょうがいがあるひと保険ほけんシステムに「なじまない」という観念かんねんがあるのではないか。こん障害しょうがいをもっているひと排除はいじょしたうえでの「みんな」の将来しょうらいのリスクが、その「みんな」の関心事かんしんじなのだから、高齢こうれいしゃ対象たいしょうだけでとりあえず、という発想はっそうがありはしないか。民間みんかん保険ほけん場合ばあいたしかに、おかねのないひとれないし、すで支給しきゅう必要ひつようひと確実かくじつ支払しはらいよりりがおおくなるひと)はれない。けれどもかえすが、これは公的こうてき保険ほけんなのであり、財源ざいげんとして税金ぜいきんはいっている。もちろんそういう理由りゆうから排除はいじょしようというのではないですね、とだめおしし、もし、露骨ろこつにそういうことをってくるのであれば、反論はんろんしなくてはならない。
 つぎに、障害しょうがいしゃけの施策しさくは「総合そうごうてきに」おこなわれるべきであって、介助かいじょだけをすのはよろしくないという理屈りくつである。さき文言もんごんはそのようにめる。たしてこれまでなにがどれほど総合そうごうてきだったのか。それはくとしよう。かり総合そうごうてきであるべきだとしても、これは意味いみ不明ふめいである。いろいろなメニューが必要ひつようだとしても、介助かいじょけてやれないことはないはずだし、実際じっさいそうやってやってきたのだ。介助かいじょ必要ひつようなところでは介助かいじょる。これだけで十分じゅうぶんだ。なに特別とくべつあつかわないといけない理由りゆうなにもない。実態じったいらないのではないか。らないなららせる必要ひつようがある。
 だいさんに、支給しきゅう年齢ねんれい制限せいげんすることで、かえって、わか世代せだい保険ほけんりょうはらわせることについて納得なっとくがえにくくなる。じゅうさいだいのう梗塞こうそくになるひとめずらしくない。交通こうつう事故じこひとだっている。そういうときに、保険ほけんから支払しはらわれなかったらどうだろうかということである。だから、国民こくみん全体ぜんたいからちゃんと保険ほけんりょうろうとおもったら、支給しきゅう年齢ねんれい制限せいげんもうけるべきではない。
 そして、日本にっぽん参考さんこうにしているというドイツの制度せいどにこんな年齢ねんれい制限せいげんはない。これも主張しゅちょうさい材料ざいりょうにはなる。高齢こうれいだからではなく、介助かいじょ必要ひつようとするから、ようするに障害しょうがいしゃだから、介助かいじょのシステムが必要ひつようなのだ。とにかく、きちっと、厚生省こうせいしょうと、審議しんぎかいのメンバーとはなしをし、マスコミも使つかうなりして主張しゅちょうすることだ。
 そして、このことにかんして、いまおおきなこえしている団体だんたいはないという現状げんじょうまえる必要ひつようがある。自治労じちろうは、年齢ねんれいさい以上いじょうとすることを主張しゅちょうしてはいる。ただ、このテーマは、自治労じちろう厚生省こうせいしょう交渉こうしょうでは論議ろんぎされていないし、「高齢こうれいしゃ対応たいおうする…」というタイトルの自治労じちろう厚生省こうせいしょうへの要求ようきゅうしょにもない。こういう団体だんたいにもはなしとお必要ひつようがあるだろう。自治労じちろう資料しりょうにはこうある。「一定いってい年齢ねんれい保険ほけんしゃ限定げんていすると、加入かにゅうしゃですが給付きゅうふをうけない若年じゃくねんしゃ費用ひよう負担ふたん保険ほけんりょうというより、拠出きょしゅつきんという性格せいかく変化へんかします。この場合ばあい費用ひよう徴収ちょうしゅうむずかしくなるといわれています。なお、障害しょうがいしゃ保険ほけん給付きゅうふ対象たいしょうとするかどうかは、障害しょうがいしゃ団体だんたい意向いこう沿ってすすめることが必要ひつようです。」

サービス供給きょうきゅうのありかたについて

 だいに、サービスの供給きょうきゅう体制たいせい措置そちわって契約けいやくだとか、主体性しゅたいせいとか権利けんりとかっているわりには、あまりうれしいかんじがしない。
 いまているあんでは、現物げんぶつ供給きょうきゅうするということのようだ。つまりサービスには点数てんすうがつけられ、その点数てんすうわせて保険ほけんからのおかねはサービス供給きょうきゅうしゃわたる。サービスは在宅ざいたく施設しせつ両方りょうほうよう介護かいご認定にんていという判定はんてい段階だんかいがあり、つぎに、どういうサービスを組合くみあわせて供給きょうきゅうするか「ケアプラン」の作成さくせいおこなわれる。ただし、このプラン作成さくせい依頼いらいするかどうかは選択せんたくできるようにするという。このあたり各種かくしゅ業界ぎょうかい思惑おもわくからんで、いろいろ議論ぎろんている。だが、まずどういうサービスをだれ供給きょうきゅうするのか。これは、保険ほけん制度せいどのありかたかんがえるうえでも本来ほんらいとすことのできないポイントなのだが、まともな議論ぎろんがなされていない。このあたりのことをつぎべる。
 『要求ようきゅうしゃ組合くみあい通信つうしん』でべているように、判定はんていけられない(いままでは、めいっぱい制度せいど使つかってもりないという状況じょうきょうだったから、この問題もんだいひょうてこなかったのである)。負担ふたんしゃ合意ごういをとりつけるためにも、りょうめる必要ひつようはある。問題もんだいはどういうシステムにするか、そしてだれがやるか、である。
 だいいちだれがやるのか。まず、資金しきん供給きょうきゅうサイドとは独立どくりつのところがおこな必要ひつようがある。また、利用りようしゃ、あるいは利用りようしゃ利害りがい代弁だいべんするもの主張しゅちょうでき、それが実質じっしつてきめられるシステムにすることである。つぎに、資格しかくをもった「専門せんもんしょくしゃ」がかなら必要ひつようなのか。各種かくしゅ職能しょくのう団体だんたいなどはみずからの職種しょくしゅ仕事場しごとば確保かくほし、拡大かくだいするために、なかれるべきことをってくるだろう。実際じっさい日本にっぽん医師いしかい等々とうとうすでにこの機関きかん医師いし医師いしかい参画さんかくすべきことを老人ろうじん保健ほけん福祉ふくし審議しんぎかいなどで主張しゅちょうしている。しかし、本当ほんとうにどれだけ必要ひつようなのか。むしろ、介助かいじょけているひと介助かいじょをやってきたひとほう実態じったいをつかんでいる。これはむろん「プラン」の作成さくせい利用りようしゃたいするバックアップについてもえることだ。審議しんぎかいなかに、とくに「在宅ざいたく福祉ふくし」の、利用りようしゃ供給きょうきゅうしゃはいっておらず、とく医療いりょう関係かんけいの、職能しょくのう団体だんたい圧力あつりょく団体だんたい関係かんけいひとおおい。ほおっておくと、医療いりょう関係かんけい主導しゅどうへんなシステムができる可能かのうせいがある。この場面ばめんにも、はやいうちに介入かいにゅうをはかる必要ひつようがある。
 だい判定はんていというが、どういう基準きじゅん判定はんていするのかである。というより、判定はんていのシステムをどうこうまえに、その判定はんてい基準きじゅんにもなるサービス供給きょうきゅう原則げんそくをどうてるかである。よくりもしない施設しせつ一室いっしつかれるショートステイなどをれ、とにかく家族かぞく過労かろうたおれない程度ていど最低限さいていげん、なんとかするというのと、外出がいしゅつ等々とうとうふくめ、利用りようしゃ生活せいかつをきちっとささえることとはことなる。家事かじ援助えんじょふくめるかどうかというてんもある。施設しせつ在宅ざいたくを、本当ほんとうに、実質じっしつてき選択せんたくできるのかどうかというてんもある。原則げんそくがはっきりしていないと、必要ひつようなサービスとはなにかをめぐって、混乱こんらんきるだろう。まっとうな原則げんそくれば、判定はんていはそれに拘束こうそくされるから、利用りようしゃがわがそれを利用りようできる。原則げんそくがどのようにされるのか(あるいは曖昧あいまいにされるか)に注目ちゅうもくするととともに、原則げんそく主張しゅちょうしていく必要ひつようがある。
 そして実際じっさいのサービス供給きょうきゅうシステムと保険ほけん制度せいどとの関係かんけい介助かいじょ通常つうじょう一対一いちたいいち対人たいじんサービスなのだから、個人こじんてき契約けいやくでもかまわないはずだ。しかし、契約けいやくしているひと都合つごうがつかなくなった、契約けいやくしている時間じかん以外いがい緊急きんきゅう対応たいおう必要ひつようになったといった場合ばあいかんがえれば、組織そしきがあったほうがよいだろう。また、個人こじん契約けいやくについて信用しんようわれるなら、利用りようしゃ介助かいじょしゃ双方そうほう組織そしき登録とうろくするなどして、契約けいやく関係かんけいをある程度ていどそとからチェックするというもある(いまあるものでは、いわゆる「登録とうろくヘルパー」のかたちにちかい)。
 そういう組織そしき同一どういつ地域ちいき複数ふくすうあったほうがよい。利用りようしゃはそのなかからえらぶことができる。また、価格かかくめんでの競争きょうそうはないにしても、複数ふくすう主体しゅたいがおなじものをめぐって競合きょうごうすれば、サービスのしつたかまることにつながりうる。
 どこまでそういうことがかんがえられているのか。疑問ぎもんだ。これは保険ほけんについてのはなしではなく、たとえばホームヘルプサービスについてのはなしだから関係かんけいないというのだろうか。そうではないはずだ。たとえば医療いりょう保険ほけんでは、医療いりょう機関きかん給付きゅうふされ、そのなかから職員しょくいんたいする給与きゅうよ支払しはらわれる(それで赤字あかじがでる公立こうりつ病院びょういんなどは、自治体じちたいなどから財政ざいせいてき援助えんじょがなされている)。介助かいじょについてはどうなるのか。介助かいじょしゃわたわか組織そしきわた部分ぶぶんかれるとして、それを具体ぐたいてきにどうするのか。このあたりは、保険ほけん制度せいどのありかたとして、当然とうぜんかんがえておく必要ひつようがある。
 これには現金げんきん支給しきゅう現物げんぶつ支給しきゅうかという問題もんだいからむ。現金げんきん支給しきゅうだったら、利用りようしゃ給付きゅうふされた現金げんきん組織そしきはらい、組織そしきがその一部いちぶ運営うんえいのために使つかうというもあるが、いまているあんでは現物げんぶつ支給しきゅう基本きほんとするという。とにかく現金げんきんわたして勝手かってにというのはすっきりしていて、検討けんとうあたいする。ただ、現物げんぶつ支給しきゅうほうがおかね用途ようと流用りゅうようされる可能かのうせいすくないということはある。医療いりょう保険ほけん場合ばあい現物げんぶつ支給しきゅう点数てんすうせいで、書類しょるい提出ていしゅつ請求せいきゅうするとおかね保険ほけんから医療いりょう機関きかんりる)だが、それでも最低限さいていげん、たとえばかかる病院びょういん選択せんたくできるようになっている。だから現物げんぶつ支給しきゅうでも選択せんたく不可能ふかのうではない。大切たいせつなことは、それが実際じっさい可能かのうでなければならないということである。
 かえすが、複数ふくすう供給きょうきゅう主体しゅたい媒介ばいかい主体しゅたいみとめさせることだ。このなかに、現在げんざい独自どくじ活動かつどうしているおおくは法人ほうじんかくをもたない任意にんい団体だんたい民間みんかん団体だんたい位置いちづけることである。医療いりょう保険ほけん公立こうりつ病院びょういん私立しりつ病院びょういん同等どうとうあつかうのとおなじに、行政ぎょうせい機関きかんであろうが、民間みんかん団体だんたいであろうが、基本きほんてき平等びょうどう条件じょうけん設定せっていすべきである。自立じりつ生活せいかつセンターはこの方面ほうめん実績じっせきんできた。また、おも高齢こうれいしゃ利用りようしゃとする民間みんかん団体だんたいすで重要じゅうよう役割やくわりになっている。これらが保険ほけん制度せいどまれる(保険ほけん制度せいど利用りようできるようになる)ことは、ひとつに、時給じきゅうひゃくえんとかろくひゃくえんとかでやっていたのが、現在げんざいのヘルパーみの対価たいかけられるようになることを意味いみする。また、組織そしきたいしても、組織そしき運営うんえい(にあたる部分ぶぶん)を保険ほけんから支出ししゅつすることである。組織そしき規模きぼ関係かんけいないだろう。介助かいじょ場合ばあい組織そしきおおきいほうがいいとはえない。りょう内容ないよう休日きゅうじつ夜間やかんなどの対応たいおう緊急きんきゅう対応たいおうひとし)におうじてすようにすればよい。
 厚生省こうせいしょうは、近年きんねん、こういう組織そしき活動かつどう期待きたいするというようなことをっていたはずだが,保険ほけん論議ろんぎについてはこうした議論ぎろんられない。文章ぶんしょうてくるのは、行政ぎょうせい機関きかん行政ぎょうせいつくったシステム、また施設しせつ運営うんえいする社会しゃかい福祉ふくし法人ほうじんなど、行政ぎょうせいがもっぱら経費けいひ節減せつげんのために事業じぎょう依託いたくしている既存きそん団体だんたいである。おかねれのかたちだけがわり、うんざりするようなサービス供給きょうきゅうのありかたつづいてしまってはならない。そしてこれは、もう一度いちどかえすが、とく現物げんぶつ支給しきゅう方式ほうしきをとるなら、保険ほけん制度せいどのありかたべつかんがえられることではない。保険ほけん制度せいどつくときに、かならずはっきりさせておかなければならないことなのである。
 だから、利用りようしゃ、そしてサービスの相当そうとう部分ぶぶんげんになっている民間みんかん団体だんたいひょうてこないのは、あるいはひょうさせないでいるのはおおきな問題もんだいである。高齢こうれいしゃ関係かんけい民間みんかん在宅ざいたく福祉ふくし団体だんたい場合ばあいくに自治体じちたいがやらない部分ぶぶん自分じぶんたちたすけあってやるのだというみずからにたいするせいかくづけから、また、全国ぜんこくてき連絡れんらく組織そしき確立かくりつだという事情じじょうもあってか、反応はんのうにぶい。たとえばJIL(全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター協議きょうぎかい)が、自立じりつ生活せいかつセンターは介助かいじょサービスをこれだけやっているのだという、またコーディネイト、相談そうだんなどの業務ぎょうむふくめた「総合そうごうてき」なサービス、今回こんかいあんなかでは「ケアマネジメント」としょうされる領域りょういき相当そうとう部分ぶぶんになえているのだということをアピールしつつ、公的こうてき介護かいご保険ほけん制度せいどをめぐる議論ぎろん参画さんかくしていくことが大切たいせつだとおもう。

家族かぞく位置いちづけについて

 最後さいごに。家族かぞくによる介助かいじょたいする支給しきゅうみとめるかという問題もんだいがある。原則げんそくとしては断固だんこみとめるべきである。家族かぞくによる介助かいじょはただであってよいという理由りゆうはどこにもない。家族かぞく家族かぞくがいあいだにある権利けんり義務ぎむ格差かくさみとめるべきではない。家族かぞくは、障害しょうがいのあるひと援助えんじょするにあたり(別段べつだんこのことにかぎらず)、家族かぞくがいひとおなじだけの義務ぎむがある。権利けんりについてもおなじだけある。
 ただ、うまくやらないと問題もんだいしょうじうる。だいいちに、家族かぞく介助かいじょ仕事しごとしばりつけることになる可能かのうせいがある。だいに、収入しゅうにゅうげんとして、家族かぞく介助かいじょ利用りようしゃしばりつけることになる可能かのうせいがある。これらは無視むしできない。
 だが、双方そうほうえらべる、ことわれる関係かんけいになっていて、そのうえ家族かぞくえらび、えらばれるなら問題もんだいはない。家族かぞくのぞまないひともいるだろうが、のぞひともいて、家族かぞくほうでもやろうとおも場合ばあいもある。それが実質じっしつてき選択せんたくであるためには、まず家族かぞくがいからサービスをられるいう条件じょうけん現実げんじつつくることである。つぎに、問題もんだい家族かぞくという外側そとがわからよくえない関係かんけいなかなにおこなわれるかわからないというてんである。これを解決かいけつすればよい。だいいちに、そのために判定はんていやらマネジメントやらがあるはずだ。このめん機能きのうしない判定はんてい・マネジメントのシステムはそもそもやくにたないシステムであり、それをまともにやれるというなら、家族かぞく保険ほけんから支給しきゅうされるサービスの提供ていきょうしゃくわえることに問題もんだいはないはずだ。だいに、家族かぞく家族かぞくでない介助かいじょしゃ制度せいどてきけないこと。たとえば、家族かぞく機関きかん登録とうろくされたヘルパーとし、利用りようしゃ介助かいじょしゃ双方そうほう機関きかんとおして契約けいやくし、一定いっていのチェックをけることである。だから、家族かぞくによる介助かいじょ場合ばあいは、現物げんぶつ支給しきゅうのヘルパーの場合ばあいよりも減額げんがくして、どんぶり勘定かんじょう現金げんきん支給しきゅうというドイツ方式ほうしきはだめである。


REV: 20161031
介助かいじょ介護かいご  ◇せい辿たどどうさぐる――身体しんたい×社会しゃかいアーカイブの構築こうちく  ◇病者びょうしゃ障害しょうがいしゃ運動うんどう研究けんきゅう  ◇季刊きかん福祉ふくし労働ろうどう  ◇立岩たていわ しん
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