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「二兎を追う――問題「介護保障について論ぜよ」に」
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二兎にと

問題もんだい介護かいご保障ほしょうについてろんぜよ」に

立岩たていわ しん 2002/01/28
『われら自身じしんこえ』17-5:5(DPI日本にっぽん会議かいぎ



 介助かいじょ制度せいど具体ぐたいてき動向どうこうからとおざかってしまっているので、このテーマについてわたし適役てきやくではない。本誌ほんし読者どくしゃだったら紹介しょうかいするまでもないとおもうが、「障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ介護かいご制度せいど相談そうだんセンター」の『全国ぜんこく障害しょうがいしゃ介護かいご制度せいど情報じょうほう』(フリーダイヤル0120-870-222にかけると、まず最新さいしんごうおくってくれる)、どうセンターのホームページ(http://www.kaigo.npo.gr.jp)をていただくのが一番いちばんよい。また「全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター協議きょうぎかい」の『I.L. EXPRESS 自立じりつ情報じょうほう発信はっしん基地きち』にも中西なかにし正司せいじさんが毎月まいつきのように文章ぶんしょういている。とにかくまずそれらを、よくよくんでみることをおすすめする。
 むと、なんだか複雑ふくざつなようだが、要点ようてんふたつである。ひとつ、かたちが(かたちだけは)わる。ひとつ、りょうは(ほっとけば)わらない。前者ぜんしゃは、基本きほんてきには、好機こうきとらえられる。後者こうしゃはそうではない。
 ひとつめ。サービスの供給きょうきゅうのかたちがわってきている。「社会しゃかい福祉ふくし基礎きそ構造こうぞう改革かいかく」の一環いっかんということになるが、サービス提供ていきょう団体だんたい事業じぎょうしゃ要件ようけん緩和かんわされ、利用りようしゃはどこからサービスをるかをえらべるようになる。よいものがつくられれば、また自分じぶんたちがよいものをつくっていけば、そこからサービスをけられる。2003ねんからわるが、介護かいご保険ほけんのサービス提供ていきょうしゃについてはすでにその方向ほうこうっている。
 これは自立じりつ生活せいかつ運動うんどう主張しゅちょうしてきたことだ。政策せいさくがわがいいだまえから利用りようしゃ障害しょうがいしゃがわは「措置そちから契約けいやくへ」をってきたのである。ただ、これがしつ向上こうじょう自動的じどうてきにもたらすわけではない。供給きょうきゅう主体しゅたい複数ふくすうてこないところでは、えらびようがなく、競争きょうそうによるしつ向上こうじょう実現じつげんしない。供給きょうきゅうしゃてこないところではてくるよう責任せきにんをもたねばならないのだし、また、しつわる事業じぎょうしゃ排除はいじょなど利用りようしゃ消費しょうひしゃ保護ほご必要ひつよう場面ばめんおこなうことも大切たいせつである。
 と同時どうじに、自分じぶんたちが主体しゅたいとなってサービスを提供ていきょうすること。といってもそうかまえることはない。かなりちいさくともそれなりにやっていけるようになった。そこで当事とうじしゃ運動うんどうは、実績じっせきとノウハウをもっているところが手助てだすけし、全国ぜんこくにそういう組織そしきつくっていこうという方向ほうこううごいている。いそぎにいそいで、2003ねんまでに当事とうじしゃ主体しゅたい事業じぎょうしょを300にやそうとしている。
 「全国ぜんこく障害しょうがいしゃ介護かいご保障ほしょう協議きょうぎかい」(上記じょうき相談そうだんセンターが具体ぐたいてき情報じょうほう提供ていきょう団体だんたいで、こちらは協議きょうぎ立案りつあん交渉こうしょうするうん動体どうたい)、「自薦じせんヘルパー(パーソナルアシスタント制度せいど推進すいしん協会きょうかい」(全国ぜんこく事業じぎょうげのための研修けんしゅうかいとうおこなっている)、「介護かいご保険ほけんヘルパー広域こういき自薦じせん登録とうろく協会きょうかい」(介護かいご保険ほけんのヘルパーの自薦じせんでの利用りよう支援しえんとう次々つぎつぎになんだかたような、どうじんたちがかかわっているなが名称めいしょう団体だんたいがるし、うごきがまぐるして、ひとによっては半信半疑はんしんはんぎ、かもしれない。しかしわたしは、運動うんどうがいま、いそいで全力ぜんりょくをあげてやろうとしていることにはおおきな意味いみがあるとおもう。えきがあるとおもう。これにみながって、がっていったらよいとかんがえる。
 もうひとつ、りょう。これはいままでもそうだが、市町村しちょうそんにまかせるということでなにまりがない。すくなくともやすという姿勢しせいえない。他方たほう判定はんていされたよう介護かいごおうじて一律いちりつまる介護かいご保険ほけんほうは、一番いちばんおもい」にんでも、訪問ほうもん介護かいごにだけ使つかえば1にちあいだがいいところである。たまに誤解ごかいするひとがいるからっておくが、「りょう」こそが生活せいかつの「しつ」を決定的けっていてき左右さゆうする。地域ちいきらすための介助かいじょりょうがなく、それで施設しせつへということになったら、なにが選択せんたくだろう。それでも選択せんたくだとか自己じこ決定けっていだとかうのは、詐欺さぎである。たとえば施設しせつらすからさないかが選択せんたく問題もんだいだとして、おなじだけの介助かいじょられるという前提ぜんていえらべるのでなければ選択せんたくとはえない。まったく依然いぜんとして、りょうりない部分ぶぶんやさなくてはならないのだし、ないものはつくらなくてはならない。従来じゅうらいひとひとつのサービスはそのままで、それを契約けいやくというかたちにしようというだけにまってはならないのである。
 利用りようしゃ障害しょうがいしゃがわは、もっとおおきな改革かいかくなか契約けいやく自己じこ決定けっていといった言葉ことば位置いちづけてきた。他方たほう官庁かんちょうがやっていることをかぎり、普通ふつうの、当然とうぜん意味いみでの生活せいかつしつ向上こうじょう自己じこ決定けってい目指めざされてはいない。その依然いぜんとしておおきい。(かけるおかねわらず、民間みんかんがいろいろやってくれるならそれでよいと財政ざいせいがわおもうのは、当然とうぜんえば当然とうぜんである。だからひとつめの「かたち」についてだけ、たいがい意見いけん一致いっちしない政策せいさくがわ運動うんどうがわおなじことをうことにもなった。よりくわしくは青土おうづちしゃかん拙著せっちょよわくある自由じゆうへ――自己じこ決定けってい介護かいご生死せいし技術ぎじゅつの356ぺーじ以下いか。)
 日本にっぽん自立じりつ生活せいかつ運動うんどう偉大いだいなところは、供給きょうきゅう利用りよう仕組しくみの変革へんかくと、社会しゃかいてき負担ふたんによる十分じゅうぶんりょう供給きょうきゅう、この両方りょうほう同時どうじもとめてきたところにある(安積あさかほかなま技法ぎほう 増補ぞうほ改訂かいていばん藤原ふじわら書店しょてん、1995ねんだいしょう全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター協議きょうぎかいへん自立じりつ生活せいかつ運動うんどう障害しょうがい文化ぶんか』、現代書館げんだいしょかん、2001ねん高橋たかはしおさむさんのところとう)。両方りょうほう同時どうじすすめていかなくてはならない状況じょうきょういまわらない。
 さてどうするか。これなら絶対ぜったいという方法ほうほうはない。いままでは、かく地域ちいきでの行政ぎょうせい担当たんとうしゃとの個別こべつ交渉こうしょういちてん突破とっぱたってきて――そのためのわざ前記ぜんきした相談そうだんセンターが提供ていきょうしてきて――、それで相当そうとう成果せいかがってきた。どんな経緯けいいであれいち箇所かしょあなけば、つづくというわけだ。この方法ほうほう有効ゆうこうだから、今後こんご使つかわれるだろう。ただ、それだけでどこまでけるかということもあるかもしれない。正面しょうめんから主張しゅちょうし、ひとにわからせるということも同時どうじ必要ひつようだろう。
 必要ひつよう水準すいじゅんにまで介助かいじょをたくさんおこなっても、この社会しゃかい維持いじしていけないなどということはないことをわかってもらいたいとわたしおもう。家族かぞくがやっていたぶんわりにべつひとがやるのであれば、社会しゃかい全体ぜんたいとしての介助かいじょりょうわらない。社会しゃかいてき負担ふたんによる有償ゆうしょうにより、よりおおひともおり、ぎゃくひともいるが、仕事しごとりょうにせよらしきにせよ平等びょうどう公平こうへいちかほうがよいとかんがえれば、いますこしも公平こうへいでないのだから、よりこのましい状態じょうたいになる(なま技法ぎほうだいしょう)。では介助かいじょりょう純粋じゅんすいえる場合ばあいはどうか。すなおにかんがえると、いま労働ろうどうりょくあまっていて、少子化しょうしか社会しゃかいだろうが高齢こうれい社会しゃかいだろうが、それは今後こんごとも基本きほんてきにはわらない。ところで、仕事しごとがなく仕事しごとをしないひとももちろんきていけてよいのだから、そのひと生活せいかつのために社会しゃかい支出ししゅつすべきである。ならば、いまはたらきたいがはたらいていないひとかず対応たいおうするかずひとはたらいてもらい、それにたいして社会しゃかい支出ししゅつしてもそうわらない。おおむねこういう理屈りくつになるとおもうのだが、わたしはそれをもうすこしていねいにおうと、ものをいてきたりした。理屈りくつにたいしたちからはないが、それでもないよりはましということもある。
 そしてとにかく、介護かいご保険ほけん水準すいじゅんなどではまったく、ひとんでしまうほど、りないことをつづけることだ。介護かいご保険ほけん利用りようしゃに「特例とくれい」としていくつかの難病なんびょうひとたちがはいった。いまALS(すじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう)のひとたちのことをすこ調しらべているのだが、24あいだ介助かいじょ必要ひつようとなるそのひとたちの状況じょうきょう依然いぜんとしてまったく深刻しんこくで、家族かぞく負担ふたんおおきいことを背景はいけいに、人工じんこう呼吸こきゅうをつければもっときられるのに、つけないでくなっていくひとが7わりいるともわれる。このひとたちの団体だんたい日本にっぽんALS協会きょうかい)の運動うんどう厚生こうせい大臣だいじんへの陳情ちんじょうなどもっぱら表玄関おもてげんかんからのもので、かえってなかなか成果せいかをあげるのがむずかしいところもないではない。ただこういう行動こうどう必要ひつようだとおもう。ひょうからとうらからと、うまく戦術せんじゅつわせ、いままで障害しょうがいしゃ運動うんどうとあまりつながってこなかった、しかしやはり障害しょうがいしゃであるひとたちとも連携れんけいしてやっていけるとよいとおもう。
 ※この文章ぶんしょう全文ぜんぶん関連かんれん項目こうもく団体だんたいへのリンクをホームページに掲載けいさいします。わたし名前なまえ検索けんさくしてみてください。

 

2002ねん1がつごう −特集とくしゅう自立じりつ生活せいかつ」−

山田やまだDPI日本にっぽん会議かいぎ議長ぎちょう、マリンガDPI世界せかい議長ぎちょうのご挨拶あいさつ
当事とうじしゃ視点してん支援しえん支給しきゅう制度せいど」 三澤みさわりょう
・「自立じりつ生活せいかつセンターの役割やくわり展望てんぼう」 樋口ひぐち恵子けいこ
・「情報じょうほうる」山崎やまざき多美子たみこ
書評しょひょう自立じりつ生活せいかつ運動うんどう障害しょうがいしゃ文化ぶんか」 鮎川あいかわ太一たいち
二兎にとう−問題もんだい介護かいご保障ほしょうについてをろんぜよ」に 立岩たていわしん
・NCIL 斉藤さいとう明子あきこ
・アジアの風景ふうけい韓国かんこくピノキオのいえ
自立じりつ生活せいかつ 日本にっぽんきたからみなみから
    沖縄おきなわ自立じりつ生活せいかつセンター・いるか
東北とうほく地方ちほう自立じりつ生活せいかつ運動うんどうについて(TIJの活動かつどうから
障害しょうがいしゃ政策せいさく研究けんきゅう集会しゅうかい報告ほうこく
障害しょうがいしゃ差別さべつ禁止きんしほう骨子こっしあん
・ジェンダーの視点してんからの
・DPI世界せかい会議かいぎいちねんまえプレイベント報告ほうこく
・DPI世界せかい会議かいぎ札幌さっぽろ大会たいかいプログラム
権利けんり条約じょうやくかんする国連こくれんうご
・Q&A基準きじゅん規則きそくってなに?
・このひとく−福島ふくしまさとしさん−
・ピープルファースト東京とうきょう
にちかんバリアフリーチェックちゅうあいだ発表はっぴょう


UP:200201
介助かいじょ介護かいご  ◇障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ介護かいご制度せいど相談そうだんセンター   http://www.kaigo.npo.gr.jp  ◇DPI日本にっぽん会議かいぎ  ◇ALS  ◇立岩たていわ しん
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