「ホンダe」、新生しんせいホンダの浮沈ふちんを左右さゆうか…まるで「走はしるリビング」、最先端さいせんたんの電動でんどう化か技術ぎじゅつも

　4月がつ23日にち、本田技研工業ほんだぎけんこうぎょう（ホンダ）の三さん部ぶ敏宏としひろ新しん代表だいひょう取締役とりしまりやく社長しゃちょうの就任しゅうにん会見かいけんが行おこなわれた。そのなかで三さん部ぶ氏しは、ホンダは2040年ねんまでにすべてのモデルを電動でんどう化かすると発表はっぴょうし、直近ちょっきんでは「ホンダe」に期待きたいしているとも口くちにした。

　驚おどろいたのは、電気でんき自動車じどうしゃ（EV）に限かぎらず、水素すいそ燃料ねんりょう自動車じどうしゃも電気でんきモーターで駆動くどうする点てんで電動でんどう化かモデルに含ふくまれるとしているものの、現在げんざい主流しゅりゅうのハイブリッドは電動でんどう化かの対象たいしょうではないとしたのだ。トヨタ自動車とよたじどうしゃの豊田とよだ章男あきお社長しゃちょうが言いうように、EVだけが脱だつ炭素たんそ化かの救世主きゅうせいしゅではなく、全ぜん方位ほうい的てきな可能かのう性せいを追求ついきゅうしていくとも述のべたものの、ハイブリッドを除外じょがいした。

　その意味いみで、純粋じゅんすいなEVモデルであるホンダeにかける期待きたいは強つよい。そしてそのホンダeは、動力どうりょく源げんが電気でんきモーターというだけではなく、クルマとして斬新ざんしんな造つくり込こみがなされているのだ。新生しんせいホンダの牽引けんいん役やくになる素質そしつがある。今回こんかいの試乗しじょうで、それが明あきらかになった。

　ホンダeに搭載とうさいされるEVは定てい格かく出力しゅつりょく60kWであり、WLTCモード航続こうぞく距離きょりは283km。急速きゅうそく充電じゅうでんを繰くり返かえしながらのロングドライブもこなせるが、現実げんじつ的てきには都会とかい型がたEVとするのが正解せいかいだろう。それでも十分じゅうぶんに力強ちからづよい加速かそく力りょくが確認かくにんできているし、走はしりの質しつも高たかい。軽快けいかいなフットワークを感かんじ取とることができた。

　とはいえ、ホンダeの魅力みりょくは、そのキャラクターにある。全長ぜんちょう約やく3.8mのボディはキュートで愛あいされやすい。不自然ふしぜんなラインや突起とっきを排はいしたデザインは、都会とかい的てきなセンスに溢あふれている。インテリアに関かんしても同様どうようで、コンセプトは「走はしるリビング」のよう。スイッチやボタンは徹底てっていして省略しょうりゃくされており、ほとんどの操作そうさは正面しょうめんの5画面がめんディスプレーに集約しゅうやくされているのだ。

　木目もくめ調ちょうパネルはリビングのテーブルのようであり、シートはソファ風ふうである、室内しつない灯とうはダウンライトであり、そのスイッチさえ、リビングのスイッチがそうであるように、ピラーに組くみ付つけられている。天井てんじょうではないのだ。マルチ画面がめんにバーチャルアクアリウムを表示ひょうじさせ、水槽すいそうの中なかで泳およぐ魚さかなに餌えさやりできる遊あそび心ごころを込こめている。EVの悩なやみのひとつが急速きゅうそく充電じゅうでんの時間じかん的てきロスであり、その時間じかんをくつろいでもらおうという施策しさくでもある。

　一方いっぽうで走はしりの機能きのうも充実じゅうじつしている。サイドミラーはなく、車内しゃないのモニターに映像えいぞうを映うつし出だす。パーソナルサポートは高度こうどな音声おんせい認識にんしき機能きのうであり、言語げんごの理解りかい度どは驚おどろくほど高たかい。デジタル機能きのうも最先端さいせんたん。もちろん高度こうど運転うんてん支援しえん「ホンダセンシング」も徹底てっていしている。

　驚おどろかされるのは、携帯けいたい電話でんわやPCなどの電源でんげんとなるV2L（ヴィークル・トゥ・ロード）はもちろんのこと、災害さいがい時じにクルマから家屋かおくに電力でんりょくを供給きょうきゅうするV2H（ヴークル・トゥ・ホーム）まで備そなえていることだ。EVとしての能力のうりょくを余あますことなく展開てんかいしているのである。

　それでいて、モーターをリアに搭載とうさい、後こう輪わを駆動くどうするという特異とくいな駆動くどうシステムを採用さいようしており、ボディサイズの割わりに室内しつないは広ひろい。ホンダの哲学てつがくでもあるMM思想しそう（マン・マキシマム／メカ・ミニマム）にも手抜てぬかりはない。最先端さいせんたんの電動でんどう化か技術ぎじゅつを盛もり込こんでいながら、クルマとしての理想りそう型がたを完成かんせいさせている。

　新しん社長しゃちょうがホンダeに期待きたいするのは、その点てんである。カーボンニュートラルだけがすべてではなく、これからのホンダを支ささえる愛あいされるクルマのような気きがした。
（文ぶん＝木下きのした隆之たかゆき／レーシングドライバー）