メルセデス「EQA」、想像そうぞうを裏切うらぎる高級こうきゅう感かん…シティユース前提ぜんていなのにパワフルで長距離ちょうきょりも走破そうは

　独どくメルセデス・ベンツは、電気でんきモーター駆動くどうを意味いみする「EQ」シリーズをたて続つづけにリリースしている。それもそのはず、世界せかい的てき潮流ちょうりゅうである”カーボンニュートラル”の時代じだいに、自動車じどうしゃが果はたす役割やくわりは少すくなくない。内燃ないねん機関きかんを生産せいさんする一方いっぽう、走行そうこう中ちゅうの二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつ量りょうゼロであるEV（電気でんき自動車じどうしゃ）の販売はんばいにも積極せっきょく的てきな姿勢しせいなのである。

　メルセデスは、フルラインナップメーカーであるから、なおさらEVの販売はんばいにも注力ちゅうりょくする。昨年さくねんは大だい排気はいき量りょうのガソリンエンジンを搭載とうさいするSクラスをリリースしたばかりだ。ISGというマイルドハイブリッドシステムであるとはいえ、二酸化炭素にさんかたんそ排出はいしゅつ量りょうは軽微けいびではない。そのため、環境かんきょう性せいに優すぐれたEVの普及ふきゅうは欠かかせないのである。電気でんきモーター駆動くどうのEQシリーズに力ちからを注そそぐのも納得なっとくする。

　今回こんかい発売はつばいした「EQA」は、総そう電力でんりょく量りょう66.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載とうさい。電気でんきモーターの最高さいこう出力しゅつりょくは140kWであり、最大さいだいトルクは370Nmだ。車両しゃりょう重量じゅうりょう2トンに迫せまるボディを軽々かるがると加速かそくさせる。スペックからはパワフルだと想像そうぞうできなかったが、実際じっさいに乗のってみると力強ちからづよい加速かそくを披露ひろうしたのには驚おどろかされた。

　バッテリーをフル充電じゅうでんにしていれば、WLTC最長さいちょう航続こうぞく距離きょりは422kmに達たっする。現実げんじつ的てきにバッテリー残ざん量りょうが気きになるのは300kmを超こえたあたりだろうか。家族かぞくを伴ともなっての近距離きんきょり旅行りょこうや日帰ひがえりドライブをこなせる足あしの長ながさだ。

　急速きゅうそく充電じゅうでんシステムは日本にっぽんに普及ふきゅうしているチャデモ方式ほうしきだから、途中とちゅうに点在てんざいする急速きゅうそく充電じゅうでん器きで30分ふん充電じゅうでんを繰くり返かえしていけば、永遠えいえんに足あしを伸のばせることにはなる。途中とちゅうでフル充電じゅうでんするような時間じかん的てきロスを避さけても、片道かたみち300km程度ていどのドライブが可能かのうなことは喜よろこばしい。

　全長ぜんちょう4465mm、全幅ぜんはば1835mm、全ぜん高こうは1625mm。日本にっぽんの道みちに大おおきすぎず小ちいさすぎない、使つかい勝手がってのいいサイズである。シティユースを前提ぜんていとしたサイズ感かんなのだが、それでも300kmが守備しゅび範囲はんいなのはありがたい。

　乗のり心地ごこちは優やさしく、高級こうきゅう感かんが備そなわっている。路面ろめんの凹凸おうとつを優やさしくいなす。剛性ごうせい感かんはほどよく角かくが落おとされているから、優雅ゆうがな乗のり心地ごこちが得えられる。全長ぜんちょう4465mmのコンパクトSUVとは思おもえない高級こうきゅうな乗のり味あじなのである。

　EQAを直接ちょくせつ観察かんさつする前まえの、カタログやネットからの資料しりょうで学習がくしゅうしていた段階だんかいでは、もっと庶民しょみん的てきな車くるま格かく感かんを想像そうぞうしていたのだが、実際じっさいにはまごうことなき高級こうきゅう車しゃであることを確認かくにんした。

　使つかい方かたにおいても同様どうようで、通勤つうきん通学つうがくのための近距離きんきょり移動いどう用ようのEVを超こえた走はしりの質感しつかんだ。自宅じたくでコンセントにつないで、普通ふつう充電じゅうでん器きで電力でんりょくを溜ためながら近距離きんきょり移動いどうをするのがEQAの正ただしい使つかい方かたなのかと想像そうぞうしたのは、誤あやまりだった。もちろん、シティユースも正まさしくこなすが、それだけではもったいないほど上質じょうしつな乗のり味あじだったのである。

　特徴とくちょう的てきなのは、それでもEVらしさを感かんじさせないことだ。発進はっしんは力強ちからづよいが、強引ごういんな印象いんしょうはない。エンジン音おんがしないわけだから静しずかには違ちがいない。だが、サウンドに近きん未来みらい的てきな演出えんしゅつはない。ごく自然しぜんな感覚かんかくでEVを成立せいりつさせているのである。

　メルセデスのEVは、「もう特別とくべつな存在そんざいではない」という手法しゅほうで量販りょうはん体制たいせいを整ととのえた。
（文ぶん＝木下きのした隆之たかゆき／レーシングドライバー）