おいしくても客きゃくが来こない店みせ　なぜかリピーターを集あつめ繁盛はんじょうする店みせ

「フレイバー HP」より

「お客様きゃくさまが本当ほんとうに欲ほしいと思おもっているものをちゃんと提供ていきょうしていますか？」と、常つねに自問自答じもんじとうをするべきである。

　お客様きゃくさまは、自分じぶんにとって価値かちを感かんじるモノやサービスに「お金かね」という対価たいかを支払しはらって購入こうにゅうする。

　先日せんじつ、出版しゅっぱん予定よていの原稿げんこうの整理せいりをして、午後ごごから夕飯ゆうはんの買かい物ものに出でかけ、その後ごに前まえから行いきたかった名古屋なごやにあるカフェ「フレイバー」に行いってひと休やすみした。

　フレイバーは、シフォンケーキとアメリカンホームメイドケーキで有名ゆうめいなお店みせだ。外観がいかんからしてアメリカの南部なんぶあたりにありそうな落おち着ついた佇たたずまい。店みせの前まえと横よこに計けい10台だい以上いじょう停とめられる駐車ちゅうしゃ場じょうもあり、自家用車じかようしゃで来くるにはとても便利べんりな立地りっちなのだ。

　フレイバーに行いった理由りゆうは明確めいかくで、名物めいぶつのシフォンケーキがあるからだ。評判ひょうばん通どおり、とてもおいしかった。筆者ひっしゃ個人こじんとしては、シフォンケーキは「パサパサしている」食しょく感かんのイメージがあったのだが、アイスクリームまたはホイップクリームを乗のせて一緒いっしょに食たべると、ちょうどいい具合ぐあいのしっとりとした食しょく感かんになることを知しった。

　筆者ひっしゃが頂いただいたのは、メープルシフォンケーキにアイスクリームを乗のせ、ラズベリーをトッピングしたもの。もちろん味あじだけではなくて、テーブルやディスプレイの雰囲気ふんいきもよく、店員てんいんのさりげない気遣きづかいもいい。

　生活せいかつ者しゃというのは、理屈りくつでモノを買かったり店みせに行いったりしない。総合そうごう的てきな「感情かんじょう」で判断はんだんするのだ。飲食いんしょく店てんであれば、おいしいのは当あたり前まえで、「居心地いごこちがよい」「インテリアも自分じぶん好このみ」などを総合そうごう的てきに感かんじて、「よかった！」と判断はんだんする。そしてそれらが、自分じぶんが最初さいしょに感かんじていた期待きたいを超こえていたら「クチコミ」をしたくなる。

　飲食いんしょく店てんで食たべ物ものがおいしいことは必要ひつような条件じょうけんである。絶対ぜったいにここを外はずしてはいけない。自社じしゃの事業じぎょう領域りょういきの核かくになる部分ぶぶんが必要ひつような条件じょうけんであることは、飲食いんしょく店てんに限かぎらない。弊社へいしゃのような対たい企業きぎょう間あいだ取引とりひき（B to B）でも同おなじである。例たとえば、筆者ひっしゃのマーケティングの腕うでが悪わるくクライアントの実績じっせきを上あげることがデキなければ、コンサルティングが成なりたないのと同おなじである。

　しかし、おいしいことは十分じゅうぶんな条件じょうけんではない。いくらおいしくても対応たいおうが雑ざつだったり、店内てんないのインテリアが残念ざんねんだったりすると、次つぎに来きたくなくなるのだ。

　その意味いみで、フレイバーはおいしいだけではなく総合そうごう的てきな雰囲気ふんいきもよかった。つまり、飲食いんしょく店てんにとっての必要ひつようで十分じゅうぶんな条件じょうけんをともに満みたしていたということであり、まさしく筆者ひっしゃが今いまこの記事きじに書かいているようにクチコミにつながるのである。

2種類しゅるいの認知にんち

　店みせに何なん度ども来きてくれる「ファン」。マーケティングは、お客様きゃくさまに店みせのファンになってもらうための活動かつどうである。

　では逆ぎゃくに、2回かい目めに来きてもらえない、つまりリピートされない理由りゆうをご存ぞんじだろうか。それは「お客様きゃくさまが忘わすれてしまうから」なのだ。

　知しっていてもらうことの指標しひょうに「認知にんち度ど」があるが、さらに認知にんち度どには次つぎの2種類しゅるいがある。

・知しっているかどうか＝認知にんち＝Recognition
・一番いちばんに思おもい出だしてもらえるかどうか＝想起そうき＝Recall

　認知にんちは「フレイバーを知しっていますか？」という問といに対たいして、「はい」または「いいえ」と答こたえるものである。それに対たいして想起そうきは「おしゃれなカフェはどこ？」と聞きかれたときに、「フレイバーだよね」と一番いちばんに思おもい出だしてもらえることである。

　一番いちばんに想起そうきされることが重要じゅうようなのだ。そのためにはまず、認知にんちをされていないと思おもい出だされることはない。人ひとは知しらないところには行いかないし、知しらないものを買かわない。覚おぼえてもらわないと次つぎにつながらないので、永遠えいえんに新規しんき顧客こきゃくを開拓かいたくしなければならなくなる。

　認知にんちされ一いち度ど訪問ほうもんされたら、次つぎは店内てんないでの勝負しょうぶになる。もちろん、スターバックスコーヒーのように従業じゅうぎょう員いんの接客せっきゃく能力のうりょくの向上こうじょうに努つとめることも大事だいじだが、それだけでは「お客様きゃくさまが来きたくなる理由りゆう」にはならない。

　例たとえば、通常つうじょうの飲食いんしょく店てんではメニューは「文字もじ」で書かかれている。ほぼすべてのメニューが、カテゴリー別べつに整然せいぜんと並ならんでいることが大半たいはんである。だが、人ひとは7つ以上いじょうの選択肢せんたくしがあると選えらべなくなるというデータもある。このような単調たんちょうなメニューでは、せっかく来店らいてんしておいしく食たべてもらっても覚おぼえてもらえない。

コンテンツよりもコンテクスト

　筆者ひっしゃが以前いぜん立たち寄よった、大阪おおさかにあるカフェのメニューが画期的かっきてきだった。まず、雑誌ざっし風ふうになっていて、かなり質しつの高たかい写真しゃしんを使つかっている。中身なかみも記事きじ風ふうに説明せつめいされていて、各かくメニューの素材そざいやレシピの開発かいはつストーリーまでわかる。いわば、いま重要じゅうようといわれている「コンテクスト＝Context」になっている。

　もし、この店みせでコーヒーを飲のむだけのお客様きゃくさまにとっても、これくらいおいしそうな写真しゃしんとストーリーが載のっていると、覚おぼえられる確かく率りつはぐんと高たかくなるであろう。次つぎに、もう一度いちどそのランチやスイーツを食たべたくなる。ひいてはクチコミにもつながるのだ。

「コンテンツよりもコンテクストが重要じゅうようだ」といわれるのは、商品しょうひんやサービスだけでなく、文脈ぶんみゃくつまりストーリーや食たべる理由りゆうが、お客様きゃくさまにとって選えらぶ時ときの大おおきな判断はんだん基準きじゅんになってきているからである。

　このように、マーケティング活動かつどうにおいて重要じゅうようなことは、小ちいさなカテゴリーでいいのでターゲット層そうに想起そうきされること。

　そのためには、自社じしゃ製品せいひんの質しつの高たかさ（おいしさなど）と、製品せいひんの周まわりのお客様きゃくさま体験たいけんの質しつを上あげることが必要ひつようになる。
（文ぶん＝理央りお周しゅう／マーケティングアイズ代表だいひょう取締役とりしまりやく、売うれる仕組しくみ研究所けんきゅうじょ所長しょちょう）