ミスド、経営けいえい危機きき状態じょうたいに突入とつにゅう…閉店へいてんの嵐あらし、コンビニ・ドーナツの破壊はかい力りょくを受うけ撃沈げきちん

ミスタードーナツの店舗てんぽ（撮影さつえい＝編集へんしゅう部ぶ）

　ミスタードーナツ（ミスド）が凋落ちょうらくの一途いっとをたどっています。

　今春こんしゅん、クリスピー・クリーム・ドーナツ（クリスピー）が相次あいついで閉店へいてんしたことが話題わだいになりました。クリスピーは行列ぎょうれつができるドーナツ店てんとして一時いちじもてはやされていました。しかし、2015年ねん11月時点じてんでは全国ぜんこくに64店舗てんぽを展開てんかいしていましたが、本稿ほんこう執筆しっぴつ時点じてんでは47店舗てんぽにまで激減げきげんしています。

　クリスピーの経営けいえい状態じょうたいは良好りょうこうではないと考かんがえられますが、これはミスドにとっても対岸たいがんの火事かじではありません。ミスドの経営けいえい状態じょうたいも危機きき的てき状況じょうきょうだからです。

　ミスドを運営うんえいするダスキンの17年ねん3月がつ期き第だい1四半期しはんきの連結れんけつ決算けっさんは、売上うりあげ高だかが前年ぜんねん同期どうき比ひ1.0％減げん、本業ほんぎょうの儲もうけを示しめす営業えいぎょう利益りえきが61.6％減げんと減収げんしゅう減益げんえきになりました。ミスドを主体しゅたいとしたフードグループが深刻しんこくで、売上うりあげ高だかが4.3％減げん、営業えいぎょう利益りえきが4億おく円えんの赤字あかじ（前年ぜんねん同期どうきは6700万まん円えんの赤字あかじ）です。

　ミスドの不振ふしんは一時いちじ的てきなものではありません。国内こくないチェーン全店ぜんてん売上うりあげ高だかは下降かこう線せんをたどっています。直近ちょっきん5年ねんでは、12年ねん3月がつ期きが1147億おく円えん、13年ねんが1111億おく円えん、14年ねんが1030億おく円えん、15年ねんが1020億おく円えん、16年ねんが915億おく円えんと一貫いっかんして減少げんしょうしています。フードグループの営業えいぎょう利益りえきは3期き連続れんぞくで赤字あかじです。

　店舗てんぽ数すう（営業えいぎょう拠点きょてん数すう）も激減げきげんしています。12年ねん3月がつ末まつには1373店てんありましたが、16年ねん3月がつ末まつには1271店てんにまで減へっています。4年間ねんかんで102店てんもの減少げんしょうです。クリスピーは“閉店へいてんの嵐あらし”として話題わだいになりましたが、ミスドもハイペースで閉店へいてんしているのです。

　外食がいしょく産業さんぎょうの市場いちば規模きぼは、1997年ねんの29兆ちょう円えんをピークに下降かこう線せんをたどっています。コンビニエンスストアなどの中食ちゅうじき産業さんぎょうの台頭たいとうで外食がいしょく産業さんぎょうは脅威きょういにさらされています。ミスドも例外れいがいではありません。

　中食ちゅうじき産業さんぎょうによる脅威きょういに加くわえて、コンビニのレジ横よこにおけるドーナツの本格ほんかく的てきな販売はんばいの開始かいしがミスドに追おい打うちをかけました。いわゆる「ドーナツ戦争せんそう」により大おおきな打撃だげきを受うけた格好かっこうとなりました。

　店舗てんぽ数すうを減へらしているとはいえ、ミスドはドーナツチェーンでは圧倒的あっとうてきです。しかし、ドーナツを販売はんばいしているセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートのコンビニ主要しゅよう3社しゃだけでも店舗てんぽ数すうは4万まん店てんを超こえています。規模きぼの面めんでは太刀打たちうちできません。ミスドの周まわりには、さしずめ“コンビニ連合れんごうによる包囲ほうい網もう”が敷しかれており、四面楚歌しめんそかの状態じょうたいといえます。

コンビニにない武器ぶきを持もつミスド

　厳きびしい状況じょうきょうに置おかれているミスドですが、一方いっぽうでミスドにはコンビニドーナツにはない差別さべつ化かされた武器ぶきが存在そんざいします。「品しな揃そろえ」「できたて」「熱烈ねつれつなファン」の3つです。

　品しな揃そろえに関かんしては、ミスドの代名詞だいめいしといえる「ポン・デ・リング」や定番ていばんの「オールドファッション」、クリーミーな味あじわいが売うりの「エンゼルクリーム」といったドーナツを数多かずおおく取とり揃そろえていることが特長とくちょうとなっています。品しな揃そろえの豊富ほうふさは、コンビニドーナツを圧倒あっとうしています。

　ミスドは、多おおくの店舗てんぽで店内てんない調理ちょうりを行おこなっています。これは現状げんじょうのコンビニではできないことです。ミスドならではといえるでしょう。できたてのドーナツを提供ていきょうするために、一いち店てん一いち店てんでドーナツを手てづくりしています。できたてを強調きょうちょうするために、店みせの外そとからドーナツを調理ちょうりしている様子ようすが見みえるよう店舗てんぽの大だい規模きぼ改装かいそうも進すすめています。

　ミスドには熱烈ねつれつなファンが存在そんざいします。71年ねんに1号ごう店てんがオープンし、75年ねんにオールドファッション、03年ねんにポン・デ・リングを販売はんばい開始かいししています。その後ご、長ながきにわたって親したしまれてきました。また、ミスドの人気にんきキャラクター「ポン・デ・ライオン」がミスドのイメージアップに一役ひとやく買かっています。「ミスド好すき」を公言こうげんする人ひとは少すくなくありません。確固かっこたるブランドを築きずいているといえます。

　ミスドは、コンビニにはない強つよみを持もっていますが、経営けいえい環境かんきょうは厳きびしさを増ましていることに変かわりありません。コンビニドーナツに対抗たいこうできる新しん機軸きじくを打うち出だしていく必要ひつようがあります。8月1日にちから順次じゅんじ実施じっしするドーナツの食たべ放題ほうだい「ドーナツビュッフェ」のような、コンビニではできないことを行おこなっていく必要ひつようがあります。話題わだい性せいのあるキャンペーンを継続けいぞくしていくことが必要ひつよう不可欠ふかけつといえるでしょう。

　コンビニが仕掛しかけたドーナツ戦争せんそう、コンビニもミスドの客きゃくを奪うばうには至いたっていませんが、ミスドも経営けいえいが逼迫ひっぱくしています。ミスドは生いき残のこることができるのでしょうか。それとも、クリスピーのように閉店へいてんの嵐あらしでジリ貧じりひんに陥おちいってしまうのでしょうか。今いま、ミスドは試練しれんに立たたされているといえそうです。
（文ぶん＝佐藤さとう昌司しょうじ／店舗てんぽ経営けいえいコンサルタント）

●佐藤さとう昌司しょうじ　店舗てんぽ経営けいえいコンサルタント。立教大学りっきょうだいがく社会学部しゃかいがくぶ卒そつ。12年間ねんかん大手おおてアパレル会社かいしゃに従事じゅうじ。現在げんざいは株式会社かぶしきがいしゃクリエイションコンサルティング代表だいひょう取締役とりしまりやく社長しゃちょう。企業きぎょう研修けんしゅう講師こうし。セミナー講師こうし。店舗てんぽ型がたビジネスの専門せんもん家か。集客しゅうきゃく・売上うりあげ拡大かくだい・人材じんざい育成いくせいのコンサルティング業務ぎょうむを提供ていきょう。