街まち中ちゅうのすぐ潰つぶれる飲食いんしょく店てんの謎なぞ…成功せいこう店てんと真ま逆ぎゃくの結果けっかを招まねく「ほんの小ちいさな差さ」とは？

「Thinkstock」より

　近所きんじょを散歩さんぽしていて、「あれっ？　ここにオープンしたばかりの飲食いんしょく店てん、1年ねんもたたずになくなっちゃったなあ」と思おもうことがあるでしょう。オーナーが夢ゆめと希望きぼうを持もってオープンした飲食いんしょく店てんですが、1年ねんやそこらで潰つぶれてしまうことは普通ふつうにあることです。健康上けんこうじょうの理由りゆうや、人材じんざいの理由りゆうもありますが、潰つぶれる一番いちばんの理由りゆうは「売上うりあげが少すくない＝儲もうかっていない」からです。

　飲食いんしょく業ぎょうは「どんぶり勘定かんじょう」と昔むかしからいわれることも多おおい業界ぎょうかいですが、実際じっさいはギリギリの計算けいさんの上うえに成なり立たっていますし、ちょっとのことで大損おおぞんとなったり、大儲おおもうけとなったりします。このことを「1日にち1組くみあたりのお客きゃくさんが飲食いんしょく店てんの経営けいえいに及およぼす影響えいきょう力りょく」という観点かんてんで簡単かんたんな計算けいさんをしながら、イメージしてみましょう。

　街まち中ちゅうでありがちな客きゃく単価たんか4,000円えんの飲食いんしょく店てんを例れいとします。居酒屋いざかややレストラン系けいの飲食いんしょく店てんとして、お客きゃくさん1組くみ当あたりの来店らいてん人数にんずうを2.5人にんとおいてみます。ちなみに飲食いんしょく店てんにおいては、通常つうじょう1組くみ当あたり2人にんというのが、もっとも多おおいケースです。3人組にんぐみ、4人組にんぐみと増ふえるにしたがって、その割合わりあいは減へってきますが、団体だんたい客きゃくもいますので均ならすと2.0人にんを超こえます。ラーメン店てんやカレー店てんのような業態ぎょうたいはひとり客きゃくが多おおいので、2.0人にんを下回したまわります。

　では、お客きゃくさん1組くみ当あたり2.5人にんとすると、1組くみのお客きゃくさんの平均へいきん売上うりあげ高だかは約やく1万まん円えん（＠4000円えん×2.5人にん/組ぐみ）となります。材料ざいりょう費ひ率りつを平均へいきん的てきな30％とすると、粗そ利りは7,000円えんとなります。このお店みせの定休ていきゅうは週しゅう1日にちとすると、月つきの営業えいぎょう日数にっすうは26営業えいぎょう日びとなり、粗そ利りの月つき合計ごうけいは18万まん2,000円えん。12カ月かげつ＝1年ねんで218万まん4,000円えんとなります。ざっくり、年間ねんかん約やく200万まん円えんの粗そ利りです。

　お店みせを開業かいぎょうする人ひとは、最初さいしょに「損益そんえき分岐ぶんき点てん」を想定そうていします。損益そんえき分岐ぶんき点てんより売上うりあげが多おおければ儲もうかり、少すくなければ赤字あかじとなります。つまり損益そんえき分岐ぶんき点てんは死守ししゅして目標もくひょう売上うりあげ（儲もうかっている状況じょうきょう）にたどり着つこうとがんばります。

1日にち2組くみ少すくないだけで、半年はんとし後ごには運転うんてん資金しきんが底そこをつく

　しかし、想定そうていしていた損益そんえき分岐ぶんき点てんより1組くみお客きゃくさんが少すくないだけで、1年ねん後ごには200万まん円えん足たりなくなります。開業かいぎょうする人ひとは最初さいしょに借入かりいれを起おこしていることが多おおく、追加ついかで足たりない分ぶんを金融きんゆう機関きかんから借かりることは難むずかしいのが現実げんじつです。もしお店てんをスタートするときに運転うんてん資金しきんとしてのキャッシュをちゃんと用意よういしていたとしても、どれだけ余裕よゆうを持もって始はじめていることでしょう。

　教科書きょうかしょ的てきには想定そうてい売上うりあげの2カ月かげつ分ぶん、もしくは1～3カ月かげつ分ぶんを運転うんてん資金しきんとして用意よういして始はじめましょうなどといわれますが、私わたしがこれまでに飲食いんしょくプロデューサーとして相談そうだんを受うけてきた過去かこ200件けん以上いじょうのデータでは、個人こじんで開業かいぎょうした場合ばあいの結果けっかとして残のこった運転うんてん資金しきんは200万まん円えん前後ぜんこうの方ほうが多おおかったように思おもえます。

　万全ばんぜんな方ほうは500万まん円えん以上いじょう、少すくない方ほうは50万まん円えんに満みたない自転車じてんしゃ操業そうぎょうを前提ぜんていとした方ほうもいましたが、お店みせの大小だいしょうにかかわらず、物件ぶっけんを借かりて内装ないそうして備品びひんを揃そろえると、残のこった現金げんきんの結果けっかが絶対ぜったい値ちとして200万まん円えん前後ぜんこうに落おち着つくことが多おおいように思おもえます。

　つまり、最初さいしょに想定そうていしていた損益そんえき分岐ぶんき点てんより1日にち1組くみお客きゃくさんが少すくないだけで、1年ねん後ごには手元てもと資金しきんが底そこをつくことになります。ということは、1日にち2組くみ少すくないだけで半年はんとし後ごには運転うんてん資金しきんが底そこをつきます。

　逆ぎゃくに、1日にち1組くみ想定そうていよりお客きゃくさんが多おおければ、1年ねん後ごには200万まん円えん残のこります。毎年まいとし200万まん円えんのボーナスです。とっても嬉うれしいですよね。2組くみなら1年ねんで400万まん円えん残のこります。年間ねんかん400万まん円えん残のこるなら、3年ねん経たてば1,200万まん円えん貯たまり2店舗てんぽ目めも出だせる可能かのう性せいも出でてきます（税金ぜいきんについては、1店舗てんぽ目めの減価げんか償却しょうきゃくもあったりするのでここでは割愛かつあいさせていただきます）。飲食いんしょくが「どんぶり勘定かんじょう」といわれるゆえんも、こうした事情じじょうが関係かんけいしているのかもしれません。お店みせのオーナーも、儲もうかってくるとちょっと金銭きんせん感覚かんかくがルーズになりがちです。

みなさんの1組くみ次第しだい

　しかし、よく街まち中ちゅうを見みてみてください。資金しきん力りょくのあるチェーンではない個人こじん店てんでも、3年ねんで1,200万まん円えん儲もうかれば2店舗てんぽ目めをすぐにでも出だしたいはずですが、実際じっさいはそんなにトントン拍子とんとんびょうしで出店しゅってんしているお店みせはごくわずかです。逆ぎゃくに1日にち当あたりの来客らいきゃく数すうが想定そうていより1組くみ少すくない飲食いんしょく店てんは1年ねんで資金しきんが底そこをつき、2年ねん目めが終了しゅうりょうするころには資金しきんショートして潰つぶれるか、その直前ちょくぜんの状態じょうたいとなっていることでしょう。想定そうていより2組くみ少すくなければなおさらです。

　でも、なんとか自分じぶんたちの給料きゅうりょうや経費けいひを削けずりながら、お店みせを存続そんぞくさせています。それでも、1日にち当あたり3～4組くみ少すくなければ、がんばりたくても限界げんかいがあります。逆ぎゃくにそれだけ多おおければ2店舗てんぽ目めの出店しゅってんは簡単かんたんに可能かのうです。つまり、飲食いんしょく店てんは損益そんえき分岐ぶんき点てんになる売上うりあげより1日にち1～3組くみ多おおいか少すくないかという違ちがいの中なかで、生いきているお店みせがほとんどであると考かんがえられます。

　いかがでしょうか？

　お店みせを生いかすも殺ころすもみなさんの1組くみ次第しだいです。たった1組くみの違ちがいがどれくらい影響えいきょう力りょくが大おおきいことか。なので、予約よやくしているのに当日とうじつ突然とつぜん連絡れんらくもなく行いかない、というような行為こういはやめてくださいね。お店みせとしても、あまり大おおきなことや難むずかしいことは考かんがえずに、シンプルに「1日にち当あたり1組くみのお客きゃくさんを増ふやすためには、どうすればよいか？」を考かんがえ実践じっせんしていれば、やり方かたを間違まちがえなければ先々さきざきいい結果けっかに結むすびついてゆくことでしょう。毎日まいにちの“たった1組くみのお客きゃくさん”がお店みせの将来しょうらいを左右さゆうしているのです。
（文ぶん＝江間えま正和まさかず／飲食いんしょくプロデューサー、東京とうきょう未来みらい倶楽部くらぶ代表だいひょう）