絶望ぜつぼうの日本にっぽんの家電かでんメーカー…アマゾンやグーグルと「勝負しょうぶすらできない」状態じょうたいに

アマゾンのAIスピーカー「エコー」

「スマホの次つぎはAIスピーカー」といわれている。

　市場いちばが成熟せいじゅくしたスマートフォン（スマホ）の次つぎの成長せいちょう分野ぶんやとして、人工じんこう知能ちのう（AI）を備そなえたAIスピーカーへの関心かんしんが高たかまっているのだ。居間いまなどに置おき、人ひとが話はなしかけて情報じょうほうを検索けんさくしたり音楽おんがくを再生さいせいしたりするIT機器ききだ。天気てんき予報よほうや渋滞じゅうたい情報じょうほうなどにアクセスすることもできる。

　AIスピーカーは、米国べいこく勢ぜいが先行せんこうし日本にっぽん勢ぜいは後手ごてに回まわっている。はたして、日本にっぽんメーカーは巻まき返かえしができるだろうか。

　米べいアマゾン・ドット・コムが2014年ねん秋あき、独自どくじの会話かいわ型がたAI「アレクサ」を搭載とうさいしたAIスピーカー「エコー」を発売はつばいして先陣せんじんを切きった。その後ご、2年ねん空あいて16年ねん11月、米べいグーグルが「ホーム」を売うり出だした。今年ことし5月がつには米べいマイクロソフトも参入さんにゅう。米べいアップルは12月に米国べいこくや英国えいこくで「ホームポッド」を投入とうにゅうすると発表はっぴょうしている。

　米国べいこくでは15年ねんに170万まん台だい、16年ねんに650万まん台だいのAIスピーカーが売うれた。17年ねんには2450万まん台だいが出荷しゅっかされ、今年度こんねんど中ちゅうに累計るいけい3300万まん台だいのAIスピーカーが普及ふきゅうすると予測よそくされている。

　米べい調査ちょうさ会社かいしゃのイーマーケッターの調査ちょうさによると、先行せんこうしたアマゾンのエコーが70.6％でトップ。2位いはグーグルのホームで23.8％。ほかのメーカーは合あわせて5.6％にすぎない。

　圧倒的あっとうてきな優位ゆういに立たつアマゾンは独走どくそう態勢たいせいを盤石ばんじゃくにするため、得意とくいとする価格かかく競争きょうそうに持もち込こんだ。10月31日にち、価格かかくを99.99ドル（約やく1万まん1200円えん）と、現行げんこう機種きしゅの179.99ドル（約やく1万まん9900円えん）から45％値下ねさげした新型しんがたモデルを発売はつばいする。グーグルの129ドル（約やく1万まん4400円えん）を大幅おおはばに下回したまわる。クリスマス商戦しょうせんで後発こうはつメーカーを蹴け散ちらす作戦さくせんだ。

　グーグルは10月6日にち、「グーグルホーム」を日本にっぽん国内こくないで発売はつばいした。価格かかくは税別ぜいべつで1万まん4000円えんだ。アマゾン・ジャパンは10月2日にち、「エコー」を日本にっぽんでも年内ねんないに発売はつばいすると発表はっぴょうした。アマゾンがグーグルを追随ついずいする格好かっこうになる。

後おくれをとった日本にっぽん勢ぜい

　一方いっぽう、日本にっぽん勢ぜいはどうか。

　9月1日にちに開幕かいまくした欧州おうしゅう最大さいだいの家電かでん見本市みほんいち「IFA2017」で、パナソニックとソニーはグーグルのAIを備そなえたAIスピーカーを展示てんじした。

　両社りょうしゃとも欧米おうべいでAIスピーカーを発売はつばいするという。パナソニックは四よん角柱かくちゅう型がたのスピーカー「SC－GA10」を今冬こんとうに英国えいこく、ドイツ、フランスで発売はつばいし、将来しょうらい的てきに日本にっぽんでの導入どうにゅうも見越みこしている。ソニーも10月がつに米国べいこく、12月以降いこうに英えい仏ふつ独どくで円柱えんちゅう型がたのスピーカー「LF－S50G」を売うり出だすとしている。

　パナソニックはオーディオで培つちかった技術ぎじゅつを生いかし、低音ていおんから高音こうおんまでクリアに響ひびかせるところを売うりにしている。ソニーは、料理りょうりなどをしていて手てが汚よごれていても、手てをかざすだけで操作そうさできる「ジェスチャーコントロール」機能きのうが付ついた商品しょうひんを年内ねんないに国内こくないに投入とうにゅうする。両社りょうしゃはAIエンジンにグーグルが開放かいほうしたグーグルアシスタントを採用さいようしている。

　通信つうしんアプリのLINEは、独自どくじのAI機能きのうを搭載とうさいしたAIスピーカー「Clova WAVE（クローバウェーブ）」を10月5日にち、国内こくないで発売はつばいした。価格かかくは税込ぜいこみで1万まん4000円えん。日本にっぽんで7000万まん人にんが利用りようする対話たいわアプリ「LINE」との連携れんけいで、音声おんせいメッセージを送おくったり友人ゆうじんからのメッセージを読よみ上あげたりできる。今後こんご、音声おんせい翻訳ほんやくなどサービスを拡充かくじゅうするとしている。

　株式かぶしき市場いちばは、AIスピーカー関連かんれん銘柄めいがらに注目ちゅうもくしている。

　NTTドコモが今夏こんかに発売はつばいしたAIスピーカー「ペトコ」の音声おんせい認識にんしきに、ベンチャー企業きぎょうのフュートレックの技術ぎじゅつが使つかわれていることから、株価かぶかが動意どういづいた。フュートレックは音声おんせい認識にんしき・アプリケーション開発かいはつに強つよみを持もつ。NTTドコモはフュートレックの株式かぶしきを6％保有ほゆうする第だい2位いの株主かぶぬしだ。

　祖業そぎょうのソフト基礎きそ技術ぎじゅつから撤退てったいし、IoT（モノのインターネット）に軸じく足あしを移うつしたアプリックスは、アマゾンの「アレクサ」に対応たいおうするシステムを開発かいはつした。米国べいこくで家電かでんメーカーから複数ふくすうの引ひき合あいがあるという。アプリックスは赤字あかじ続つづきで、決算けっさんに継続けいぞく疑義ぎぎの注記ちゅうきがついているが、AIスピーカー関連かんれんに活路かつろを見みいだそうとしている。

　IoTビッグデータを活用かつようして経営けいえい課題かだいを解決かいけつする仕組しくみを開発かいはつ・提案ていあんするチェンジは、アレクサに日本語にほんごを接続せつぞくする技術ぎじゅつが投資とうし家かの関心かんしんを集あつめている。

　AIスピーカーではアマゾン、グーグル、マイクロソフトの米国べいこく勢ぜいが先行せんこうしている。日本にっぽん勢ぜいは発売はつばいが遅おくれているうえに、参入さんにゅうする前まえに価格かかく競争きょうそうへと突入とつにゅうしてしまった。そして何なにより、AIエンジンなど中核ちゅうかくとなる技術ぎじゅつでは米国べいこく勢ぜいと戦たたかわず、グーグルやアマゾンのAIを搭載とうさいする製品せいひんを出だす、“ゴバンザメ”作戦さくせんだ。これで大おおきな成功せいこうが得えられる可能かのう性せいは低ひくい。

　スマホはアップルが独占どくせんした。AIスピーカーはアマゾンが一人ひとり勝がちの様相ようそうとなっている。AI家電かでんでも、日本にっぽん勢ぜいは戦たたかう前まえから負まけているようだ。
（文ぶん＝編集へんしゅう部ぶ）