LINE、赤字あかじ膨張ぼうちょうで業績ぎょうせき予想よそう「困難こんなん」と非ひ開示かいじ…PayPayとの“スマホ決済けっさい”戦争せんそうで経営けいえい体力たいりょく消耗しょうもう

LINEの画面がめん

　無料むりょう通信つうしんアプリのLINEの2019年ねん1～3月がつ期き連結れんけつ決算けっさん（国際こくさい会計かいけい基準きじゅん）の最終さいしゅう損益そんえきは、103億おく円えんの赤字あかじ（前年ぜんねん同期どうきは13億おく円えんの赤字あかじ）だった。スマートフォン（スマホ）決済けっさいサービス「LINEペイ」で大だい規模きぼな還元かんげんキャンペーンを行おこなったことなどで先行せんこう投資とうしがかさみ、赤字あかじ幅はばが拡大かくだいした。

　売上うりあげ収益しゅうえき（売上うりあげ高だか）は前年ぜんねん同期どうき比ひ13.5％増ぞうの553億おく円えん。企業きぎょうが使つかう通信つうしんアプリ内ないの公式こうしきアカウントが増ふえたことで広告こうこく収入しゅうにゅうが増加ぞうかした。

　営業えいぎょう損益そんえきは78億おく円えんの赤字あかじ（前年ぜんねん同期どうきは12億おく円えんの黒字くろじ）。LINEペイで支払しはらった額がくの20％分ぶんを還元かんげんするキャンペーンに加くわえ、導入どうにゅうする店舗てんぽに対たいして手数料てすうりょうの優遇ゆうぐう策さくを取とり入いれた。人員じんいんの採用さいよう増ぞうで人件じんけん費ひが171億おく円えんと前年ぜんねん同期どうき比ひで27％増加ぞうかした。LINEペイなどの金融きんゆうや人工じんこう知能ちのう（AI）などを含ふくむ「戦略せんりゃく事業じぎょう」の営業えいぎょう損益そんえきは149億おく円えんの赤字あかじとなった。

　19年ねん12月がつ期きの連結れんけつ業績ぎょうせき見通みとおしは、スマホ用ようなどのアプリ市場いちばが国内外こくないがいで急激きゅうげきに変化へんかしていることもあって「精緻せいちな業績ぎょうせき予想よそうを策定さくていするのは困難こんなん」と公表こうひょうしなかった。

　利用りよう者しゃを獲得かくとくするための先行せんこう投資とうしを優先ゆうせんする考かんがえで、今期こんきは「戦略せんりゃく事業じぎょう」の営業えいぎょう赤字あかじが600億おく円えん程度ていどになるとした。

ソフトバンクとヤフーの「ペイペイ」が出血しゅっけつ覚悟かくごの大だい攻勢こうせい

　日本にっぽんのキャッシュレス決済けっさいの比率ひりつは2割わり程度ていどで欧米おうべいに比くらべて低ひくい。政府せいふは2025年ねんまでに4割わりに引ひき上あげる目標もくひょうを掲かかげている。キャッシュレス化かに対たいする政府せいふの後押あとおしもあって、スマホ決済けっさいの導入どうにゅうが急激きゅうげきに増ふえた。

　LINEは14年ねん12月からLINEペイのサービスを開始かいしした。スマホ決済けっさいではLINEが一いち歩ほ先行せんこうしていたが、ソフトバンクグループとヤフーが共同きょうどう出資しゅっしする「PayPay（ペイペイ）」や、楽天らくてんが手掛てがける「楽天らくてんペイ」など、参入さんにゅう企業きぎょうが相次あいついだ。

　ペイペイは一気いっきにシェア獲得かくとくに乗のり出だした。18年ねん10月がつにサービスを開始かいししたばかりのペイペイは、同年どうねん12月がつから大型おおがたキャンペーンを実施じっしした。題だいして「100億おく円えんあげちゃうキャンペーン」。ペイペイ加盟かめい店てんでペイペイ決済けっさいを利用りようすると、決済けっさい額がくの20％相当そうとうを還元かんげん。100億おく円えんを投とうじ、ユーザー1人にんにつき1カ月かげつ5万まん円えんのボーナスを還元かんげんするというもの。利用りよう者しゃが急増きゅうぞうし、キャンペーン開始かいしからわずか10日とおかで終了しゅうりょうして大おおきな話題わだいになった。

　19年ねん2月がつからは日常にちじょう的てきな決済けっさい利用りようの定着ていちゃくを図はかる「第だい2弾だん100億おく円えんあげちゃうキャンペーン」を始はじめた（5月がつ13日にちで終了しゅうりょう）。3月に新規しんき獲得かくとく策さくとして、初はじめてサービスを利用りようする際さいに銀行ぎんこうの口座こうざを登録とうろくすると、抽選ちゅうせんで50人にんに100万まん円えん相当そうとうがペイペイ残高ざんだかとして付与ふよされた。

　大盤振おおばんぶる舞まいのキャンペーン効果こうかで、ペイペイの累計るいけい登録とうろく者しゃ数すうは666万まん人にん（4月がつ24日にち時点じてん）。加盟かめい店舗てんぽ数すうは7カ月かげつで50万まん店てんを突破とっぱした。

　5月8日にちからスマホ決済けっさいサービスでの還元かんげん率りつを利用りよう金額きんがくの0.5％から3％へと6倍ばいに引ひき上あげた。6月からは20回かいに1回かいの当選とうせん確かく率りつで最大さいだい1000円えん相当そうとうのペイペイボーナスを付与ふよする懸賞けんしょうも実施じっし。業界ぎょうかい別べつに最大さいだい2割わりの還元かんげんキャンペーンを6月がつから実施じっしする予定よていだ。

　ヤフーの19年ねん3月がつ期きの連結れんけつ決算けっさん（国際こくさい会計かいけい基準きじゅん）の純じゅん利益りえきは、前期ぜんき比ひ40％減げんの786億おく円えん。スマホ決済けっさい会社かいしゃのペイペイに関連かんれんし、183億おく円えんの持もち分ぶん法ほう投資とうし損失そんしつを計上けいじょうしたためだ。

　ソフトバンクグループの孫まご正義せいぎ社長しゃちょうは、緒戦しょせんで圧倒的あっとうてきなシェアを確保かくほするため、無料むりょうで参入さんにゅうするのが得意とくい技わざだ。モバイル（携帯けいたい電話でんわ）事業じぎょうに参入さんにゅうした際さい、携帯けいたい電話でんわ端末たんまつを無料むりょうにしたのは記憶きおくに新あたらしい。当初とうしょは赤字あかじだが、圧倒的あっとうてきなシェアを握にぎれば利益りえきを生うむことを、これまでの経験けいけんで知しっている。スマホ決済けっさいでも同おなじ手法しゅほうを取とり入いれたわけだ。ヤフーは10月1日にち付づけで持もち株かぶ会社かいしゃ体制たいせいに移行いこうし、社名しゃめいをZホールディングスに変更へんこうする。

シェアを獲得かくとくするための体力たいりょく勝負しょうぶ

　ペイペイの大だい攻勢こうせいにLINEペイやNTTドコモのd払はらい、楽天らくてんペイといった競合きょうごうアプリも静観せいかんできなくなり、購入こうにゅう額がくの2割わりを還元かんげんするキャンペーンを次々つぎつぎと打うち出だした。

　2月がつにはフリーマーケットアプリのメルカリがスマホ決済けっさいサービス「メルペイ」を始はじめた。メルペイは4月がつ26日にちから5月がつ6日にちのゴールデンウィーク期間きかん中ちゅうに購入こうにゅう額がくの最大さいだい70％還元かんげんするキャンペーンを実施じっしした。「最大さいだい70％還元かんげん」としていたが、実際じっさいに70％還元かんげんはセブン－イレブンのみ。テレビCMでは「50％還元かんげん」を大おおきく打うち出だしていた。景品けいひん表示法ひょうじほう上じょう、1000円えん以上いじょうの買かい物もので還元かんげんできる上限じょうげんは20％とされている。

＜メルペイの広報こうほうは「関係かんけい各所かくしょと協議きょうぎし問題もんだいが無ないと判断はんだんした」としたが、具体ぐたい的てきな仕組しくみについては言及げんきゅうを控ひかえた＞（4月がつ26日にち付づけ日本経済新聞にほんけいざいしんぶん）

　各社かくしゃが出血しゅっけつサービスを繰くり広ひろげるのは、10月に迫せまった消費しょうひ増税ぞうぜいの5ポイント還元かんげんをにらんでいるからだ。ポイント還元かんげんはキャッシュレス決済けっさいが前提ぜんていのため、各社かくしゃともそれまでにユーザーを囲かこい込こむ必要ひつようがある。

　合従連衡がっしょうれんこうの動うごきも出でてきた。LINEペイとメルペイは3月がつ27日にち、業務ぎょうむ提携ていけいした。加盟かめい店てんで双方そうほうのサービスを利用りようできるようにする。LINEペイを利用りようできる場所ばしょは18年ねん末まつ時点じてんで133万まんカ所かしょ。メルペイは135万まん店てんでの導入どうにゅうが決きまっているという。

　両社りょうしゃが提携ていけいしたのは、ペイペイ、楽天らくてんペイに対抗たいこうする狙ねらいがある。キャンペーンを実施じっしする資金しきん力りょくや加盟かめい店てん開拓かいたくの営業えいぎょう力りょくでは見劣みおとりする。そのため、加盟かめい店てん開拓かいたくの営業えいぎょうでも連携れんけいし、利用りよう可能かのうな店舗てんぽの拡大かくだいを効率こうりつ的てきに行おこなう。

　LINEは提携ていけいを成長せいちょう戦略せんりゃくの柱はしらに据すえる。みずほフィナンシャルグループと組くんで銀行ぎんこう業ぎょうに参入さんにゅう。さらに野村のむらホールディングスとLINE証券しょうけんを立たち上あげる。スマホの次つぎを見据みすえたAIスピーカーでは、トヨタ自動車とよたじどうしゃと組くんだ。そして、スマホ決済けっさいではメルカリがパートナーだ。

　スマホ決済けっさいには多おおくの企業きぎょうが参入さんにゅうし、いまや乱戦らんせん状態じょうたいだ。LINEはLINEペイに200億おく円えんを追加ついか出資しゅっしした。これまでの資本しほん金きんは136億おく円えんだった。

　どれだけの赤字あかじに持もちこたえることができるか、各社かくしゃとも究極きゅうきょくの体力たいりょく勝負しょうぶである。
（文ぶん＝編集へんしゅう部ぶ）