トヨタ・AE86、納車のうしゃ4時じ間あいだ後ごに火ひを噴ふいて炎上えんじょう、推定すいてい原因げんいん…珍めずらしくない？

「ハチロク（86）」の愛称あいしょうで親したしまれるトヨタ自動車とよたじどうしゃ「カローラ レビン（4代目だいめ）」の中古ちゅうこ車しゃとみられる車くるまが、納車のうしゃ4時じ間あいだ後ごに大おおきく火ひを噴ふいて炎上えんじょうしたという写真しゃしん付つきのX（旧きゅうTwitter）上じょうの投稿とうこうが話題わだいを呼よんでいる。中古ちゅうこ車しゃが納車のうしゃまもなく炎上えんじょうして使用しようできなくなるという事例じれいは、しばしば起おこるものなのか。専門せんもん家かの見解けんかいを交まじえて追おってみたい。

　ハチロクとはトヨタの車両しゃりょう型式けいしき「AE86」を使用しようした車種しゃしゅを指さし、コンパクトスポーツモデルである「カローラ レビン（4代目だいめ）」（1983年ねん発売はつばい）や「スプリンター トレノ（4代目だいめ）」（同どう）などが該当がいとうする。「カローラ」のファミリー系けいモデルは5代目だいめからFF方式ほうしき（フロントエンジン・フロントドライブ）を採用さいようしたが、スポーツモデルである「レビン」はファンにスポーティな走はしりを楽たのしんでもらえるようにFR（フロントエンジン・リヤドライブ）を継続けいぞく。2ドアノッチバッククーペと3ドアハッチバッククーペの2種類しゅるいで、エンジンは1.5リッター（3A-U）と1.6リッターDOHC16バルブ（4A-GEU）。85年ねんからは電子でんし制御せいぎょ4速そくATのECT-Sが追加ついかされた。レビンの4代目だいめはFRの走行そうこう特性とくせいを好このむファンから大おおきな支持しじを受うけ、生産せいさん終了しゅうりょう後ごも「ハチロク」として一定いっていの人気にんきを誇ほこった。

「レビン」シリーズは2000年ねんに生産せいさんを終了しゅうりょうしたが、ライトウェイトFRスポーツカーの復活ふっかつ車しゃとして12年ねんに発売はつばいされた新しん車種しゃしゅは「86」と名付なづけられた。21年ねんにはフルモデルチェンジされた「GR86」が発売はつばいされ、現在げんざいに至いたる。そのため、いわゆる「ハチロク（86）」と現在げんざいの「GR86」は基本きほん的てきには別物べつものだととらえられている。

完全かんぜんには避さけようがない

　そんなハチロクの中古ちゅうこ車しゃを購入こうにゅうしたXユーザーが、「納車のうしゃしてオーナー時間じかん約やく4時じ間あいだ、ae86楽たのしかったよ…」という文章ぶんしょうとともに、車体しゃたい全体ぜんたいが大おおきな火ひを噴ふいて激はげしく燃もえ上あがる写真しゃしんをポスト。投稿とうこう者しゃは煙けむりが上あがっているのを見みて車くるまから降おりたところ、燃もえ始はじめたとのことで、「今いまの所ところ原因げんいん分わかってないので、警察けいさつとその後ごにトヨタに調査ちょうさしてもらうらしいです」と綴つづっている。

　一般いっぱん的てきに、衝突しょうとつ事故じこなど外部がいぶから衝撃しょうげきを受うけること以外いがいが原因げんいんで、車くるまが炎上えんじょうするというケースは、しばしば起おこるものなのか。中古ちゅうこ車しゃ販売はんばい店てん経営けいえい者しゃで自動車じどうしゃライターの桑野くわの将すすむ二郎じろう氏しはいう。

「総務そうむ省しょう消防庁しょうぼうちょう刊行かんこうの『令れい和わ5年版ねんばん 消防しょうぼう白書はくしょ』によると、令れい和わ4年ねんの総そう出火しゅっか件数けんすう3万まん6314件けんのうち、車両しゃりょう火災かさいは3409件けんと全体ぜんたいの10％近ちかくを占しめています。衝突しょうとつ事故じこなどで衝撃しょうげきを受うけていないのに発生はっせいする車両しゃりょう火災かさいというのも、けっして珍めずらしいことではなく、過去かこに今回こんかいの事故じこと同おなじAE86が高速こうそく道路どうろで突然とつぜん炎上えんじょうしたというニュースが流ながれたこともあります。旧きゅう車くるまの場合ばあい、どうしても経年けいねん劣化れっかによる整備せいび不良ふりょうやトラブルを完全かんぜんには避さけようがないところもあり、オーナーも日頃ひごろからかなり気きを付つけているのではないでしょうか」

考かんがえられる原因げんいん

　納車のうしゃ4時じ間あいだ後ごに、このような事故じこが起おきた推定すいてい原因げんいんとしては、どのような内容ないようが考かんがえられるのか。

「車両しゃりょう火災かさいの原因げんいんとして最もっとも多おおいのは、過去かこ何なん年ねんにもわたってマフラーやエキゾーストマニホールド（排気はいき管かん）にガソリンやオイルなどの着火ちゃっか物ぶつが漏もれ落おちて発火はっかするというケースで、自動車じどうしゃの構造こうぞう上じょう、いくら予防よぼう策さくを講こうじても経年けいねん劣化れっかや整備せいび不良ふりょうなどさまざまな要因よういんで起おこってしまいます。また、熱ねつエネルギーを制動せいどう力りょくに転換てんかんするブレーキシステムも、高温こうおんにさらされることから、ブレーキフルードの漏もれや異物いぶつの巻まき込こみなどで発火はっかする例れいが多おおく見みられます。

　次つぎに多おおいのが、電気でんき系けいのショートによる発火はっかです。バッテリー端子たんしが緩ゆるむことでショートが発生はっせいし、火災かさいの原因げんいんになったりするケースです。最近さいきんは通販つうはんで購入こうにゅうしたナビやドライブレコーダーなどをDIYで取とり付つけた際さいに、配線はいせんの加工かこうや取付とりつけ方法ほうほうが悪わるくてショートした、などという例れいも増ふえているそうです。さらに、車内しゃないに置おかれたライターやタバコ、スプレー缶かんやペットボトル飲料いんりょうなどを炎天下えんてんかの中なかで長時間ちょうじかん放置ほうちすることで、火災かさいが生しょうじるケースも報告ほうこくされています。しかし車両しゃりょう火災かさいで調査ちょうさをしても原因げんいんが不明ふめいという事例じれいが最もっとも多おおく、偶発ぐうはつ的てきな火災かさいが多おおいのも事実じじつです。なかには、リコール対象たいしょうの車両しゃりょうも含ふくまれており、改修かいしゅうが未み対策たいさくなために発生はっせいしたと考かんがえられるケースも見受みうけられます。

　今回こんかいのAE86の車両しゃりょう火災かさいは、納車のうしゃ後ご4時じ間あいだで発生はっせいしてしまったということですが、原因げんいんが整備せいび不良ふりょうによるものなのか、偶発ぐうはつ的てきな原因げんいんによるものなのかは、情報じょうほうが少すくないのでなんともいえません。ただ、私わたしも過去かこにAE86を所有しょゆうしていて怖こわい目めに遭あったことがありまして、燃料ねんりょうタンクがボディの後うしろ側がわにあって、前側まえがわのエンジンまで繋つながる燃料ねんりょうパイプの部品ぶひんが製造せいぞう廃止はいしになっており、経年けいねん劣化れっかしていても完全かんぜんな交換こうかん修理しゅうりが難むずかしいことから、加工かこう流用りゅうようで修理しゅうりしていましたが、パイプの一部いちぶより燃料ねんりょうが漏もれて車内しゃないにガソリン臭しゅうが充満じゅうまんし、フラフラしたという経験けいけんがありました。この漏もれ出でた燃料ねんりょうの垂だれ落おちた先さきが悪わるければ、火災かさいになっていたかもしれません。

　こういったケースは、エンジンをかけて運転うんてんを始はじめてから数すう十じゅう分ふんでも発生はっせいします。納車のうしゃ直後ちょくごの4時じ間あいだで火災かさいに見舞みまわれたのは不運ふうんとしかいえませんが、写真しゃしんを見みた印象いんしょうでは車内しゃないが激はげしく燃もえている様子ようすなので、燃料ねんりょうパイプからのガソリン漏もれが発生はっせいしていたり、車内しゃないにライターなどがあると一気いっきに燃もえてしまいますし、電気でんき系けいのショートも発火はっかの元もとになります。旧きゅう車くるまですからオイル漏もれやクラッチの焼損しょうそんなども含ふくめ、いろんな原因げんいんが考かんがえられます。

　また、写真しゃしんではボンネットが開ひらいた状態じょうたいなので、異常いじょうを感かんじてクルマを停とめてボンネットを開あけたところ発火はっかした、ということも考かんがえられるので、エンジンルーム側がわから室内しつないへ延焼えんしょうしていったとすると、オイル漏もれや燃料ねんりょう漏もれでしょうか。いずれにしても、希少きしょう価値かちも人気にんきも高たかいAE86が燃もえている写真しゃしんには、クルマ好すきとして心しんが痛いたむばかりです」（桑野くわの氏し）

（文ぶん＝Business Journal編集へんしゅう部ぶ、協力きょうりょく＝桑野くわの将すすむ二郎じろう／自動車じどうしゃライター）