相次あいつぐゴーストライター騒動そうどう、利用りよう広ひろがる出版しゅっぱん業界ぎょうかいでの実態じったいは？執筆しっぴつ方法ほうほう、報酬ほうしゅう、法的ほうてき問題もんだい…

3月7日にち、記者きしゃ会見かいけんを行おこなう佐さ村むら河内かわうち守まもる氏し（撮影さつえい＝山本やまもと宏樹ひろき）

　まず大おおきく世間せけんを騒さわがせているのが、10万まん枚まい以上いじょうのセールスを上あげた『交響こうきょう曲きょく第だい一いち番ばんHIROSHIMA』『鎮魂ちんこんのソナタ』などの代表だいひょう曲きょくを持もち、「全ぜん聾ろう作曲さっきょく家か」として知しられる人気にんき作曲さっきょく家か・佐さ村むら河内かわうち守まもる氏しについて、2月がつ6日にち、桐朋学園大学とうほうがくえんだいがく非常勤ひじょうきん講師こうしの新垣あらかき隆たかし氏しが、18年間ねんかんにわたり佐さ村むら河内かわうち氏しのゴーストライターをしてきたと告白こくはくした件けんである。3月7日にちには騒動そうどうが起おこってから初はじめて佐さ村むら河内かわうち氏しが記者きしゃ会見かいけんを行おこない、ゴーストライター利用りようは認みとめたものの、「私わたし（＝新垣あらかき氏し）が録音ろくおんしたものを彼かれ（＝佐さ村むら河内かわうち氏し）が聞きき、コメントすることが何なん度どもあった」という新垣あらかき氏しの発言はつげんを「事実じじつではない」として、同氏どうしを相手取あいてどり名誉めいよ毀損きそんで裁判さいばんを起おこす意向いこうを明あきらかにした。

　そして佐さ村むら河内かわうち氏しが会見かいけんを行おこなった7日にち、漫画まんが『ブラックジャックによろしく』（講談社こうだんしゃ）などの代表だいひょう作さくを持もつ漫画まんが家か・佐藤さとう秀峰しゅうほう氏しが、ライブドア元もと社長しゃちょうの堀江ほりえ貴文たかふみ氏しの小説しょうせつ『拝金はいきん』（徳間書店とくましょてん／2010年ねん）、『成金なりきん』（同どう／11年ねん）について、自身じしんのホームページ上じょうで「実際じっさいには堀江ほりえさんが文章ぶんしょうを書かいているかのようなイメージがありますが、書かいておりません。代筆だいひつ者しゃがいる」と指摘してき。佐藤さとう氏しが発行はっこう元もとの徳間書店とくましょてんにも事実じじつを確認かくにんしたが、「読者どくしゃへの説明せつめいをする必要ひつようはない」との回答かいとうが寄よせられたという。ちなみに佐藤さとう氏しは、両りょう小説しょうせつの表紙ひょうしのイラストを担当たんとうしている。

　これらの騒動そうどうについて真相しんそうはいまだに明あきらかではないが、特とくに出版しゅっぱん業界ぎょうかいにおいては「あの大物おおもの作家さっかの作品さくひんは、いつもほかの人物じんぶつが書かいている」「有名ゆうめいタレントの著書ちょしょなどは、本人ほんにんではなくゴーストライターが書かいている」など、以前いぜんからゴーストライティングが広ひろく行おこなわれているとの声こえもしばしば聞きかれるが、実態じったいはどうなのであろうか。

　出版しゅっぱん業界ぎょうかい関係かんけい者しゃは、次つぎのように明あかす。

「世間せけん的てきに名なの通とおった出版しゅっぱん社しゃが出だしている有名ゆうめい作家さっかの本ほんでも、ゴーストライターにより書かかれたものは多おおいです。例たとえば、ある出版しゅっぱん社しゃの有名ゆうめい作家さっかの本ほんは大だい部分ぶぶんがそうですが、口述こうじゅつ筆記ひっきに限かぎりなく近ちかいもので、ゴーストライターが著者ちょしゃ本人ほんにんに話はなしを聞きき、本人ほんにんが使つかうボキャブラリーを比較的ひかくてき忠実ちゅうじつに再現さいげんしています。出版しゅっぱん社しゃによっては、奥付おくづけに『構成こうせい』として実際じっさいに執筆しっぴつしたゴーストライターの名前なまえが記しるされることもあります。

　また、著者ちょしゃが芸能人げいのうじんの本ほんは大半たいはんがゴーストライターにより書かかれていますが、専門せんもん家かが著者ちょしゃのビジネス書しょでもしばしばゴーストライターが使つかわれます。その理由りゆうとしては、例たとえば著者ちょしゃが誠実せいじつであればあるほど執筆しっぴつに多大ただいな時間じかんを要ようしてしまい、いつ脱だつ稿こうできるか予定よていが立たたないため、出版しゅっぱん社しゃ側がわの意向いこうでゴーストライターを立たてるといったものです」

　そんなゴーストライターの仕事しごとだが、執筆しっぴつに当あたってはさまざまなノウハウが必要ひつようとされるという。

「口述こうじゅつ筆記ひっきのみだと1冊さつで200～300ページにも満みたないことが多おおいため、ゴーストライターが著者ちょしゃの過去かこの著書ちょしょや論文ろんぶんなどから引用いんようして内容ないようを膨ふくらませたり、全体ぜんたいの構成こうせいを考かんがえたり、さらに著者ちょしゃの過去かこの発言はつげんとの整合せいごう性せい確認かくにんも行おこないます。このほかにも、専門せんもん家かが一般いっぱん読者どくしゃ向むけの本ほんを書かく場合ばあいには、難解なんかいでとても一般いっぱん読者どくしゃには読よめない内容ないようになってしまうケースが多おおいので、まず元もととなる原稿げんこうを専門せんもん家かが書かき、それをゴーストライターが一般いっぱん読者どくしゃ向むけにわかりやすくリライトすることもあります」（同どう）

●気きになる報酬ほうしゅうや法的ほうてき問題もんだい

　ここで気きになるのが、ゴーストライターを利用りようした場合ばあいの著作ちょさく権けんや報酬ほうしゅうなどがどうなるかであるが、別べつの出版しゅっぱん業界ぎょうかい関係かんけい者しゃによれば、通常つうじょうは出版しゅっぱん社しゃが原稿げんこうを買かい取とってしまうため、ゴーストライターに著作ちょさく権けんはないという。

「あくまで名目めいもく上じょうの著者ちょしゃが著作ちょさく権けんを持もつため、増刷ぞうさつがかかってもゴーストライターは増刷ぞうさつ分ぶんの印税いんぜい収入しゅうにゅうを享受きょうじゅできません。ではゴーストライターの報酬ほうしゅうはというと、初版しょはん分ぶんのみの1割わりの印税いんぜい（＝販売はんばい価格かかくの10％）を、著者ちょしゃとゴーストライターで5：5、もしくは7：3で分わけ合あうイメージです。つまり通常つうじょう、著者ちょしゃの印税いんぜいは1割わりですが、ゴーストライターを利用りようした本ほんでは、著者ちょしゃの印税いんぜいは通常つうじょうより低ひくくなります。ただし、本ほんを出だせば必かならず売うれるような著者ちょしゃの場合ばあいには、1割わり、もしくはそれ以上いじょうの印税いんぜいが支払しはらわれます」

　こうした出版しゅっぱん業界ぎょうかいにおけるゴーストライターの利用りようであるが、法的ほうてきに問題もんだいはあるのだろうか。弁護士べんごし法人ほうじんアヴァンセリーガルグループのパートナー弁護士べんごし・山岸やまぎし純じゅん氏しは、次つぎのように解説かいせつする。