仕事しごとがデキない原因げんいんは「社内しゃない調整ちょうせい」の稚拙ちせつさ！社内しゃないや部下ぶかに言いってよいこと、ダメなこと

「Thinkstock」より

　マーケティングというと、企業きぎょうが消費しょうひ者しゃや顧客こきゃくに向むけて発信はっしんする広告こうこく宣伝せんでんや販売はんばい促進そくしんだと思おもう人ひとが多おおいと思おもう。一般いっぱん的てきに、社外しゃがいに向むけて発信はっしんするこうしたマーケティング活動かつどうでのコミュニケーションを「エクスターナル・マーケティング」と呼よぶ。一方いっぽうで、社内しゃないに向むけての働はたらきかけや伝達でんたつを「インターナル・マーケティング」という。

ビジネスパーソンに必要ひつような「インターナル・マーケティング」の考かんがえ方かた

　筆者ひっしゃは、外資がいし系けい消費しょうひ財ざいメーカーの日本にっぽん支社ししゃでマーケティングに出会であった。当時とうじの仕事しごとは営業えいぎょう企画きかく。1500人にんの営業えいぎょう担当たんとう者しゃに自社じしゃ製品せいひんのブランドプランを説明せつめいして、営業えいぎょう活動かつどうを円滑えんかつにするという職務しょくむだ。

　具体ぐたい的てきには、各かくブランドマネージャーが企画きかくしたマーケティング戦略せんりゃく企画きかくと施策しさくを営業えいぎょう担当たんとう者しゃたちに理解りかいしてもらい、同時どうじに販売はんばい接点せってんでの生いきた情報じょうほうをブランドマネージャーたちにフィードバックをする、というものだった。

　この頃ころからマーケティングにかかわり、25年ねんがたつ。常つねに感かんじていることは、企業きぎょうやビジネスパーソンによって、マーケティングそのものの捉とらえ方かたがばらばらだということだ。企業きぎょうや業界ぎょうかいによって、マーケティングの施策しさくは異ことなって当然とうぜんではある。企業きぎょうとその経営けいえい陣じんが、マーケティングをより深ふかく理解りかいして、重要じゅうようと認識にんしきしているほうが、働はたらいている社員しゃいんにとって仕事しごとにやりがいが出でる。ひいては、良よい結果けっかにつながることに間違まちがいない。

　そのために経営けいえい者しゃやリーダーは、社内しゃない全体ぜんたいにマーケティングの重要じゅうよう性せいを理解りかいさせることが大切たいせつである。

　会社かいしゃ員いん時代じだいの筆者ひっしゃのケースでいえば、自分じぶんが正ただしいと思おもうマーケティング戦略せんりゃくと企画きかくを実施じっしするには、まず上司じょうしの同意どうい、または上司じょうしへの説得せっとくが出発しゅっぱつ点てんになる。さらに広告こうこくや販促はんそくの予算よさんが必要ひつようになるため、財務ざいむ・経理けいり部ぶのマネージャーの理解りかいとその承認しょうにんが必要ひつようだった。同おなじように、ウェブ系けいのプロモーションならシステム部ぶの協力きょうりょくが必要ひつようだし、最前線さいぜんせんで戦たたかう営業えいぎょうの協力きょうりょくがなくては、モノが売うれるはずもない。

　こういった社内しゃないの関連かんれん部署ぶしょへのコミュニケーションを総そうじて、内部ないぶへの働はたらきかけ、という意味いみを込こめて、インターナル・マーケティングと呼よぶ。

　ここで気きをつけたいのが、重要じゅうようさを理解りかいしてもらう方法ほうほうである。

　そもそも、社内しゃないの人々ひとびとに対たいするマーケティングといっても、すぐにはイメージが湧わいてこない。教科書きょうかしょ通どおりに、4P（product／製品せいひん、price／価格かかく、place／立地りっち、promotion／広告こうこく宣伝せんでん）や3C（customer／顧客こきゃく、company／自社じしゃ、competitor／競合きょうごう）、セグメント（対象たいしょうとする消費しょうひ者しゃ集団しゅうだん）やポジショニング（自社じしゃの立場たちば）などをとうとうと語かたり始はじめれば、拒否きょひ反応はんのうが起おきることが目めに見みえている。

　マーケティングを学まなぼうという意識いしきが高たかい人ひとには効果こうか的てきかもしれないが、社内しゃないのファイナンス部ぶ担当たんとう者しゃや、上司じょうしや経営けいえい陣じん、「業績ぎょうせきアップは、売うってなんぼだ」と主張しゅちょうする営業えいぎょう部長ぶちょうたちにマーケティングの重要じゅうよう性せいを理解りかいしてもらうためには、専門せんもん用語ようごなどはかえって逆ぎゃく効果こうかだ。

　他た部署ぶしょの人ひとは、実際じっさいの担当たんとう職務しょくむにおける結果けっかの向上こうじょうを目指めざしているので、「この企画きかくを実施じっししたら、自社じしゃの売うり上あげと皆みなさんの仕事しごとはどうなるのか」という具体ぐたい例れいが必要ひつようなのだ。

新入しんにゅう社員しゃいん教育きょういくもインターナル・マーケティング

　他た部署ぶしょのみならず、新人しんじんへのインターナル・マーケティングも重要じゅうようだ。新人しんじんに対たいして、経営けいえい者しゃや上司じょうし、先輩せんぱいは何なにを言いうべきか、また何なにを言いってはいけないのだろうか。新しん年度ねんど開始かいしから間あいだもないこの時期じきに多おおく依頼いらいをいただくのが、「企業きぎょうの新入しんにゅう社員しゃいん研修けんしゅう」である。

　筆者ひっしゃはマナー講師こうしではないので、「マーケター、企画きかくマン」の視点してんで、企業きぎょうが行おこなうべき新人しんじん・新入しんにゅう社員しゃいん研修けんしゅうについてまとめてみると、昨今さっこんは「積極せっきょく的てき」な新人しんじんと「消極しょうきょく的てき」な新人しんじんに二に極きょく分化ぶんかしている。

　できる新入しんにゅう社員しゃいんは積極せっきょく的てきなタイプで、あいさつから話はなしの仕方しかた、言葉ことばの選えらび方かたといった社会しゃかい人じんとしての基礎きそを理解りかいした上うえで、積極せっきょく的てきに会話かいわができ、好奇心こうきしんも旺盛おうせいで新あたらしい発想はっそうもできる。

　一方いっぽうで、礼儀れいぎ正ただしく、きっちりとはしているものの、自分じぶんから進すすんで発言はつげんする姿勢しせいや、思おもい切きった行動こうどうがなかなか取とれない新人しんじんも多おおく見受みうけられる。

　経営けいえいコンサルティングの一環いっかんとして、新人しんじん研修けんしゅうも含ふくまれる場合ばあいも多おおいのだが、あらためて新人しんじん研修けんしゅうの目的もくてきを定義ていぎすると、自社じしゃの理念りねんを「体得たいとくし実践じっせんできる機会きかい」にすることである。

原点げんてんに返かえる

　オーストリア人じん経営けいえい学者がくしゃでマネジメントの発明はつめい者しゃであるピーター・ドラッカーが言いうとおり、あらゆる企業きぎょうの使命しめいは「顧客こきゃくの創造そうぞう」である。

　そこで新入しんにゅう社員しゃいんに、まず「どうやったらお客様きゃくさまに価値かちを提供ていきょうできるのか」を理解りかいさせることが重要じゅうようだ。

　対たい消費しょうひ者しゃ向むけの企業きぎょう、例たとえば飲食いんしょく店てんや物販ぶっぱんのショップ運営うんえいの企業きぎょうであれば、お客様きゃくさま目線めせんに立たった広告こうこくや販促はんそく物ぶつ、新しん商品しょうひんが企画きかく・開発かいはつできる視点してんを持もってもらえるように指導しどうし、リードしていく。

　居酒屋いざかやでのメニュー作成さくせいを例れいにとると、単たんに20品ひんを安やすい順じゅんやカテゴリー順じゅんに並ならべてしまうようでは完全かんぜんにNGである。自社じしゃのメニューを見みて、「お客様きゃくさまにイチオシのから揚あげを食たべてほしいので、写真しゃしんを載のせましょうよ」と言いえるようにしていくことが、売うり手て目線めせんからお客様きゃくさま目線めせんへの転換てんかんなのである。この視点してんが、販売はんばい力りょくや営業えいぎょう力りょくの向上こうじょうに直結ちょっけつすることは疑うたがいの余地よちもない。

　お客様きゃくさま目線めせんを実践じっせんする前ぜん段階だんかいとして、社内外しゃないがいでの挨拶あいさつやビジネス・マナー、最低限さいていげんの会話かいわができることは当あたり前まえなのである。業種ぎょうしゅによっては、社員しゃいん同士どうしでの会話かいわも敬語けいご・丁寧ていねい語ごを使つかうことで、お客様きゃくさまの前まえでなれなれしい言葉ことばが出でないようにしてもらうことも重要じゅうようである。名刺めいしの渡わたし方かたやお辞儀じぎの角度かくどは、あくまで手法しゅほうにすぎない。そもそも新人しんじんとして会社かいしゃ員いんとして何なにが重要じゅうようなのか、という基礎きその基礎きそを体得たいとくすることから始はじめるベきである。

組織そしきとしての新入しんにゅう社員しゃいん研修けんしゅう～経営けいえい者しゃや上司じょうしの立場たちばから

　新人しんじん研修けんしゅうを行おこなう側がわ（先輩せんぱい）の立場たちばにも、やってはいけないこと、言いってはいけないことがある。

　ひとつは、否定ひていから入はいらないようにすべきである。今いまの社会しゃかいに必要ひつようなことは「独自どくじの顧客こきゃく価値かち」なのだが、それはユニークな発想はっそうから始はじまる。まだ会社かいしゃの色いろに染そまっていない新人しんじんは、突飛とっぴだがユニークな発想はっそうを生うむ可能かのう性せいが高たかい。この芽めを摘つみ、いいアイディア出だしを阻害そがいするのは、「そんなことはうちの会社かいしゃでこれまでやったことがない」という固定こてい観念かんねんと、「うちの会社かいしゃはいままでXXで成功せいこうしてきたから、それはNG」といった過去かこの成功せいこう体験たいけんである。最初さいしょから「できる新人しんじんばかりではない」ということを理解りかいしたうえで新入しんにゅう社員しゃいんに接せっするべきだ。

　逆ぎゃくに経営けいえい者しゃ、上司じょうし、先輩せんぱいとして、伝つたえるべきこともある。それは、経営けいえい者しゃは徹底的てっていてきに自社じしゃの理念りねんを浸透しんとうさせることに終始しゅうしすることだ。しかし、この理念りねんというものは抽象ちゅうしょう的てきで覚おぼえにくく、体現たいげんしにくい。

　したがって、初期しょきの段階だんかいで研修けんしゅうの目的もくてきと成果せいかまでを明確めいかくにすることが重要じゅうようになる。そして新入しんにゅう社員しゃいんが研修けんしゅうで覚おぼえるべき部分ぶぶんを理解りかいできた段階だんかいで、実践じっせんの研修けんしゅうをマネージャーに任まかせるべきである

　その後ご、マネージャーは新人しんじん研修けんしゅうの目的もくてきと出だすべき成果せいかを把握はあくしたうえで、「3つ褒ほめて、1つアドバイス」という程度ていどのスタンスでよい。

　筆者ひっしゃの長年ながねんのマーケティング職しょくとしての経験けいけんからいうと、否定ひてい的てき、高こう圧あつ的てきな雰囲気ふんいきからは、いいアイディアは絶対ぜったいに生うまれない。厳きびしいコトをベースにしつつも、楽たのしさを中心ちゅうしんに置おくべきである。「自分じぶんは何なにのためにこの会社かいしゃにいて、この会議かいぎに出でているのか」という目的もくてき意識いしきと存在そんざい理由りゆうが理解りかいできる社員しゃいんは、社歴しゃれきにかかわらず、前向まえむき・建設けんせつ的てきなアイディアを出だして企画きかくを推進すいしんできるものだ。

　リーダーの仕事しごとは、

・肯定こうてい的てきな雰囲気ふんいきをつくること
・議論ぎろんが外はずれたら元もとに戻もどすこと
・成果せいかを達成たっせいすること

の3つである。

　管理かんり職しょくは、「ギリギリまで放任ほうにんしておくが、プロジェクトの節目ふしめで念ねん押おしをして、防ふせぎきれない失敗しっぱいをしないようにしておく」という姿勢しせいでいるべきである。
（文ぶん＝理央りお周しゅう／マーケティングアイズ代表だいひょう取締役とりしまりやく、売うれる仕組しくみ研究所けんきゅうじょ所長しょちょう）