2020年は新型コロナウイルス感染症によってさまざまな業界が打撃を受けているが、とりわけ外食業界は厳しい状況にある。吉野家、すき家、松屋の大手牛丼チェーン3社も例外ではない。
8月の既存店売上高は、前年同月と比較して吉野家は16.8%減、すき家は1.2%減、松屋は12.4%減と下がり幅に差があるとはいえ3社ともに減少。8月の客数も同じく、吉野家は19.8%減、すき家は4.4%減、松屋は17.0%減で前年同月から減少してしまっている。
一方で客単価はわずかに上昇しており、8月は前年同月比で吉野家は3.7%、すき家は3.3%、松屋は5.5%増加。いかにして各チェーンが減ってしまった客数を客単価で補い、売上高の回復につなげられるかが注目される。
今回はそんな牛丼業界のメニューを独自にリサーチし、「この秋、食べたい3大牛丼チェーンの商品6選」をピックアップした。
吉野家/月見牛とじ御膳/648円(税別)
秋は黄金に美しく輝く中秋の名月に見立て、玉子を使用した月見料理が登場するシーズン。吉野家でも、2019年にデビューした「月見牛とじ御膳」が肉がボリュームアップされて再登場している。
メインの牛とじは、甘辛な特製のすきやきたれでからめられた「牛丼」にも使われている牛肉が溶き玉子でとじられ、その上に青ネギがまぶされている。そこにご飯とみそ汁、お漬物、牛とじ用の生の玉子がついてくるため、食べ応えは抜群だ。
ふわふわな牛とじの食感や、濃厚な風味とご飯やみそ汁、お漬物との相性の良さが高く評価されているこの逸品。残念ながらテイクアウトで注文することができないのだが、どうしても持ち帰って食べたい場合は生の玉子がつかない「牛とじ御膳」を注文し、別途で玉子を用意して組み合わせて楽しんでほしい。
吉野家/ねぎだく牛丼(並盛)/454円(税別)
並盛の「牛丼」の4倍もの量の玉ねぎが味わえる「ねぎだく牛丼」は、今年5月の「吉野家・すき家・松屋の今春ベスト6!ねぎだく牛丼、ガリたま牛めし、チーズアイス」でも紹介したメニューだ。玉ねぎは春だけでなく秋にも収穫時期を迎える食べ物なので、この季節に今一度紹介させていただきたい。
最大の特徴は、やはり増量された玉ねぎにある。粗めのカットで、量の多さから別鉢になっている追加の玉ねぎは、見た目にもインパクトがあるだけでなく歯応えも十分で、食感が楽しい牛丼となっているのだ。
そのルーツは吉野家1号店の裏メニューにあるという、この「ねぎだく牛丼」。牛肉やご飯ともよくなじんで食が進むので、玉ねぎが好きな方だけでなく、一風変わった牛丼を味わいたい方にもおすすめのメニューといえるだろう。
すき家/オム牛丼(並盛)/520円(税込)
ほうれん草と、とろりと溶けるチーズを玉子で包んだオムレツが牛丼に乗せられている「オム牛丼」は、今年の8月5日に登場した新メニュー。洋風の味わいとなっており、すき家では初めて温かい玉子と牛丼を組み合わせた商品なのだという。
玉子のまろやかな甘さも評判となっているが、それと同じくらい話題になっているのがチーズの存在感。玉子とチーズは見た目からは区別できないほどに混ざり合っていて濃厚なおいしさを醸し出し、ほうれん草の苦みもアクセントとなっているため、文字通り一味違った牛丼が楽しめるのだ。
トッピングのケチャップはベースの牛丼とも食べ合わせがよく、洋風料理らしさをより後押ししてくれるため、“味変”として後入れするのもおすすめ。また、栄養バランスも意識されていて、不足しがちなビタミンAやカルシウムなどを摂取できるとのことなので、なかなか食事に気を遣えない多忙な方にとっては、よりうれしいメニューとなっている。
すき家/とろけるダブルショコラ/150円(税込)
次に紹介するのは、すき家のデザートメニューである「とろけるダブルショコラ」。牛丼チェーンでわざわざスイーツを購入するという方はそこまで多くないかもしれないが、こういうサブメニューに思わぬ逸品が存在することもあるのだ。
「とろけるダブルショコラ」のおいしさの秘密は、ムース仕立てのショコラとその下にあるショコラソースの上品な味わい。ショコラムースはくちどけがクセになるようなやわらかい食感で、ほろ苦く甘すぎない絶妙なテイストが特徴的。ショコラソースもまた、甘すぎないながらも濃厚さが感じられ、ショコラムースの風味に奥深さを生み出している。
甘味が強くなくボリュームも食後に食べる分にはちょうどいいので、まさに牛丼チェーンならではのスイーツとなっているのである。
松屋/豚キムチ丼(並盛)/650円(税込)
今年8月25日から登場した「豚キムチ丼」は、松屋の自社製キムチと豚肩ロース肉、ニンニクの芽を特製ダレで味つけした商品で、ガッツリとした食べ応えがあることから好評を博しているメニューである。
豚肉とニンニクの芽はガシガシとした噛み心地で、ボリュームもたっぷり。味つけがかなり濃いめかつ辛めとなっているので、ご飯とも好相性だ。また、生か半熟か選ぶことができるトッピングの玉子をからめることでまろやかさが加わるため、最初からのせるのではなく、ある程度食べ進めた後の“味変”に活用してもおいしいだろう。
ずっしりとした具材の量やキムチとタレの風味によってパワフルな丼料理となっているので、働き盛りのビジネスパーソンにこそ食べていただきたい。
松屋/海老のチリソース定食/730円(税込)
松屋の「海老のチリソース定食」は今年の8月に70店舗限定で試験的に販売されて反響を呼んだメニューで、9月22日から全国で発売を開始したという経緯を持つ。
豆板醬と生姜、ニンニクが効いている特製チリソースと海老、玉子がからめられ、ネギが添えられている海老チリは、一見するとシンプルな料理だ。だからこそ、ぷりぷりとした食感豊かな海老の風味と、辛すぎないながらもじわじわとした後味が感じられる甘辛いチリソースのおいしさが存分に堪能できる逸品になっている。
海老チリの濃いめの味つけはライスとの相性も抜群で、生野菜やみそ汁は辛さを中和させてくれるため、定食としての完成度も非常に高い。松屋のメニューの中ではやや高めの値段設定だが、実際に食べてみると、この価格に納得せざるを得ないクオリティとなっているので、ぜひ一度試してみてほしい。
今回紹介した6品はどれも工夫が凝らされた、品質とコストパフォーマンスに優れたメニューが揃っている。何を注文するか迷った際には、この記事を参考にしていただければ幸いである。
(文=「買うべき・買ってはいけない調査班」from A4studio)