「５か年ねん計画けいかく」で普通ふつうのOLが映画えいが初はつ主演しゅえん 女優じょゆう・詩し歩ふが語かたるインディーズ映画えいがの魅力みりょく

　超ちょうB級きゅうのホラー映画えいがだろうとなめて観みていたら、実じつは壮大そうだいなスケールのSF映画えいがでした！　エクストリーム配給はいきゅうの映画えいが『悪魔あくまがはらわたで いけにえで私わたし』は、観みる者ものの想像そうぞう力りょくをはるかに凌駕りょうがした怒涛どとうの展開てんかいが待まっている、まさにエクストリームな暴走ぼうそう活劇かつげきだ。

　名作めいさくホラー映画えいが『悪魔あくまのいけにえ』（74年ねん）や『死霊しりょうのはらわた』（81年ねん）などにオマージュを捧ささげ、『悪魔あくまの毒どく々モンスター』（84年ねん）で知しられるロイド・カウフマン監督かんとくが特別とくべつ出演しゅつえんしている。ホラー映画えいが好すきを魅了みりょうする本格ほんかく的てきなスプラッター描写びょうしゃに加くわえ、ラストシーンには驚愕きょうがくの結末けつまつが用意よういされている。

　エクストリームが配給はいきゅうした『Love Will Tear Us Apart』（23年ねん）に続つづく、宇賀うが那な健けん一いち監督かんとくの最新さいしんホラー映画えいがとなる本ほん作さく。主人公しゅじんこう・ハルカを演えんじた新進しんしん女優じょゆうの詩し歩ふに、三さん部ぶ構成こうせいとなった本ほん作さくのユニークな制作せいさく事情じじょうから、「５か年ねん計画けいかくでOLから女優じょゆうになった」という転職てんしょくエピソードまで語かたってもらった。

ー上映じょうえい時間じかんが60分ふんながら、三さん部ぶ構成こうせいとなっている本ほん作さくのぶっ飛とんだ展開てんかいには驚おどろきました。

とんでもない映画えいがになってますよね（笑）。もともとは『往訪おうほう』（21年ねん）という15分ぶんの短編たんぺん映画えいがだったんです。本ほん作さくの第だい1部ぶにあたるパートです。

宇賀うが那な監督かんとくや役者やくしゃ仲間なかまと食事しょくじをする機会きかいがあって、「自分じぶんたちが本当ほんとうに面白おもしろいと思おもう映画えいがを撮とりましょうよ」とみんなと盛もり上あがって私わたしからけしかけた企画きかくでした。宇賀うが那な監督かんとくのお話はなしではお母かあさまは大だいのホラー好すきのようで、幼稚園ようちえんのころからお母かあさまが借かりてきた『アンパンマン』と『悪魔あくまのいけにえ』のDVDを一緒いっしょに観みていたそうです。そんな宇賀うが那な監督かんとくにゴリゴリのホラー映画えいがを撮とって欲ほしいなと思おもったんです。

ー詩し歩あゆみさんが主演しゅえんした短編たんぺん映画えいが『往訪おうほう』（英えい題だい『Visitor』）は、海外かいがいの映画えいが祭さいで評判ひょうばんとなり、長編ちょうへん化かすることになったわけですね。

そうなんです。『往訪おうほう』はコロナ禍かの緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんの合間あいまに３日間にちかんで撮とった作品さくひんです。スプラッターシーンが多おおかったので、3日にちで撮とれるか心配しんぱいでしたが、奇跡きせき的てきに撮とり切きることができたんです。撮影さつえいの２か月げつ後ごにニューヨーク短編たんぺん映画えいが祭さいにノミネートされたのを皮切かわきりに、各国かっこくの映画えいが祭さいで上映じょうえいされることが次々つぎつぎと決きまっていきました。コロナ禍かだったのでリモート開催かいさいの映画えいが祭さいがほとんどでしたが、ネット上じょうにアップされた海外かいがいのレビューを読よむのがすごく楽たのしみでした。コロナ禍かで仕事しごとができない状況じょうきょうだった私わたしにとっての生いきる希望きぼうでした。

宇賀うが那な監督かんとくの作品さくひんに共通きょうつうするテーマは「愛あい」

ー怪あやしい家いえで謎なぞの封印ふういんを解といてしまい、ハルカたちの世界せかいに人間にんげんがデーモン化かしてしまう謎なぞのウイルスが広ひろまっていく。普通ふつうの女おんなの子こだったハルカはチェンソーを武器ぶきに、デーモン化かした人間にんげんたちと戦たたかうことに。

短編たんぺんでやり切きった感かんがあったので、宇賀うが那な監督かんとくはその後ごの展開てんかいをどうするか、物語ものがたりをどうひっくり返かえすのかで、ずいぶんと悩なやんだみたいです。宇賀うが那な監督かんとくらしい、ぶっ飛とんだストーリーになっていますが、映画えいがを観みているお客きゃくさんが共感きょうかんできるキャラクターが必要ひつようだなと思おもい、ハルカを演えんじるにあたっては、宇賀うが那な監督かんとくの独特どくとくな世界せかい観かんと観客かんきゃくとの間あいだがつながるよう、ひとつひとつの動作どうさや表情ひょうじょうに感情かんじょうを込こめるよう心掛こころがけましたね。でも、チェンソーを持もってからは吹ふっ切きって演えんじました。血ちのりを浴あびて、視界しかいが赤あかく染そまったこともあって、私わたし自身じしんもハイテンションになって演えんじました。血ちのりまみれになった上うえに、緑色みどりいろの気持きもち悪わるい液体えきたいも吐はきかけられ、ホラー映画えいが好すきには堪たまらない撮影さつえい現場げんばでした（笑）。

ー第だい２部ぶではチェンソーマンのごとき女おんな戦士せんしに変貌へんぼうするハルカですが、第だい3部ぶは意外いがいな展開てんかいです。ハルカはデーモン化か現象げんしょうを受うけ入いれ、デーモン化かした人ひとたちと共存きょうぞんする道みちを選えらぶ。ところが、異物いぶつを恐おそれる市民しみんが暴徒ぼうと化かし、ハルカたちに襲おそいかかる。永井豪ながいごうの名作めいさくコミック『デビルマン』やアーサー・C・クラークの世界せかいを思おもわせますし、コロナ禍かで問題もんだいになった「自粛じしゅく警察けいさつ」への皮肉ひにくにもなっています。

まったく思おもいがけない展開てんかいになっていきますよね。私わたしも第だい3部ぶのシナリオを渡わたされたときは、ワケがわからなかったんですが、なぜかラストシーンでは泣なけてきたんです。宇賀うが那な監督かんとくのこれまでの作品さくひんを私わたしも観みてきましたが、宇賀うが那な監督かんとくは不条理ふじょうりな世界せかいを描えがきながらも、最終さいしゅう的てきには「愛あい」がテーマになっているんです。短編たんぺん映画えいが『往訪おうほう』から始はじまった長編ちょうへん映画えいがですが、ラストシーンまで観みると、結局けっきょくは人類じんるいも地球ちきゅうにとっての往訪おうほう者しゃに過すぎないじゃないかと思おもえてくるんです。いろんなSF作品さくひんのオマージュにもなっていますし、オマージュ要素ようそがわからなくても充分じゅうぶんに楽たのしめると思おもいます。ジェットコースター感覚かんかくで楽たのしんでもらえるとうれしいです。音響おんきょうスーパーアドバイザーは『千せんと千尋ちひろの神隠かみがくし』（01年ねん）の大川おおかわ正義まさよしさん、効果こうかは『スター・ウォーズ 帝国ていこくの逆襲ぎゃくしゅう』（80年ねん）の小川おがわ高松たかまつさんと超ちょう一流いちりゅうスタッフが参加さんかしていて、音おと関係かんけいがハリウッド級きゅうなのもチェックポイントです。

「５か年ねん計画けいかく」の最終さいしゅう年ねんに出会であった待望たいぼうの企画きかく

ー詩し歩あゆみさんにとって、本ほん作さくは初はじめての主演しゅえん映画えいが。

とても光栄こうえいなことなのですが、私わたしには荷にが重おもいなと（笑）。主演しゅえんとなると、観客かんきゃく動員どういんとか気きになるじゃないですか。私わたし自身じしんは主演しゅえんよりも、主人公しゅじんこうを励はげましたり、物語ものがたりを支ささえるようなキャラクターのほうが合あっていると思おもっています。でも、今回こんかいは私わたしが主演しゅえんした短編たんぺん映画えいがから始はじまった企画きかくですし、シナリオを渡わたされたときには「この役やくを演えんじられるのは私わたししかいない」と思おもえました。トータルで１週間しゅうかんちょっとの撮影さつえいはハードでしたが、最後さいごまでやり切きれてよかった。米国べいこくオースティンのファンタスティック・フェスとイタリアのトリノ映画えいが祭さいには私わたしも参加さんかさせていただき、映画えいがを見み終おわったお客きゃくさんたちからデーモン語ごで話はなし掛かけられて楽たのしかったです。現地げんちの方かたたちと「ギャギャ？」「ギャギャギャ～」だけで会話かいわできちゃいました（笑）。

ー詩し歩あゆみさんは、宇賀うが那な監督かんとくとどのようにして出会であったんでしょうか？

大学だいがく卒業そつぎょう後ごはOLとして事務じむ仕事しごとをしていたんです。昔むかしから「女優じょゆうになりたい」という夢ゆめはあったんですが、どうすれば女優じょゆうになれるのか分わからずにズルズル過すごしていました。このままじゃダメだと思おもい、「映画えいが監督かんとくからダメ出しゅっしされれば、諦あきらめがつくかも」と思おもい、宇賀うが那な監督かんとくのワークショップを受講じゅこうしたんです。エチュードで役者やくしゃたちが即興そっきょう的てきに芝居しばいをつくっていくのも面白おもしろかったですし、役者やくしゃ経験けいけんのある宇賀うが那な監督かんとくの指導しどうも親切しんせつでした。今回こんかい、共演きょうえんした平井ひらい早紀さきさん、田中たなか爽一郎いちろうさんも同おなじワークショップの出身しゅっしんです。それで宇賀うが那な監督かんとくから「一緒いっしょに映画えいがをやろうよ」と声こえを掛かけられ、宇賀うが那な監督かんとくの『魔法まほう少年しょうねん★ワイルドバージン』（19年ねん）に出演しゅつえんしました。同どう時期じきにオーディションを受うけて、山戸やまと結ゆい希まれ監督かんとくらのオムニバス映画えいが『21世紀せいきの女おんなの子こ』（18年ねん）などにも出演しゅつえんするようになったんです。

ー勤つとめていた会社かいしゃは辞やめて、女優じょゆう業ぎょうに専念せんねんすることにしたんですね。

理解りかいのある職場しょくばで「やりたいことがあるので」と退職たいしょくを申もうし出でたところ、アルバイト契約けいやくで仕事しごとを続つづけることを勧すすめられました。ありがたかったです。でも、中途半端ちゅうとはんぱな立場たちばだと会社かいしゃの迷惑めいわくにもなるので、アルバイト契約けいやくは1年ねんほどで終おえました。女優じょゆうになるぞと決きめた際さいに「５か年ねん計画けいかく」を立たたんです。まず最初さいしょに「所属しょぞく事務所じむしょを決きめる」から始はじめ、5年ねん目めの最終さいしゅう目標もくひょうが「代表だいひょう作さくを残のこす」でした。その5年ねん目めの作品さくひんが『悪魔あくまがはらわたでー』なんです。女優じょゆうとしての代表だいひょう作さくをとは思おもっていましたが、まさか長編ちょうへん映画えいがに主演しゅえんするとは思おもってもいませんでした（笑）。

ーインディーズ映画えいがの面白おもしろさをどんなところに感かんじていますか？

インディーズ映画えいがは予算よさんが限かぎられていて、撮影さつえい現場げんばもハードですが、キャストとスタッフが一緒いっしょになって、創作そうさくしている感かんじがすごくするんです。キャストも手てが空あいているときは、スタッフの仕事しごとを手伝てつだいます。衣装いしょうが届とどかなかったり、小道具こどうぐがなかったりとトラブルはいろいろと起おきますが、そんな状況じょうきょうをどう乗のり切きるのかもインディーズ映画えいがの醍醐味だいごみですね（笑）。スタッフとキャストが懸命けんめいに撮とった映画えいがが、公開こうかいされずにお蔵ぞう入いりしてしまった悲かなしい体験たいけんもありました。今回こんかいは宇賀うが那な監督かんとくたちと撮とった作品さくひんが無事ぶじに公開こうかいされるので、サイコーの気分きぶんです。公開こうかい前まえには決起けっき会かいを開ひらいて、大おおいに盛もり上あがりたいと思おもいます（笑）。

取材しゅざい・文ぶん＝長野ながの辰次たつじ

映画えいが『悪魔あくまがはらわたで いけにえで私わたし』

監督かんとく・脚本きゃくほん／宇賀うが那な健一けんいち　

出演しゅつえん／詩し歩ふ、野村のむら啓介けいすけ、平井ひらい早紀さき、板橋いたばし春樹はるき、遠藤えんどう隆太りゅうた、三浦みうら健けん人じん、石原いしはら理衣りい、白土しらつちりょうすけ、荒あら岡おか龍りゅう星ほし、田中たなか爽一郎いちろう、松川まつかわ遙はるか菜さい、ロイド・カウフマン

配給はいきゅう／エクストリーム　R15＋　2月がつ21日にち（金かね）より池袋いけぶくろシネマ・ロサ、ヒューマントラストシネマ渋谷しぶや、シネマート新宿しんじゅくほか全国ぜんこくロードショー

(C)「悪魔あくまがはらわたでいけにえで私わたし」製作せいさく委員いいん会かい

https://harawata-ikenie.com

●詩し歩ふ（しほ）
1994年ねん5月がつ10日とおか 千葉ちば県けん出身しゅっしん。
主おもな出演しゅつえん作さくに、映画えいが『21世紀せいきの女おんなの子こ』（18年ねん）、『＃平成へいせい最後さいご映画えいが』(19年ねん)、『魔法まほう少年しょうねん★ワイルドバージン』（19年ねん）、『親密しんみつな他人たにん』（22年ねん）、『 沈黙ちんもくのパレード』(22年ねん)、『啄ついばむ嘴くちばし』(22年ねん)などがある。
『宇賀うが那な健けん一いち監督かんとくの『悪魔あくまがはらわたで いけにえで私わたし』で長編ちょうへん映画えいが初はつ主演しゅえんを果はたした。
公開こうかい待機たいき作さくに、映画えいが『みーんな、宇宙うちゅう人じん。』が控ひかえている。
趣味しゅみは日本酒にほんしゅ、特技とくぎはジャズダンス、エレクトーン、習字しゅうじ。