海藻かいそうを食たべると歯は周しゅう病びょうが改善かいぜんする？カルシウムの取とりすぎは動脈どうみゃく硬化こうかや腎臓じんぞう結石けっせきの恐おそれ

海藻かいそうは歯は周しゅう病びょう撃退げきたいに有効ゆうこうな成分せいぶんを含ふくむ（depositphotos.com）

　成人せいじんの8割わりがかかっているとされる「歯は周しゅう病びょう」。歯はを失うしなう原因げんいんになるのはもちろん、さまざまな病気びょうきを引ひき起おこす要因よういんにもなる。歯は周しゅう病菌びょうきんや菌きんのつくり出だす毒素どくそは、炎症えんしょうを起おこした歯はぐきの血管けっかんから入はいり込こんで全身ぜんしんに広ひろがり、体からだのあちこちで悪わるさを働はたらく。

　たとえば、歯は周しゅう病びょうで歯はぐきに炎症えんしょうがあると、そこで「TNF-αあるふぁ」という物質ぶっしつがつくられ、血液けつえき中ちゅうに増ふえる。この物質ぶっしつはインスリンの働はたらきを妨さまたげ、血糖けっとう値ちの調節ちょうせつ作用さようを悪わるくしてしまう。

　広島ひろしま県けん歯科しか医師いし会かいと広島大学ひろしまだいがくによる共同きょうどう研究けんきゅうでは、歯は周しゅう病びょうの治療ちりょうをすると「ヘモグロビンA1c」（血糖けっとう値ちコントロール状態じょうたいを示しめす値ね）が改善かいぜんすると報告ほうこくされている。

　日本にっぽん糖尿とうにょう病びょう学会がっかいも治療ちりょうガイドラインで「歯は周しゅう病びょうを治療ちりょうすれば2型がた糖尿とうにょう病びょうが改善かいぜんする可能かのう性せいがある」と言及げんきゅうしている。

　ほかにも、血管けっかん内ないに入はいり込こんだ歯は周しゅう病菌びょうきんの刺激しげきによって動脈どうみゃく硬化こうかが進展しんてんすることも明あきらかになってきた。重度じゅうどの歯は周しゅう病びょう患者かんじゃは脳のう梗塞こうそくや心筋梗塞しんきんこうそくを起おこすリスクが高たかまるという研究けんきゅう報告ほうこくもある。アルツハイマー型がた認知にんち症しょうと歯は周しゅう病びょうの関連かんれんも疑うたがわれている。

糖とう質しつとカルシウムの摂とりすぎで歯は周しゅう病びょうを悪化あっか

　そんな歯は周しゅう病びょうの改善かいぜんに役立やくだつと考かんがえられている食品しょくひんがある。それは「海藻かいそう」だ。歯は周しゅう病びょうと食生活しょくせいかつの関連かんれんに詳くわしく、『名医めいいは虫歯むしばを削けずらない――虫歯むしばも歯は周しゅう病びょうも「自然しぜん治癒ちゆ力りょく」で治なおす方法ほうほう』（竹たけ書房しょぼう）の著書ちょしょを持もつ小峰こみね歯科しか医院いいんの小峰こみね一雄かずお院長いんちょうは、その理由りゆうについて次つぎのように語かたる。

「日々ひびの食生活しょくせいかつが歯は周しゅう病びょうに及およぼす影響えいきょうは大おおきい。重要じゅうようなポイントは、糖とう質しつとカルシウムを摂とりすぎないこと。マグネシウムを積極せっきょく的てきに摂とること。マグネシウムの宝庫ほうこで、糖とうの吸収きゅうしゅうを妨さまたげる食物しょくもつ繊維せんいも多おおい海藻かいそうは、歯は周しゅう病びょう防止ぼうしに有用ゆうような食品しょくひん」

小峰こみね一雄かずお・著ちょ『名医めいいは虫歯むしばを削けずらない――虫歯むしばも歯は周しゅう病びょうも「自然しぜん治癒ちゆ力りょく」で治なおす方法ほうほう』（竹たけ書房しょぼう）

　糖とう質しつは口くちの中なかにいる細菌さいきんのエサになり、歯垢しこうの元もとになる。歯垢しこうを放置ほうちすると、唾液だえきに含ふくまれるカルシウムなどと結合けつごうし、石灰せっかい化かする。これが「歯石しせき」で、歯石しせきがついた歯はぐきの中なかは菌きんの温床おんしょうとなり、歯は周しゅう病びょうがさらに進行しんこうしていく。

　また、糖とう質しつを摂とりすぎると、余あまった糖とう質しつがレプチンというホルモンによって脂肪しぼう細胞さいぼうに蓄たくわえられる。この脂肪しぼう細胞さいぼうが巨大きょだい化かすると、そこから炎症えんしょうを起おこす物質ぶっしつ（サイトカイン）が分泌ぶんぴつされ、歯はぐきに炎症えんしょうを起おこす。

　一方いっぽう、カルシウムは、一般いっぱんに歯はに必要ひつような栄養素えいようそとされているが、摂とりすぎはかえってよくないという。小峰こみね院長いんちょうは特とくに、カルシウムとマグネシウムの摂取せっしゅバランスが重要じゅうようと説とく。

「マグネシウムは、歯は周しゅう病びょうを引ひき起おこすカルシウムの循環じゅんかん不良ふりょうを改善かいぜんする役割やくわりがある。日本にっぽんではカルシウム摂取せっしゅばかりが強調きょうちょうされるが、海外かいがいでは30歳さい以降いこうはマグネシウムの摂取せっしゅが推奨すいしょうされている」（小峰こみね院長いんちょう）

カルシウムが溶とけ出だして歯はがグラグラに

　カルシウムを摂取せっしゅすると、大だい部分ぶぶんが骨ほねや歯はに貯蔵ちょぞうされ、残のこりの一部いちぶがカルシウムイオンとして細胞さいぼう内ないにたまる。細胞さいぼう内ないのカルシウムイオンはポンプの力ちからで血液けつえき中ちゅうに押おし出だされ、体内たいないをめぐって心臓しんぞうや脳のうで重要じゅうような働はたらきをするが、加か齢よわいとともにポンプ機能きのうが低下ていかするのが問題もんだいだ。

　細胞さいぼう内ないにどんどんカルシウムがたまるのに排出はいしゅつされにくくなり、血ち中ちゅうカルシウムが不足ふそくする事態じたいになる。すると、それを補おぎなうために骨ほねからカルシウムが溶とけ出だす。歯槽しそう骨こつやあごの骨ほねからはまっさきにカルシウムが溶とけ出だし、歯はがグラグラになる。

　また、細胞さいぼうにカルシウムがたまりすぎると、今度こんどは細胞さいぼう内ないの濃度のうどのバランスをとるため、細胞さいぼうは水分すいぶんを取とり込こんで膨ふくれ上あがり、最後さいごにパチンと弾ひけてしまう。このとき、壊こわれた細胞さいぼうから出でたカルシウムは動脈どうみゃく硬化こうかや腎臓じんぞう結石けっせきなどの害がいを引ひき起おこす。

　これを是正ぜせいしてくれるのがマグネシウムで、たまったカルシウムを細胞さいぼうの外そとへ押おし出だし、体内たいないに巡めぐらせ、血ち中ちゅうのカルシウム濃度のうど低下ていかを解消かいしょうしてくれる働はたらきがある。

「海藻かいそうは腎じん機能きのう障害しょうがいや甲状腺こうじょうせん障害しょうがいがない場合ばあいは、たくさん食たべても問題もんだいない。歯は周しゅう病びょうの改善かいぜんのために、ぜひ積極せっきょく的てきに食生活しょくせいかつに取とり入いれてほしい」（小峰こみね院長いんちょう）

歯垢しこうの形成けいせいを防ふせぐ成分せいぶんを持もつ海藻かいそうもある

　また、海藻かいそうからは、虫歯むしばや歯は周しゅう病びょうの原因げんいんとなる歯垢しこう（バイオフィルム）をできにくくする成分せいぶんが発見はっけんされている。

　岡山大学おかやまだいがくの研究けんきゅうグループは、海松みる（ミル）から発見はっけんされた「ミルレクチン」が糖とう鎖くさりと特異とくい的てきに結合けつごうして、細菌さいきんがバイオフィルムを形成けいせいするのを阻害そがいすることを報告ほうこくしている。現在げんざいではミルレクチンを配合はいごうした口腔こうくうケア製品せいひんも市販しはんされている。

　ちなみに海松みるは現在げんざい、日本にっぽんではあまり食たべる習慣しゅうかんはなくなったが、飛鳥あすか・奈良なら時代じだいには一般いっぱん的てきに食たべられていたという。

　日本にっぽんでは古来こらい、海藻かいそうを常食じょうしょくしてきたが、海外かいがいでは海藻かいそうを食たべる国くには少すくない。日本人にっぽんじんは海藻かいそうの栄養えいようを吸収きゅうしゅうできるが、実じつは、海藻かいそうを食たべる習慣しゅうかんのない国くにの人ひとは、食たべてもほとんど吸収きゅうしゅうできないと考かんがえられている。

　これは、海藻かいそうの細胞さいぼう壁かべを分解ぶんかいできる酵素こうそを持もつ腸ちょう内ない細菌さいきんが日本人にっぽんじんに特有とくゆうだからという。日本人にっぽんじんだからこそ享受きょうじゅできる「海うみの恵めぐみ」を有効ゆうこう活用かつようしたいものだ。
（文ぶん＝ヘルスプレス編集へんしゅう部ぶ）

小峰こみね一雄かずお（こみね・かずお）
小峰こみね歯科しか医院いいん理事りじ長ちょう。1952年ねん生うまれ。歯学しがく博士はかせ。城西じょうさい歯科しか大学だいがく卒そつ。37年ねん前まえに開業かいぎょうして数すう年ねん後ご、歯はを削けずるとかえって歯はがダメになる事実じじつに直面ちょくめんし、以来いらい「歯はを削けずらない、抜髄しない」歯科しか医師いしに転向てんこう。独自どくじの予防よぼう歯科しかプログラムを考案こうあんするとともに、食事しょくじ療法りょうほう、最先端さいせんたん医療いりょうを取とり入いれた治療ちりょうを実践じっせんしている。歯はを削けずらずに虫歯むしばを治療ちりょうする「ドックベストセメント療法りょうほう」の日本にっぽんにおける第一人者だいいちにんしゃとして、2011年ねんにTBS「世界せかいのスーパードクター」をはじめ、メディアでの紹介しょうかいも多数たすう。現在げんざいは、ドックベストセメント療法りょうほうを広ひろめるセミナーを各地かくちで開催かいさいするほか、東南とうなんアジアにてボランティア活動かつどうを展開てんかい。2015年ねん、ラオス・ヘルスサイエンス大学だいがく客員きゃくいん教授きょうじゅに就任しゅうにん。日本にっぽん臨床りんしょうアンチエイジング研究けんきゅう会かい会長かいちょう、Kデンチャー研究けんきゅう会かい主宰しゅさい。著書ちょしょに『名医めいいは虫歯むしばを削けずらない――虫歯むしばも歯は周しゅう病びょうも「自然しぜん治癒ちゆ力りょく」で治なおす方法ほうほう』（竹たけ書房しょぼう）、取材しゅざい協力きょうりょくに『安心あんしん』編集へんしゅう部ぶ・編へん 『歯は周しゅう病びょうを自分じぶんで治なおす最強さいきょう療法りょうほう』（マキノ出版まきのしゅっぱん）など。

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