高齢こうれい者しゃ世帯せたいの5割わりが年金ねんきん収入しゅうにゅう2百ひゃく万まん以下いか！　現在げんざい40代だい以下いかの人々ひとびとは「死しぬまで貧困ひんこん世代せだい」

「Thinkstock」より

日本にっぽんの出生しゅっしょう率りつ低下ていかは1920年代ねんだいから始はじまっていた

　少子しょうし高齢こうれい化かの問題もんだいがマスコミで顕著けんちょに取とり上あげられるようになったのは、今いまから20年ねん以上いじょう前まえ、バブルが崩壊ほうかいした1990年代ねんだいに入はいってからです。しかし、日本にっぽんの出生しゅっしょう率りつが減少げんしょう傾向けいこうを帯おび始はじめたのは、実じつは戦前せんぜんの20年代ねんだいからという長期ちょうき的てきデータもあります。明治維新めいじいしん以降いこうの工業こうぎょう化かの過程かていで、日本にっぽんでは人口じんこうが急速きゅうそくに増ふえる「人口じんこう爆発ばくはつ」を経験けいけんし、政府せいふも対外たいがい拡張かくちょう政策せいさくで多産たさん化かを奨励しょうれいしてきましたが、やがて26年ねんにはじめて合計ごうけい特殊とくしゅ出生しゅっしょう率りつが5を割わり込こみ、49年ねんに4を、52年ねんに3を、74年ねんに人口じんこう置換ちかん水準すいじゅん（その時点じてんの人口じんこうを維持いじするために必要ひつようとされる合計ごうけい特殊とくしゅ出生しゅっしょう率りつ）である2.07を割わり込こみ2.05となり、以降いこうはずっと2を割わり込こんだまま、05年ねんに過去かこ最低さいていの1.26を記録きろくしたのち、2014年ねんの1.42まで推移すいいしています。

　昔むかしの考かんがえ方かたでは、親おやが働はたらけなくなった老後ろうごに助たすけてもらうべく子供こどもを産うむというより、農業のうぎょうに従事じゅうじする家庭かていが多おおかったため労働ろうどう力りょく確保かくほの意味合いみあいが強つよく、乳幼児にゅうようじの死亡しぼう率りつが高たかかったためともいわれています。なにしろ、50年ねんの平均へいきん寿命じゅみょうは女性じょせいが61.5歳さい、男性だんせいが58.0歳さいなので、働はたらけなくなる「老後ろうご」という期間きかんも短みじかかく、そもそも老後ろうごの心配しんぱいをする必要ひつようがなかった時代じだいともいえます。

「長生ながいき」が「貧困ひんこん老後ろうご地獄じごく」に直結ちょっけつする時代じだい

　ところが、14年ねんの平均へいきん寿命じゅみょうは女性じょせい86.83歳さい、男性だんせい80.5歳さいと大幅おおはばに伸のびています。うち、元気げんきでいられる健康けんこう寿命じゅみょうも女性じょせいは約やく74歳さい、男性だんせいは約やく71歳さいです。病気びょうきになってからの平均へいきん年数ねんすうも長ながく、女性じょせいが約やく12年ねん、男性だんせいが約やく9年ねんとなっているのです。

　また、この平均へいきん寿命じゅみょうはあくまで平均へいきん値ちであり、90歳さい時点じてんでも女性じょせいの48.3％、男性だんせいの24.2％は生いきており、95歳さい時点じてんでも女性じょせいの24.4％、男性だんせいの8.7％は生いきています（14年ねん簡易かんい生命せいめい表ひょうによる生存せいぞん率りつ）。40兆ちょう円えんの医療いりょう費ひのうち65歳さい以上いじょうが半分はんぶん以上いじょうを占しめる現状げんじょうもうなずけるでしょう。このまま少子しょうし高齢こうれい化かが進行しんこうすると、65歳さい以上いじょう高齢こうれい者しゃの医療いりょう費ひはさらに拡大かくだいし、25年ねんには約やく50兆ちょう円えんに達たっすると見込みこまれています。

　日本にっぽんは13年ねん、総そう人口じんこうに占しめる65歳さい以上いじょう高齢こうれい者しゃ数すうが25％を突破とっぱし、国民こくみんの4人にんに1人ひとりが高齢こうれい者しゃという超ちょう高齢こうれい化か社会しゃかいになり、現役げんえき時代じだいのようには働はたらけない老後ろうご期間きかんが異常いじょうに長ながくなったため、今日きょうさまざまな不都合ふつごうな課題かだいが突つきつけられるようになってきています。

社会しゃかい保障ほしょうのすべてがパンク

　先進せんしん国こくの中なかには人口じんこう置換ちかん水準すいじゅんを割わり込こむ国くにが増ふえていますが、なぜ少子化しょうしかになったのかという原因げんいんについては明確めいかくにされていません。さまざまな原因げんいん説せつがありますが、日本にっぽんでは子供こどもを産うんでも保育園ほいくえんに預あづけられない、女性じょせいの職業しょくぎょうキャリアが断絶だんぜつされる、グローバル化かによる貧困ひんこん化かで経済けいざい的てきゆとりがないなど、経済けいざい的てきな影響えいきょうが大おおきいという指摘してきがなされています。

　そして少子しょうし高齢こうれい化かは、将来しょうらいの日本にっぽんに重大じゅうだいな危機ききをもたらします。年金ねんきん・医療いりょう・福祉ふくしといった社会しゃかい保障ほしょう費ひ増大ぞうだいの問題もんだいです。

　たとえば、おなじみの年金ねんきん問題もんだいでは、2000年ねんに現役げんえき世代せだい3.6人にんで1人ひとりの高齢こうれい者しゃを支ささえるかたちだった賦課ふか方式ほうしき（現役げんえき世代せだいの年金ねんきん保険ほけん料りょうを高齢こうれい者しゃ世代せだいへ仕送しおくりする形式けいしき）における年金ねんきん負担ふたん比率ひりつが、25年ねんには現役げんえき世代せだい1.8人にんで1人ひとりの高齢こうれい者しゃを支ささえるかたちとなり、50年ねんには現役げんえき世代せだい1.2人ふたりで1人ひとりの高齢こうれい者しゃを支ささえるかたちになると推計すいけいされています。これでは支ささえられないでしょう。

　年金ねんきん積立つみたて金きん（過去かこの年金ねんきん財政ざいせいの余剰よじょう分ぶん）は、15年ねん半なかばに135兆ちょう円えんありますが、今後こんご毎年まいとし10兆ちょう円えん近ちかい取とり崩くずしを続つづけると、28年ねん頃ごろには枯渇こかつが予想よそうされます。保険ほけん料りょうの不足ふそく分ぶんを税金ぜいきん投入とうにゅうするといっても、予算よさんの捻出ねんしゅつは困難こんなんを極きわめます。今後こんご、マクロスライド方式ほうしきで年金ねんきん受給じゅきゅう額がくは徐々じょじょに減へらされていく予定よていですが、現行げんこうで65歳さいからという受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれいは、70歳さいくらいに後うしろ倒だおしされるどころか、受給じゅきゅうできなくなる懸念けねんすらあります。

　預金よきんや持もち家いえ（現在げんざい、高齢こうれい者しゃの持もち家いえ率りつは6割わり）があると、それを費消ひしょうしてからでないと生活せいかつ保護ほごの受給じゅきゅう対象たいしょうにもなりません。生活せいかつ保護ほご支給しきゅう総額そうがくも国家こっか予算よさんの約やく3％（14年度ねんどは過去かこ最高さいこうの2.8兆ちょう円えん、162万まん世帯せたい217万まん人にん）にまで及およんだために、すでに減額げんがく措置そちが講こうじられています。そのうえ、日本にっぽんの財政ざいせいは1000兆ちょう円えんを超こえる借金しゃっきんを抱かかえています。

　現役げんえき世代せだいの医療いりょう費ひ自己じこ負担ふたん額がくも現行げんこうの3割わり負担ふたんから4割わり、5割わり負担ふたんへ引ひき上あげられることも必至ひっしでしょう。このままでは、年金ねんきんも医療いりょうも福祉ふくしもすべてがパンクするのは明白めいはくなのです。実際じっさいに14年ねん時点じてんで65歳さい以上いじょうの高齢こうれい者しゃ世帯せたい1221万まん世帯せたいのうち、全体ぜんたいの約やく40％が100万まん円えん以上いじょう・200万まん円えん未満みまん、約やく13％が100万まん円えん未満みまんの年金ねんきん収入しゅうにゅうしかなく、半分はんぶんの600万まん世帯せたいが、生活せいかつ保護ほご水準すいじゅん以下いかの暮くらしを強しいられているのです。

第だい2子し出生しゅっしょう世帯せたいに1000万まん円えん支給しきゅう

　抜本ばっぽん的てきな少子化しょうしか対策たいさくを緊急きんきゅうに行おこなわなければ、現在げんざい20～40代だいの現役げんえき世代せだいは十分じゅうぶんな社会しゃかい保障ほしょうも受うけられず、現役げんえき時代じだいから老後ろうごを通つうじて死しぬまで貧困ひんこんを強しいられることになります。現在げんざい、年間ねんかん出生しゅっしょう数すうは100万まん人にん程度ていどにまで落おち込こんでいます。昨年さくねんの死亡しぼう者しゃ数すうは130万まん人にんでマイナス30万まん人にんの人口じんこう減げんでしたが、やがてこれが毎年まいとし40～60万まん人にんの急激きゅうげきな人口じんこう減少げんしょう期きに突入とつにゅうしてしまうのです。地価ちかが下さがり、社会しゃかい的てきインフラの維持いじができなくなります。

　すでに提唱ていしょうされているように、第だい2子し以降いこうの出生しゅっしょうに対たいして一いち世帯せたい当あたり1000万まん円えんを配くばるぐらいの大胆だいたんな政策せいさくを講こうじなければ、出生しゅっしょう率りつの増加ぞうかは見込みこめないでしょう。仮かりに第だい2子しが生うまれた家庭かてい100万まん世帯せたいに配くばれば10兆ちょう円えんで、消費しょうひ税ぜい額がく相当そうとうなら約やく5％分ぶんです。ロクに税金ぜいきんを払はらってもいない輸出ゆしゅつ大だい企業きぎょうなどへの法人ほうじん税ぜい減税げんぜいなどやめれば約やく2兆ちょう3000憶円を確保かくほでき、それ以外いがいでも以下いかのような施策しさくによりざっと8～9兆ちょう円えんの原資げんしも生うまれます。

・所得しょとく税ぜい増税ぞうぜい（約やく2兆ちょう円えん確保かくほ）
・公務員こうむいん給与きゅうよカット（国くにと地方ちほう10％カットで約やく2兆ちょう5000億おく円えん確保かくほ）
・国会こっかい議員ぎいんの数かずを半分はんぶんに削減さくげん（約やく180億おく円えん確保かくほ）
・3.5万まん人にんもいる無駄むだな地方ちほう議員ぎいんをすべて年間ねんかん50万まん円えん以下いかのボランティアに置おき替かえ（約やく3200億おく円えん確保かくほ）
・宗教しゅうきょう法人ほうじんに課税かぜい（約やく1兆ちょう円えん確保かくほ）
・放送ほうそう局きょくが国くにに支払しはらう激げき安やすな電波でんぱ使用しよう料りょうへのオークション制せい導入どうにゅう（約やく3000億おく円えん確保かくほ）

　仮かりに少子化しょうしかを止とめる大胆だいたんな抜本ばっぽん対策たいさくを講こうじても、生うまれた子供こどもが成人せいじんして税金ぜいきんや社会しゃかい保険ほけん料りょうを納おさめられるようになるまでは最低さいてい20年ねんはかかります。しかし、人口じんこうが少すくなくとも今いまと同どう水準すいじゅんに維持いじされることが日本にっぽん社会しゃかい全体ぜんたいの合意ごうい事項じこうとなれば、それが何なによりの経済けいざい対策たいさくといえるのです。
（文ぶん＝神かみ樹いつき兵輔ひょうすけ／マネーコンサルタント）