ビール1缶かんの税額ぜいがく77円えんは「時代じだいに逆行ぎゃっこう」の高こう止とまりだった…発泡はっぽう酒しゅと第だい3のビールは大幅おおはば増税ぞうぜいへ

コンビニエンスストアのお酒さけコーナー

　2017年度ねんどの税制ぜいせい改正かいせい大綱たいこうで、個人こじん的てきにもっとも気きになっていた項目こうもくがある。配偶はいぐう者しゃ控除こうじょ枠わくの見直みなおしでも、タワーマンション節税せつぜい対策たいさくの固定こてい資産しさん税ぜい引ひき上あげでもない。ビール系けい飲料いんりょうの税額ぜいがくを統一とういつするというものだ。これは、庶民しょみんにとっては悲報ひほうというほかない。何なにがそんなに悲かなしいかといえば、毎日まいにちの晩酌ばんしゃく代だいを節約せつやくするために選えらんでいた発泡はっぽう酒しゅや第だい3のビールが値上ねあがりするかもしれないからだ。

　これまで、ビール系けい飲料いんりょうの税額ぜいがくは3つに分わかれていた。350ml当あたりの税額ぜいがくはビールが77円えん、発泡はっぽう酒しゅ（麦芽ばくが比率ひりつ25％未満みまん）が47円えん、第だい3のビールが28円えんだ。その税額ぜいがくの差さが価格かかくに反映はんえいされ、もっとも安やすい第だい3のビールに手てが伸のびるという光景こうけいが見みられたわけだ。

　そもそも、ビール自体じたいの税額ぜいがくが高たかいことが問題もんだいであり、各かくビールメーカーも税率ぜいりつ引ひき下さげを求もとめてきた。大手おおて5社しゃが参加さんかするビール酒造しゅぞう組合くみあいらがまとめた「日本にっぽんのビール・発泡はっぽう酒しゅ・新しんジャンルと税ぜい」（2016年ねん）には、以下いかのような記述きじゅつがある。

「香水こうすいには、かつて『物品ぶっぴん税ぜい』が課かせられていました。いわゆる、『嗜好しこう品ひん』『贅沢ぜいたく品ひん』として認識にんしきされるようなものに、税金ぜいきんが課かせられていたことになります。香水こうすいの物品ぶっぴん税率ぜいりつは10％前後ぜんこうの水準すいじゅんで保たもたれていました。香水こうすいを10本ほん購入こうにゅうすると、うち1本ほんが税金ぜいきんである割合わりあいになります。ビール酒しゅ税率ぜいりつと比較ひかくした場合ばあい、ビール大おおビンの酒税しゅぜい率りつは50％弱じゃくであり、ビール大おおビンを購入こうにゅうする場合ばあいには、およそ2本ほんに1本ほんは税金ぜいきんである割合わりあいになります。ビールと同おなじように身近みぢかな存在そんざいである香水こうすいが『贅沢ぜいたく品ひん』から外はずされる一方いっぽう、ビールはいまだ『贅沢ぜいたく品ひん』に留とめ置おかれてしまっています」（一部いちぶ省略しょうりゃく）

　さらに、別べつのページでもこうした指摘してきがある。

「酒さけの税ぜい負担ふたんも、かなり低減ていげんされてきました。しかし、ビールと発泡はっぽう酒しゅは、消費しょうひ量りょうが多おおく、徴収ちょうしゅう額がくが多おおいこともあり、他たの酒類しゅるいに比くらべて、高たかい税率ぜいりつのまま据すえ置おかれています。発泡はっぽう酒しゅに至いたっては、これまでに平成へいせい8年ねん（1996年ねん）と、同どう15年ねん（2003年ねん）の2回かい、増税ぞうぜいされています。つまり、ビールと発泡はっぽう酒しゅの酒税しゅぜいだけが、時代じだいの流ながれに逆行ぎゃっこうしているのです」

　こんな具合ぐあいにメーカーも怒おこっていた。つまり、ビールの減税げんぜいはメーカーサイドにとっても悲願ひがんだったが、その願ねがいは「ビールの税率ぜいりつは下さがるが、発泡はっぽう酒しゅおよび第だい3のビールが増税ぞうぜいになる」というかたちで実現じつげんされることになる。

　政府せいふは10年ねんかけて、26年ねんに350ml当あたりの税額ぜいがくを54.25円えんに揃そろえる方針ほうしんだ。同時どうじに、第だい3のビールというカテゴリーは消滅しょうめつし、ビールと発泡はっぽう酒しゅの2種類しゅるいになりそうである。350ml缶かんなら100円えん程度ていどで買かえた家計かけいの救世主きゅうせいしゅが消きえてしまうのかと思おもうと、なんとももの悲がなしい。もし、これで業界ぎょうかい全体ぜんたいが冷ひえ込こむとすれば、ビールメーカーにとっては痛いたしかゆしだろう。

クーポンでは迷まよわずビールを選えらぶべき理由りゆう

　ここからが本題ほんだいだ。そもそもビールの税額ぜいがくが高たかいということは、それは売価ばいかに跳はね返かえっている。年末年始ねんまつねんしの宴会えんかいシーズンでアルコールを飲のむ機会きかいも多おおくなるが、中なかでもビールは欠かかせない。飲食いんしょく店てんにとっては、原価げんかが高たかく儲もうけが少すくないビールよりは、ワイン、チューハイ、ウィスキーの水割みずわりなどを頼たのんでほしいところだろう。

　前述ぜんじゅつの「日本にっぽんのビール・発泡はっぽう酒しゅ・新しんジャンルと税ぜい」によれば、コップ1杯はい（180ml）当あたりの税額ぜいがくはビールが40円えん、ワインが14円えん、水割みずわりが16円えん、缶かんチューハイが14円えん。お客きゃくさんにチューハイや水割みずわりを飲のんでもらえばもらうほど、店みせが儲もうかることになる。

　そこで、1ドリンク付つきクーポン券けんを使つかえる場合ばあいは、迷まよわずビールを頼たのもう。宴会えんかいの乾杯かんぱいで「飲のめないからソフトドリンクがいい」とのたまう方ほうがいても、とにかく人数にんずう分ぶんはクーポンを使つかってビールを頼たのみ、そのあと個別こべつにソフトドリンクをオーダーしてもらうといい。宴会えんかいが始はじまれば、そのビールは誰だれかが飲のむだろう。店みせを儲もうけさせないためではなく、単純たんじゅんに一番いちばん高たかいものを選えらぶというのが経済けいざい的てき合理ごうり性せいにかなっているからだ。

　また、宴会えんかいを飲のみ放題ほうだい付つきコースにするかどうかも一考いっこうが必要ひつようだ。飲のみ放題ほうだいにビールが含ふくまれているのであればお得とく感かんがあるが、別べつなら個々ここに頼たのんだほうがいい場合ばあいもある。そのため、コースは参加さんか者しゃの顔かおぶれを見みてフレキシブルに決きめよう。

　ビール好すきが集あつまるのであればビール入いりの飲のみ放題ほうだいを選えらんだほうがコスパがいいが、女性じょせいメインなら得策とくさくではない。筆者ひっしゃも、女性じょせいばかりの宴会えんかいで飲のみ放題ほうだい用ようの青あおりんごサワーがピッチャーでなみなみとやってきたときには仰天ぎょうてんした。あれは、女性じょせいは全部ぜんぶ飲のめないと思おもう。

幹事かんじを任まかされたらイタリアンが狙ねらい目め？

　宴会えんかいの幹事かんじとしては「値段ねだんの割わりにはしょぼかった」と言いわれるのが一番いちばんしんどい。その場合ばあい、気きをつけたいのは炭水化物たんすいかぶつメニューだと筆者ひっしゃは考かんがえる。腹はらもちがいい炭水化物たんすいかぶつのメニューが宴会えんかいコースに複数ふくすう含ふくまれる店みせは、そこを計算けいさんしているに違ちがいない。

　たとえば、フライドポテト、ピザ、パスタ、グラタン、ドリア、焼やきそば、チャーハンなどがそれにあたる。このうち3つが含ふくまれていれば、満腹まんぷく度どは高たかいだろう。逆ぎゃくに、女性じょせいが多おおい宴会えんかいの場合ばあいは満腹まんぷく度どよりもデザートが充実じゅうじつしているほうが喜よろこばれる。安やすく、しかも満足まんぞく度どが高たかい宴会えんかいを目指めざすなら、炭水化物たんすいかぶつメニューが入はいりやすい洋食ようしょくやイタリアンの店みせが狙ねらい目めだ。ポテトとピザとパスタの炭水化物たんすいかぶつ重かさねワザで、「物足ものたりない」という声こえを封印ふういんできるはずだ。

　筆者ひっしゃも愛用あいようしている価格かかくコンシャスなファミリーレストランチェーン・サイゼリヤのメニューを見みると、ドリア、ピザ、パスタとコスパがよさそうなメイン料理りょうりが並ならんでいるではないか。サイゼリヤ会長かいちょうの正せい垣かき泰彦やすひこ氏しの著書ちょしょによると、食材しょくざいの原価げんか率りつは34.2％だという（08年ねん9月がつの数字すうじ）。正せい垣かき氏しは、「飲食いんしょく店てんは食材しょくざいの品質ひんしつが第だい一いちで、原価げんか率りつを下さげるべきではない」と書かいているが、サイゼリヤの値ね付づけはイタリアンを低てい価格かかくで実現じつげんできるという証明しょうめいでもある。

　宴会えんかいの幹事かんじを任まかされたら、コースの料金りょうきんだけでなく、飲のみ放題ほうだいに含ふくまれるアルコールの種類しゅるいや料理りょうりの炭水化物たんすいかぶつ割合わりあいをぜひチェックしてほしい。
（文ぶん＝松崎まつざきのり子こ／消費しょうひ経済けいざいジャーナリスト）