熟年じゅくねん離婚りこん、過酷かこくな現実げんじつ…年金ねんきん半額はんがくで月つき5万まんの例れいも、高齢こうれい期きに孤独こどくな生活せいかつ

「Gettyimages」より

　一時期いちじき減少げんしょうに転てんじていた離婚りこん件数けんすうは、直近ちょっきんでは再ふたたび少すこしずつ増ふえる傾向けいこうにあるようです。長年ながねん連つれ添そった夫婦ふうふが離婚りこんをするというのは、普通ふつうに考かんがえるとあまり幸しあわせなこととは言いえないでしょうが、それでも互たがいのこれからの人生じんせいにとってプラスになるのであれば、そういう選択せんたくをすることがあっても良よいだろうと思おもいます。それに夫婦ふうふのことは他人たにんにはうかがい知しれない面めんがありますので、良よし悪あしを他人たにんが簡単かんたんに言いえるものではないことは確たしかです。

　ただ、あくまでも一般いっぱん論ろんとして考かんがえた場合ばあい、少すくなくとも老後ろうごの生活せいかつということで見みれば、熟年じゅくねん離婚りこんには2つの大おおきな問題もんだいがあると思おもいます。ひとつはお金かねの問題もんだい、そしてもうひとつは生活せいかつの問題もんだいです。

熟年じゅくねん離婚りこんで老後ろうごビンボーに

『お金かねの常識じょうしきを知しらないまま社会しゃかい人じんになってしまった人ひとへ』（大江おおえ英樹ひでき／PHP研究所けんきゅうじょ）

　まずはお金かねの問題もんだいですが、結論けつろんから言いってしまうと熟年じゅくねんでの離婚りこんというのは経済けいざい的てきには決けっしてプラスにはなりません。むしろマイナスのケースのほうが多おおいと思おもいます。離婚りこんの場合ばあいの金銭きんせんの問題もんだいというと、すぐに慰謝いしゃ料りょうのことが頭あたまに浮うかびます。しかしながら慰謝いしゃ料りょうというのは片方かたがたがなんらかの理由りゆうで精神せいしん的てきな苦痛くつうを受うけた場合ばあいのことですから、離婚りこんの場合ばあいに常つねに慰謝いしゃ料りょうが生しょうじるとは限かぎりません。よくタレントやスポーツ選手せんしゅが離婚りこんする場合ばあいに巨額きょがくの慰謝いしゃ料りょうが話題わだいになりますが、一般いっぱんの夫婦ふうふの場合ばあいにはあまり参考さんこうにはならないと考かんがえたほうがいいでしょう。離婚りこん調停ちょうていなどで慰謝いしゃ料りょうを支払しはらう事由じゆうがあるとされた場合ばあいでも、実際じっさいにはせいぜい100～300万まん円えんもあればいいほうだと思おもいます。

　恐おそらく多おおくの人ひとは、財産ざいさん分与ぶんよのことを慰謝いしゃ料りょうと勘違かんちがいしているのかもしれません。財産ざいさん分与ぶんよとは、結婚けっこん期間きかんに築きずいた財産ざいさんは夫婦ふうふ2人にんの力ちからによるものという考かんがえ方かたに基もとづくものです。したがって、持もっている財産ざいさんを半分はんぶんに分わけるのが目安めやすになります。ただ、普通ふつうのサラリーマンの場合ばあい、財産ざいさんといってもその多おおくは自宅じたくですし、それもまだローンが残のこっていたりするとその分ぶんを引ひかなければなりませんから、相当そうとうな金融きんゆう資産しさんでも持もっていない限かぎりは、離婚りこんした奥おくさんもそんなにお金かねを受うけ取とれるわけではありません。

　最後さいごは年金ねんきんです。平成へいせい19年ねん以降いこう、離婚りこんした場合ばあいに夫おっとの年金ねんきんを分割ぶんかつできるということで離婚りこんを決意けついした妻つまが増ふえたとよく言いわれますが、これも実際じっさいのところは、それほどもらえるわけではありません。分割ぶんかつできるのは厚生こうせい年金ねんきんだけですから、夫おっとが自営業じえいぎょうの場合ばあい、分割ぶんかつで妻つまは一いち銭ぜにももらえません。夫おっとがサラリーマンであれば、専業せんぎょう主婦しゅふの妻つまの場合ばあい、半分はんぶんはもらえますが、これは結婚けっこん期間きかんに相当そうとうする部分ぶぶんなので、例たとえば結婚けっこん期間きかんが30年ねんで、その間あいだの厚生こうせい年金ねんきんが月額げつがくにして10万まん円えんぐらいだとすれば、その半分はんぶんの5万まん円えんが妻つまの分ぶんです。妻つまの分ぶんの基礎きそ年金ねんきんと合あわせても10万まん円えんを少すこし超こえる程度ていどですから、それだけで十分じゅうぶんな老後ろうごの暮くらしができるかどうかは疑問ぎもんです。夫おっとにとっても本来ほんらい受うけ取とれる厚生こうせい年金ねんきんの金額きんがくが半分はんぶんになってしまうわけで、さらに老後ろうごの生活せいかつは心細こころぼそくなります。熟年じゅくねん離婚りこんによって夫婦ふうふ共どもに老後ろうごビンボーということになりかねません。