絶対ぜったいに手てを出だしてはいけない金融きんゆう商品しょうひん5選せん…退職たいしょく金きん等とうを溶とかさず確実かくじつに増ふやす方法ほうほう

　人生じんせいの中なかで、相続そうぞく・贈与ぞうよ・退職たいしょくなどにより、まとまったお金かねを手てにする機会きかいが一いち度どはあるかもしれません。今いままで手てにしたことがない大金たいきんを目めの前まえにすると、気きが大おおきくなってしまう気持きもちはわかります。

　そのまとまったお金かねを投資とうしでさらに増ふやして、豊ゆたかな生活せいかつを送おくりたい、老後ろうごの生活せいかつの不安ふあんを減へらしたいと考かんがえる人ひとは少すくなくありません。

　しかし、忘わすれてはいけないのが、そういった大おおきなお金かねを手てにしている人ひとから、いかに儲もうけようかと企たくらんでいる人ひとも多おおくいるということです。

　今回こんかいはそんな、相続そうぞく・贈与ぞうよ・退職たいしょくなどでまとまって得えたお金かねで、“手てを出だしてはいけない5つの金融きんゆう商品しょうひん”を紹介しょうかいします。

資産しさん運用うんようの基本きほんは「コア・サテライト戦略せんりゃく」

　投資とうしでは、比較的ひかくてきリスクの小ちいさい「安全あんぜん資産しさん」と、利益りえきを狙ねらいやすい「リスク資産しさん」に分わけて考かんがえ、預貯金よちょきんや国債こくさいなどの安全あんぜん資産しさんを確保かくほすることが重要じゅうようです。リターンを積極せっきょく的てきに狙ねらいたい場合ばあいでも、大おおきな損失そんしつを避さけるために必かならず「守まもり」の資産しさんをつくりましょう。

　こうした考かんがえ方かたを生いかした「コア・サテライト戦略せんりゃく」という手法しゅほうがあります。資産しさんを安定あんてい的てきに運用うんようする「コア」と、積極せっきょく的てきに運用うんようする「サテライト」に分わけ、資産しさんを守まもりながら利益りえきを狙ねらう方法ほうほうです。自己じこ資産しさんのうち、コア部分ぶぶんは7～9割わりと多おおめに確保かくほしておき、サテライトは残のこりの1～3割わりで運用うんようします。

　コアはバランス型がた・インデックス型がたの投資とうし信託しんたくや債券さいけんです。サテライトは、アクティブ型がたの投資とうし信託しんたくや株式かぶしきなど、値動ねうごきの大おおきな金融きんゆう商品しょうひんです。ポイントは、必かならず資産しさんを分散ぶんさんして、リスクを減へらすことです。分散ぶんさんすることによって、特定とくていの資産しさんの価値かちが下さがってもダメージを軽減けいげんさせることができます。

全額ぜんがくを投資とうしに回まわしてはいけない

　相続そうぞく・贈与ぞうよ・退職たいしょくなどでまとまって得えたお金かねを全額ぜんがく、投資とうしに回まわすのはおすすめできません。投資とうしは「冷静れいせいに判断はんだんすること」が必要ひつよう不可欠ふかけつですが、全額ぜんがく投資とうしすることで冷静れいせいさを欠かいてしまうことがあるためです。

　まとまったお金かねが2000万まん円えんであれば、1000万まん円えんほどを預貯金よちょきんや個人こじん向むけ国債こくさいなどの安全あんぜん資産しさんに割さくとよいでしょう。個人こじん向むけ国債こくさいは「元本がんぽん割われしない」、預貯金よちょきんは「すぐに現金げんきんを引ひき出だせる」点てんがメリットです。コア・サテライト戦略せんりゃくを思おもい出だし、安全あんぜん資産しさんを中心ちゅうしんに据すえましょう。

　投資とうしに回まわす場合ばあいは、投資とうしのタイミングを複ふく数すう回かいに分わけましょう。「月つきに50万まん円えん投資とうし・計けい20回かい」「月つきに100万まん円えん投資とうし・計けい10回かい」「1景気けいきサイクルの5年間ねんかんで積立つみたて投資とうしをする」などです。投資とうし先さきは投資とうし信託しんたくやETF（上場じょうじょう投資とうし信託しんたく）がおすすめです。

手てを出だしてはいけない5つの金融きんゆう商品しょうひん

（1）オプション付つき投資とうし信託しんたく

　オプション付つき投資とうし信託しんたくには、株式かぶしきやREITに投資とうしをしつつ、オプション取引とりひきを行おこない利益りえきの上乗うわのせをする「カバードコール型がた」や、値上ねあがり益えきや配当はいとう・利子りしといった運用うんよう益えきに加くわえて、選択せんたくした通貨つうかの為替かわせ差益さえきや為替かわせ取引とりひきによるヘッジプレミアム（通貨つうかの金利きんり差さ）も得えられる「通貨つうか選択せんたく型がた」などがあります。

　このように説明せつめいされても、仕組しくみがわかりにくいでしょう。収益しゅうえきの源泉げんせんが多おおいのは一見いっけん良よいことのようですが、その分ぶん、リスクも高たかくなります。何なにより、手数料てすうりょうが高たかいのがネックです。オプション付つき投資とうし信託しんたくは「複雑ふくざつな仕組しくみ」「リスクが高たかい」「手数料てすうりょうが高たかい」と覚おぼえておき、手てを出ださないに限かぎります。

（2）仕組しくみ債さい

　仕組しくみ債さいは、債券さいけんにオプションなどを組くみ込こんだ商品しょうひん。元本がんぽんや利息りそくの支払しはらいに、株価かぶか指数しすうや為替かわせなどの金融きんゆう指標しひょうの変化へんかによる条件じょうけんが付与ふよされて、条件じょうけんのない債券さいけんよりも高たかい利回りまわりが提示ていじされています。

＜仕組しくみ債さいのオプション取引とりひきのイメージ＞

（株）かぶしきがいしゃMoney＆You作成さくせい

　たとえば、株価かぶかを対象たいしょうにしたオプション取引とりひきが組くみ込こまれた仕組しくみ債さいを個人こじんが購入こうにゅうした場合ばあい、株価かぶかがいくら上昇じょうしょうしたとしても、得えられる利益りえきはあらかじめ決きまったオプション料りょうだけです。それに対たいして、株価かぶかが下落げらくした場合ばあいは、下落げらくするほど大おおきな損失そんしつを被こうむります。投資とうしのリスクとリターンにはトレードオフ（両立りょうりつしえない関係かんけい）があるといわれますが、仕組しくみ債さいの場合ばあいは、損失そんしつのリスクに見合みあったリターンが得えられません。

　金融きんゆう機関きかんはプロの投資とうし家かとオプション取引とりひきを行おこなうことで、株価かぶかがどうなろうと儲もうかるようになっています。たとえば、プロの投資とうし家かから6％を得えて、購入こうにゅう者しゃには1％を支払しはらう、といった具合ぐあいです。この“サヤ抜ぬき”が悪質あくしつで、個人こじん投資とうし家かが儲もうからない理由りゆうになっています。

　最近さいきんは仕組しくみ債さいの販売はんばいをやめる金融きんゆう機関きかんが増ふえていますが、ゼロにはなっていません。証券しょうけん・金融きんゆう商品しょうひんあっせん相談そうだんセンターでの紛争ふんそう解決かいけつ手続てつづき終了しゅうりょう事例じれいのうち、仕組しくみ債さいは38％でトップ（2021年ねん9月がつまで1年間ねんかん）となっています。21年ねん7～9月がつ期きの手続てつづき終結しゅうけつ事例じれいで多おおいのは、70～80代だいの高齢こうれい者しゃによる申もうし立たてです。「定期ていき預金よきんを中途ちゅうと解約かいやくして仕組しくみ債さいの購入こうにゅうを勧すすめられ、多額たがくの損失そんしつが発生はっせいした」などの主張しゅちょうが多おおくあります。

（3）毎月まいつき分配ぶんぱい型がたの投資とうし信託しんたく

　毎月まいつき分配ぶんぱい型がたの投資とうし信託しんたくは、文字もじどおり分配ぶんぱい金きんを毎月まいつき支払しはらってくれるタイプの投資とうし信託しんたくです。毎月まいつき分配ぶんぱい金きんがもらえたら嬉うれしいのですが、その仕組しくみを理解りかいしなければなりません。

　毎月まいつき分配ぶんぱい型がたの投資とうし信託しんたくは、運用うんようで利益りえきが出でているときにはその利益りえきから分配ぶんぱい金きんを支払しはらいますが、運用うんようで利益りえきが出でなかったときは元本がんぽんを取とり崩くずして分配ぶんぱい金きんを支払しはらいます。その結果けっか、分配ぶんぱい金きんを支払しはらった分ぶんだけ投資とうし信託しんたくの元本がんぽんが減へってしまいます。毎月まいつき分配ぶんぱい型がたの投資とうし信託しんたくのほぼすべてが、このように元本がんぽんを取とり崩くずしています。

　資産しさん形成けいせい、つまりお金かねを増ふやすという観点かんてんからすれば、この仕組しくみは適てきしません。また、複利ふくり効果こうかの面めんから考かんがえると、分配ぶんぱい金きんは受うけ取とるよりも再ふたたび投資とうしに回まわしたほうが効率こうりつ良よく資産しさんを増ふやせるでしょう。毎月まいつき分配ぶんぱい金きんとして受うけ取とってしまうと、複利ふくり効果こうかを生いかすことができなくなってしまいます。

　忘わすれてはならないのが、毎月まいつき分配ぶんぱい型がたの投資とうし信託しんたくは、信託しんたく報酬ほうしゅうなどの手数料てすうりょうが高たかく設定せっていされている点てんです。自分じぶんのお金かねを預あづけて、高額こうがくの手数料てすうりょうを支払しはらいながら、預あづけたお金かねの一部いちぶから取とり崩くずした分配ぶんぱい金きんを受うけ取とるというのでは、とても割わりに合あわないでしょう。

　もし、金融きんゆう機関きかんが毎月まいつき分配ぶんぱい型がたの投資とうし信託しんたくを勧すすめてきたら、それは手数料てすうりょう目当めあての可能かのう性せいが高たかいでしょう。毎月まいつき分配ぶんぱい型がたの信託しんたく報酬ほうしゅうは年とし1％以上いじょうの商品しょうひんが多おおく、なかには2％以上いじょうの商品しょうひんもあります。

（4）退職たいしょく金きん運用うんようプラン

　こちらは退職たいしょく金きんを受うけ取とった人ひとが対象たいしょうになりますが、退職たいしょく金きん運用うんようプランには手てを出だしてはいけません。これは、定期ていき預金よきんと投資とうし信託しんたくやファンドラップなどの商品しょうひんをセットにした商品しょうひん。資産しさんの半分はんぶんを定期ていき預金よきんに預あづけ、もう半分はんぶんを投資とうし信託しんたくで運用うんようします。

　定期ていき預金よきんの部分ぶぶんでは、3カ月かげつ間あいだなど期間きかんは短みじかいですが、年利ねんり6％と高たかい金利きんりが提示ていじされているため、お得とくに感かんじるでしょう。しかし、投資とうし信託しんたくの部分ぶぶんでは購入こうにゅう時じ手数料てすうりょうや信託しんたく報酬ほうしゅうが高たかく設定せっていされているものがほとんど。トータルで見みると損そんになるようにできています。

退職たいしょく金きん運用うんようプランの販売はんばい手数料てすうりょうと金利きんり

　この例れいでは、定期ていき預金よきんの金利きんりで15万まん円えんもらえていてお得とくに見みえますが、投資とうし信託しんたくの販売はんばい手数料てすうりょうを30万まん円えん支払しはらうことになります。つまり、この商品しょうひんを買かった瞬間しゅんかんに15万まん円えんを損そんしているのです。絶対ぜったいに手てを出だしてはいけない商品しょうひんなのです。

（5）外貨がいか建だて保険ほけん

　外貨がいか建だて保険ほけんは、保険ほけん料りょうの支払しはらいや保険ほけん金きんの受うけ取とりが外貨がいかで行おこなわれる保険ほけんです。米あめりかドルや豪ごうドルといった外貨がいかで保険ほけん料りょうを支払しはらい、保険ほけん金きんなどを受うけ取とるときも外貨がいかで受うけ取とります。

　最近さいきんは、ドル金利きんりが上昇じょうしょうしているのでドル建だてて保険ほけんが人気にんきのようです。「外貨がいかは金利きんりが高たかいので、円建えんだての保険ほけんよりも高たかい利回りまわりが期待きたいできる」「元本がんぽんが保証ほしょうされている」などというと一見いっけん良よさそうなのですが、これも注意ちゅういすべき商品しょうひんです。

　外貨がいか建だて保険ほけんの「元本がんぽん保証ほしょう」は、あくまで外貨がいかベースです。したがって、多少たしょう金利きんりが得えられたとしても、外貨がいかを円えんに戻もどしたときに、為替かわせレートの値動ねうごき次第しだいで金利きんり以上いじょうに損そんをする可能かのう性せいがあります。

「通貨つうか分散ぶんさんのために購入こうにゅうするのだ」という方ほうもいますが、100歩ほ譲ゆずって通貨つうか分散ぶんさんのために購入こうにゅうするにしても、外貨がいか建だて保険ほけんは販売はんばい手数料てすうりょうの高たかい商品しょうひんです。公表こうひょうされていないケースも多おおいのですが、外貨がいか建だて保険ほけんは6〜8％と、他たの投資とうし商品しょうひんに比くらべてはるかに高たかい販売はんばい手数料てすうりょうがかかっています。それだけに金融きんゆう機関きかんの「勧誘かんゆう」も熱心ねっしんで、近年きんねん、国民こくみん生活せいかつセンターへの相談そうだん件数けんすうが増加ぞうかしているほどです。リスクを抑おさえて通貨つうか分散ぶんさんをするにしても、米国べいこく債さいという選択肢せんたくしのほうが合理ごうり的てきです。

　今回こんかいご紹介しょうかいした「コア・サテライト戦略せんりゃく」を実践じっせんし、お金かねを減へらさずに着実ちゃくじつに増ふやす運用うんようを心こころがけていただければと思おもいます。

（文ぶん＝頼よりゆき藤太とうた希のぞみ／経済けいざいジャーナリスト、株式会社かぶしきがいしゃMoney＆You代表だいひょう取締役とりしまりやく）

『マンガと図解ずかい 定年ていねん前後ぜんこうのお金かねの教科書きょうかしょ』（宝島社たからじましゃ）

今回こんかいの内容ないようも含ふくめて、拙著せっちょ『マンガと図解ずかい 定年ていねん前後ぜんこうのお金かねの教科書きょうかしょ』で紹介しょうかいしていますので、ぜひ参考さんこうにしていただけたらと思おもいます。

本書ほんしょは老後ろうごのお金かねの不安ふあんをなくす具体ぐたい策さくを示しめした一いち冊さつです。定年ていねん後ごの収入しゅうにゅうと支出ししゅつの最適さいてき解かいは何なにか、お金かねの不安ふあんを解消かいしょうする制度せいどの利用りよう、定年ていねん70歳さい時代じだいの制度せいどを生いかした得とくする働はたらき方かたについて、余あますところなく説明せつめい。老後ろうごを支ささえる資産しさん運用うんよう収入しゅうにゅうについても、NISA、iDeCoを徹底的てっていてきに活用かつようしたうえで、どのような銘柄めいがらに投資とうしすべきか、退職たいしょく金きんはどのように運用うんようするかなど、定年ていねん前後ぜんこうのお金かねの不安ふあんのすべてに応こたえます。