我わが子こに「勉強べんきょうする意味いみ」を問とわれたら何なんと答こたえる？作家さっかが語かたるその本質ほんしつ

 「勉強べんきょうしなさい」「勉強べんきょうは子こどもの仕事しごと」といった言葉ことばを子こどもの頃ころに大人おとなから言いわれたことがある人ひとは多おおいだろう。けれど、大人おとなになった今いま、子こどもに「勉強べんきょうをする意味いみ」「勉強べんきょうの価値かち」を問とわれたら、答こたえられるだろうか。偏差へんさ値ちの高たかい大学だいがくに入はいって、大おおきな会社かいしゃに入はいるため、というのはもう通用つうようしない時代じだいでもある。

　現在げんざい放送ほうそう中ちゅうのドラマ『ドラゴン桜さくら』第だい2シリーズで、「バカとブスほど東大とうだいへ行いけ」という阿部あべ寛ひろしさん演えんじる主人公しゅじんこうのセリフが話題わだいとなっているが、勉強べんきょうは他者たしゃに勝かつため、また社会しゃかい的てきな成功せいこうのためにするものなのだろうか。これに対たいして、「勝かつことがそれほど大事だいじなことなのか、と疑問ぎもんを持もたせることこそが本当ほんとうの教育きょういくではないのか」と考かんがえるのが『勉強べんきょうの価値かち』（森もり博嗣ひろつぐ著ちょ、幻冬舎げんとうしゃ刊かん）の著者ちょしゃである作家さっか・工学こうがく博士はかせの森もり博嗣ひろつぐ氏しだ。

■勉強べんきょうが楽たのしくなる唯ただ一いち絶対ぜったいの条件じょうけん

　森もり氏し自身じしんは、大学だいがく4年生ねんせいになるまで「勉強べんきょうの価値かち」を知しらなかったという。その価値かちに気きづいたのが21歳さいのとき。勉強べんきょうが楽たのしくなる唯一ゆいいつの条件じょうけんが、「作つくりたいものが目前もくぜんにある場合ばあい」ということに気きづいたのだという。

　わかりやすい例れいが、金槌かなづちで釘くぎを打うつこと。これが勉強べんきょうの本質ほんしつだという。一般いっぱん的てきに、釘くぎを打うつことには「何なにかを作つくる」という目的もくてきがある。その目的もくてきを追おっているうちに、自分じぶんが作つくりたいものがどんどん出来上できあがっていくことに楽たのしみを感かんじられるようになる。もちろん、釘くぎをうつという行為こういそのものも上達じょうたつするから、そこにも楽たのしみが生うまれるかもしれない。

　その楽たのしさは「作つくりたいもの」へと近ちかづくプロセスが生うみ出だしているとも言いえる。自分じぶんが作つくりたいものがまずあって、そのためには釘くぎを打うたなければならない。なので、釘くぎ打うちの勉強べんきょうをする。このような過程かていがあって、初はじめてその勉強べんきょうに意味いみができ、価値かちが生しょうじるのだ。

　定年ていねん退職たいしょく後ご、何なにをしたらいいかわからない人ひとは多おおい。そんなときに森もり氏しが勧すすめているのが個人こじん研究けんきゅうだ。役やくに立たつことはすでに誰だれかが研究けんきゅうしている。なので、本当ほんとうにどうでもいいこと、小ちいさなこと、誰だれも目めを向むけないようなことをテーマにして、調しらべたり、試ためす。誰だれかに指示しじされるのではなく、自分じぶんで考かんがえ、何なにかをやってみる。その中なかで自分じぶんだけの楽たのしさを見みつける。この自分じぶんの楽たのしみを見みつけることが本来ほんらいの「勉強べんきょう」なのだ。

　自分じぶんのやりたいことを見みつけ、突つき詰つめることで、自分じぶん自身じしんを見みつめ直なおすことにもなる。そうすることで、謙虚けんきょになることもでき、人ひととしての成長せいちょうにもつながるだろう。「勉強べんきょう」の価値かちを自分じぶん自身じしんで見出みいだしてみてはどうだろう。
（T・N／新刊しんかんJP編集へんしゅう部ぶ）

※本ほん記事きじは、「新刊しんかんJP」より提供ていきょうされたものです。