新型しんがたコロナだけじゃない　専門せんもん家かが指摘してきする「注意ちゅういすべき感染かんせん症しょう」とは？

　新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいが始はじまってから1年ねん以上いじょうが経過けいかし、2021年ねん4月がつ現在げんざいは「第だい4波は」に入はいっていると言いわれている。

　連日れんじつ、テレビをはじめとしたメディアは新型しんがたコロナについて報道ほうどうをしているため、つい新型しんがたコロナの情報じょうほうばかりに目めが行おこなってしまいがちだが、感染かんせん症しょうはそれだけではない。インフルエンザやはしか、結核けっかく、風疹ふうしんをはじめ、私わたしたちの身みの回まわりには様々さまざまな感染かんせん症しょうが存在そんざいしている。

　そうした感染かんせん症しょうに対たいして、私わたしたちはどのように予防よぼう対策たいさくしていけばいいのか。

　新型しんがたコロナをはじめとしたさまざまな感染かんせん症しょうの予防よぼう対策たいさくが書かかれた『感染かんせん症しょう予防よぼうBOOK』（三笠みかさ書房しょぼう刊かん）の著者ちょしゃで、公衆こうしゅう衛生えいせい学がくを専門せんもんとする医師いし・左門さもん新しん氏しにお話はなしをうかがい、感染かんせん症しょうを防ふせぐために必要ひつようなことを聞きいた。

※本ほん記事きじは、「新刊しんかんJP」より提供ていきょうされたものです。

■公衆こうしゅう衛生えいせいの専門せんもん家かが考かんがえる「特とくに注意ちゅういすべき感染かんせん症しょう」とは

――『感染かんせん症しょう予防よぼうBOOK』は新型しんがたコロナウイルスだけでなく、インフルエンザや結核けっかく、はしかをはじめとした様々さまざまな感染かんせん症しょうのデータや解説かいせつが掲載けいさいされています。左門さもんさんが特とくに注意ちゅういすべきと考かんがえる感染かんせん症しょうはなんでしょうか。

左門さもん：まずは風疹ふうしんですね。風疹ふうしんは現在げんざいでも流行りゅうこうしていて、2019年ねんには30代だいから50代だいの成人せいじん男性だんせい2000人にん近ちかくが罹患りかんしています。

　厚生こうせい労働省ろうどうしょうは現在げんざい、昭和しょうわ37年度ねんど（1962年度ねんど）から昭和しょうわ53年度ねんど（1978年度ねんど）生うまれの男性だんせいを対象たいしょうに、風疹ふうしんの抗体こうたい検査けんさと予防よぼう接種せっしゅを進すすめています。これは、その期間きかんに生うまれた男性だんせいは風疹ふうしんの予防よぼう接種せっしゅが義務ぎむではなかったからです。本来ほんらいは子こどもの時ときと大人おとなになってから、2度ど接種せっしゅする必要ひつようがあり欧米おうべいではそうして撲滅ぼくめつしたのですが、日本にっぽんでは予防よぼう接種せっしゅを受うけたことがない年代ねんだいもあるというのが実情じつじょうです。

　なぜ風疹ふうしんの予防よぼう接種せっしゅを受うけないといけないのかというと、妊にん婦ふへ感染かんせんさせないためです。胎児たいじが先天せんてん性せい風疹ふうしん症候群しょうこうぐんを発症はっしょうし、赤あかちゃんに白内障はくないしょうや先天せんてん性せい疾患しっかん、難聴なんちょうが残のこる危険きけん性せいがあります。風疹ふうしんは世界せかいでも妊にん婦ふが感染かんせんすべき感染かんせん症しょう「TORCH」の一ひとつ「R」（Rubella）に入いれられているくらいです。

――確たしかに風疹ふうしんはたびたび流行りゅうこうがニュースになりますよね。他たに、特とくに注意ちゅういすべき感染かんせん症しょうはありますか？

左門さもん：性行為せいこうい感染かんせん症しょうは注意ちゅういしてほしいですね。

　たとえば、女性じょせいの不妊症ふにんしょうの3割わりから4割わりはクラミジア感染かんせん症しょうが原因げんいんと考かんがえられています。クラミジア感染かんせん症しょうの病原びょうげん体たいはクラミジア・トラコマチス菌きんとよばれる細菌さいきんで、子宮しきゅう入口いりくち近ちかくが炎症えんしょうを起おこす子宮しきゅう頚けい管かん炎えんが起おこります。さらにそこから奥おくに進行しんこうして卵管らんかんに及およぶと、下腹部かふくぶ痛つうや性交せいこう痛つう、出欠しゅっけつなどが起おきます。治なおっても卵管らんかんの癒着ゆちゃくが残のこり不妊症ふにんしょうになります。

　また、女性じょせいは7～8割わりが無む症状しょうじょう、男性だんせいでは5割わりが気付きづかないと言いわれています。多おおくの人ひとが感染かんせんしながら気きづくことの少すくない病気びょうきで、自然しぜん治癒ちゆするものの、特とくに女性じょせいは知しらないうちに生涯しょうがい不妊ふにんになる可能かのう性せいがあります。

――気きづかない可能かのう性せいがあるというのは怖こわいですね。

左門さもん：そうですね。あとはB型がた肝炎かんえんも性行為せいこういで感染かんせんする恐おそれがあります。日本にっぽんでは2016年ねんから乳児にゅうじへの定期ていき予防よぼう接種せっしゅが始はじまっています。長ながい間あいだ日本にっぽんでは医療いりょう関係かんけい者しゃ以外いがいは受うけていなかったのですが、これからは欧米おうべい同様どうよう、小児しょうにから成人せいじんまで全員ぜんいんが任意にんいの予防よぼう接種せっしゅを受うけるべきだと思おもいます。

――ワクチンの予防よぼう接種せっしゅというと副ふく反応はんのうのリスクから論争ろんそうになります。

左門さもん：日本人にっぽんじんはリスクに対たいしてのバランス感覚かんかくがなくて、0か100かで判断はんだんしてしまう傾向けいこうがあるように感かんじますね。予防よぼう接種せっしゅを受うけて得えられるメリットの方ほうが大おおきいから受うけましょう、ではなくて、副ふく反応はんのうが起おこる可能かのう性せいがあるからダメという発想はっそうになりやすい。

――ゼロリスクの発想はっそうですよね。可能かのう性せいがある限かぎりは、という。今後こんごについてお話はなしをうかがいたいのですが、新型しんがたコロナウイルスはどのように推移すいいしていくと思おもいますか？

左門さもん：ワクチン接種せっしゅが広ひろがり、集団しゅうだん免疫めんえきを獲得かくとくできれば、いったんは流行りゅうこうが収おさまると私わたしは思おもいます。

　ただ、まだ2つ問題もんだいがありまして、1つは世界せかい全体ぜんたいで感染かんせんが収おさまるわけではなくて、先進せんしん国こくでは流行りゅうこうが収おさまっているけれど、他たの国くにでは広ひろがっているという状況じょうきょうが出でてきます。地球ちきゅう上じょうから根絶こんぜつできるわけではない。そうなると、またいつ感染かんせんが広ひろがるか分わからないわけですね。今いま、接種せっしゅが進すすんでいるワクチンがどのくらいの期間きかん有効ゆうこうなのか、今いまのところは分わかっていませんから、長ながい間あいだ、新型しんがたコロナウイルスと付つき合あっていく必要ひつようがあります。

　もう1つ、新型しんがたコロナがなくならないであろう理由りゆうとして、インフルエンザの事例じれいがあげられます。インフルエンザは豚ぶたや鳥とりにも感染かんせんし、下手へたをしたら変異へんいをして出でてきて、ヒトへの感染かんせんが繰くり返かえし起おこっています。新型しんがたコロナではオランダやデンマークでミンクからヒトに感染かんせんしたというケースがあると言いわれています。

　今いまの種たねはワクチンで集団しゅうだん免疫めんえきを獲得かくとくして収おさまっても、ウイルスが他たの動物どうぶつの中なかで変異へんいして、またヒトに感染かんせんするということも起おこり得えるので、完全かんぜんに収束しゅうそくさせるのは難むずかしい気きがしますね。

――今回こんかいの新型しんがたコロナウイルスはまさに専門せんもん家か、医師いしだけでなく、たくさんの人ひとが合あわさって大おおきな議論ぎろんが展開てんかいされています。この状況じょうきょうについて左門さもんさんはどう捉とらえていますか？

左門さもん：実際じっさいのところ、感染かんせんが拡大かくだいし始はじめた当初とうしょ、そこまで大たいした病気びょうきではないと思おもっていた医師いしも多おおかったと思おもいます。もちろん、甘あまく見みないほうがいいと言いっている医師いしもいました。なぜ色々いろいろな見方みかたが出でてきたかというと、この新型しんがたコロナウイルスがどういうものなのか分わからなかったからですよね。

　はっきりしないものだから素人しろうとも含ふくめていろんな人ひとがいろんなことを言いう。専門せんもん家かも正体しょうたいを掴つかみ取とれていない以上いじょう、推測すいそくで話はなすしかない。そして毎日まいにち何なにかしらの進展しんてんがある。だからメディアも取とり上あげるわけです。

　新型しんがたコロナウイルスももちろん注目ちゅうもくしないといけない感染かんせん症しょうですけど、これだけに目線めせんが集中しゅうちゅうしてしまうと、他たの感染かんせん症しょうの問題もんだいがおざなりになってしまう可能かのう性せいがあります。たとえば子宮しきゅう頸がんですとか、先さきほど言いった風疹ふうしん、B型がた肝炎かんえんもそうです。子宮しきゅう頸がんは男性だんせいも予防よぼう接種せっしゅを受うける必要ひつようがあります。そういう正ただしい知識ちしきを広ひろげていかないといけません。

――最後さいごに、本書ほんしょをどのような人ひとに読よんでほしいとお考かんがえですか？

左門さもん：まずは感染かんせん症しょうの感染かんせん者しゃって子こどもが多おおいんですよね。ただ子こどもが自分じぶん自身じしんで感染かんせん症しょうを予防よぼうするのは難むずかしいでしょうから、母親ははおやの皆みなさんにまず読よんでほしいと考かんがえました。また、もちろん父親ちちおやにも読よんでほしい。ということで一家いっかに一いち冊さつこの本ほんを置おいてもらえればと思おもいます。感染かんせん症しょうのメニュー本ほんなので、何なん度ども必要ひつように応おうじて参照さんしょうできるようになっています。

　それと、学校がっこうや施設しせつ、会社かいしゃの衛生えいせい管理かんり担当たんとう者しゃの皆みなさんに。食中毒しょくちゅうどくなどについても解説かいせつしていますから、感染かんせん症しょうの基本きほん的てきなところを押おさえてほしいです。そして最後さいごに海外かいがいに渡航とこうする人ひとにも。このご時世じせい、なかなか海外かいがいには行いけませんが、外国がいこくで感染かんせんする感染かんせん症しょうって結構けっこうあるんですよ。しかも、重じゅう篤あつしな状態じょうたいになりやすいものも多おおいんです。だから、海外かいがいに行いく前まえにこの本ほんを読よんでみるといいかもしれませんね。

――この本ほんを読よんでみると「これも感染かんせん症しょうだったんだ」と思おもうものもありそうですね。

左門さもん：そうですね。意外いがいなところでいうと、先さきほど少すこし名前なまえを出だしましたが、子宮しきゅう頸がんは性行為せいこうい感染かんせん症しょうです。でも、予防よぼう接種せっしゅをすれば防ふせぐことができます。

　子宮しきゅう頸がんワクチンについては、副ふく反応はんのうをマスコミが大々的だいだいてきに取とり上あげ、政府せいふが予防よぼう接種せっしゅの積極せっきょく的てきな推奨すいしょうをやめてしまったという経緯けいいがありますが、その結果けっか、数すう年ねん後ごから子宮しきゅう頸がんによる死亡しぼう者しゃが現在げんざいの年とし約やく3000人にんから、年とし約やく4000～6000人にんも増加ぞうかするという推定すいていがあります。WHOは日本にっぽん政府せいふに早はやく再開さいかいするよう強つよく勧告かんこくしていますし、政府せいふの副ふく反応はんのう調査ちょうさ委員いいん会かいの「予防よぼう接種せっしゅによるものとは言いえない」という報告ほうこくもありますから、子宮しきゅう頸がんは予防よぼう接種せっしゅと検診けんしんの二本立にほんだてで対策たいさくしていく必要ひつようがあると思おもいます。

　ぜひ本書ほんしょを読よんで感染かんせん症しょうを知しっていただいて、予防よぼう対策たいさくをしてもらえると嬉うれしいですね。（了りょう）

※本ほん記事きじは、「新刊しんかんJP」より提供ていきょうされたものです。