明治めいじ以来いらい、日本にっぽんには数すう多おおくの、無私むしの人ひと、潔いさぎよい人ひと、天てん晴ばれな人ひと――、ひと言ことで言いうなら「美うつくしい日本人にっぽんじん」がいました。 そうした人々ひとびとの生いき方かたを知しると、そうそう、日本人にっぽんじんってこうだったんだよなあとしみじみ胸むねに迫せまるものがあります。歴史れきしに名なを残のこさないまでも、こうした日本人にっぽんじんは市井しせいにたくさんいたはずです。 ましてや、殖財しょくざいと私利しり私欲しよくに走はしる人ひとたちのニュースが連日れんじつのように報ほうじられる昨今さっこんだからこそ、そんな〝偉人いじん〟たちの片鱗へんりんに触ふれれば、痛快つうかいな思おもいがしたり考かんがえ直なおしたりするのではないでしょうか。〝偉人いじん〟の人生じんせいは、我わが身みを映うつす鏡かがみでもあるのです。 本書ほんしょでは、かつて『文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう』で記事きじになった数すう百ひゃく人にんの人物じんぶつのなかから、〝美うつくしく生いきた日本人にっぽんじん〟73人にんを厳選げんせんしました。 たとえば、政官せいかん界かいからは鈴木すずき貫太郎かんたろう、白洲しらす次郎じろう、土光どこう敏夫としお……、国際こくさい社会しゃかいからは緒方おがた貞子さだこ、杉原すぎはら千畝ちうね、植村うえむら直己なおき、盛田もりた昭夫あきお……、実業じつぎょう界かいからは本田ほんだ宗そう一郎いちろう、星ほし一いち、井深いぶか大まさる……、文化ぶんかからは小津おつ安あん二郎じろう、城山しろやま三郎さぶろう、淀川よどがわ長治ながはる、兼けん高こうかおる……、学問がくもんからは柳田やなぎだ國男くにお、白川しらかわ静しず、牧野まきの富太郎とみたろう……、芸能げいのうからは高峰たかみね秀子ひでこ、渥美あつみ清きよし、坂本さかもと九きゅう……と多岐たきの分野ぶんやにひろがっています。ときにその恩恵おんけいは、現在げんざいの私わたしたちにも及およんでいます。文芸ぶんげいや芸能げいのうであれば、大だい多数たすうの国民こくみんがその恩恵おんけいを享受きょうじゅしていることでしょう。 本書ほんしょが読者どくしゃ諸兄しょけいの人生じんせいと思考しこうにとって、良よき一助いちじょになれば幸さいわいです。
【第だい1章しょう】日本にっぽんの礎いしずえを築きずいた人々ひとびと■鈴木すずき貫太郎かんたろう 祖父そふの言葉ことばを胸むねに深ふかく秘ひめて 鈴木すずき道子みちこ■吉田よしだ茂しげる 「歴史れきしの評価ひょうかの方ほうが大切たいせつなのだよ」 麻生あそう太郎たろう■白洲しらす次郎じろう 吉田よしだ茂しげるに重用じゅうようされた理由りゆう 青柳あおやぎ恵めぐみ介かい■渋沢しぶさわ栄一えいいち 大切たいせつにしていた「持続じぞく性せい」 渋澤しぶさわ健けん■土光どこう敏夫としお 父ちちが答こたえた行革ぎょうかくの意味いみ 土光どこう陽一郎よういちろう■昭和しょうわ天皇てんのう 「独白どくはく録ろく」が昭和しょうわ史しを変かえた 保阪ほさか正ただし康やすし【第だい2章しょう】世界せかいに認みとめられた人々ひとびと■緒方おがた貞子さだこ 小柄こがらな体からだにエネルギーが満みち溢あふれていた 中ちゅう満まん泉いずみ■杉原すぎはら千畝ちうね 「だって可哀想かわいそうだもん」と一言ひとことだけ 杉原すぎはら伸生のぶお■植村うえむら直己なおき エスキモーから学まなんだ自然しぜんとの共生きょうせい 湯川ゆかわ豊ゆたか■盛田もりた昭夫あきお 回遊かいゆう魚ぎょのように立たち止とまれない国士こくし 盛田もりた昌夫まさお■湯川ゆかわ秀樹ひでき 一いち分野ぶんやに囚とらわれない「学者がくしゃ」 佐藤さとう文隆ふみたか■中村なかむら哲あきら 失敗しっぱいしても、「どげんかなるよ」 中村なかむら秋子あきこ【第だい3章しょう】企業きぎょう人じんを超こえた影響えいきょうを与あたえた人々ひとびと■本田ほんだ宗そう一郎いちろう 銀座ぎんざで八はち百ひゃく万まん円えんのご褒美ほうび 桜井さくらい淑よし敏さとし■藤沢ふじさわ武夫たけお 「人間にんげんは褒ほめられるために生うまれてきた」 藤沢ふじさわ文ぶん翁おきな■大原おおはら孫三郎まごさぶろう 労働ろうどう者しゃの幸しあわせを突つき詰つめた人ひと 大原おおはら謙一郎けんいちろう■星ほし一いち 製薬せいやく会社かいしゃに無料むりょうの学校がっこうを創設そうせつ 星ほしマリナ■井深いぶか大まさる 技術ぎじゅつの前まえでは社長しゃちょうも新入しんにゅう社員しゃいんもない 森尾もりお稔みのる■五代ごだい友とも厚あつ 大阪おおさかを商都しょうとに育そだてた功労こうろう者しゃ 五代ごだい富とみ文ぶん■安藤あんどう百ひゃく福ぶく カップヌードルは地球ちきゅう上じょうで最後さいごに残のこる 安藤あんどう宏ひろし基もと■小林こばやし一三かずみ 百ひゃく歩ほ先さきではなく「十じゅう歩ほ先さき」を見みる 松岡まつおか功いさお■三島みしま海雲かいうん カルピスで特許とっきょを取とらなかった 小山こやま洋之ひろゆき介かい【第だい4章しょう】今いまも生いきる活動かつどうをした人々ひとびと■石井いしい筆ふで子こ 鹿しか鳴な館かんの花はなから障害しょうがい者しゃ教育きょういくへ 米川よねかわ覚さとし■石井いしい十次じゅうじ 孤児こじ院いん創設そうせつからユートピア建設けんせつへ 児嶋こじま草次くさつぎ郎ろう■荻野おぎの吟子ぎんこ 日本にっぽん初はつの女医じょいの突破とっぱ力りょく 広瀬ひろせ玲子れいこ■津田つだ梅子うめこ 六ろく歳さいで留学りゅうがくした女子じょし教育きょういくの母はは 石井いしい妙子たえこ【第だい5章しょう】文化ぶんかを豊ゆたかにした人々ひとびと■武者小路むしゃのこうじ実篤さねあつ お金かねに頓着とんじゃくしない自由じゆう人じん 武者小路むしゃのこうじ知行ともゆき■宮沢みやざわ賢治けんじ 「雨あめニモマケズ」に込こめた祈いのり 宮沢みやざわ和樹かずき■大岡おおおか昇平しょうへい 兵士へいしを語かたる大岡おおおかの大粒おおつぶの涙なみだ 澤地さわじ久枝くし■小津おつ安あん二郎じろう 上質じょうしつなユーモアが最大さいだいの魅力みりょく 中井なかい貴惠きえ■古今ここん亭てい志こころざしん生なま 「破天荒はてんこう、酒飲さけのみ、貧乏びんぼう」の真実しんじつ 池波いけなみ志乃しの■齋藤さいとう秀雄ひでお 先生せんせいが手渡てわたしてくれた千せんドルの餞別せんべつ 小澤おざわ征爾せいじ■司馬しば遼りょう太郎たろう 鉄砲てっぽう嫌ぎらいの刀かたな好すき 山折やまおり哲雄てつお■山崎やまざき豊子とよこ 「『大地だいちの子こ』が私わたしの小説しょうせつだ」 野上のかみ孝子たかこ■城山しろやま三郎さぶろう 「読者どくしゃこそ、僕ぼくの勲章くんしょう」 井上いのうえ紀子のりこ■開高かいこう健けん 文学ぶんがく観かんと人生じんせいを変かえた大だい事件じけん 永山ながやま義高よしたか■白洲しらす正子まさこ 目めの前まえに現あらわれる人ひとそのものを見みていた 牧山まきやま桂子けいこ■淀川よどがわ長治ながはる 映画えいが史しが身体しんたいに浸しみこんでいた おすぎ■山本やまもと夏彦なつひこ 生いきているのも死しぬまでのひまつぶし 石井いしい英夫ひでお■山口やまぐち淑子としこ 山口やまぐち淑子としこに斬きられなければ一流いちりゅうにあらず 日枝ひえ久ひさ■江藤えとう淳あつし 氏しの死しに際さいして痛切つうせつに感かんじたこと 福田ふくだ和也かずや■川端かわばた康成やすなり 「惠子けいこさん、授賞じゅしょう式しきに来きてくれますか?」 岸きし惠子けいこ■松本まつもと清張せいちょう 文豪ぶんごうの道みちを自みずから閉とざした作家さっか 宮田みやた毬かさ栄さかえ■兼けん高こうかおる 三さん〇年ねんで計けい一いち六ろく〇カ国かこくもの旅たび ヤマザキマリ■吉本よしもと隆明たかあき 「いちばん低ひくいものでいなさい」 糸井いとい重しげる里さと■岡本おかもと太郎たろう 強つよく潔いさぎよい生いき方かたが眩まぶしい 平野ひらの暁男あきお■手塚てづか治虫おさむ さらりと人間にんげんの本音ほんねを描えがく。すごい。 萩尾はぎお望都もと■柳家やなぎや小しょう三治さんじ 「あんなもんじゃ、まだまだ」 柳家やなぎや三さん三さん■永えい六輔ろくすけ 「伝つたえること」の大切たいせつさを教おしえてくれた 外山とやま惠理えり■池波いけなみ正太郎しょうたろう 「自分じぶんは作家さっかという職人しょくにんだ」 鶴松つるまつ房治ふさじ■井上いのうえひさし まっすぐで楽天的らくてんてきな人ひとだった 井上いのうえユリ■小林こばやし秀雄ひでお 日常にちじょうのひとときが書かくことと同義どうぎ 白洲しらす信哉のぶや■与謝野よさの晶子あきこ 自分じぶんの美的びてき感覚かんかくを押おし通とおす芯しんの強つよさ 与謝野よさの達いたる■向田むかいだ邦子くにこ 最高さいこうだった豚ぶたしゃぶの味あじ 梶かじ芽衣子めいこ■藤沢ふじさわ周平しゅうへい 中国ちゅうごくでも共感きょうかんを呼よぶ理由りゆう 遠藤えんどう展子のぶこ■片岡かたおか球たま子こ 「絵描えかきの前まえに人間にんげんを勉強べんきょうしなさい」 松村まつむら公こう嗣【第だい6章しょう】学問がくもんの世界せかいを世間せけんの知ちまで広ひろげた人々ひとびと■柳田やなぎだ國男くにお 半裸はんらの執筆しっぴつ姿すがたに畏敬いけいの念ねんを覚おぼえた 南みなみ八枝子やえこ■小泉こいずみ信三しんぞう ハンセン病はんせんびょう患者かんじゃへ野球やきゅうの贈おくり物もの 山内やまうち慶太けいた■宮本みやもと常一つねいち 「民俗みんぞく学がくは落穂おちぼ拾ひろいだ」 神崎かんざき宣せん武ぶ■梅棹うめさお忠夫ただお 失明しつめいを乗のり越こえた「知的ちてき生産せいさん」 東谷ひがしたに暁あきら■牧野まきの富太郎とみたろう 植物しょくぶつ学がくの父ちちが蒔まいた種たね 朝井あさいまかて■白川しらかわ静しず 頁ぺーじをめくると、そこに答こたえが書かいてある 宮城みやぎ谷たに昌光まさみつ【第だい7章しょう】極上ごくじょうの娯楽ごらくを与あたえてくれた人々ひとびと■高峰たかみね秀子ひでこ 「人ひとの時間じかんを奪うばうことは罪悪ざいあくです」 斎藤さいとう明美あけみ■森繁もりしげ久彌ひさや 「人生じんせいはピンとキリだけ知しっておけばいい」 森繁もりしげ建けん■美空みそらひばり 私わたしが歌うたう「真赤まっかな太陽たいよう」に笑わらい転ころげた 岸本きしもと加世子かよこ■石原いしはら裕次郎ゆうじろう 日本にっぽん中ちゅうから愛あいされた男おとこの宿命しゅくめい 石原いしはら良純よしずみ■勝かつ新太郎しんたろう 「破天荒はてんこう」を死しぬまで貫つらぬいた 中村なかむら玉緒たまお■樹木きき希林きりん 私わたしに死しにゆく姿すがたも全部ぜんぶ見みせてくれた 浅田あさだ美代子みよこ■渥美あつみ清きよし 会あいたいな、寅とらさんに 山田やまだ洋次ようじ■杉村すぎむら春子はるこ 「女優じょゆうは岡惚おかぼれしてなきゃいけません」 奈良岡ならおか朋子ともこ■高倉たかくら健けん 「千葉ちば、女おんなは怖こわいぞ~」 千葉ちば真一しんいち■坂本さかもと九きゅう 遠とおい異国いこくでこの曲きょくに出会であうたびに 黒柳くろやなぎ徹子てつこ■八千草やちぐさ薫かおる 高校こうこう時代じだいからの憧あこがれの人ひと 石坂いしざか浩二こうじ■平尾ひらお誠二せいじ 盟友めいゆうと最後さいごに交かわした会話かいわ 大八木おおやぎ淳史あつし
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