10ねん連続れんぞく算数さんすうオリンピック入賞にゅうしょうしゃ輩出はいしゅつしている彦根ひこねはつひとじゅく「りんごじゅく」。天才てんさいすそのユニークな教育きょういくメソッドを、塾長じゅくちょう田邉たなべとおるはつ公開こうかいした書籍しょせき『10ねん連続れんぞく算数さんすうオリンピック入賞にゅうしょうしゃした塾長じゅくちょうおしえる 「算数さんすうりょく」はしょう3までにそだてなさい』ダイヤモンド社だいやもんどしゃかん)が、このたび発売はつばいになった。本書ほんしょ抜粋ばっすいしながら、家庭かていでもれられるそのノウハウを紹介しょうかいする。

算数の天才を輩出してきた塾長が「子どもは挨拶できなくてもいい」「行儀悪くてもいい」という理由Photo: Adobe Stock

挨拶あいさつしない、くつそろえない‥‥そんなおお

 りんごじゅくかよっているどもたちは、算数さんすう得意とくいな、いわゆる優秀ゆうしゅうおおいので、さぞしっかりしているのだろうとおもわれるかもしれません。
 私立しりつ有名ゆうめい小学校しょうがっこうかよっているのように、だしなみがきちんとしていて、挨拶あいさつがちゃんとできて、お行儀ぎょうぎもいい。そんなイメージなのでは?
ところが、じつはそんなことはありません。

 挨拶あいさつをしない
 ・くつそろえない
 ・行儀ぎょうぎよく椅子いすすわっていられない

 こういうはザラにいます。とくてい学年がくねんのうちはそうです。

どもは理由りゆうがあれば行動こうどうする

 静岡しずおかから無料むりょう体験たいけんにやってきたしょう1のAくんもそんなかんじでした。

 おかあさんとの事前じぜんのやりとりでは、「うちのは、じゅくならごとっても脱走だっそうするんです。どこの無料むりょう体験たいけんっても途中とちゅうすのでご迷惑めいわくをおかけするかもしれませんが、どうぞよろしくおねがいします」とのこと。

 そしてむかえた無料むりょう体験たいけん当日とうじつ

 ガラッととびらけて、Aくんがおかあさんとはいってきました。そして、おもむろにカバンから恐竜きょうりゅうして一言ひとこと

「これ、△?$ザウルス」
 さらに、もう1ひきして、
「これは#♪×ザウルス」

 おかあさんは、「ちょっとやめなさい」とずかしそうにしていましたが、わたしは「おかあさん、いいですよ」となだめると、つぎはけんだまわざ披露ひろう

 しかし、そのあとAくんにプリントをわたすと、Aくんはすどころか、非常ひじょう集中しゅうちゅうしてつぎからつぎへといていくではありませんか。
 さらに、おかあさんとわたし雑談ざつだん(「そんなにもうかってないですよ」というような会話かいわ)がみみはいった瞬間しゅんかん、ぱっとこっちをて「こんなに面白おもしろいことをやってるのに? 先生せんせい大金持おおがねもちかとおもった」とうのです。面白おもしろだな~とおもいながら、「たぶん、240にん1人ひとりくらいしか、キミみたいなはいないからね」などと会話かいわをして、1あいだ経過けいか。すると今度こんどは、カバンからルービックキューブをし、「ぼく、できるんだよ」と腕前うでまえ披露ひろうしてくれました。

 そしてかえるときには、「ありがとうございました!」と、しっかり挨拶あいさつしてくれたのです。

 そのときにハッとしました。
「そうか。どもはらずの、わけのわからないひとのところにれてこられて、そのひと挨拶あいさつしなさいとわれても理由りゆうがわからないよな」と。

 大人おとなは、シチュエーションによってるべき行動こうどうがわかっています。けれども、どもはシチュエーションがどうこうではなく、自分じぶんきかきらいか、そんとくかで判断はんだんします。だから、どもであればあるほど挨拶あいさつすることに理由りゆうもとめるのです。

 そんななか、Aくんはわたしのことを、面白おもしろ問題もんだいをたくさんくれて、まるをつけてめてくれたから、自分じぶんにとって有用ゆうよう人間にんげんだと判断はんだんしたのでしょう。だから、つぎもまたやらせてもらおうとおもって、挨拶あいさつをしてくれたのだとおもいます。

自分じぶんなりに意味いみいだすのを、気長きなが

 この出来事できごとに、挨拶あいさつとかくつそろえるとか、そういう社会しゃかいせいつぎでいいとかんがえるようになりました。ニコニコしてかえってくれたらそれでいいです。

 また、いわゆる通常つうじょう挨拶あいさつはなくても、ども独自どくじ挨拶あいさつをしてくれていることもあります。Aくんをれいにとると、恐竜きょうりゅう紹介しょうかいしてくれたことがかれなりの挨拶あいさつです。「ぼくはこういうものがきな人間にんげんです」という自己じこ紹介しょうかいなのです。
 いまはまだ、ひととしてできないことがいろいろあるかもしれません。けれども、納得なっとくかんまれたり、それをやる意味いみいだせたら、どもはかならずできるようになります。わたしはそのときがるのを気長きながっているし、そうなるとしんじています。

ほん記事きじは、『10ねん連続れんぞく算数さんすうオリンピック入賞にゅうしょうしゃした塾長じゅくちょうおしえる 「算数さんすうりょく」はしょう3までにそだてなさい』田邉たなべとおるちょダイヤモンド社だいやもんどしゃかん)から抜粋ばっすい編集へんしゅうしたものです。