ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス単語たんご

ネロクラウディウスカエサルアウグストゥスゲルマニクス

2.2千せん文字もじの記事きじ

ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス（37～68）とは、第だい5代目だいめのローマ皇帝こうていである。
ローマ史上しじょう、もとい世界せかい史し上うえ1，2を争あらそう暴君ぼうくんとして名高なだかい人物じんぶつである。

皇帝こうていネロ誕生たんじょう

37年ねん、グナエウス・ドミティウス・アヘノバルブスと小しょうアグリッピナの息子むすことしてルキウス・ドミティウス・アヘノバルブス、後ごの皇帝こうていネロが生うまれる。父ちちはアントニウスの孫まごである共和きょうわ政せい時代じだいの名門めいもん出身しゅっしんで、母はははオクタウィアヌス、つまりローマの初代しょだい皇帝こうていアウグストゥスの曾孫そうそんであった。さらに言いえば母親ははおやはローマの第だい3代だい目め皇帝こうてい、カリグラの妹いもうとだったのである。

しかし、カリグラの治世ちせい下かにおいては彼かれの一家いっかは不遇ふぐうをかこつことになる。父ちちは3歳さいの時ときに亡なくなり、母ははは兄あに・カリグラの手てによってポンティア島しまに流罪るざいにされたのである。
しかし皇帝こうていがクラウディウスに変かわると、転機てんきが訪おとずれる。母ははは呼よび戻もどされ、49年ねんにクラウディウスと結婚けっこん。そして息子むすこの彼かれも養子ようし、かつクラウディウスの娘むすめ・オクタウィアの夫おっととして後継こうけい者しゃネロ・クラウディウス・カエサル・ドルスス・ゲルマニクスとなったのである。
そしてクラウディウスが54年ねんに母はは・小しょうアグリッピナの手てで殺ころされると、ネロは皇帝こうていネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスとなったのであった。

ネロの最初さいしょの治世ちせい5年間ねんかん、いわゆるクインクエンニウムは後ごの皇帝こうていからもローマの黄金おうごん期きとして模範もはんとされるものであった。親おや衛まもる隊長たいちょうブルス、家庭かてい教師きょうしセネカの二人ふたりに後見こうけんされ、初代しょだい皇帝こうていアウグストゥスの時代じだいを範はんとする治世ちせいに邁進まいしんしたのである。潜在せんざい的てきな政敵せいてきであったクラウディウスの実子じっし・ブリタニクスが殺ころせ害がいされると、彼かれの専制せんせいを阻はばむものは誰だれもいなくなったのである。

暴君ぼうくんネロ

しかし、次第しだいにピタゴラス、スポルスとの同性愛どうせいあいや音楽おんがくへの異常いじょうともいえる情熱じょうねつが、皇帝こうていの悪評あくひょうとして噂うわさされるようになった。さらに59年ねん、ネロは実み母ははである小しょうアグリッピナを殺ころせ害がいする。また58年ねん頃ごろからマルクス・オト（後ごの皇帝こうていオト）の妻つまであるポッパエア・サピアに執心しゅうしんし、妻つまオクタウィアを62年ねんに殺ころせ害がいし、ポッパエアと結婚けっこんしたのである。

さらに62年ねんにはブルスが自殺じさつさせられる。こうしてポッパエアとブルスの後任こうにん・ティゲリヌスがネロの新あらたな専制せんせいの中なかで権勢けんせいを増ましたのである。反逆はんぎゃく罪ざいが復活ふっかつさせられ、処刑しょけいによって有ゆう力ちから者ものたちの財産ざいさんが没ぼつ収おさむ、さらには税ぜいも上昇じょうしょうしていった。ただポッパエアとの間あいだに63年ねんに生うまれた娘むすめ・クラウディアはわずか4か月つきで亡なくなってしまったことが影かげをさした。

そんな中なか起おきたのが64年ねんのローマの大火たいかである。ローマの7割わりを壊滅かいめつさせたこの大だい火事かじに対たいしネロは十分じゅうぶんな援助えんじょと、入念にゅうねんな将来しょうらいへの予防よぼう策さくをうっていった。しかし、この火事かじの犯人はんにんはネロだ、と噂うわさされるほど、皇帝こうていネロへの悪評あくひょうは頂点ちょうてんにまで達たっしていた。さらに火事かじの前まえにその年としの歳入さいにゅうがすでに無む駄だに使つかわれていたこともあり、莫大だいな財政ざいせい負担ふたんを抱かかえ込こむこととなる。

ネロの最期さいご

そして財産ざいさんの没ぼつ収おさむを狙ねらってますます反逆はんぎゃく罪ざい裁判さいばんが行おこなわれ、元老げんろう院いんからの不満ふまんが高たかまっていった。ついにはその怨念ねんがガイウス・カルブルニウス・ピソの陰謀いんぼうという形かたちで現あらわれる。しかしこの最初さいしょの陰謀いんぼうは暗殺あんさつ者しゃスカエウィヌスの失敗しっぱいによって明あかるみに出でてしまう。ネロの家庭かてい教師きょうしであったセネカも自殺じさつに追おい込こまれ、親おや衛まもる隊たいの士官しかん数すう人にんまで加担かたんしていたことが明あきらかになったのだ。そんなさなか、ポッパエアはネロに蹴けり殺ころされる。こうして66年ねんスタティリア・メッサリナとの3度ど目めの結婚けっこんが行おこなわれたのである。

66年ねん、ネロに対たいする二に度ど目めの陰謀いんぼうが明あきらかになった。コルブロをはじめとした主あるじだった元老げんろう院いん議員ぎいんが関係かんけいしており、ネロと元老げんろう院いんの絶縁ぜつえん状態じょうたいになったのだ。同年どうねんのネロのギリシア巡遊じゅんゆうも彼かれのイメージアップには何なんらつながらなかった。

そして68年ねん3月がつ、ついにガリアの属ぞく州しゅう総督そうとくウィンデクスの反乱はんらんがおこる、これにタラコネンシスの属ぞく州しゅう総督そうとくガルバが協きょう力ちからした。ライン川かわ方面ほうめん軍ぐんはウィンデクスを破やぶったものの、自分じぶんたちの司つかさ令れい官かんルフスを帝みかど位くらいに付つけようとし、ますます情勢じょうせいはガルバ派はに優勢ゆうせいに傾かたむいていった。6月8日にちついに親おや衛まもる隊長たいちょうサビヌスにも裏切うらぎられ、ネロはなりふり構かまわず逃にげる算段さんだんをし始はじめたのである。

ネロは侍さむらい従したがえたちにも裏切うらぎられ、街まちをさまよっていると、自分じぶんのかつての解放かいほう奴隷どれいパオンに出会であう。しかし、パオンに教おしえられた逃亡とうぼうルートの先さきにあったパオンの別荘べっそうには、すでに兵士へいしたちが待まち受うけていたのである。こうしてネロは「世界せかいは優すぐれた芸術げいじゅつ家かを失うしなうのだ！」と叫さけび首くびに剣けんを突つき立たてて自害じがいしたのであった。

ネロはそのまま父ちち方かたのドミティウス家いえの墓はかに入いれられたが、遺骸いがいが冒涜ぼうとくされることはなかった。庶民しょみんには気前きまえの良よい皇帝こうていとして人気にんきがあったからである。彼かれは元老げんろう院いん議員ぎいんのエリート層そうを軽かるんじ、不安ふあん感かんから彼かれらを敵てきに回まわしたことが彼かれの敗因はいいんだったかもしれない。

とはいえこうしてローマのユリウス・クラウディウス朝あさは滅亡めつぼうし、ガルバ、オト、ウィテリウスらによって争あらそわれた帝みかど位くらいは、69年ねんにウェスパシアヌスのフラウィウス朝あさへと移うつっていく。

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