『死霊のはらわた』(原題:The Evil Dead)とは、1981年のアメリカのスプラッター映画である。
映画『スパイダーマン』シリーズで有名なサム・ライミ監督の長編デビュー作。
後にシリーズ化され、続編と合わせて傑作カルト映画として非常に有名。
ストーリー
森の別荘で楽しい休暇を過ごそうとやって来た5人の若者たち。主人公のアッシュと妹のシェリル、アッシュの恋人リンダ、友人のスコットとその恋人シェリーという顔ぶれだった。
彼らは別荘を探索し、地下室で偶然「死者の書(Necronomicon)」なる古文書とテープレコーダーを見つける。だがそこに録音されていた音声は、森に封じ込められていた悪霊を蘇らせてしまう呪文だった……。
霊感体質のシェリルは森の方角から何者かに呼び寄せられて迷い込むが、木々に襲われて強姦され、命からがら逃げ帰った。錯乱して帰りたいと訴えるシェリルを町まで送り届けようとしたアッシュだが、車が通ってきた橋は破壊されており、やむなく二人は別荘に引き返す。
一同は救助が来るまでやる事もなく、興味本位でテープを再生してしまった。これにより、邪悪な死霊が次々と復活する。死霊は最初にシェリル、次にシェリーに憑依し、おぞましい不死の怪物になった彼女達はかつての仲間に襲いかかった。
やがてスコットとリンダも死霊に支配され、ただ一人残されたアッシュは果敢にも立ち向かうのだが……
解説
サム・ライミが中学校時代からの親友であり俳優のブルース・キャンベルと組み、制作したB級ホラー映画である。映画のヒットと共に、80年代のスプラッター・ブームの火付け役となった。
本シリーズは共通してサム・ライミ監督特有のマンガ的な演出があり、中にはコントを思わせるシーンも数多く、恐怖と笑いは紙一重を体現している。
特に3作目の『キャプテンスーパーマーケット』に関しては、もはやスプラッター描写はほぼ皆無であり、ホラーアクションコメディになっている。
2013年には1作目を設定の段階から作り直したリブート映画『死霊のはらわた』(原題:Evil Dead)が公開され、2015年秋にはドラマシリーズである『死霊のはらわた リターンズ』(原題:Ash vs Evil Dead)がスタート。更には2023年には新シリーズとなる『死霊のはらわた ライジング』が公開された。
「死霊のはらわた」
1981年公開。シリーズ1作目にしてスプラッター映画の傑作。
計算された恐怖演出が数多く使われ、シリーズ中最も怖い。
低予算ながら、くどいまでの残酷描写、パワフルなショック演出とカメラワークによって世界中でたちまち話題となった。サム・ライミは本作によってその名を一躍轟かせる事となる。
左右に揺れる不安定なカメラワークは、木材の真ん中にカメラを固定して左右から支えて全速力で走りながら撮影された。本当はステディカムを使いたかったが予算の関係上できなかったとのこと。
終盤、主人公が壁の後ろから悪霊の手に捕まれる演出があるが、監督の手である。当時、予算と配役の関係上カメラマンと二人っきりになってしまい、そのような演出に変えることにしたそうな。
「死霊のはらわたII」
1987年公開。続編とは言いつつ、実質的には1作目のセルフリメイクに近い作品。
1作目と違い、主人公アッシュとその恋人リンダの2人が最初に山小屋に向かうのだが、見てる観客がすでに前作の展開を知っていることを想定してか、開始10分ぐらいでリンダに死霊が憑りつく。その後アッシュに襲い掛かり、争いの末、主人公は自身の恋人をスコップで首チョンパするのだった。
しかしその後はアッシュの右手に悪霊が憑りつき、自分の手首との大格闘の後に床に串刺しにし、チェーンソーで切り落とすというトンデモ展開となる。その後切断した右腕にチェーンソーを取り付け、もう片手にショットガンを持ち、果敢に悪霊たちに立ち向かう。なんだこれ。
予算が大幅に増え、前作より派手な演出が多くなり、とても楽しめる映画になっている。
ホラー作品でありながらコメディ要素もあり、押し寄せてくる展開と衝撃のラスト、前作のヘタレぶりからは一転して色々な意味で吹っ切れたアッシュが見どころ。特に自分の右手にフルボッコにされるシーンは屈指の名シーンである。
「キャプテンスーパーマーケット」
1993年公開。原題は「Army of Darkness」、DVDでは「死霊のはらわたIII/キャプテンスーパーマーケット」。
なんでキャプテンスーパーマーケットなのかというと、主人公の職業がスーパー(Sマート)の店員だからである。
オープニングの際、タイトルが「Bruce Campbell VS Army of Darkness」と現れ、最早アッシュではなく役を演じるブルース・キャンベル自身がメインのような映画となっている。
前作のラストで中世の時代にタイムスリップしたアッシュ。
元の世界に戻る為に元凶である「死者の書」を探すが、いつもの如く失敗をやらかし死霊軍団を目覚めさせてしまった。死霊に襲われる国を守る為、アッシュはア-サ-王と共に軍団に立ち向かっていく。
元々バカっぽい主人公が、本作においてホンモノのおバカヒーローになるという胸熱の展開。映画前半、民衆にショットガンの説明をする際の「This is my boomstick!(こいつはショットガンだ!)」というセリフが有名である(boomstickはスラングでショットガンという意味)。
内容はホラーアクションコメディであり、子供が見ても楽しめるものになっている。
映画シリーズの中で最も人気のある作品で、コミカライズと続編コミックが出ている。ちなみに劇場公開版とディレクターズカット版とではエンディングが違う。
「死霊のはらわた リターンズ」
2015年放送開始。原題は『Ash vs Evil Dead』、映画から30年後が舞台となる、
派手なスプラッタ描写やアクション、ハイテンションなギャグの織りなすホラーコメディ作品。もちろん主人公のアッシュを演じるのはブルース・キャンベル。
トレーラーハウスに住み、スーパーの店員として勤めながら、夜はバーでナンパに精を出す、すっかりチャラいおっさんと化したアッシュ。
ある日トイレでお楽しみの最中に、女がかつて見た死霊に取り憑かれた顔になる幻覚を見る。悪い予感がしたアッシュは記憶を思い起こす、そういえば数日前に家に連れ込んだ女と一緒にドラッグで楽しんでいる時に、死者の書の呪文を読み上げちゃったような……?
アッシュはうっかりにより復活した死霊どもをどうにかするため、スーパーの同僚達を巻き込みながら死霊退治の旅に出ることになる。
過去作品の因縁や、重要なシーンにはきっちり回想や説明が用意されているので、過去作を見たことがなかったり、うろ覚えでも楽しめる配慮がなされている。見せたいものがはっきりしており、非常にテンポよく進む展開とあわせてダレにくいのがポイント。
2016年まででシーズン1&2の合計20話(各10話)が放映されており、2017年秋のシーズン3(全10話)が最終となった。日本では2016年からHuluで独占配信中。
「死霊のはらわた ライジング」
2023年公開。現時点における最新作なのだが、残念ながら日本では劇場公開されずDVDスルーになってしまった。
笑えるシーンの例
派生作品
「EVIL DEAD THE MUSICAL~死霊のはらわた~」
まさかのミュージカル化。
2003年にカナダで初演されて大ヒットし、2006年にはオフ・ブロードウェイに進出。その後世界中で上映され続けており、いずれも高い評価を受けている。
内容はロックミュージカル/コメディホラーだが、残酷描写と血のりの量に容赦はない。観客席まで血しぶきが飛び、前方列では文字通り頭から血を浴びる羽目になる。血しぶき避けのビニール合羽が配布されるが、剛の者ともなるとわざわざ全身血まみれになって大喜びし、お祭り騒ぎになるそうな。
日本でも2009年に上演され、演出はゾンビ映画マニアとして知られる河原雅彦が担当。アッシュを諸星和己が演じ、歌にダンスにスプラッターにと破天荒な舞台は好評を博した。
メディアミックス/クロスオーバー
その外にもゲームやコミックが多数リリースされている。ここではその一部を紹介。
この他にもダークマン(人工皮膚を移植された変身能力を持つヒーロー)、ヴァンピレラ(吸血鬼の特性を持つ宇宙人のヒロイン)、ハーバード・ウェスト(映画『死霊のしたたり』の、死体蘇生薬を開発したマッドサイエンティスト)など、往年のアメコミヒーローや映画作品とのクロスオーバーが多い。めっちゃドヤ顔でチェーンソー構えてキメてる表紙など、完璧にヒーローとしての扱いである。
更にはアッシュが死霊軍団からオバマ大統領を守って戦うシリーズなんてのもある。強い。
勿論クロスオーバーだけではなく、アッシュがメインを張るタイトルも数多く世に送り出されている。
2019年4月2日、サバイバルホラーゲーム『Dead by Daylight』と『死霊のはらわたリターンズ』がコラボ。有料DLCとしてアッシュがプレイアブキャラクターとして実装された。声優はもちろんブルース・キャンベルが演じている。
未来へと連れ去られる筈が、何故かエンティティが支配する霧の世界に放り込まれてしまう。頼みのチェーンソーもショットガンもなく、かくして今日も生き延びる為に発電機を回し続ける日々が始まるのだった。案外武器ちゃっちゃと調達して殺人鬼返り討ちしそうな気はするんですが。
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